神戸女学院大名誉教授の内田樹(うちだ・たつる)さんは、特定秘密保護法案を、安倍政権が経済成長を最優先させるために政治システムを変える試みの一環として見ています。




治安維持法のような凶器にも


安倍政権は経済成長を最優先の政策課題に掲げ、経済発展に都合のよい形に社会制度全体を設計し直そうとしています。その流れの中に特定秘密保護法案を位置づける必要があります。

国民が知ることのできる情報を制限すれば、それだけ議論の余地は少なくなり、政策決定はスピードアップする。トップダウンですべて決まる「株式会社」のモデルにならって政治システムを改組しようとする試みだと私は見ています。

役員会での議論や他社との交渉や密約を逐一全従業員に開示する会社はありませんし、従業員の合意を得なければ経営方針が決められないという会社もありません。そういう集権的、非民主的なシステムの方が金もうけのためには効率的だからです。ですから、「デモクラシーは経済活動には非効率であるから制限すべきだ」と考える人たちがこの法案を支持しています。

法律ができれば、反政府的な言論人や労働組合は「経済成長を妨害するもの」として抑圧され、メディアも政府批判を手控えることになるでしょう。運用次第でかつての治安維持法のような「凶器」になりかねません。

世論調査を見る限り、国民のほとんどはこの法律ができると政府は都合の悪い情報を隠蔽するようになると予測しています。この見通しは正しいと思います。


(朝日新聞2013.11.23)



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