必要なクリエイティブは、わずか20% | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

必要なクリエイティブは、わずか20%

最初の会社を辞めた後、次の就職先を探していた17年前のこと。
東京、新宿にある広告代理店に面接に行った。
会社名は忘れてしまったのだが、主にラジオCMを取り扱っている
小規模の代理店だったと記憶している。

面接は、その会社の社長さんが行ったのだが、
その時に、コピーライティングについて言われたことがある。
その時、他にどんな話をしたか忘れてしまっているし、
社長さんの名前も顔も忘れてしまっているのだが、
その言葉だけは、今でもはっきりと覚えている。

★今回は!なコピー。…を書くための言葉。


50%の商品知識と、
30%の常識と、
20%のクリエイティブ。



それは、コピーライティングについてのアドバイスだった。
コピーを書く上で、必要な能力の配分をそう表現したのだろう。
当時、だんだんとコピーを書くことを、面白く感じていた
時期だったのだが、良いコピーとはどのようなもので、
それを書くには何が必要かについては、よく分からなかった。
ただ書きまくっていた。

ここでいうクリエイティブとは、アイデアや発想、
表現力、もしくは創造性。
(実は後に広告のクリエイティブとは何か、その答えも探す
ことになる。しかし、当時はこんな程度の捉え方だった)

常識とは、常識的なコミュニケーション能力や価値観、
ものを見る視点、文章力というように理解していた。

この頃、よく駆け出しのコピーライターが陥りがちな、
言葉をいじくりまわすことだけには一生懸命だった。
しかし、それが良いコピーを書くために必要なことだとは
思っていたわけではなく、良いコピーを書く方法やヒント
を模索していたのだと思う。

その時期に出会ったからこそ、今でも覚えているわけだ。
当時の私は、おそらく

50%のクリエイティブと
30%の常識と
20%の商品知識


で、コピーを書いていたような気もする。
そのために、面白いコピーであったかもしれないが、
広告のコピーとしては、なっていなかったと思う。

商品についての乏しい理解と
乏しい常識をクリエイティブで
ごまかしていた。

おそらく企業や商品の価値を伝えることに
機能するコピーが書けていなかったはず。
それに自分も、周りもクライアントも気づかなかっただけ。

経験の割には、文章力の上達も早かったし、
語彙も豊富であったので、一番大切な点が
抜けていたのだ。

この言葉が、コピーライティングの本質を
ついたものかどうかは意見のあるところだろうが、
少なくとも当時の私には、ちょっとした
驚きだった。そういうことが分かって
うれしくもあった。

コピーライティングの軸であると思っていた
クリエイティブのウェイトが、20%で十分だと
いうことなのだ。
この言葉を聞いて以来、一時コピーを書く時には
必ず思い出して、それをふまえて書くようになった。

では、常識があって、商品をしっかりと理解すれば
良いコピーを書けるかというと、そうでもないと思う。
そこを誤解してはいけない。

たしかに、必要なクリエイティブは少量かもしれないが、
20%のクリエイティブを発揮するためには、その何倍もの
クリエイティブ力を蓄えておかなければならない。

そんなことを自問自答しながら、仕事を続けてきたわけだが、
実は、良いコピーとは何か?
その答えを今でも探しているのだ。
もっとも何かしらのイメージはあるのだが。

人によって、それぞれだろうが、
その答えを探すのもけっこう楽しいなと思う。
この春で、私もコピーライターを始めて19年!