どきん・・

   どきん・・


ー今、伝えなきゃ・・。

大きな真っ黒の巨大な野獣を前に、

  ミニョの心臓が、耳から、他の全ての音を奪ってしまったように

    大きな音を立てた・・。


どきん・・

  どきん・・・


目をぎゅっと閉じたミニョ・・。

  目を閉じても、目の奥に映るのは、

    今、一人・・いや、一匹、だけだった・・。

「私が好きなのは・・・」

ミニョが・・目をぎゅっと閉じて、思い浮かべた。


ー今分かった。


目の前の野獣へと、向けて

           言いたい言葉を、最後まで言い終わる前に・・・


ふわ・・・・・

    ミニョの口元に、

     硬い毛に覆われた中、

       柔らかい肌が・・触れた・・。


何が・・起こったのか・・

  

ぎゅっと・・   

   身を固くしたミニョ・・。

ふらつきそうな細い腰を、

  テギョンの大きな太い腕が、がっしりと抱き留める。


そして・・

  触れていただけの唇を少しだけ押し付けるようにして、

ミニョの唇に、テギョン王子の唇が・・ 

      ・・・・重なった・・。


どっきん!!!!!!

何が起こったのか、分かった瞬間・・

    跳ね上がる心臓に、目を、大きく開けたミニョ・・。


ーき・・・・す・・・・・

一瞬大きく目を開けたミニョだったが、

  滑り落ちてしまいそうな自分を支えるように・・

   祈りをこめるように・・

 目を閉じると、

    思い切り、テギョンの胸元を、握りしめた。


~~

ふわり・・。

   ミニョとテギョンの奥で、薔薇の花が揺れた。


ふわ・・

   薔薇の花が揺れたと思った次の瞬間には・・


あの、薔薇から出ていた桃色の光が強くなり・・

   薔薇は、鮮やかに色付き、最後の二枚が丸まった・・。


まるで、その二枚だけで、

   小さなつぼみに見えるかのように・・。


次にその薔薇の花びらが開いた瞬間・・

  とても目を開けていられないような光が薔薇の中からあふれ出し・・


まだ重なり合う、ミニョを・・

    野獣を包み込み・・


光は、部屋を抜け・・・

  廊下を光速で突き抜け、各部屋を抜け・・・


ミナム・・ユ・ヘイ・・他の家具たちも包み込み・・・

   部屋で窓を見ていたシヌ・・ジェルミ・・


・・・それに・・

   マ執事をも包み込むと・・・


城を・・

   深い闇に覆われた森を・・・


その場の全てを、景色を消してしまうほどの強い光で・・


  包み込んだ・・。


時が止まったように物がすべて宙に浮かび上がる・・


~~

言葉は、なかった。


結局・・・

   言葉など、なかった。

『この、金髪の男と、

       栗色の毛の男・・

それから、黒髪の男・・


まぁ・・俺には劣るとは思うが・・

   例えばこの三人なら、誰が好みだ??』   (後編:11)


兄が、見せた肖像画・・


私が・・好きになったら・・

  想いが通じたら・・

解けるかもしれないと言われた、魔法・・

        呪い・・


ーさっきは・・解けなかったけど・・


とくん・・

   とくん・・・


とくん・・

  とくん・・・


目を閉じた中・・

   唇に触れる感覚と、

離れないよう、

       きゅっと掴んだ感覚・・


それから・・

   安心できる、大きな腕で包まれた・・感覚・・


止まったような時の中・・

   浮いたようにふわふわとした中で、


それだけが現実であるかのように、

       ミニョはただ、そのぬくもりを感じていた。


ー三人・・

   綺麗な姿だけど、でも違う・・。


分かったことは・・

   私が好きなのは・・


王位継承権なんて関係ない、

   絵本のような王子様でもない・・


ただ孤独で・・

   本当に不器用で・・

 傲慢で・・

    優しさを、自分自身のうちに隠してしまう


そんな野獣・・

 

大きくて、安心できる、真っ黒な髪の・・


ーもし、これで解けなくても・・

とくん・・

   とくん・・・


ミニョの耳には、ただ、

   ミニョの心臓が音だけが響いていた・・。


離れない唇・・。


全てが静かになったとき・・

~~

静かに・・

   浮かんでいたすべてのものが下りてきて・・


あるべき場所に、戻った。


家具、食器・・

   掃除用具・・


ツタに覆われた城・・

    真っ暗な森・・


止まっていた時計・・

  

全てが

   すべてが桃色の光が去った後、


元に戻った。

~~


はっと、我に返った人間たち・・

   が、城のあちこちで自分の手足を慌てて見た。


   

「・・・・・・。」

   「・・・・・・。」

いつの間にか・・

   人間の手に・・


茶色い髪を揺らしたシヌが・・

   目に映る五本にはっきりと分かれた手で、髪に触れた・・。


「ヒョン・・」

ふとその声に振り返ると、

   驚いた目でシヌを見るジェルミが見えた・・。


昔見た・・金色の髪と、白い肌の・・。


「・・・・・。」

シヌは何も言わずに優しく笑うと、

    そっとジェルミの頭を撫でつつ、頷いた。

~~

ミニョが、ふっと目を閉じたまま唇を離すと、  

「わたっ・・

   私が好きなのは・・」          

息を思いっきり吸ったミニョが、

  目を開けた。


瞬間!!!!


同じく、目を開けた目の前の・・

   野獣・・ではない、背の高い真っ黒な髪の王子と・・


 すぐに息のかかりそうな距離で、目が合った。


!!!!!!!

   !!!!??????


腰に巻かれた腕も、

    野獣の時とは違う。


息を飲み、思い切り、目を見開いたミニョ。


その顔に、驚き、首をひねったテギョン・・。


「・・・・・・?」

険しい目でミニョを見た後、

  ふと、ミニョへと回した自身の手を見た。


!!!!!!!!!


見るなり、慌てて自身の両手を見たテギョン。


手・・だ。


五本の細くて長い指、

   筋の入った、手の甲、


昔見た、人間の、

   自分の手・・だ。


テギョンの目がみるみる喜びに変わり、

   その目でミニョを見た瞬間・・・


「おい・・・・」


真っ赤な、

   真っ赤な顔で、顔を押えたミニョが・・


じりじりと・・


 テギョンから離れるように、後ろに下がった・・。

かぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

ミニョの顔は耳まで熱を持ち、

   その顔は、熱があった時よりも、赤いのではないかと思われた。


っば!!!!


部屋から飛び出すように駆けだしたミニョ。   (どえええええええ!??)


「おいっ!!!!!!」

テギョンがすぐに手を伸ばしたが、

  ミニョの腕は掴み損ねて・・


だだだだだだだだ・・!!!!!!


ミニョが駆け降りたと思われる階段を

   今までの何倍も軽い身体で、駆け降りた。


なぜ逃げるのか分からない。

  ただ、逃げられることへの焦燥感で、我も忘れて走ったテギョン・・。


人間に・・

   元の姿に戻ったというのに・・だ・・。


「おいっ!!

  なんで逃げる!??」


ぱたぱたぱたぱたっ!!!!


逃げるミニョが、

  顔を隠しながら必死に言った。

「すっ!!すみませんすみませんっ!!!!

    ちょっと・・待ってください!

 追いかけてこないでっ」

騒々しい足音とミニョの声が響き、

   家具・・だった使用人たちが、一斉に祝福しようと笑顔で出てきた。


「ミニョさん!!

    テギョン王子・・~~~~~~~って・・」

笑顔で呼び止めようとした、元の大きさに戻ったマ執事だったが・・

  必死に走るミニョとテギョンにぶつかり、

      くるくるとその場を回る・・。


「ミ・・ミニョーーーー!!!!」

ジェルミもやや涙声で出てきたが・・

「うわっ!!???」

ぶつかりかけたところで、

   シヌに肩を引かれて、なんとかぶつからずに済んだ。


「なんだなんだ??」

ミナムもすぐに出てきたが・・

「なぁに?」

長い髪を揺らしながら後から出てきたスタイル抜群の美女、ユ・ヘイを見るなり、甘い顔で口の端を上げて笑うと、

「ミニョが・・・」

  ユ・ヘイの腰を自身へと寄せるように抱きながら、呟いた。


「・・・・逃げてるみたいだ。

   テギョンから・・。」

ミニョを追いかけようと出てきたジェルミとシヌが、そう答えると

「そう・・

   逃げてるみたいだな・・。」

呆れたように呟き、

  ヘイと目を合わせるなり肩を竦めたミナム・・。


「はぁ?逃げてる??

   なんで??

呪いだって解けたってのに・・」

さらっと、長い髪をかき上げて聞いたヘイ・・。


「とと・・とにかく行って見ましょう」

マ執事の言葉に、

    シヌが、ジェルミが、

      ミナムとユ・ヘイが・・

    ワン・コーディが・・後に続いた。


~~

「おいっ!!

   おいってば!!」

ぐっと、ようやく届いた細い腕を捕まえたテギョン。


ぐいっと自身の方へと寄せると、

   走っていたミニョが、くるりとバランスを崩し

      へたりと、座り込んだ。


腕はテギョンに掴まれたまま・・。


「大丈夫か?」

テギョンの言葉にも、

「は・・はい・・・」

俯いたまま、答えたミニョ。


髪が邪魔で、ミニョの顔が見えない。


はぁ・・。

テギョンの心臓は、どくどくしていた。

走ったせいもあるだろうし、

    もしかしたら、ほそっこい腕を掴んでいるせいかもしれなかった。


訳が分からない苛立ちも

    不安も・・その胸の音を、大きくした。


だが・・

   野獣だった時のような痛みは、なかった。


テギョンの長い脚が折れ、

   ミニョと目線を合わせるようにして、しゃがんだ。


「どうしたんだ・・

    急に・・。」

逃げられないよう、腕を掴んだまま聞いたテギョン・・。


ミニョの髪に隠れた顔が、

   ぴくっと動いた。


そっと・・目を上げたミニョ・・。


「・・・・・・。」

その顔を、少しだけ、口をぽかんと開けたテギョンが

    じっと見つめた。


かぁぁぁぁぁぁぁ

ミニョの大きな目は、潤み、

   目の前の真っ黒な髪の王子を映していた。

何か言おうとしている唇は、

   少しだけ開き、噛みしめていたのか、紅みを増していた。

その周りの顔は・・

    耳は・・

  今にも燃えそうに真っ赤で・・・


ご・・ごほっ!!!

 一瞬、目が離せなくなっていた自身をごまかすように咳払いすると、

「なんで逃げた?」

テギョンが、まっすぐミニョに聞いた。


~~

ばたばたばたばたっ!!!!

 「しぃっ!!!」

しゃがんだ二人を見つけるなり、

   壁に沿った角から、後ろに静かにする指示を出すと、止まったマ執事・・。


「「「「「・・・・・・・・」」」」」


心配・・というよりも、確実に、

   好奇の目で二人を見守るマ執事、ワン・コーディ、

       ミナム、ジェルミ、シヌ・・。

 そこから一歩遅れて、

     あきれ果てた目でその様子を見るなり頭を振った。

~~

「なんで逃げた?」

テギョンの目に、真っ赤になったミニョが見えると、

   ようやく、満足したようにテギョンの目が細められ、口角が上がった。


「す・・すみません・・・


はは・・・は・・

    ・・・・・はずかしくなってしまって・・・・」

顔を横へと向けて目を避けると、

聞こえるかどうかなほど消えそうな声で答えたミニョ・・。


「言いたいことがあったようだけど?

    なんだ?

 ほら。言って見ろ。今聞いてやるから。」

答えないミニョに、

  迫るように小さな声で聞くテギョン。


~~

皆の耳には、テギョンが何を言っているのかは

   全く聞こえなかった。


ただ・・

   50年ぶりのテギョンの顔は・・


昔見たことがない顔で・・

 

なにか、からかうように細められた目。

    上がった口の端・・


見るからに、

   獲物をいたぶって楽しんでいる・・・。


ご・・く・・・

覗き見ている者たちの、喉が鳴った・・。


野獣でもないのに、

   野獣よりも恐ろしげなあの顔はなんだ・・。


だからミニョは逃げたのかと疑いたくすらなる・・。   (・・・・(笑))

~~

「お前の好きな人が・・とかって・・

     言ってたようだけど・・?」

   じり・・

     じり・・


腕を掴まれながら、

    人の形をしたテギョンの整った顔が、

   ミニョの真横に近づいてきた・・。


どきんっ!どきんっ!!

   どきんっどきんっ!!!


ミニョが顎を引くと、

   息を飲んだ。


「ほら。呪いを解くために言おうとしたん・・だろ?


聞いてない。

   一回言ってみろ。


誰だって?」

ニヤニヤと顔が緩まないように

    必死に口を尖らせるテギョン。


「・・・・・・。」

困ったように眉を下げたミニョが、

    真っ赤な真っ赤な、リンゴのような顔で、テギョンを見つめた。

*****************************

長くなったので切ります。


いよいよ・・・最終話です!!!!


本当に、長い間ありがとうございました!!!


忘れずいてくださり、

   ここまで読んでくださり・・


感激でした。


あと1話楽しんでくださったら、嬉しいです♪


のあ



 

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「お前が追い出さなくとも、

   呪いが解けたら俺が出て行くさ。」

ミニョの耳に、

 後ろから、冷たくテギョンの声が聞こえた。


『お前らが来てから、むちゃくちゃだ!!!!』

テギョンに言われた言葉が、

     耳から離れない・・。

ーむちゃくちゃ・・・。

その言葉に・・

   必死に、テギョンには顔を見られぬ様、

      背けて歯を食いしばったミニョ・・。

そうしないと、うちから溢れる熱いもので、耐えきれなかったからだ・・。


本当に・・

   何をしに来たんだろう・・・。


さっきよりも、ずっと痛む胸の前で、ぐっと拳を握りしめたミニョ・・。


「呪いが解ける・・・?

  ・・・どうやって・・・?」

思わず、ミニョの口から、言葉が零れ落ちた。


「?どうやって?」

テギョンの言葉が、反芻して聞こえた・・。


っす・・

 息を吸い込むと、

「ミニョが好きな王子様がミニョを好きになれないとしたら・・

    ミニョに呪いを解く力はない・・。」

そう、小さく・・だが、はっきりと答えたミニョ・・。

  


「あ・・」

しまったと、思った時には遅かった。

   もう、ミニョの気持ちとは関係なくこぼれだしていく言葉と共に、堪えてきた熱いものも、止まらなくなってしまっていたから・・。


「お前が大丈夫そうなら、俺行くわ。」

最後、声を改めると、ミナムっぽく言い切った。


ーもういい。

    確かにテギョン王子様の言う通りなのだから・・。


 私がしてきたのは、

      本当に、むちゃくちゃにしてしまっただけ・・


なのに、胸の痛みが同じなら・・

   私と・・同じならって・・


 少しでも期待してここまで来た私がばかだったんだ。


扉に向けた顔は、涙で頬がびっしょりと濡れてしまっていた。



ー出なきゃ。すぐに。


ミニョの頭には、それしかなかった。



ー傍に行っちゃだめで、顔も見たくないんだから・・。


   ばれちゃだめだ・・。



疑われることを思うと、涙すら拭うこともできず、

    ミニョが扉へと駆けだした時・・



まさに今、ミニョが扉から出ようとした瞬間、

      テギョンが叫んだ!


「おいっ!!!!!!」

!??

扉を開け、出ようとしたミナムの手が、

   もう一度捕えられ、その勢いに、

     思い切り、ミニョの身体が回った・・・

 


はらり・・・


その瞬間・・


短かった髪が落ち・・

   代わりに、その下から、長い、くるりと巻いた髪が、きれいに落ちてきた・・。


!!!!!

涙に溢れたミニョの目が、

   テギョンの目に見えた・・。


瞬間、長い髪を隠すよう、片方の手で押さえたミニョ。

ー髪が!!!!

髪を押えつつ、顔を隠して手を振り切ろうと・・した時・・・




「行くな!!!!!」

テギョンが、言った。


!!!

怒鳴られることを覚悟したミニョが顔をそむけたが・・・


「行くな!!!!!」

テギョンの言葉に・・

 

「・・・・・・?」

そっと、顔を上げたミニョ・・。


綺麗にメイクされていた顔は涙に濡れ

   髪まで、濡れた頬にひっついてしまっていた・・。


「い・・く・・な?」

ぼぅっとした顔で、

   濡れた目をゆっくりと瞬かせたミニョ・・。

~~

・・・ふわっ・・

  弱弱しかった薔薇の光が・・

     優しく色を変える・・

~~

「私・・

   その・・・」

戸惑いを隠し切れずにミニョの目が、泳ぐ・・。


そんなミニョをじっと見たテギョン。

~~

部屋の奥には・・

   柔らかな光の薔薇の花・・。

~~

ミニョを掴んだ手は、離さぬまま、

   床に落ちているバレッタの飾りを拾い上げたテギョン・・。


・・っどき・・

ミニョの胸が痛いくらいに音を立てる・・。


「・・・・・。」

テギョンが何も言わずにその手にしたバレッタを見るのを・・

  ミニョは、ただ見つめていた・・。


「これ・・」

テギョンがふと、顔をミニョへと向けると・・・


ぼろぼろぼろぼろぼろぼろ・・・・


濡れた頬に髪は引っ付き、

   すでにメイクも取れた状態のミニョの目から、

 さらに大粒の涙が零れ落ちた。


ぎょ!!!!

予想外の様子に、目を大きく広げると、

   慌ててその顔を大きな自分の手の甲で拭ったテギョン・・。


どうしていいのか分からぬまま、

ただ、思わずそのミニョの顔に・・


 気付けば、大きな大きな手で、

   傷つけぬように頬についた髪をかき上げながら、

     そっと、涙も拭ってやっていた・・。


っく・・・

   ひっく・・

肩を揺らして、涙を流すミニョは、

  テギョンに掴まれた手を振り払おうともしない。


確かにバラバラだったバレッタ・・

   噴水の中へと投げたはずのものが、どうしてここにあるのか・・


それに・・

   あれから・・シヌとのパーティはどうだった・・のか・・


どうして・・そんなミニョがミナムの恰好で来たのか・・


聞きたいのに、

   どうしていいのか分からない・・。


さっきまで・・

   あんなにも胸が痛み・・


苦しくて・・

   言い表せない暗闇の中にいたようだったのに・・


だから、今後一切、この娘を・・

   ミニョを・・見たくないとまで思っていたのに・・。


目の前のミニョが悲しそうで、

    それでいて・・

        言葉とは裏腹に、胸は痛むというのに


掴んだ手を・・

   離したくはなかった・・。   


「テギョン王子様は、私にどうしてほしいんですか?

ひっく!

   ひっく!!」

泣きながら、突然ミニョが聞いた。


急な言葉に、

    びくっと、身体を揺らした巨体・・。


「私は・・

   どうしたらいいんでしょうか・・」

ひっく・・

一言しゃべるたびに、

   肩が揺れる。


ぎゅ。

掴まれた手を、握り返すミニョ・・。



どっくん!!!!!!

テギョンの心臓が、大きく、それに、深く、奥から動き始めた。


~~

ぽぅ・・

 薔薇が・・また・・色を変える・・・


どっくん・・

   どっくん・・どっくん・・・


心臓に合わせて・・

    まるで、薔薇も呼吸しているかのように・・・


~~

「お・・・。」

(・・・急に出てこないでいただきたい・・(--;))

ミナムが、テギョンの部屋の扉の前・・

   耳を澄ませながら声を出した・・。    (いたんかーい)


「なに?

   どうなった・・??」

ユ・ヘイ箒が、

   まぁるいお尻をふると、その後ろのマ執事が、けほっけほ!!!埃に顔を顰めて言った。


「ああああああのっ!!

   どういうこと・・


入ってはいけないと・・

  入れてはいけないとあれ程おっしゃっていたのに・・!!!


それに・・!!!」

心配そうに、横に立つシヌを見上げたマ執事・・。

「・・・・・。」

肩を竦めるように、シヌが首を振り、笑った。


「ああああああ・・・そんな・・


  え・・?では・・

     ミニョさんは一体何をしようと!!??」

訳が分からないマ執事が今度は不安そうにミナムを見上げたが・・


「ジョリー!

   これ、キッチンへ連れてってて。後片付けがあるはずだから。」

ミナムがマ執事の方すら見ずにそう言うと、

  ジョリーは、あん♪快い返事と共に、暴れて抵抗するマ執事を咥え、

      階段を下りて行った。


「・・・片づけ・・よりも、

      今後のことが必要かも?」

呆れたような・・

    優しい笑顔でそうおどけるように言ったシヌ。


「・・・・・。」

そんなシヌへと、ヘイが顔を向けると、

  珍しく、肩を竦めながらも、

「かもね。」

   慰めるように優しく笑った。

「で・・・でも・・・」

ジェルミが、

   口を少しだけ、噤んだ後・・

      毛むくじゃらの毛の下、もごもごと、言った・・。

「さっき・・

   キスした時に呪いは解けなかったのに・・・」

そんなジェルミの言葉に答えるものなく・・

   ただ・・黙って・・・皆はテギョンの扉の前・・

       聞き耳を立てた・・。   

(鏡使えよ(笑)シリアスなシーンなのにいらないよ・・君たち・・おおおおい)


~~

『もうこの際だから、はっきり言うけど・・

  この城の魔法を解くためとか、ミナムのためにここに来たとか、

   どうでもいいの。

わかる?

  どうでもいいのよ。』     (後編・22)

ユ・ヘイの言葉が、頭に響く・・


「わたっ・・私も・・

    このお城が呪いでも、魔法でも、

       なんでもいいですっ!!!!」

ミニョの言葉に、

  !??

テギョンが目を広げると、

    思い切り目を瞬かせた。

~~

!!!????

扉の前に待機するメンバーも、

   皆が目を丸くして自分の耳を疑った・・。


あの、ミナムですら・・だ。

~~

「やっぱり、『夢』みたいな世界は嫌です。

   『現実』がいいんです!!」

独り言のように涙を流し、続けるミニョ・・。



ぎゅ。

  テギョンが掴んでいたはずの手が、

    逆に、ミニョによって、力強く掴まれた。


「・・・・・・。」

そんな手とミニョを交互に見たテギョン・・。


『あんた自身、気付いてるかどうかは知らないけど、

  全然動こうとしてないじゃない。』

ユ・ヘイの言葉が頭に響く・・。


「わたっ・・私は・・!」

ーそう・・

   ここに・・・来たのは・・


『結局、誰が好きなのよ?

魔法が解ける方法、聞いたんでしょ?

大事なのは、『愛』なの。

  『犠牲』じゃないし、

まして伝えないなら、通じないなら、


    『見守ってるだけ』でも、だめなの。』


ー私が・・

    ここまでお兄ちゃんの恰好をして来たのは・・


ミニョが、睫までしっとりと濡れた大きな目で、

    テギョンを・・

       野獣の姿の、テギョンを、見上げた・・。


「あの・・・」

ミニョが、まっすぐに、テギョンを見上げた。

ーそうだ・・

    ここで逃げたら・・何もならない・・。

『自覚・・あるんでしょ?

 

あんたが好きなのは、

  茶色なの?

    金色?



 それとも・・黒?』                

ユ・ヘイの言葉が続く・・


『わかってんでしょ?ほんとは。』


「あの・・・」

ミニョの言葉がなかなか出ないのを・・

    テギョンは、黙って見ていた・・。


心臓がどくどく痛む・・。

ー何を言うのか・・・

ぎゅっと、握りしめられた手に・・

    何かを・・期待しているかのように・・・


心臓の痛みは激しいにも関わらず・・

   この間までのような苦しみは・・不思議と今はなかった・・。



「あの・・・」

ミニョが、何かを必死で言おうと、何度も口を食いしばる様子を見ていた

テギョンが・・

   ミニョの唇が切れているのを・・見た。


「・・・・・・

  ・・・っ!!!!!

 //////////」

途端に気恥ずかしくなったテギョン・・。


ミニョの言葉を遮るように、 

 ごほっ!!!こほっ!!!!

   何気なく咳払いすると、もう一度ミニョを見て、呆れたように、言った。


「これはなんだ?」

大きな手のひらに乗せた、バレッタの飾りを見せたテギョン・・。


!!!!!

ミニョの目が見開かれ、

   ばつが悪そうに、真っ赤な顔で、それを・・

       掴もうと手を伸ばした・・。


・・・が、

   大きな毛むくじゃらの手を閉じると、取らせないテギョン。


「これはなんだ?と聞いた。」

その言葉に・・

「ごめんなさい・・・」

小さく謝ったミニョ・・。


そんなミニョに胸の痛みが消えると・・


不思議と・・

   テギョンの口角が上がった。


返してもらおうと閉じた手を必死に開こうとするミニョと、

    からかうように、口元に笑みを浮かべて、取らせないようにする、テギョン。


「その・・・

    大切にしていたんですが・・・

それ・・


    返してください!!」

ミニョが、言ったが

「俺がやって、

    俺が拾ったものだ。」

ふん・・とばかりに、

    意地悪く顎を上げたテギョン。


その言葉に・・

「そうです!」

ミニョが、大きな声で唇を尖らせながら、言った。

「テギョン王子様からいただいたものです!!

  

 だから・・・一番・・

      大事なものです・・!!」

真っ赤な顔で言ったミニョ・・。


「・・・・・。」

目を開けると、

ぽかんと、

   テギョンが、ミニョを見つめていた。

「そ・・そりゃあ・・

   この俺様にもらえるだなんて・・


 あ・・ありがたいことこの上ないからな。」

テギョンの言葉に、

  素直にうなずくと、

「本当に嬉しかったのに・・ばらばらになってしまって・・。」

ミニョが、肩を落とすと、

   テギョンのバレッタを握りしめた手から、手を下した。


「・・・・・。」

唇をもごもご動かしながらも、

  そんなミニョを見ると、そっと、手を開いたテギョン・・。

「・・・水の中・・

    ・・・まさか入ったんじゃないよな?」

ぼそっと言ったテギョンの言葉に・・

「・・・・・(こく)」

手が開いたと同時にバレッタを手に取ると、

    大事そうに胸元へと握りしめたミニョ。

そんな様子を満足げに口角を上げて見ていたテギョンだが、

   頷いた意味が分かるなり、

「ば・・っ!!!!」

馬鹿!と、怒鳴りそうになったのを、

   なんとか堪えたテギョン。


改めて・・

   まだ繋いでいる手に気が付いたが・・


ミニョが、

   ミニョの方が、ぎゅっと握りしめていたので・・


思わず緩みそうになる口元を手で押え、

   なんとか、笑みを漏らさないよう耐えた。


「あの・・」

ミニョが、テギョンを見上げて言った。


「さっきは・・

   すみませんでした・・。


 ・・ぶつ・・ぶつかってしまって・・」

ばつが悪そうに言ったミニョの言葉に急に現実に戻ると、

   不機嫌な・・怖いと言われる顔に戻ったテギョン・・。


ーあれが・・ぶつかった・・だと・・?


ミニョの切れた、ふっくらとした唇を睨み見ながら、

    確かにぶつかった、自身の唇へと手を当てたテギョン・・

どっくん・・

  ぎこちなく・・胸が痛む・・

ー呪いは・・

    俺とでは解けなかったのだ・・。

そこまで頭で呟くと、  

ーっは!!(笑)

呆れたように内心笑ったテギョン。

ーだから・・

   決めたんだろ。今後一切こいつに関わらないと・・。

呪いが解けたら俺が出ていけば・・

「あの・・

   テギョン王子様は・・

 

 私に呪いが解くことを望んでらっしゃいますか?


それとも・・

  私がもう、あなたの前から見えなくなることを望んでらっしゃいますか?」

テギョンがつらつらと勝手なことを頭でねちっこく呟いているのを

   遮るようにミニョが聞いた。

もう、涙はなく、

   テギョンの方だけを、まっすぐに見ていた。


「・・・両方だ。」

ー嘘だ・・

 内心・・言った瞬間に・・自分では感じてしまっていた・・。

が、テギョンがそう言うと、

   ミニョがテギョンと繋いだ手を、優しく、握りなおした。


「私も・・

   テギョン王子様が望まれるなら・・

 そうしようと思っていました。

 

テギョン王子様を苦しめるくらいなら、

 呪いが解けたらお城から消えないといけないと思ったり、


 シヌ王子様と結ばれて呪いが解けるなら・・

    そうしたら・・と・・。」

ミニョの唇の動きに、

  ぐ・・・苦しくなる、テギョンの心臓・・・。


「・・・でも・・」

ミニョが、そんなテギョンの胸の痛みを、

   まるで知っているかのように、抱き付いた。


包み込めない大きな巨体・・恐ろしい野獣を、

    まるで包み込んでいるかのように。


「ごめんなさい。」

テギョンに抱き付きながら、そう言うミニョ・・。


包み込まれると、一瞬で胸の痛みは解けるようになくなり・・

   テギョンはただ、どうしていいのかも分からず、その場で固まった。


「できそうにありません。」

はっきりと言ったミニョ。

「胸が痛くて・・」

泣き止んだミニョの声が、また震えて聞こえた。


「私には、両方苦しくて・・・

    …胸が・・痛くて・・・」

ミニョの言葉に、

    テギョンの顔が、変わった・・。


「私は・・本当にこんなことを言うと失望されちゃうかもしれませんが・・

  呪いが解けなくても・・


 王子様たちが野獣のままでも、

     皆さんが今のままでも・・いいんです・・。


 本当にここがありがたくて・・

      ここにいられるだけで幸せだから・・。

 

そ・・それに・・

   ほ・・本当に好きな人じゃないと呪いが解けないと聞いて・・


 私が・・


  私が・・」

声を、必死に出そうとするミニョ。

「・・・・・。」

テギョンが、自分に抱き付くミニョを

    ほんの少し話すと、その顔を見た。


ミニョも、下から・・

    真っ赤な顔で、上目づかいに、見上げた。


きょとんとした目で下を・・ミニョを見る・・

     大きな大きな、真っ黒の髪の、野獣が見えた・・。

肖像画で見た人ではない・・

        大きな野獣が・・・


ーそう・・

「私が好きなのは・・・」


ミニョが・・目をぎゅっと閉じて、目の前の野獣へと、向けて

   言い終わる前に・・・


ふわ・・・・・


何が・・起こったのか・・・
~~

『ミニョミニョ。

  ひとつだけ言うが・・

さっきお前が倒れてぶつけたアレは、キスじゃない。

   キスはな?こうやるもんだ』

ミナムがミニョの目の前、

   少しだけ背を屈ませると・・・


ぐっと

  ヘイの身体を引き寄せた。

~~


まさに・・

   その通り・・・


ミニョの唇に、テギョン王子の唇が・・


      ・・・・重なった・・。


********************************


ひ・・久しぶりの更新過ぎて・・・

   反応がこわいいいいいいいいいいい


一応・・、一文一文、過去からぜ~~~~~んぶ読んで、

    チェックしてきました^^;


その分遅くなりましたが、次はすぐに更新できます。


しかし・・何年ぶり・・・・本当に、見つけてくださったら奇跡です!!

直接コンタクトを取ってくださってまでまっていてくださった読者様方、

      ありがとうございました(泣)


妄想と一緒でしたか??(笑)


少しでも楽しんでくださったら嬉しいです!!


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「俺だ。

   入るぞ。」

そういうなり、大きな扉のノブを捻ると、

   勢いよく入っていったミナム・・・。


「・・・・・。」

きゅっと、唇をかみしめると、

  震えそうな両手に力を入れて、固まりそうな足をなんとか、その部屋へと踏み入れた・・。

その、噛みしめた唇の端は、

  まだ、痛々しく切れた後があり、ほんの少しだけ、唇の桃色に、

    紫色の跡がついていた。


テギョンの部屋は、真っ暗だった。 

 

いつも、輝いて見えていたバラの花の光もどこか弱弱しく、

   いつもの場所でかろうじてその光を放っている。


どくんっ!!

  どくんっ!!!!


ミナムの心臓が、その光が弱まっていることに、

   なぜだか不安に、大きく揺れた・・。


真っ暗な部屋の中、

   ベッドのそばに腰かけている様子のテギョン・・。


テギョンの真っ黒な毛色は、見事に暗い影に隠れ、

  今、テギョンがどんな表情をしているのかは、ミナムの目には見えなかった。


~~

『お兄ちゃん・・テギョン王子様が怒っていらっしゃらないって・・ほんと?

私また迷惑かけちゃって・・

   謝りにいかないとなのに・・マ執事は私はだめって・・』

切なげに目を細めたミニョが、ためらうように聞いた。

『どういうこと?』

そんなミニョを見つめたミナム・・

じっと、ミナムの目を見つめるミニョに、

  一瞬ふっと笑みを見せると、

『怒ってはいないって。テギョン王子。』

ミナムが、答えた。

まだ疑うようにミナムを見るミニョ、

  今度は、ミナムがじっとミニョを覗き込むようにしながら言った。

『怒ってないって・・。

 でも・・今後一切、お前が傍に行くことを禁止するって。』

ミニョの目が、ミナムを見ながら揺れた・・。

ミナムが言った言葉が、頭の中いっぱいに、一瞬で黒い霧が立ち込めたようにミニョの思考を停止させ、

   ぱっと、顔を俯けた。

大粒の涙が、ミニョの目に溢れた。

助けようとしたのに、

   あんなことになったのだ。怒るのも当然だし、会いたくないのも当然だろう・・。

心臓が、地中深く埋められたように沈んだ感覚がミニョを襲い、

   胸が、痛んだ。

ーなんで、期待なんてしてたんだろう・・。

その言葉に沈んだ瞬間、気付いた。

  キスしたとわかった瞬間・・

      魔法は解けてないかと期待した自分に・・。

自分が恥ずかしくて、

  胸が痛くて・・ミニョは胸を軽く叩いた・・。

『・・・・・・。』

シヌが横目で見た後、

   口の端を少し上げたかと思うと、はっと息を吐いた。

『苦しくなるんだと・・。

      お前を見ると。』

俯いたミニョの頭の上から、

   ミナムの言葉が降ってきた。

『・・・・・。』

その声を、俯いたまま、目を数度瞬かせながら、聞いたミニョ・・。

『ひどく痛くなるんだと・・。

   ここが・・。

 お前を見ると。』

ミナムの言葉に、

   俯きながら少しだけ目を上げたミニョ・・。

ここ・・

そう言いつつミナムの示した指先は、

   まさに、今目の前でミニョが押えている胸と、ミナムの身体の同じところを指していて・・

「っ!!」

口元を覆って、

   ただただ、大きく目を見開いたミニョ・・・。

~~

『あんた自身、気付いてるかどうかは知らないけど、

  全然動こうとしてないじゃない。

結局、誰が好きなのよ?』

ヘイの言葉が耳に蘇り・・・

慌てて目の前に意識を戻すと、

 「身体・・大丈夫?」

テギョンの表情を少しでも見るように目を細め、

    恐る恐る、足を近づけて行こうとした・・。


「誰が入っていいといった・・」

威嚇でもするように低い、テギョンの声に・・


っどっくん!!!!!!!!!

ばれたのかと、心臓が深く、大きく胸の奥で暴れたが・・


ぴたっ。

「・・・・・。」

ミナムが立ち止まり、

   下を向いて黙っていると、


「っふん・・

   お前が俺の言うことなど、聞いたことはなかったか。」

自嘲気味に笑いながら、そう言ったテギョン・・。


ーばれて・・ない・・・?

どきん・・

   どきん・・・・


ミナムの手が、自然と、うなじ部分の短い毛先に触れた。

どきん・・

  どきん・・・・

ー今のは・・

    出ていかなくてもいいってこと・・よね・・?


ミナムの手が、

  さり気なく自身の首を後ろから包むようにしつつ、

      さらに、少しだけ前へと近づいた。

「っは・・はは・・

   うん。聞かないよ。聞いたことないだろ?

で・・

  今はもう、苦しくはないの?

 ミニョにはもうここに来ないように言ったし、

   あいつは俺の言うことは絶対聞くから・・来ないだろ。

・・・これで・・満足?」

わずかに・・

   ミナムの声が震えて聞こえた。

強がるように背を伸ばしたミナム・・。

そんなミナムの言葉が一瞬癪に障ったのか、

  片目を細め、喉の奥を鳴らしたテギョンだったが・・

ふんっ!

  すぐに、ミナムから目を離し、そっぽを向くと、答えるつもりがないのか、

    顔を背けるようにして、座りなおした。

「あいつを見ると、

   胸が痛むんだろ?ここ?」

ミナムが、自身の胸を押えながらテギョンに聞いた。

が、

  答えないテギョン。

バラの花の光は、

  とても弱弱しかった。

それも目の端にとらえたミニョ・・。

「あいつが・・誰かを好きになって、

  その相手もあいつを好きになれば・・

想いが通じ合えば、

   愛し合うことができれば・・

呪いは解けるんだよな・・?」

今度も、

  テギョンは何も答えなかった。

そんなテギョンに、

  口先を尖らせたミナム。

どきん・・

   ずきん・・・

胸が痛む。

  自分から顔を背けるテギョンを見るのも辛いし、

    自分は来てはいけないと言われた場に、

      兄として立ち、目すら合わせてもらえないのも辛かった。

だが、テギョンが・・

   そのせいで弱っていっているとしたらそれは・・もっと、辛かった。 

どきん・・

  どきん・・・

沈黙の間、

  ミナムの・・いや・・ミニョの心臓の音だけが、ミニョの身体全体に、振動と音を、感じさせた・・。

ーやっぱり勘違いだったのかな・・

   痛みが同じだなんて・・。

ミナムの姿のミニョが、

    じっと、テギョンを見つめた・・。

だが、相変わらずテギョンは動かない・・。

沈黙の・・

  いや、ミナムすらいないかのように黙るテギョンの姿が辛くて・・

「ミニョに会いたくないなら、

   ミニョを城から追い出そうか?

弱ってるお前がこんな暗いところに籠るんだったら、

      いっそ、あいつを追い出せばいい。」

つい、口から出てしまったミニョ・・。

どきん・・

  どきん・・・

ー追い・・出すなって・・

    言ってください・・

心の中で、つい、願った・・。

「・・・・。」

顔を背けたミニョの背後で、

    テギョンが少しだけ、こちらを向くのが感じられた・・。

「あぁ・・。

  そうか・・。そうだな・・呪い・・。

あいつにそれは解かせなきゃな・・」

ミニョがジャケットのポケットに手を入れながら、

   その中にあるバレッタを手に握りしめてそう、言葉を続ける・・。

ーお願い・・

   何か言ってください・・

テギョンに背を向けながらそう・・言った時・・

  ベッドの傍に畳まれて置かれた、あのマントの上に、

    少しの光をも映す、銀色のバレッタのかけらが・・置かれていた・・。

どきんっ!!!!!!!!!

ミニョの目が、

   その足りなかった髪留めの部分を、見つめた。

ーあった・・・。

どきんっ

  どきんっ・・・

ゆっくりと、その髪留めに向かって歩いたミニョ・・。

ポケットに入れた手に握りしめた、残りの部分を握りしめつつ、

   その髪留めをもう一方の手で、つかもうとしたミニョ・・。

っば!!!!!!!!

その手を、テギョンが掴んだ。

「っ!!」

今まで感じたことのない力で手を掴まれ、

  つい、痛みに顔を顰めたミニョ。

「俺の言うことは聞かなくても、

    俺の部屋のものは一切、勝手に触れるな!!!」

テギョンが間近にミナム(ミニョ)へと顔を近づけながら、

       その細い手首をぎりりと掴み上げた。

「っ!い・・いたっ・・」

その力に、ますます顔をゆがめたミニョ・・

「お前らが来てから、むちゃくちゃだ!!!!

    呪いが解けるのだけを、ただ、待っていたらよかったのに・・・」

自分に言い聞かせるように言ったテギョンの手は、

  さらに力を入れてミニョの手首を掴んだ。

チャリンッ・・・

  痛みでポケットから外れたミニョの手・・

その瞬間、

   ミニョのくっつけた、バレッタの飾りの部分が落ちた。

だが、二人ともそれには気付きもせず、

テギョンの顔がすぐ間近・・まるで、キスしそうな距離まで来るのを見ると、

    ミニョは、慌てて顔を横へと背けた。

!!

次の瞬間、ようやく手を離したテギョン・・。

「で、お前、

   何しに戻ったんだ?」

聞いたテギョン。

「あぁ・・俺が心配だったんだっけ?」

テギョンがベッドに腰掛けながら、聞いた。

「お前が心配してくれなくとも、

  お前の妹のおかげで、もうすぐ呪いは解けるだろ。」

テギョンの言葉に・・・

  背を向けたミニョの胸が、じくっと痛んだ・・。

「ミニョは・・・

   あいつは・・さっき・・

 いや・・

   今はどう・・

いや、いい。」

一人、呟くようにしどろもどろに言いつつ、

   当たるようにして、つかんだ腕を引っ張ったテギョン・・。

ミナムはテギョンの方はもう、向かなかった。

そんなミナムを睨み見たテギョン・・。

ーさっき・・誤ってついたとはいえ、唇が触れたのに・・

    兄にも何も言わなかったというのか?あいつは・・。

テギョンの胸が、またも、言い知れないむしゃくしゃに、襲われた。

ーさっき・・

     ぶつけたというのに、もう、何ともなくシヌとパーティを楽しんでいるのか?

自分で呟いておいて、

   その言葉はひどく、テギョンの胸を痛くした。

それで、

「お前が追い出さなくとも、

   呪いが解けたら俺が出て行くさ。」

胸を押えたミニョの後ろから、

   テギョンが言った・・。

『むちゃくちゃだ・・』

その言葉に・・

   必死に、顔を背けて歯を食いしばったミニョ・・。

「呪いが解ける・・・?

  ・・・どうやって・・・?」

震えた声が、テギョンの耳に聞こえた。

「?どうやって?」

さっき自分で言っていたにも関わらず変なことを聞き返すミナムの言葉を

   睨むように繰り返したテギョン・・。

「あいつが・・

   ミニョが・・好きな王子様と結ばれなきゃダメなのに・・。

 

   ミニョのことを、好きになってもらわないといけないのに・・。」

ぽろ。。

   ミニョの目から大粒の涙が、零れ落ちた・・。

涙は見えないが、

  ミナムのその様子がおかしいことに、後ろ姿を、顰めて見たテギョン・・。

「ミニョが好きな王子様がミニョを好きになれないとしたら・・

    ミニョに呪いを解く力はない・・。

あ・・

  お前が大丈夫そうなら、俺行くわ。」

最後、ミナムっぽく、声を直して言ったミニョだが・・

   扉に向けた顔は、涙で頬がびっしょりと濡れてしまっていた。

ー出なきゃ。すぐに。

ミニョの頭には、それしかなかった。

ー傍に言っちゃだめで、顔も見たくないんだから・・

   ばれちゃだめだ・・。

さっき、ここへと入った勢いは失われ・・

  溢れる涙すらどうしようもなく、疑われることを恐れて拭うこともできず、

    ミニョは必死に手を振りほどくと、

      慌てて扉へと駆けだした。

「?」

様子のおかしなミナムを、

    じっと見ていたテギョン・・

手を解かれた瞬間、

   バランスを崩して床を見るなり、

       床に落ちた・・・・バレッタが見えた・・。

あの・・噴水に落としたはずの・・

   ばらばらになったはずの・・・

あのバレッタだ・・・。

慌てて自身の置いていた髪留めの部分を見たテギョン・・

  それも、まだ、そこにあった・・。

「っ!!!!!!!!!」

目を見開いたテギョンが、

   まさに今、扉から出ようとしたミニョに向かって叫んだ!

「おいっ!!!!!!」

そういうなり、

   扉を開け、出ようとしたミナムの手をもう一度掴み・・・

思い切り、自分の方へと向けさせた。

くるり・・・

 勢いよく回ったミニョの身体・・・。

大きなテギョンがその顔を見たときには・・

    はらり・・・

  短かった髪が落ち・・

    代わりに、その下から、長い、くるりと巻いた髪が、きれいに落ちてきた・・。

「行くな!!!!!」

テギョンが、言った。

************************************

きゃーーーーーーい。

ようやくきたきたーーーーーー!!!!!!!!!!!!

  ここまできたよーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!

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「うぐっ!!!!!!」  

声にならない声を出したジェルミ・・


巨体であるはずのジェルミの身体はふわりと宙に浮き・・

「ごごごっ!!!ごめんってば!!ひょん!!!

   わざとじゃないんだってば!!!!!おっ・・下ろしてっ!!!


 しんでしまふ・・・っ!!!!」

叫んだジェルミに対し・・

「っは・・

  わざとじゃない・・?」

その、ジェルミの身体を宙に浮かばせている張本人・・テギョンが、呆れたように笑った。

ジェルミをひっつかみ、まっすぐに伸びた腕、

  その腕にしがみつくように両手を巻き付け、浮かんだジェルミ・・


!!!!!!

ミニョの目が、その姿を映すなり、

    大きく大きく、さらに大きく見開かれると、ぱちくりと瞬いた。


「っ!!!!!」

テギョンを見つけたミニョの目が、

            光を取り戻した。

「・・・・・。」

そんなミニョの表情を見つめるシヌ。


「わわわっ!!

   テギョン王子様!!!!!離してあげてください!!」

慌てて立ち上がるなり、どうにかしようと手を伸ばしたミニョに、

「おい。

  下ろしてやれ!」

ミニョへと目を向けつつ止めたシヌ。  


が、

「お前な。

   またコイツが・・・」


そう、テギョンが言いかけた時・・・


「っきゃ!!!!!!!」

いくら背伸びしても、ジャンプしても、届かないテギョンの高く伸ばした手に

   椅子の上に立ち上がったミニョ・・・


背伸びしたミニョの足首がふにゃりと揺れるなり・・


一気にバランスを失って・・


 ・・・落ちてきた・・・


「うわっ!!!!!」

  「おいっ!!!!!!」


「っえェ!!?????」


一斉に・・

   見上げた3人の王子たち・・・

~~

バランスを崩して、上から倒れようとしてきたミニョを見るなり

   無条件に、地を蹴ったテギョン・・

 シヌ、ジェルミの間から手をミニョへと手を伸ばすと・・

   倒れてくるミニョを抱き留めるようにして、ミニョの下へと入った・・。

~~

ぼすんっ!!!!!!!!!!!

っしん!!!!!!!!!!!!!


ミニョが、三人の上に・・

    落ちてきた・・・。


両手を広げて受け止めようとする、

   三人の王子の上に・・・。


~~

!!!!

   !!!????


 っ!!!!!!


家具たちは、そんな様子をまるで映画のワンシーンでも見るかのように、

  目を見開いて、一コマ一コマ、見逃すことのないように見守っていた。

ぼすんっ!!!!!!

  っしん!!!!!

「ててて・・っけほ!!

    っけほっ!!!」

  「・・たた・・」

ジェルミがようやく離された解放感と、衝撃で頭に手を置きながら起き上り、

   シヌもまた、その下から起き上る・・。


家具たちの視線・・

 目の前には・・


倒れこんだミニョの下・・

    まるで庇うかのように腕をミニョに回して倒れた・・大きなクッションのような、

      真っ黒な毛に覆われた、テギョン王子の姿があった・・。

長くうねったミニョの髪が

  重なり合った二人に、流れるようにかかる・・。


二人の顔はぴったりと重なり・・

  その唇は、まさに、その髪の下・・狼のような長い口先にぶつかるように、ひっついていた・・。


「「「「「・・・・・・。」」」」」

ひゅ~♪

黙り込んだ周囲の中、

  ミナムだけが、どこから現れてきたのか、

    呆然と立ち尽くしたヘイの横へと家具の合間から入ってくると、

       余裕の笑みと口笛を吹いておかしそうに笑った。

 

「・・・何を見て・・・」

同じくミニョの落ちてきた衝撃に、倒れこみ、

  わけのわからなくなったジェルミがそう・・

     振り返った時・・

   

!!!!!!???????

二人を見たジェルミの表情が・・凍り付いた・・。


??

シヌもまた、その先へと目線を映すと・・・

「・・・・!!!!!!!!!!!!!」

隠しきれない衝撃に、

   目を、見開いた・・・。


「ミニョが・・

   ミニョが・・・


テ・・テギョンヒョンの上に・・・」

涙声で呟いたジェルミ・・・。


「ん・・・・」

その時、

  皆の視線を集めた先・・テギョンに覆いかぶさったミニョの身体が、動いた・・・。


「っ!!

   ミニョ!!」

すぐに駆け寄ったシヌ・・。


シヌの茶色い大きな手がミニョを支え・・


ぼんやりと・・

  身体を起こしながら、目を開いたミニョ・・。


目の前に、自分をただ、唖然と口を開いて見つめる家具たちの姿が映るなり・・

 

何が起こったのか、

  ぼんやりとした目を、ぱちくりとして見せ、

    痛みの走る口先を、そっと指で押さえた・・・。


「っ!!!!!」

その瞬間、

  まざまざと浮かんだのは、さっき、気を失う前に、ぶつかったときの、唇への衝撃・・。


一瞬で大きな目を見開いたミニョがもう一度周囲を見渡し・・

   それから・・まだ倒れたままのテギョンを見た・・・。


「・・・・・・・っ」

唇をきゅっと噛みしめ、

  少しだけ切れた唇の端を押えるように、手で包んだミニョ・・。


家具たちも互いに目を見合わせた・・。


そう・・

  ミニョが・・テギョン王子と唇を合わせたにも関わらず・・


 誰一人・・元の人間の姿に戻っているモノはいなかったのだ・・。


「・・・・・。」

ミニョが、まるで今置かれた状況を確認するかのように、ミナムへと顔を上げた。


そんなミニョに、肩をすくめておどけたように見せたミナム・・。


すぐ隣のテギョンはまだ、仰向けになり、倒れたままだ・・。

  すぐ隣のテギョンは・・・


「テギョン王子様!!

   テギョン王子様!!!」

支えてくれたシヌの腕から必死に手を伸ばすと

    ミニョは、毛むくじゃらのテギョンの腕に触れた・・。


ー私のせいでテギョン王子様が・・・!!!


目の前で倒れたままの、テギョンの姿に

   シヌの腕から抜け出すこともできないミニョ・・


それと共に・・

   力が抜けてしまった・・。


ー魔法は・・

  

  魔法は、解けなかった・・。

~~

「・・・・。」

テギョンへと、手を伸ばす、腕の中のミニョを、

  じっと見つめるシヌ・・


ミニョの身体が、

  わずかに震えることが胸を締め付け・・

腕から抜け出すことのないミニョを、そっと抱きしめた・・。


~~

ー事故とはいえ、唇が触れたのに・・

  小さい頃から好きだった、物語のように・・

    唇が触れたというのに・・


ミニョの指先が、わずかに震える・・。

震える目で、数度瞬いたミニョ・・の後ろ・・・


「ヒョン!??

   ヒョン!!!」

ジェルミの叫び声が聞こえた。


その声に、我に戻ったミニョ。

慌ててミニョが振り返ると、

「だめだ。目を覚まさない・・。

   完全に気を失ったみたいだ・・・。」

ジェルミが、

   家具たちへと助けを求めた。


「っ!!!!!!」

ミニョの顔が、悲しく歪む。


ミナムも一瞬だけ、ショックを受け、目を見開いているミニョに目をやったが、

  すぐにテギョンを運ぶ手配をし、家具たちに巨体の野獣であるテギョンを運ばせた。


「私もっ!!

  私も行かせて・・・」

ようやくシヌの腕を解いて、立ち上がろうとしたミニョだったが、

  すぐに、マ執事が飛んでくると、ミニョをその場に留まるよう手を置いた。

「あなたはいいんです!!ささっ!

  パーティを続けて・・!!


今日はシヌ王子のための日なのです。


テギョン王子は大丈夫ですよ!

  すぐに目覚めます!


皆、すぐに戻りますから。」

そう言って、まるでけしかけるように尻でシヌを押すと、

       ミニョの横へと追いやったマ執事。

「・・・・・・。」

シヌが少し困ったようにマ執事を見つめるのがミニョの目に入り、

   ミニョは、テギョンが気にかかる心を置いて、シヌを見上げた。


シヌを見るなり、

「パーティを台無しにしてしまって・・・

   テギョン王子様にも迷惑をかけてしまって・・・ごめんなさい・・」

そう言って、テギョンが運ばれる中、

  それを見つつも、シヌの傍に・・

         その場に留まったミニョ。

マ執事の合図とともに、

   楽器たちの音楽が再開され、

ミナムも

ぽん。

心配そうなシヌとミニョの肩を叩いて安心させるよう笑うと、

       シヌとミニョを席に戻すと、テギョンを運ぶ一向についていった。


目の前には、いつ取り替えたのか、

  また、新しい食事が並べられ、ジェルミのいなくなった広いテーブルは、

    シヌとミニョだけになった。


リズムの狂いなく、美しく流れる音楽に、

        テーブルを美しく飾る料理たち・・


(読者の見慣れた登場人物家具でいるのは、

   唯一、まったく関心がなさそうな、ユ・ヘイ箒くらいだ・・。 )

ーパーティは終えなきゃ。

    シヌ王子様のお祝いなのだから・・。

心でそう、何度も呟き、

    胸から溢れる不安を消すために、口元に、わざと力を入れて笑みを作った。


にも関わらず、

   口元にはかろうじて微笑みを残すものの、ミニョの目は、どこか遠くを見ているようだった・・。


ヘイが、呆れた様子でそんなミニョを見る。


そんなミニョをじっと見たシヌ・・

「ミニョ・・」

シヌが呟いた自分の名前に、その視線にようやく気付いたミニョが、

   シヌへとにっこりと笑っていった。


「せっかくのパーティを、私のせいでごめんなさい・・」

今にも泣きだしそうに赤くなったミニョの目。


「謝らないでくれ・・。

     お前のせいじゃない。

 まだ・・

  その時じゃなかったんだ・・。


 気にするな。」

シヌの目が、細められた・・。

  今にも溢れんばかりのミニョの目に、シヌは映っていない・・。

口元に力を入れると、

  ミニョのもとへと近づき、その背を撫でてやったシヌ・・

「ミニョ・・俺のためにここに残ったお前の中に・・

    俺はいるのか?」

ぼそりと言ったシヌの言葉は、

   ミニョの耳には届かなかった。

「え?」

優しく撫でてくれるシヌを見上げたミニョ。  
 

「いや・・・それより・・

   大丈夫か?」

優しく聞いたシヌ。


『大丈夫か?』その言葉に、胸が痛んだ。


傷ついた唇ならば、痛くはない・・。

  だけど・・まだ野獣の姿であるシヌや、家具を見ると・・・

    痛むのだ・・・。


すると、突然、シヌが歌いだした・・。


その歌に、

  ぴたりと演奏をやめた家具たち・・。


シヌの声は、大広間に、心地よく伸び、そして広がる・・。


『僕はバカだからそうみたい

  つらくても、平気みたいだ

愚かな愛だとからかわれても

   どうしようもないバカだから


僕が望んでよくしたんだ

それだけで、幸せなんだ

  一度だけでも笑ってくれたら

その笑顔で幸せなんだ


 何も望んでなんていない

 いつでも手を差し伸べたらそこに

   いつでも、呼んでくれれば聞こえるそこに

 変わることなく、いてあげるから


 彼女を愛しているから

 僕はバカだから』


 シヌが、ミニョの肩に手を置いて歌うのを、

   じっと、ミニョが見つめていた・・。


シヌが歌い終え、ミニョの少しだけ切れた唇へと目を移したとき・・

ミニョが、ぼぅっとした目で、シヌを見つめた。

「とっても素敵な曲ですね・・。」

ミニョの言葉に、

「素敵じゃないよ。

   バカみたいな歌だよ」

シヌが言った。


「バカみたい?」

そう言われた時、わかった。


皆のために、シヌと結婚しなきゃと思っていたはずなのに・・

   テギョン王子に迷惑をかけて、勝手にパーティまで台無しにして

     テギョン王子は倒れてしまって・・・


 ・・それでも自分は、何もできずにここにいて   

   テギョン王子の唇に触れたのに魔法が解けなかったことに・・

        胸が痛いんだから・・なんて、自分勝手なんだ・・。

ー魔法なんて、解けるはずがない・・。


「いいえ・・。

 好きな気持ちを恥じることなく、一生懸命で・・。


相手のためを思って、ただ、相手のそばにいてあげる。

尽くしてあげる・・。

その、歌の彼に、

   そんなにも愛されている彼女がうらやましいです・・」


パーティは続き、

   それからは、いろんな話をした。


小さい頃の話、

   シヌの王子としての失敗談に、昔の町と城の話も、した。


テギョンの様子がわからず、胸が潰れそうにいたんだが・・

   それでも、自分の知らなかった城の話を聞いている間は、知らなかった昔のシヌ王子・ジェルミ王子・・

  それから、テギョン王子を知れたようで・・

    胸が少しだけ、温かくなったりも、した。


二人が和やかに談笑している時

      ミナムに連れられてマ執事がシヌとミニョのテーブルへと戻った。


瞬間、ミニョは勢いよく立ち上がり、

  シヌもまた、立ち上がって様子を聞いた。

「テギョン王子様はお目覚めになられましたので・・

    ご心配なされませんよう・・」

二人の近づいた様子に、満足げに頬を緩めたマ執事が、そう言った。


「あの・・

   ご迷惑をかけたこと・・怒っていらっしゃいませんか?

 謝りたいのですが・・お会いすることは・・」

ミニョがそういうなり、慌てて首を激しく振ったマ執事。

「いえいえいえいえ!!!!

   ミニョさんはだめです!!

 行ってはなりません!!!!


あっ!!いえ。

   大丈夫です!!


全く怒ってはおられませんでしたから!!!」

明らかに動揺するようにそういうと、

   こほんと咳払いして、続けるようにと、手で促したマ執事。

それに、戻ってきた家具たちの様子も、

  なぜだか戸惑って見えた。


だが、ミニョが何か言うよりも早く、シヌが口を開いた。

「いや、

  今日はいささか俺も疲れた。


パーティは終わりにしよう。」

ぎょっと目を見開いたマ執事・・

  慌てて自分の身体を見てみたが・・変化はない。


それから、二人をもう一度見てみた。

ーパーティを終える?

何も変化はないが・・

~~

「今日は楽しかったよ。

  ありがとう。ミニョ」

そう言って笑うシヌと、

   恐縮するように肩をすくめ、

「とても素敵な歌を聞かせていただき、ありがとうございました」

そう言って、少しだけ笑うミニョ・・。

~~

目の前の二人はなんだか違う。

歌?それに、あのような騒動の後、穏やかに話していたことを考えると、

     何かはあったようだ。


初夜は・・

  一石三鳥の未来の王の誕生は、今日は無理だったとして、

   何かは、あったのかもしれない。


マ執事は、自分で納得させると、ミニョに目で問うように合図してみた。

ミニョは、マ執事の目の意味がまったくわからなかったが、

  疲れたので終わりたいといったシヌの言葉をそのまま受け止め、首を頷かせた。


それを、ヨシととったマ執事。

とたんに笑顔に変えると、

「そうでしょうそうでしょう♪

  それは疲れましたとも!今日はいろいろ大変でしたから・・


ささっ!では今日のところは、ゆっくり休まれて・・」

そう言いながら、シヌへついて出ていった。


その場に残されたミナムとミニョ・・

   と、後片付けに取り掛かる家具たち・・

ミナムが、不安そうな顔を上げたミニョの心など、すべてお見通しのように、

  その頭をぽんと叩いた。


「聞いたろ?

  テギョン王子は目を覚ました。安心しろ。」

ミナムが言うと、

  ミニョがすかさず聞いた。

「お兄ちゃん・・テギョン王子様が怒っていらっしゃらないって・・ほんと?


私また迷惑かけちゃって・・

   謝りにいかないとなのに・・マ執事は私はだめって・・」

ミニョが、ためらうように聞いた。

「どういうこと?」

そんなミニョを見つめたミナム・・

~~

心配そうに囲む家具たちの中、

「・・・う・・・・」

頭を押えつつ、テギョンが起き上った・・。

「ひょん!!」

安心したように駆け寄ったジェルミと、

「王子様!

   よかった!!!」

マ執事たち・・。


「俺は・・?」

言ったところで、

   口元を押え、倒れたミニョの下敷きになった場面を思い出したテギョン・・。


「大丈夫か?」

そんなテギョンをじっと見つつ、聞いたミナム・・。


「・・・・・・。」

っぐ・・

  痛む胸を押えると、

    テギョンが苦しむようにして、息を吐いた。


「・・・出ていけ・・」

小さな声だったが・・

  誰もがその気配で分かった。

誰もが、

  その声に聞き覚えがあり、そのテギョンに見覚えがあったからだ。

恐ろしい、その気配に・・。


「あの・・テギョンヒョン・・

   ミニョは・・・」

言いかけたジェルミの声を、

  ぐォっ!!!!!!

テギョンの唸り声が重なった。


「今・・あいつの名前を出すな・・

  どうにかなってしまいそうだ!!!」

胸を押えて唸ったテギョン。

「わわわ・・わかった・・」

ジェルミが驚いていうと、

  家具たちも一斉に一歩下がり、互いに目を合わせた・・。


テギョンの手は、大きくて、ごつごつとした皮膚に、

  固く覆った黒い毛、恐ろしい爪・・・


唇に、確かにぶつかった記憶はあるのに・・

   何も・・変わらなかったのだ・・・。


テギョンがじっと己の手を見つめたあと、

   下がる家具たちへと言った・・。

「今後・・

  一切俺の傍へあの娘が来ることを禁止する・・・」

低い・・恐ろしい声で唸ったテギョンに・・

  テギョンを運んできたほとんどの家具たちは、

「かしこまりました!!!」

そう言って、部屋を出ていった。


しかし・・

  そんなテギョンを見ていたミナム・・と、その胸に逃げるように飛び込んだマ執事と、

    心配そうに見る、ジェルミ。

「なんで急に?

   怒ってるのか?ミニョに?」

ミナムが聞くと・・

「怒って?

  ・・・は、いない・・。


だが、ひどく痛むのだ。

  ここが。」

胸を、ぐっと押えてそう、言葉を吐き出したテギョン。

「「「・・・・・・。」」」

三人が、そんなテギョンを見つめた。

・・ひどく弱っている気がして・・・

「痛む?」

ジェルミが聞くと、

「苦しい。

  あの娘を・・


・・・・もう見たくない。」

テギョンが、言った・・。

~~

「っ!!」

口元を覆って、

   ただただ、大きく目を見開いたミニョ・・・。


そんなミナムのもとへと歩いてきたヘイ。

こきこきと首を鳴らすと、

「あ~・・ようやく終わった。

   でも何?あんたたち・・。

もういい加減にしてよね。

物語の主人公が私じゃないだけでも腹立たしいのに、見てる方がイライラするわ。」

ミニョをじろりと睨んだ・・。

「もうこの際だから、はっきり言うけど・・

  この城の魔法を解くためとか、ミナムのためにここに来たとか、

   どうでもいいの。

わかる?

  どうでもいいのよ。

今。

全くとんちんかんなマ執事は最初からあてにもしてないけど、

 アホなミナムのあんたたちの自覚するのを待つ計画だか何だか知らないけど、信じて損した。

 

あんた自身、気付いてるかどうかは知らないけど、

  全然動こうとしてないじゃない。

結局、誰が好きなのよ?

  それとも誰も、好きじゃないって言うの??


魔法が解ける方法、聞いたんでしょ?

大事なのは、『愛』なの。

  『犠牲』じゃないし、

まして伝えないなら、通じないなら、

    『見守ってるだけ』でも、だめなの。」

ヘイがずかずかと、

  ミニョの目の前までやってきていった。

「自覚・・あるんでしょ?


あんたが好きなのは、

  茶色なの?

    金色?

それとも・・黒?」                ((笑)服の色だと様になるのに、毛の色で聞かれると(笑))

ミナムが、思わず吹き出しそうになる口を押えて、

  ヘイとミニョを、見つめた。

「わかってんでしょ?ほんとは。」

ヘイの言葉に・・

  ミニョが、壊れたバレッタを手で握りしめ、もう片方の手で、

     少しだけ切れた唇を触った。


「だから・・

  キスで魔法は解けるってどこに書いてあんのよ?って言ってるじゃない!

大事なのは『愛』でしょうが!!!お互い気付いてないと意味ないでしょ!

     偶然なら私がさっさとやってたわ!!!」         (後編・15)


ヘイの言葉に、

   ミニョが見上げた。


そんな二人を面白そうに笑ったミナム・・。

「ミニョミニョ。

  ひとつだけ言うが・・

さっきお前が倒れてぶつけたアレは、キスじゃない。

   キスはな?こうやるもんだ」

ミナムがミニョの目の前、

   少しだけ背を屈ませると・・・


ぐっと

  ヘイの身体を引き寄せた。


「「!!!!!!!!!!!」」

突然のことに、驚いたのは、ヘイだけじゃない。

  そんな場面を真のあたりにした、ミニョもだ。


「おっ!!

  お兄ちゃん!!!!」

叫んだあと、

  ミニョが駆けだした。


顔は真っ赤で、

  頭がちかちかしたが、不思議と、ヘイの言葉とミナムの衝撃に、

    さっきまで黙々と胸をうごめいていた雲は、すっきりしたように思えた。


大広間を飛び出したミニョ。


「あ・・あら・・

   ミニョ?」

ワン箪笥のいる部屋へと駆けこむと、

  急いで、そのクローゼットを開けて、何やら着替え始めた。

「あらっ!!

  あらあらあらあら・・っ!!!!」

驚いて、

  ただ、ミニョの方を見つめたワン・コーディ・・。


着替え終えると、

   ジャケットのポケットへと、あのバレッタを、忍ばせて言った。


「じゃ、

  行ってくる!!」

ミニョの声と共に、

   ミナムと同じ、ズボンと革靴が、駆けだした。

ミナムと同じ、短い髪・・

(ただ、鬘なのか、走るのに押えてはいるが)

 同じ、ぱっちりした目、

  ミナムと同じ、鼻・・


それと、少しだけ端の切れた、唇・・


こんこんこん・・・。

  少し震えた手が、大きな扉をたたいた。


「・・・誰だ・・?」

低く唸った扉の先の声に・・・

  恐れることもなく、

「俺だ。

   入るぞ。」

入っていくミナム・・・。


パタンー

テギョンの部屋の、

   大きな扉が、閉まった。


***********************************

いい加減にしろよ!!!!!

 ヘイと同じく、誰もが言いたいよね(笑)あはは!!すみませーーーーん。


1か月と少し、ずーっと、お休みしてしまいました。

ごめんなさい。


それなのに、待っていてくださった方も、

  呆れたけどここにまたなぜか来てくださった方も、


偶然お越しくださった方も、


ありがとうございます♪

本当に、ありがとうございます♪♪

バラバラになった部品を、一つ一つ、くっつけたバレッタ・・

  形になってミニョの手に収まるそれは、

    きらりと光に煌めいて、もらった通り、可愛らしいままだったが


少しミニョの手に収まったその位置をずらすと、

   バレッタの、肝心の髪留めの部分が欠けていて・・


「・・・・・。」

その手の中に包まれたものを見つめたミニョ・・。


ーだめよ・・。

   シヌ王子様と結婚することが・・私にできる唯一のことだから・・。


心でそう呟きながらも、

ぎゅ。

 まるで、きつく締め付けられた胸の痛みと同じくらい、

    その手に包むそれを、握りしめた・・。


「・・・・・・。」

ミニョの目が、どこか遠くを見つめたまま、止まっている・・。


どんなにどんなに・・

   自分をごまかしてみても、


どんなにどんなに・・

   自分に言い聞かせてみても・・


握りしめた指先をなぞったテギョンの毛先のくすぐったさが、

  指先と共に胸をくすぐり・・


触れた時の熱が、

   思い出すだけで、指先から頭の先までを、ちりちりと焦がした。



コンコンコン・・

  その時扉が叩く音が聞こえ、ふっと顔を上げたミニョ・・。


「来たわ~~~♪」

大喜びでどすどすと駆けつけたワン箪笥・・。


どきっどきっどきっ!!!!!

ミニョの心臓が、変な期待を表すかのように、鳴る・・。


そんなわけ、ないのに・・。

  彼が来るはずはないのに・・。


どきっ

  どきっ・・

引き攣るような頬の感覚を感じたまま、見つめた目の先・・


ぎ・・

扉が開かれると・・・


にっこりと笑った・・

  栗色の毛に覆われた、白い正装姿の・・シヌがいた・・。


ふと、

  ミニョの顔から、力が、抜けた。


「では、まいりましょうか。」

まるで、おとぎ話の王子様のように、

   やさしく笑って、その手を差し出したシヌ。


黒い毛に覆われた大きな手と同じ・・

  ミニョの倍ほどもある、茶色い手を見つめたミニョ・・。


ミニョの手が・・ぴくりと戸惑うように動いて見せたが・・

  ゆっくりとその手に手を重ねると、

    シヌがにっこりと、ミニョへと優しく微笑みかけた。


~~

うろちょろうろちょろ・・。


もう来るかもう来るかとばかりに、

   マ執事は床を右へ左へ、

 マ執事のずんぐりむっくりな小さな体を、下からそのまま映した大理石の上、

     止まることなく歩き続けた。


そのマ執事の指揮を待つオーケストラも、

   マ執事の動きに合わせて右へ左へと顔だけを動かせる。


もちろんオーケストラと言っても、その姿はそのまま、その楽器なのだが・・。


とにかく、マ執事の動きに合わせて右へ左へと動くものだから

   ガチャ。

     ガチャ。

いちいちうるさい。


っは。

  そんな様子にあきれ果てるように顔を引き攣らせたヘイ箒が顔をふっと逸らすと、

    何やら一人、顎に手を当て、考え込むようなジェルミ王子の姿が見えた。


これまた、冷たく顔を顰めると、首を傾げたヘイ箒・・。


その時、

  バタンー

大広間に響く重い扉の開く音が大理石の広い空間を突き抜け・・・


ジャンジャカジャーーーーン♪♪


待っていましたとばかりのタイミングで、

    マ執事の手が上がり、オーケストラが演奏を始めた。


扉の音と共に顔を上げたジェルミの目が、

   大きく見開かれた・・。


口が、

  大きく大きく、開いた。


目に見えたミニョが、

   あまりに美しく見えたからだ・・。


普段、飾りっ気のないミニョでも十分可愛く見えていたのだが、

  今のミニョはまるで、天使か何かのように、輝くシャンデリアの下に降りてくるミニョが、きれいに見えた。


だがすぐに、

  開かれた口元は、きゅっと閉じられた。


ミニョの手は、シヌの手に重ねられていたからだ・・。


どこか寂しげに微笑むミニョだったが、その目は、

 オーケストラ、それに、この広間に集まっている家具たちから逸らすようにして、

    下へと向いていた・・。


パチパチパチパチ・・

  わいわいがやがや・・


まるで結婚式か何かのようにシヌと二人に向かい拍手し、

   シヌの誕生を祝うパーティのはずなのに、

     「なんてお似合いの二人だ」とばかり、祝福の声を上げる家具たち・・


指揮に手を上げているマ執事も、

    そんな家具たちに満足げに笑うと、

       ちらりとミニョとシヌの様子を見た。


美しく飾られたテーブル・・


ミニョがその一方にシヌによって席へとつき、

 まさに今、その対面した椅子へとシヌが腰かけるところ・・


だったのだが・・・


長いテーブルを挟んで、予定通り、家具たちに促されて向かい合って座ったミニョとシヌ・・

   

指揮する手は止められなかったが、

    マ執事の目が、まん丸く見開かれた。


ミニョのすぐ隣に、予定ではないジェルミ王子がひょこんと腰かけてしまったからだ。


指揮するマ執事の手が震え、

  それに伴い、演奏のリズムも、速くなったり遅くなったり・・


ージェルミ王子!!!

   ジェルミ王子様!!!!!


マ執事は必死に心の中で叫びながら

  目で合図を送ろうとした。


だが、当のジェルミ王子といえば、

  ミニョの隣でにこにこと何やらミニョと話しているではないか!!!


これでは・・ムードある音楽の中、

    向かい合った二人がともに食事し・・

      目が合うと少し照れながらも互いに見つめあう・・

 ・・なんてどこかで見たような名場面には程遠い。


マ執事の目が、パチパチと瞬かれ、

  計画から外れてしまったことに焦りを感じるかのように、その手もパタパタと、素早く動いた。


それに忠実に従うのは、オーケストラたち・・。


ta-rararara~~

    rararara~♪


なんて優雅な音楽が・・


ジェルミだけを見るマ執事によって、

    しっちゃかめっちゃかに速くなってきたとき・・


~~

「ほら。ミニョ。

   うちの城のコック長のこの料理は、すっごいうまいんだから♪」

マ執事のことなど、すこっしも気付いていない様子で、

   にっこりとミニョに笑いかけたジェルミが、ミニョの皿へと料理を取り分けた。


「そそそそんな・・

   それはワタクシたちがやりますからっ!!!」

傍に控える調理具たちが口々にマ執事とジェルミ王子を交互に見ながら叫ぶが、

  一向に気にせず、ミニョだけに微笑みかけるジェルミ・・。


「あ・・・。」

ふと、ジェルミの手がミニョの手に触れ、

  慌ててミニョが手をひっこめた。


「・・・・・・。」

どきどきどき・・

ちらりと、様子をうかがい見るように、ミニョを見たジェルミ・・。


ー・・ミニョ・・

  なんか顔赤くない・・・?

一人、そう考えると、すぐに緩んでしまいそうになった顔を引き締め、

「ご・・ごめんごめん!

  当たっちゃった・・。」

そう言って笑いながら、手をひっこめて席へと着いた。


「・・・・・。」

ジェルミがちらりとミニョを覗き見ると、ミニョは、

  先ほどジェルミが触れた手をそっと握りしめ、

   どこか、赤い顔をして、俯いている・・。


「・・・・っ!!!」

どっきん!!!!!

  ジェルミの胸が跳ねた。


それで、ぎゅっと手に力を込めると、

ーできる!俺だって、できる!!!


すっかり盛り上げようと気合を入れた家具たちや、

   自分を邪魔者のように扱っているマ執事をそっと細めた目でにらみつつ、


ぷいっ!

 マ執事の必死に目で説得しようとする熱視線から、目を逸らした。


シヌの目も、険しくジェルミへと向けられた。

 だがその目はすぐに、ミニョで止まった。


異常なまでに速い音楽、

   突然隣に座ってきたジェルミ・・にも関わらず、


「・・・あ・・

  ありがとう・・ございます。」

何も不思議には感じないかのように、

   表情のない微笑みで答えている・・ミニョ・・。


「・・・・・・。」

シヌの目が、まっすぐにミニョを見つめた。


が、

 ミニョの目は、シヌの視線に気づき、そちらへと向くことはなく、

   その都度、ジェルミに相槌はうつものの、

     時折、無意識のように扉へと向かっていく・・。


扉・・・


シヌの目が、ミニョの目線の先へと向かった・・。


扉から・・

  誰が出てくるのを待っているかなど、シヌの痛む胸が、誰より先に気付いてしまっていたからだ・・。


どきん・・

  どきん・・・

ミニョの胸は、騒がしく音を立てていた。


そっと、自分の手に触れるミニョ・・。

さっき・・ジェルミに触れられた手の感触が、

   朝間近で手だけを覗き込みながら、毛むくじゃらの手で、手を包まれた感覚を呼び起こしてしまい・・


胸が、鳴って止まらないのだ・・。            (・・・・・ジェルミ・・)

~~

朝・・すぐ近くでミニョの手だけを真剣に見ながら

   ぶつくさと文句を言いつつも、くっついてしまったミニョの両手を、離してくれたテギョン・・。


「すみません・・

  問題ばかり起こして・・」

しゅんと肩を落としてテギョンを見上げたミニョ。


その時テギョンが

「昨日・・」

呟いたので、

「はい・・昨日?」

そう聞き返した・・。

~~

楽しそうに話しかけてくれるジェルミに心ここにあらずの様子で、

   微笑み返しだけするミニョ・・。


「俺もここに参加するよ。」

シヌが、ジェルミに嫌味っぽくわざとらしく笑顔で近づくと、

   ジェルミのすぐ隣へと、腰かけようとした。


「えぇっ!!???

  シヌヒョンは今日の主役なんだから!!!!そんなとこに座っちゃだめでしょ!!!」

ジェルミが躍起になって追い返すようにシヌを押す。


ハラハラと指揮しながら振り返ってオーケストラの方も見ないマ執事だったが・・

「いいんだよっ!!!!

   俺の誕生日なんだから!!!!」

唇を噛みしめながら力を込めて笑顔で睨んだシヌが、

   問答無用とばかりに、ジェルミを押しのけ、ミニョの隣に座った。


おお!!!

マ執事の顔が、輝き、

   ようやくオーケストラのリズムも整った。   (マ執事・・(笑))


「な?

  ミニョ?」

笑顔でミニョへと同意を求めたシヌ。


だが・・

「・・・・え・・はい・・。

   そうですね。」

ジェルミを押しのけてシヌが隣へと座ったというのに、

   まるで気付かない様子でさっきジェルミに微笑み返したのと同じように、シヌへと微笑むミニョ。


それはまさに、心ここにあらずで・・


「・・・・・・。」

シヌの表情が、一瞬だけ・・曇ってみせた・・。

~~

「変なことを言うやつがいて・・。

 それで、眠れなかったんだ。」

テギョンが、そう言った。


「変なこと・・・ですか?」

じっと見つめたミニョに・・


「だが・・

  こうして集中できるものがあってよかった。


 自分で自分の複雑な考えを整理しきれていなかったが・・

    お前のおかげで俺はしばらくそれを忘れられた。


  ・・・受け入れることにした。」

そう答えたテギョン・・。

~~

ー変なことって・・何を言われたのかしら・・。


 複雑な考え・・悩みがあるのなら・・

   私にも何か手伝えることがあればいいのに・・。


ミニョの目は、

   豪華に、広いテーブルを余すことなく色とりどりに置かれた料理へと向かった・・。


ーおなか・・すいてないのかな・・。


 ・・ほんとに・・眠ってしまっているのかしら・・。


ミニョの目がまた、扉へと移った・・。

  待っても待っても一向に開くことのない、その扉へと・・。

~~

「・・・・・・。」

ぼぅ・・と、今、扉だけを見つめるミニョの口元は、

   ワン箪笥によって塗られたグロスで、艶やかに光って見える・・。


ご・・くん・・。

思わず、その唇を目にして、

  シヌの隣・・席を奪われたジェルミの喉が、動いた・・。


ーぐ・・偶然当たってしまうことだって・・・あるだろ・・?


自分に言い聞かせるようにして、

    じっと・・ミニョの目を見つめたジェルミ・・。

ぱっと、目の前にあったワインを手にすると・・


ーそ・・そうだよ・・。

   俺だって王子なわけだし・・


 なんだよ!皆してシヌヒョンシヌヒョンて・・・

~~

「いいか?

   今日はなんとしてでも、ミニョさんにはシヌ王子と結ばれてもらわねばならん!!!」

さっきまで、家具たちに指示していたマ執事を思い出すと、

       大きな狼みたいな口を、さらに尖らせてぐっと閉じた。

~~

『諦めるのか?』

その時、ミナムの声が聞こえた。


今話している声じゃない。

   頭の中に響く、マ執事が忙しく家具へと指示している後ろ・・

     ぼそりと、ジェルミにだけ話しかけてきたときの、声が。


~~

「諦め・・?

  諦めもなにも・・」

ジェルミが言葉を濁した・・。


「あぁ。まぁ・・姫一人に対して、王子は三人もいるからなぁ・・。


テギョン王子・・はわからんが、

  お前が動かなくとも、

    少なくとも、誰かさんの計画通り、シヌ王子だけは、動くだろう。」


二人の目の前では、あれこれと計画を練りながらも、

    マ執事が家具たちへと細かな指示をだしている。


「あんなことやって、

    意味あんのかね。」

呆れたように、ミナムが笑った。


「?

  お前はシヌとミニョをくっつけようとしてるんじゃないのか?」

ジェルミの言葉に・・


「俺か?

  俺は別に・・。


 ミニョがこの城の王子と結ばれて、俺もここに住めたらそれでいいんだってば。」

ミナムが何の遠慮も躊躇もなく、さらりと答えると、

  さすがにジェルミも、ひくひくとその顔を引き攣らせた。


「ミニョって・・・

   ・・好きな人は・・その・・やっぱり・・」

ジェルミが声をおとして聞いた。


「俺は聞いてはないけど・・・」

ミナムがそう答えるなり、

「俺の目から見ると・・

   誰にでもチャンスはあるんじゃないのか?」

ぼそりと、ミナムがその口をジェルミの耳元へと寄せた。


まじまじと、目を見開いたジェルミ・・


「あいつはあぁ見えて、すごく純粋な奴だ。」

うんうん。

 ミナムの言葉に頷くジェルミ・・

「ずっと俺と二人きりで暮らしてきて、

   俺以外の男と接する機会も持たなかったせいか、

     人一倍・・そう言った話には疎い奴だとも思う。」

うんうん・・。

今度は、納得の意味も込めてジェルミが頷く。


「だから・・さ・・。

   何がきっかけで、あいつが好きになるか・・なんてわからないんじゃないかな・・。


たとえば・・」

ミナムの言葉に・・

「例えば・・?」

どきどきと、ジェルミの胸が騒いだ・・。


「例えば・・

   ひょんなことから、偶然唇と唇が衝突・・・

     事故でキス・・なんてことがあったとしても・・


 経験のない分、それがきっかけになることだって、

    十分にあると思うぞ。」

ぽん。

  そういうなり、ジェルミの大きな肩へと手を置いて、すべてを見透かした目で、笑ったミナム。          


っ!!!!!?????

ジェルミが両手で、自分の口を押えた。


「なななな・・・何言って・・・!!!???」

口ではそう答えたが・・・


「ま・・とにかく。

  お前が動かなくても、テギョンが動かなくても、

     シヌだけは動くってことさ・・。」


去っていくミナムを見ながら・・・
「・・・・・っ」

ジェルミが、思い切りこぶしを握りしめた。


~~

がばっ!!!!!

勢いよくジェルミの手が、ワインのボトルをつかんだ。


「・・・・・・?」

シヌが、ワインを手にするなり、

   さらに勢いよく立ち上がってミニョの方へと近づくジェルミを見た。


「・・・・・・?」

指揮をしながらジェルミ王子の方へと少しずつ少しずつ、後ずさりしながら近づいているマ執事も、

   ジェルミの様子に、ぱちぱちと目を瞬かせた。


それから・・

「・・・・・・っ」

今まで壁際に立ち、そっぽを向いていたヘイも、

   ジェルミがワインを手にしながら、引き攣った笑顔を作りつつ、そろりそろりとミニョに近づく様子に、

     きょとんと目を見開いた。


ーあいつ・・・。


ヘイがまさにそう・・頭で呟いたと同時に、



「あ・・・」

そう、わざとらしく(!?)呟いたジェルミの声がしたかと思うと・・

  ジェルミの身体が、ミニョの方へと傾いていった・・・。


「え・・・?」

きょとんとジェルミの方を見上げたミニョ・・。


その口元へと・・・

   ジェルミは落ちていく・・・        ((笑)どんだけスローモーション(笑))

「「「「「「「・・・・・・・っっ!!??????????」」」」」」」

その場にいたどの家具も凍り付いたようにジェルミに目を向けたまま・・

   大広間の音が・・消えた・・。


「・・っジェルミ!!!!」

シヌの腕が、スローモーションのようにミニョの方へと伸び・・たが間に合わず、

  ジェルミの身体は、

     ぷるりと光るミニョの唇へと向かって、落ちていく・・


ぎゅっ!!!!!!!!!!!!

避けることもできず、ミニョが衝撃を覚悟して、目を思い切り閉じた。


閉じた・・瞬間!!!!!   

「おいっ!!!!!!」

低い唸るような声と同時に・・

       ミニョの間近に迫っていたジェルミの影が、浮かび上がった。


わんっ!!!!!!

素早くミニョの方へと駆け寄ったジョリー。


その声に、

「っ!!!!!

  ・・・・・・・?


・・・ジョリー・・・?」

来るべきはずだった大きな衝撃が来ない代わりに、

  足元へと乗せられたジョリーの手を取り、そっと目を開けたミニョ。


そうして初めて、

  ミニョの目の前に、大きな大きな巨体が、浮かび上がっているのが、見えた。


!!!????

ぱちくりと目を見開いたミニョ。


ジェルミの首根っこは、誰かによって引っ張られていた。

  いや、むしろ高く持ち上げられていることで、思い切り、締め付けられていた。   (・・・ひ・・っ!!!)


「うぐっ!!!!!!」  

声にならない声を出したジェルミ・・


シヌも何が起こったのかと二人を見上げた。


「ごごごっ!!!ごめんってば!!ひょん!!!

   わざとじゃないんだってば!!!!!おっ・・下ろしてっ!!!


 しんでしまふ・・・っ!!!!」

叫んだジェルミに対し・・

「っは・・

  わざとじゃない・・?」

呆れたように笑った・・・


    テギョン・・。


!!!!!!

ミニョの目が、その姿を映すなり、

    もう一度、ぱちくりと瞬いた。


「っ!!!!!」

驚いたようで・・

   一気に輝きを取り戻したような・・ミニョ。


そんなミニョの表情を見つめたシヌ・・。

「わわわっ!!

   テギョン王子様!!!!!離してあげてください!!」

一瞬、状況は飲み込めなかったミニョだが、

   理解できるなり、慌てて立ち上がってどうにかしようと手を伸ばしたミニョ。


「おい。

  下ろしてやれ!」

そんなミニョを見ながら、シヌも  

   真横に立ったテギョンへと言った。


が、

「お前な。

   またコイツが・・・」


そう、テギョンが言いかけた時・・・


「っきゃ!!!!!!!」

いくら背伸びしても、ジャンプしても、届かないテギョンの高く伸ばした手に

   椅子の上に立ち上がったミニョ・・・


が・・・


ふらりと足元をぐらつかせて・・・


 ・・・・倒れてきた・・・


「うわっ!!!!!」

  「おいっ!!!!!!」


「っえェ!!?????」


一斉に・・

   見上げた瞬間・・・


っしん!!!!!!!!!!!!!


ミニョが三人の上に・・

    落ちてきた・・・。


「ててて・・っけほ!!

    っけほっ!!!」

  「・・たた・・」

ジェルミがようやく離された解放感と、衝撃で頭に手を置きながら起き上り、

   シヌもまた、その下から起き上ると・・


目の前には、

   呆然とした家具たちが、音もたてず、

     声も出さずに立ちすくんでいた・・。


ひゅ~♪

  ミナムだけが、どこから現れてきたのか、

   ほかの家具たちと同じ、呆然と立ち尽くしたヘイの横へと家具の合間から入ってくると、

    余裕の笑みと口笛を吹いておかしそうに笑った。


「・・・何を見て・・・」

ジェルミがそう・・

  振り返った時・・

   

!!!!!!???????

ジェルミが・・凍り付いた・・。


??

シヌもまた、その先へと目線を映すと・・・

「・・・・!!!!!!!!!!!!!」

隠しきれない衝撃に、

   目を、見開いた・・・。


「ミニョが・・

   ミニョが・・・」

思わずジェルミが、涙声になり、呟いた・・・。


「テ・・テギョンヒョンの上に・・・」


二人の目の先には・・・

  互いに気を失って倒れたまま・・・

     唇だけが重なった・・二人の姿があった・・・。


************************************

ずいぶん遅くなりました!!!!!!!!!!!


本気で、ごめんなさい(笑)


なんせ、あまりに久しぶりで、パスワード入れないと入れなくて、

  自分のID忘れたくらい(笑)


危ない危ない!!!!!


もう何を言っても信用できないのあですが、

  10月からは・・・以下省略・・・



(笑)



長く続く廊下の、ちょうど外からの木漏れ日が途切れた辺り・・

   影となった角に、大きな巨体を隠しながら、シヌが立っていた。


「・・・・・・。」

じっと、見つめたその目は、何か耐えるように、細められていた・・。


~~

ミニョが、少し肩をすくめながら、おずおずと・・

   くっついた両手を差し出していた。


その手を大きな毛むくじゃらの手で、包み込むテギョン・・。


「っち・・

  くそ・・。」

その口からは、きっとそばにいるのが家臣ならば、誰もがすくみ上るような

  唸り声を出していたが、


ミニョの手の震えた理由は、

  それとは少し、違ったようだった。


ちらりと、テギョンを見上げたミニョの目・・。


ぱっちりとしたまつ毛が上を向き、

  真っ黒な瞳の中に、大きな毛むくじゃらの野獣が映った。


その目には、

  ただミニョの手だけに集中する野獣がいる。


目をいらだたしげに細め、

   唸ったように低い声で呟き・・よくよく見れば、大きな爪さえ隠した手で、ミニョの手を包む。


だけど、ミニョはちっとも怖くなんて、なかった。


ミニョがこんなに肩をすくめ、震えた手をだし・・

  それから遠慮がちに、できるだけテギョンから離れて座ろうとするのは・・


その心臓が、壊れそうに暴れていたからだ。


胸が、どきどきする。

  ドキドキして、痛いほど。


それに、息だって、苦しかった。

  そばにいるテギョンを意識するだけで、

   息の仕方を忘れてしまったかのように・・。


大きすぎるテギョンの手は、思うように動かないのか、

   ぎこちなくミニョの手に触れ、くっついた部分を擦ってみせる。


が、それがどうにもぞわぞわとミニョの背筋を震わせ、

  ドキドキしすぎて、どうにかなりそうだった。


ミニョの目が、必死に意識して見せないよう、テギョンから離れようと泳いだ。


・・・・が・・


ちらり・・

 つい、その目は、何かに吸い寄せられるように、テギョンの元へと戻っていった。


「っち!!

  なんでこんなべったりと貼り付けたんだよ!自分の手を・・・」

だが、そんなミニョの気持ちなど、気づいてもいないのか、

  いらだたしげに呟くテギョンの目は、ミニョへと向くことはなかった。


「・・・すみません・・・」

しゅんと、ミニョが答える・・。


それでも、テギョンの目はミニョを映すことなく、

ひたすらミニョの手に行き、

   ミニョの手を離そうと躍起になっているようだった。


だから・・

 それに背中を押されたように、次第にミニョの目が、テギョンの顔だけに、向けられた・・。


じ・・・・。


ぼぉ・・と・・見つめたミニョ・・。


だが、すぐに・・

「ぷっ!!!

  くすくすくすくす!!!!!」

ミニョが噴出した。


「なんだよ!?」

一生懸命やってやってんのに・・

 目を細めてそう言いたげにテギョンがミニョを睨むと、

「だって・・

  あはは!すみません!!!く・・くすぐったくて!!!!」


ぴくりと、腹立たしげにミニョを見たテギョン・・


だがすぐに、

  まんざらでもない様子で口先を上げると、続けて、毛先でミニョの手を離そうとした。


「すみません・・

  問題ばかり起こして・・」

ミニョが、そんなテギョンの様子に慌ててくすぐったさを隠すと、

  今更ながらにしゅんとして、申し訳なさげにテギョンを見上げた。


「・・・・。」

そんなミニョを、口角を上げ、笑って見せたテギョン。


ドキンッ!!!!!

また、ミニョの心臓が跳ねた。


「昨日・・」

ぼそりと呟いたテギョンの言葉に、


「はい・・

  昨日・・?」

両手を差し出しているミニョは、

    ドキドキした胸を隠せず、その目を泳がせながら、聞き返した。


「変なことを言うやつがいて・・。

 それで、眠れなかったんだ。」


きょとんと、ミニョがテギョンを見た。


「変なこと・・・ですか?」


脳裏に、帰ってこなかったテギョンの姿と、 

  テギョンの部屋で、最後に、人に囲まれたミニョから離れ、自分を見なかったテギョンの姿が、浮かんだ。


よくはわからないけど、

   ミニョの知らない何かでずっと、テギョンに影があることは、感じていた。


ずっと・・。

じっと見つめるミニョに、

「だが・・

  こうして集中できるものがあってよかった。


 自分で自分の複雑な考えを整理しきれていなかったが・・

    お前のおかげで俺はしばらくそれを忘れられた。


  ・・・受け入れることにした。」

テギョンが、

  ミニョの手をはがそうとしながら、そう言った。


「変なことって・・?

   受け入れられたってことは・・

  

  よかったんですね??」

聞いたミニョに、

  表情は読めぬまま、あいまいに頷いたテギョン。


「よかった!

  じゃぁ・・くっつけたのも悪くはなかったですね?」

笑ったミニョ。

「調子に乗るな!」

テギョンがその額をこずいた瞬間・・・


ぱた!

  ミニョは、倒れかけた自分の体を、自分の離れた両手で、支えた。


「あっ!!!」

驚いて見上げたミニョ。


にんまりと自信ありげに笑ったテギョンが、立ち上がった。


「ふん。

  俺様にできないことはないんだ。


 お前はこれから支度があるんだろ?

  シヌの奴が迎えに来る。さっさと行け。

 ふぁぁ・・眠い。」

そういってあくびをしながら、テギョンが笑って去っていく・・。


「眠いって・・今からパーティが・・・


 あの・・!!!」

今度は、追いかけようとしたミニョだったが・・・


『シヌの奴が迎えに来る。さっさと行け。』

その言葉が、

  ミニョを動けなくしてしまった・・。


~~

「っくそ!」

顔を歪めながら口を尖らせ、

   言いようのない感覚を感じた自身の手を振り払いながら、テギョンがミニョから離れる。


すっと・・

  陰に隠れて見ていたシヌ・・


テギョンが去った後、

 何かを言いたげな口を今、離れたばかりの手で塞いでいるミニョをじっと見つめた。

~~

「なんなんだ?

  ったく・・ぴりぴりする・・」

テギョンが、自分の手を振ってみた。


ミニョの手に触れる瞬間、

  指先がなんともじれったく、震えたのだ・・。


ミニョも、恐ろしいのか、その手を、肩を、

  細かに震わせる姿を、見た。感じた・・。     (ほんとはそういう意味じゃないのに~)


だから、なるべくそれを見ないよう目を伏せ、

  あの、口元を見ないよう努力した。


心臓も、やはり動いている。

どくん・・

  どくんと脈打って・・


テギョンの目が細められ、

  さっき、まったく警戒のない顔で、近づいてきたミニョの顔を思い出した。


ど・・くっ!!!!!


その心臓の跳ねた瞬間・・

  また、テギョンの胸に痛みが走り、息が苦しくなった・・。


~~

『いつからだ・・・?

  

  いつからそんなに弱ってる?』

まっすぐにテギョンを見て聞いたミナム・・。


『お前・・・

   ミニョが好きだろ・・』

ミナムの言葉に・・

どっくん!!!!

  心臓が激しく打ち、また、息の出来ぬほどの鈍痛が走った。


バラの光は相変わらずやさしく、

   丸くそのあたりだけを、照らしている・・。


そんなテギョンに、駆け寄ったミナム・・。


「もう、気づいてるんだろ?

  いや、気づいてないなんて嘘だ。


 無意識だとしても、

    お前の目はミニョを追い、

   

   お前はアイツを、その手の内に置きたがってた。

 

 お前が認めなくたって、

    この俺にばれないはずがない。」

ミナムが、言った。


「・・・・・・。」

うずくまるように大きな体を丸め、

  黙るテギョン・・。


「シヌの誕生パーティで・・

   知ってんだろ?城中が、あいつらをくっつけようと作戦立ててるぞ?」

テギョンの横にしゃがみ込んで、

   その耳元に聞こえるように言ったミナム。


「ま・・俺はどっちでも、誰でも・・

   ミニョがこの城の王子と結婚して(自分が)幸せになれれば・・


 それでいいんだけどさ。」

ミナムがちらりと目をテギョンにやりながら、言う。


「・・・俺には関係のない話だ。」

胸が、痛い。

  痛くて、苦しいのだ。


テギョンのつぶやきを聞いて、

  はぁ・・。息を吐くと肩をすくめたミナム。


「弱ってる・・原因は何だ?


何かの病気か?


お前が・・王位継承権を捨てたこと?

 それか・・

   魔法の解けるリミットが、近づいたからか?


それとも、

 初めて好きになって、心臓が動き出したことか?」


・・・ぽう・・と、

   柔らかく、どこか弱弱しい光のバラを見ながらミナムが重ねて聞いたが、

「知らん。」

痛む心臓に目を閉じながら、テギョンが答えた。


はぁ・・。

また、じれったくイライラした様子のミナムが、

  がしがしとその頭を掻くと、じっとテギョンを見て、言った。

「一つだけ・・教えておいてやる。

 魔法が解けるのは、『愛しあう二人』だ。


姫は一人だが、王子は三人・・。


お前が動こうが動くまいが、

   シヌは動く。            (・・・おそらくジェルミも・・なんだけど・・長くなるから省く??)


確かにいけ好かないお前が・・

   動かぬまま弱っていくところなど見たくもないが


そんなことにでもなってみろ。

ミニョ・・は

   嘆き悲しむことだろうな。」

ちらりとテギョンを見ながら言うミナムが、

  言うだけ言うと、去って行った・・。


真っ暗な部屋の中で、

   一人いつまでも、バラの光に包まれ座っていたテギョン・・。


その表情は、何か考えているようだった。              (これが19の夜)

~~

は・・

  は・・

部屋へと戻るなり、

  倒れこむように床にしゃがみ込んだテギョン。

テギョンの息は荒く、まだ、心臓を押さえていた。


くぅ・・・

その時、ジョリーがどこからか、走ってテギョンの元へとやってきた。


はっはっはっは・・

たたた・・。

冷たい床を爪で鳴らしながら、テギョンのそばに寄るジョリー。


「・・・・・。」

テギョンがそっと、その頭に手を置くと、

    ジョリーが、その鼻先でテギョンのポケットを嗅いだ。

「なんだ?」

テギョンが弱弱しい声で、ジョリーへと聞いた。


『ミニョ・・は

   嘆き悲しむことだろうな。』

そんな言葉を思い浮かべながら・・

  あの日、テギョンの肩で泣いたミニョを思い出した。


慌てて頭を振ったテギョン。

「すべてはアイツがうまくやるだろう・・。

 

それからお前。

  頼むぞ。」

きょとんと潤んだ目をテギョンに向けたジョリーへと言ったテギョン・・。


そんな様子を、何をしているのか、きょとんと見ながら、ずかずかとまた、

   部屋へと入ってきたミナム。

「何を頼むんだ?

   そいつに・・」

急にあらわれたミナムに向かい、


「またお前っ!!!!!」

叫んだテギョン。

   

「もうすぐ時間になる。


 お前のことだから理由つけて逃げるんじゃないかと思ってな。

 ジョリー、しっかりそいつを見張っとけ。

  パーティの時間になったら、必ずそいつも連れてくるんだぞ?」

なにやらテギョンに訴えるように鼻先で押すジョリーに、ミナムがそう言うと、

わんっ!!!!

 ジョリーが吠えた。


テギョンが目を伏せるようにして、ミナムから目を逸らすと、

「ちょうど・・

   もうすぐシヌがミニョを誘うくらいか・・」

笑ったミナムが付け加えた。


「行かん。

  俺は寝る。」

ようやく、唸り声を上げたテギョンに、にやりと笑うと・・

「王子が王子の誕生日を祝わずに寝る?

  そんなことはありえないだろ?


あぁ!

  もしかしてあれか?

俺が昨日・・あんなことを言ったから・・

  

それで眠れなかったとか・・」

からかうように笑いを堪えて一人喋るミナムに、

  うつむいていたテギョンの目が、ぴくりと引きつった・・。


「そうか・・いや、それは悪かったな・・。


 さぞかし俺の妹の着飾った姿はかわいいだろうし、

   やさしい『王子様』との愛で魔法の解ける瞬間を見るのは、

この先何千年に一度あるかないかの見ものだ!!!」

テギョンが睨み上げたが、

  そんなことでひるむわけのないミナム。


「だが・・少し酷だったな。

  ミニョが好きなお前にそんな場面を見せるのは・・」

表情を変え、真剣なものに変えると、

   ミナムが呟いた。


ぴくぴく・・・

 テギョンが大きな牙のある口をしばり、じっと耐えるように目を閉じる・・。 (いつかミナム食い殺されそう・・)


「ジョリー!忘れろ!

  そいつは行かないから。そいつを連れてくる必要はない」

それだけジョリーにいうと、

   わざとらしく笑ったミナム。


今度もまた、言うだけいうと、部屋から出て行ってしまった・・。

ーパタン・・。


ジョリーがテギョンを見上げた。


くぅ・・

それから、ジョリーの目は、テギョンのポケットへと向かった。

~~

大広間は、すっかり出来上がっていた。


床を覆う大理石は、ぴっかぴかに磨かれ、

   上に立つ人々の姿を映す・・。


見上げた時、まるでくらりとめまいすら起こしそうなほど高い天井にあるシャンデリアも、

   きらきらと、一面が窓に囲まれた壁から漏れる光に反射し、その一粒一粒が、輝いて見えた。


「もうそろそろ・・ですね。」

マ執事がちょこまかちょこまか、緊張を隠せないよう正装姿のジェルミにいうと、

「・・・うん。」

どこか、緊張した顔のジェルミが、うなずいた。


「皆!頼んだぞ!!

  最大限に盛り上げるんだ!!」

マ執事の言葉に、

  決められた定位置につく家具たち・・。     (何を決めたんだ・・)


遠目で、一人あきれたように、ヘイが見ていた。

~~

「さぁ♪できたわよ!!!

   ん~~!!完璧!!!!」

ワン箪笥が満足そうに言った。


最後に頬に、ほんわかと桃色の粉を振りかけたワン箪笥。


床まで滑らかに伝うゆったりとしたラインの、ドレス、

  細い幾重にも重ねられたリボンで締められた腰元・・


きれいな白い肌が見える背中に・・

   くるりとうねって下ろされた、髪。


「もうすぐ王子様が迎えに来られるわ!!

  さぁさ!!支度して!!」

化粧を終えるなり、急かすように扉の前へとミニョを追いやったワン箪笥・・。


王子様・・

その言葉に、

   ミニョの胸が、どきっどきっどきっ!!!忙しく弾んだ。


ぎゅ。

ミニョの手が、きつく握りしめられた。


その手から少しはみ出している・・

   朝・・くっつけた髪留め・・


バレッタ部分がないので、髪にはつけられなかったのだ・・。


ーだめよ・・。

   シヌ王子様と結婚することが・・私にできる唯一のことだから・・。

心でそう呟きながらも、

ぎゅ。

 その手を握りしめた・・


廊下で聞いたあの日以来覚悟したのに・・

シヌ王子は誰よりも優しくて、

   頼れて、大好きだ。

だから、なにも問題なんて、ない。


そう言い聞かせても・・

  今朝も触れた手が熱くて・・

近くに来る黒い野獣の顔が、

   どきどきして・・

まだ手に残る・・その感覚が忘れられなかった・・・。


コンコンコン・・

扉が叩かれた・・。


「来たわ~~~♪」

大喜びでどすどすと駆けつけたワン箪笥・・。


どきっどきっどきっ!!!!!

ミニョの心臓が、変な期待を表すかのように、鳴る・・。


ぎ・・

扉が開かれた先には・・・


にっこりと笑った・・

  栗色の毛に覆われた、白い正装姿の・・シヌがいた・・。


ふ・・

ミニョの表情が一瞬、寂しく変わった・・。


すかさず、そんな表情に目を向けたシヌ・・

だが、気づかぬふりをすると、

「では、まいりましょうか。」

まるで、おとぎ話の王子様のように、

   やさしく笑って、その手を差し出した・・・。


黒い毛に覆われた大きな手と同じ・・

  茶色い手・・


ミニョの手が・・戸惑うようにその手を取ろうと・・動いた・・。


*******************************************

長いっ!!!!!!


そして、ほんとにお久しぶりです!!!!!!

ネットがつながって以来も、まだ毎日あちこち用事をすませると、

 気づけば夜もばたんきゅー・・・な感じで・・


とてもとても、遅くなりました。


で、お話も長くなりました。

ほんとはもうちょっと先までアップ予定だったのに・・また失敗。


読者様・・ほんとにほんとに、ごめんなさい!!!!!!!!!!


で、パーティかじりかよ!!!みたいな(笑)

   

月の光が、

  すやすやと寝息を立てるミニョの頬を、やさしく暗闇に映し出した・・。


じっと・・そんなミニョを、目を細め、見つめていたテギョン・・。     (後・16)


つい昨日まで、辛そうに歪んでいたミニョの顔は、

   もう、どうみても、病人のそれというには、無理があった。



長い睫毛で閉ざされた瞳・・


 月の光に照らされた、何の凹凸のない膨らんだ頬・・

   それに、気持ちよさそうに優しく微笑むように弧を描いた唇・・。


「魔法が解けるために、

       結婚できるのか?

窮屈な王宮で、

   幸せになれるのか・・?


・・・どっかのふざけたお伽話みたいに・・・?」

そう・・ミニョを起こさないほど小さな声で囁いたテギョン・・。


それでも、少しだけ開いた唇からは、変わりない息が音を立て、

    普段、丸い目を覆った長い睫は、閉じられたままだ・・。


ーどくん・・・


テギョンの心臓が動いた・・。


その鼓動とともに、

  テギョンの大きな手も、動いた・・。


ゆっくりと・・

   その頬に向かって・・。



ふっくらとしたその頬に触れてみたくて・・

  手を伸ばそうとしたのだが・・

     大きな毛むくじゃらの恐ろしい手が目に映ると、

   すぐにテギョンは目を逸らし、触れることなくその手をひっこめた・・。


~~

ぽぅ・・・


薔薇の花びらの色が・・

   変わっていく・・・


光が・・鮮やかに変わっていく・・


~~

『今はもう・・熱も下がったんだろ?

 ・・・ほんとかな?

   どれ・・・?』

そう言いながら、

   戸惑うこともなく、ミニョの額に額を当てたシヌを思い出したテギョン。


気づいているのだ本当は・・。

   アイツがこいつに馴れ馴れしく触れるのが気に食わない。

 それに何より、

   そんなシヌへと向かったミニョの目が・・


へらへらと笑って触らせるその態度が・・

       すべて気に食わないことを・・。


「・・・・・・。」

そんなことを考えると、何も知らずに眠る目の前の女が、

   なぜか憎たらしくさえ、思えた。


・・そう思うなり、

  テギョンの目が細められた・・。

~~

ほぅ・・・

続けて、ピンクの光は一瞬、大きくやわらかな光を発した。

~~

ー口づけさえすれば・・

    元の姿に戻るのだろうか・・


さっき頭に浮かんだ・・ミニョの額に額を当てたシヌの姿・・


その姿が・・

   眠ったミニョを見つめるテギョンの頭で・・・どんどんミニョの口許へと近づく・・


ぐ。

言い表せぬ鈍痛が胸の奥に走り・・


「・・・・・。」

じっと、閉じた目を見たテギョン・・。


ゆっくりと・・・

  月明かりに照らされた、大きな巨体が・・

    横たわった、まぁるい山へと傾いていった・・。


「・・・・・・・・。」


暗い暗い部屋・・・


月明かりの僅かな光が、

    その、大きな巨体と、横たわった山の影が、繋がったのを、ぼんやりと映し出した・・。

~~

ゆっくりと・・

   テギョンの口先が、ミニョの唇へと向かった・・。


ど・・くんっ・・

  どっくんどっくん・・・!!!


胸に響く痛みは、どんどんと大きくなる・・。


少しずつ・・

   少しずつ・・・


胸の鼓動の大きさとともに、

  近づいていくテギョンの長い口先・・・


~~

バラの光が柔らかく大きく放たれる・・。

   あと2枚の・・バラの花びら・・・。


大きく光が放たれた後は・・

   わずかに・・バラの花びらの色が、濃いピンクへと変わった・・。

~~

だが・・

 あと一歩という時・・

~~

『あの・・

  シヌさんが、私にその日、頼みたいことがあると・・


 だから・・・』

言い辛そうに目を上げた、ミニョが見え・・

~~

『そっ!・・

  そもそも・・っ!!

 ミニョが好きなやつだって・・・』

ミナムの言葉に

『シヌ王子だろ?

 それに・・テギョン王子はもしかしたら・・国王になることを負担に思っていたのかもしれないし・・。』

そう、マ執事が言った場面を、思い出した・・。


~~

「っ・・・!!!!!」

もう鼻先がミニョの鼻先へと触れる・・

   そこまで来たとき・・


びくっと、体を固めると、

     とたんに止まった、テギョン・・・。

~~

脳裏に、紅いマントを背負った、

   小さな男の子が、見えた。


父王の背中が見え、

   母の背中も、見えた・・・。


自分に頭を下げる家臣たちの頭の先が見え・・・


ずっと先に、

   楽しそうに笑う、二人の男の子の、姿が見えた・・。

~~

「・・・・・・。」


ミニョの息の暖かさすら感じるほどの距離から・・・

      ゆっくりと顔を上げ、暗闇から月の光の漏れる先まで顔を上げたテギョン・・・。

   顔には毛が生え、口元はオオカミのように長く伸びている・・。


その目は静かに・・

    眠ったままのミニョを、じっと見ていた・・。


~~

『両想いになれたら・・

    次は結婚式!!!!   

だからっ!ですね!!!


今度のシヌ王子の誕生日パーティで、なんとしてもあの二人が結ばれるために

   私たちも協力しなければなりません!!!

そしたら・・・

   私たちは人間に戻れるのですっ!!!!!』


テギョンがゆっくりと、眠るミニョから離れるように後ろに下がった・・。

 

一歩・・

  一歩・・・


ー今・・

   俺は何をしようとした・・・?


頭を振った。


訳が分からなくなった・・。

ー口づけさえすれば・・

    元の姿に戻るのだろうか・・

さっき・・自身の考えた言葉が浮かぶなり・・・


っば!!!!!

  慌てて自身の口元を押さえたテギョン・・。


ー何を・・・?

   俺は今・・・


テギョンの真っ黒な毛に覆われた中で、

   きょろりと見開かれた眼だけが、月の光の中、動揺を隠しきれないかのように、あちこち動いた・・。


触れてはいない・・

   いないが・・・


あと少しで・・

   眠っているミニョの唇に、重なるところだった口先を自身の毛むくじゃらの大きな手で覆うと・・


っば!!!!!

  テギョンは、慌てて、その部屋から駆け出した。

~~

っはぁ・・

   っはぁ・・・


肩を揺らすテギョンは、

   真っ暗な、あの肖像画のある一室にいた・・。


窓からは、テギョンの部屋の窓から見えるよりも遥か遠くにも関わらず、

     闇に光る月が見える・・。


っぐ・・・。


痛む胸に、手を置いた・・。


痛い・・。

  胸が、痛むのだ・・・。


ミニョの涙を見ると・・

   ミニョの朗らかに笑う、その顔を見ると・・


閉じられた目を見ると・・


ミニョを・・見る度・・

   ミニョのことを考える度・・数十年・・止まってきたかのような心臓が動くたび・・


胸が痛む・・・。


テギョンの周りには、

   人間の姿をした、幼い少年たちの肖像画があった・・。


青年の姿の、肖像画があった・・。


が、

  今の野獣と同じ黒髪を持つ肖像画はどれも・・

    決して幸福そうには、見えなかった・・。


ーあいつらに任せておけばよかったんじゃなかったのか・・。


自分自身に、

  問いかけてみた・・。


痛む胸に、

   闇の中、視界がさらにぼやける・・・。


ー俺はただ・・

   かかわりを持たずにいればいいと思っていたんじゃなかったのか・・。


胸の痛みが、

   さらにテギョンの感じたことのない、わけのわからぬ整頓されていない頭を、かき乱した・・。


重かった肩にのしかかっていたマントは、

   今、テギョンの肩になかった・・。


胸が痛む。

  苦しい。


こんな苦しみを感じるくらいなら・・

  いっそ、ミニョが誰を愛そうが、関係ないではないか。


今までみたいに・・

  

そう・・

 今までのように、誰にも心を許すことなく、

    誰の期待も感じないように・・

誰の心も信じることなく、

    誰からの愛も、求めないように・・


誰からも・・

    本当の自分を知られないように・・


自分の世界を、守ればいいだけの話ではないか・・。


テギョンは、ぎりりと、唇を噛んだ・・。


今はマントがない。


『シヌ王子だろ?

それに・・テギョン王子はもしかしたら・・国王になることを負担に思っていたのかもしれないし・・。』

ーマ執事の言葉を認めるのは癪だが・・

    その通りだ・・。

 

『その日はいきなり初夜だ!!!!!
キスで戻ったっていい!!

   結ばれて戻ってもいい!!!


へたしたら、城の魔法が解かれ、

    思い出されたとたんに、将来の国王が宿っているかもしれないんだぞ!!!!


これぞ一石二鳥ってやつじゃないのか?!

  いや、三鳥か・・?』   

一石二鳥か三鳥かはどうでもいいが・・


-今、元に戻ったとして・・

   あの重い王位継承権を握っているのは・・ミニョが選ぶ人物ではないか・・。


ずぐん。

胸が、痛んだ・・。


ーなのに・・

   どうしてこんなにも胸が痛むのか・・・。


先ほど触れかけた、唇を思い出したテギョン・・。


ぎりりと・・

  テギョンがまた、その唇を噛みしめた・・。          (ここまでが後編16話の夜)

~~

それなのに・・・


「えっ!!?????」

・・・暗い部屋で一人・・外を見ていたテギョンの耳にミニョの声が聞こえた瞬間・・・  (後編17話)


テギョンは駆け出していた・・。


ミニョが部屋を出る時ですら、最大限、

  その目を見ないよう・・


その身を近づけぬよう・・

   心がけたというのに・・・


ミニョの響く声を聞いた瞬間・・

 

考えるよりも先に、

   テギョンの巨体は、誰よりも早く、駆け抜けていた。


~~

「ここからは俺が行く。」

はっきりと、そう言ったシヌ。


「は?」

鋭い目で振り向いたテギョンに向かって、


「熱の時はお前に任せた・・。


だが・・

   今度は俺が行く。」

シヌがはっきりと、言った。


「・・・・・・・。」

何か言おうとした口をぎゅっと縛り、

    黙り込んだテギョン・・。


「魔女のいう通り・・

   『好き』という感情を初めて知って、

      『好き』になった。」

シヌの目がテギョンの方から、ミニョへと移ると、

    そう、口に出したシヌ・・。


「・・・・・・。」

まだ、黙っているテギョンに・・


「彼女を守りたいんだ。

   支えていきたい。」

シヌが、言った。


「・・・・・・・・。」

ぎりりと口を噛みしめると、

    拳を握ったまま、黙り込んだテギョン・・。


『いっそ・・結婚式を挙げてしまうのはどうだ??

誕生日パーティで王子にプロポーズさせて、

   そのまま結婚させたらいいんだよ!!!!!』

あの日、廊下で聞いたマ執事の言葉が耳に響いた・・。


「・・・・・・。」

黙ったまま止まったテギョン・・。


・・す・・・


その横を・・

   シヌがミニョのもとへと、進んだ・・。


「・・・・・・。」

ミニョの元へと歩いたシヌを見たテギョン・・。


『その日はいきなり初夜だ!!!!!
キスで戻ったっていい!!

   結ばれて戻ってもいい!!!


へたしたら、城の魔法が解かれ、

    思い出されたとたんに、将来の国王が宿っているかもしれないんだぞ!!!!


これぞ一石二鳥ってやつじゃないのか?!

  いや、三鳥か・・?』

マ執事言葉が、

   テギョンの耳につく・・。


『そっ!・・

  そもそも・・っ!!

 ミニョが好きなやつだって・・・』

『シヌ王子だろ?

それに・・テギョン王子はもしかしたら・・国王になることを負担に思っていたのかもしれないし・・。』

あの時の会話が、

    次々とテギョンの頭に繰り返された・・。


「・・・・・。」

テギョンの目に、

   シヌがミニョのもとへと近づくのが見えた・・。


ー胸が、焼け付くように痛む。

  気分が、悪い・・。


テギョンが手をぐっと、握りしめた・・。

~~

皆が去った後・・

    テギョンの足元に落ちた、壊れた髪留めを見つめたテギョン・・。


それを手にすると、テギョンはそれを、噴水へと、放り投げた・・・。


光を反射させながら噴水に入った髪留め・・

  だがすぐにその光は・・真っ暗な水の中、沈んで消えてしまった・・。


「・・・・・・。」

胸が、痛い・・。

   痛くて・・苦しい・・。

~~

テギョンは、バラの花の光の下・・

  肩を揺らして、巨体の背を丸くして、蹲っていた・・・。


ぜぇ・・

   ぜぇ・・・


そこに・・

  ひた・・・

    ひた・・・


ゆっくりと近づく・・足音・・・。


っば!!!!!!

敏感だったはずのテギョンが、

   その背に全く感じなかった気配を感じて振り向くと・・・


そこには・・・

  小首を傾げたまま、黙って真面目な顔でテギョンを見下ろした・・

    ミナムがいた・・・。


「ぐるるるるっ!!!!!」

苦しみを見せぬよう、恐ろしく低く響く声で唸ったテギョン・・


だが・・・

 そんな声など、ちっとも怖くはないとでも言うように頭を振ったミナムが、

   テギョンと同じ目線になるようにしゃがみこんだ。


「・・・・・何の用だ・・」

低い唸り声とともに、そう聞いたテギョン・・。


「お前・・」

ミナムが、その目を細め、

  テギョンのすべてを見透かしたようなその眼をゆっくりと近づけると・・

「いつからだ・・・?」

真剣な様子で、テギョンに聞いた・・。


「ぜ・・・

   はぁ・・・は・・・

  ?」

肩を揺らしながら、そんなミナムを睨んだテギョン・・・。


「いつからそんなに弱ってる?」

ミナムが、聞いた。


「は?」

その言葉に、目を上げたテギョン・・・

「弱ってる・・だと・・・?

   この俺がか・・・??」

そう、聞き返したテギョン・・。


「・・・・・・。」

じっとそんなテギョンを見ていたミナムが、

    さらにじっと、テギョンの目を見つめた・・。


「・・・・・・・。」

そんなミナムの目を負けじと、睨み上げるテギョン・・。


「お前・・・」

そんなテギョンに、

   ミナムがまたも、口を開いた・・。


「ミニョが好きだろ・・」

~~

ぽた・・・

  ぽたぽた・・・。


ミニョの細い指先から、いくつもの水滴が零れ落ちた・・。


「・・・・・・。」

唇を噛みしめて、濡れた手の上に包まれた、

    壊れた髪留めを見つめたミニョ・・・。


ーどうしても・・

    足りない・・・。


髪留めは、ちょうど髪に留めるバレッタの部分がなかった・・。


ぽた・・

  ぽた・・・


しずくは、ミニョの腕、

   ドレスからも、滴り落ちていた・・・。


「・・・どうしよう・・・。」

今にも泣きだしそうな、ミニョの目・・


だが・・

「きゅぅ・・・」

頭の上からその声が聞こえるなり・・

   ミニョが弱弱しげに、笑って見せた・・。


ミニョに同調するように、

   目尻を下げた目を向けたジョリー・・


そんなジョリーの上には、暗かった空に昇り始めた、朝日が見えた・・。


「分かってるわ・・。

   今日はシヌ王子様の誕生日だもの・・。


 こんな恰好でお祝いなんて・・できないわよね・・・。」

ざば・・

  そういうなり、水分を含んで重くなったドレスの裾を持ち上げ、

    噴水から出たミニョ・・。


顔も、

  腕もドレスも・・

    全てが濡れ、どろどろに汚れてしまっていた・・。


「きゅぅ・・・」

ジョリーを心配させないように笑ったミニョの顔は、

   さらに、ジョリーの顔を悲しそうにゆがめた・・。


「もう!  

  大丈夫だったら!!」

ジョリーの頭を撫で、

  笑ったミニョ・・。


ぽん・・

  さっき・・同じように頭に触れたテギョンを、ジョリーは思い出した・・。


「きゅぅぅ~~・・・」

ドレスを絞りながらも、

   肩を落として城へと戻っていくミニョ・・。


そんなミニョの後ろ姿を、

   ジョリーはじっと、見つめた後、慌ててついて中へと入っていった。

~~

「じゃぁ・・

   始めるわよ!!!」

綺麗に身支度を整えたミニョ・・・

   ドレスから出た腕を

     むんっ!!と、まくるように振り上げると、

ジョリーと共に、

    城の一角で、大理石の床の上にしゃがみこむと、何やら始めた・・。


「これが・・ここでしょ・・・?」

ぼそぼそと、

   真剣に見つめるジョリーに話しかけるように、二人でぼそぼそとやり始めたミニョ・・。


ふぁぁ・・。

 そこへ、眠そうに腕を上げたミナムが、可笑しなものでも見るようにして、

   そんな二人を覗き込んだ・・。


「朝っぱらからこのお兄様を叩き起こしておいて、

    いったい何やってんだよ?」

しゃがみ込んで今朝、兄から借りたものを手に、

   真剣に手に持った物を見つめたミニョへと聞いたミナム・・。


「・・・・・。」

ミニョは熱心に手元を見るだけで、何も答えない。

   ジョリーもまた、ミナムの存在を無視するかのようにミニョの手元を見つめる・・。


「・・・・・・。」

じとり・・と・・

  そんな妹を見たが・・・


ちらりと昨日のテギョンの様子を思い出すなり、

   はぁぁ・・・頭の後ろを掻きながら、ミニョから離れていった・・。


「何やってんだ?」

次に、別の声が聞こえたが・・・

   まだ、ミニョは眉間にしわをよせ、熱心に手元を見るだけで、その声は聞こえていないようだった。


「・・・・・・・。」

頭の上の声が止まるなり、

   ジョリーがその声の主・・ミニョの頭の上にある顔を、見た・・。


「っわん!!!!!!」

途端に、大きな声を出したジョリー・・。


「っ!!!????」

ぱちくりとミニョが目を見開いた瞬間・・・


「っきゃ!!!!!!!!???????」

ミニョの手が、とろりとした透明の液体で、くっついた・・・。


「っわん!!!!!!!」

もう一度吠えたジョリーに、

   目を見開いたテギョンもまた、

「何やってんだ!!???」

くっついたミニョの手を、見た・・。


「っ!!!??????」

慌てて、手がくっついた拍子に落とした繋ぎ合せた髪飾りを、

    ドレスの裾の下へと隠すように足を動かしたミニョ・・・。


「あ・・とっ!!!

   え・・・っと・・・その・・・


手が・・・

   くっついちゃって・・・。」

慌てて、

   状況をしどろもどろに説明したミニョ・・。


「そんなもの!!  

   見りゃ分かる!!!」

テギョンが怒鳴った時・・

~~

「あ・・・・。」

ミニョから去ったミナムが、

   ぽつりと思い出したように、その足を止めた・・。


「おぅいミニョ・・

   その液体・・くっつくのが強烈だから覚悟しな・・・


・・・・て・・・・」

廊下の角から叫んだミナムだが・・・

  その目に、しゃがみこんだミニョの隣で、

    同じようにしゃがみ込んだテギョンの巨体があるのを見るなり・・・


「・・・・・遅かったようだ・・・」

にやりと、

  その口角を上げた。

~~

「俺が聞いてんのは、

   どうしてこんなことになったのかってことだ!!!」

テギョンが聞いたが・・・

  くっついた指先をじれったそうに動かすだけで・・

   動揺したミニョの目は、宙を泳ぐ・・。


「ったく!!!!」

忌々しげにそう呟くと、

   テギョンの大きな手が、くっついたミニョの両手に、向かった・・。

「あ・・・。

  そんなテギョン王子様こそ・・

    こんな朝早くにこのような場所に・・どうしたんです???」

疑うように目を上げたミニョ・・。


確かにそこは、噴水が見え、

   庭や大広間も見える場所だが、噴水か、庭に用がなければ通らない場所だった。


唇をくいっと上げて、

   不思議そうに首を傾けたミニョ・・。


どっくん!!!!!!!!!

またも、テギョンの心臓が大きく鳴った。


その唇が、

   いやに艶やかに見え、つい・・その唇に口を寄せかけた自身を思い出してしまったからだ・・。


ご・・ごほっ!!!!!

慌ててむせ返るように咳をして、

「朝が早かったから散歩してきただけだ・・。」

そう・・ごまかしたテギョン・・。


まさか自分がミニョにやった髪留めを、噴水に放り投げ、

      今更それを見にやってきたなどと、口が裂けても言えるわけがなかった・・。


それどころか、ふとそのことを思い出すと、

  何も知らずにこんなところで呑気に両手をくっつけるミニョが、憎々しくさえ、思えた。


「っふん!!!

  そんなにもシヌとのパーティが楽しみなのか!!!庶民め!!!!」

いきなり呆れたようにそう吐き捨てると、

   勢いよく、くっついたミニョの手を掴んだテギョン・・。


「そ・・そんな!!!  

   違います!!!!」

ミニョが情けなく眉を下げて言ったが、

   じろりと睨まれるだけで、テギョンはミニョのくっついた両手を、自身の両手で包み込んだ。


「この透明の液は何だ?」

疑わしげにテギョンが言うと、

「お兄ちゃんに借りた、『接着剤』とかいうものです。」

ミニョがまだ、眉を下げながら唇を尖らせて答えた。

「『接着剤』?

  いったいこんなとこで、何をくっつけようとしたんだ?」

ミニョの手だけを見ながらなんとか離そうとやっきになるテギョンを見つめつつ・・

「・・・・・・。」

答えないミニョ・・・。


ずず・・

  ほんの少し、ずらした足の下には、

    テギョンからもらった、壊れたままの髪留めがあった・・。


「っふん。

  まぁいい。


 っくそ!!

 取れないな・・。」

そう言ってミニョの手に、

   自身の手を添わせるテギョン・・・。


どきん・・

  どきん・・・


ミニョの目が、

  じっとそんなテギョンを追った・・。


どきん・・・

   どきん・・・


~~

「ミ・・・!!」

廊下の先から、ミニョを見つけ、

   笑って声をかけようとしたシヌ・・・が・・その言葉を止めた・・。

~~

「だって・・」

ぼそぼそと、不満げにテギョンに言うミニョと・・

「ったく・・!!!」

面白くもなさげに、

   そんなしゃがんだミニョと向かい合ってしゃがむ、テギョンの姿・・・。

~~

「・・・・・・・。」

じっと・・シヌがそんな二人の様子を見つめていた・・。


*************************************

次こそは、

  パーティ始まるからね!!!!これほんと!!!!!!!(><;)(笑)

   


「まぁ~!!

   シヌ王子様なら安心ですよ!!!

三人の中では一番紳士で穏やかな方ですし・・・」

マ室長が、表情を整えると、

  必死で取り繕うように、両手をわたわたさせて話し始めた。


っ?

俯いて両頬を押さえていたミニョの顔が、

   ぱっと上がった。

   

「その反面、

   いつも誰よりも冷静な目をお持ちな方なので、

 あの方がまさか恋という気持ちなど、持つとは思ってもなかったですが・・・」


「・・・・・・。」

ただ茫然と・・動くマ執事のことを見つめたミニョ・・。


そのあとの、

  マ執事の言葉は・・


顔を上げたミニョには入っていなかった・・。


「え・・?」

少し間があいて・・

    ミニョが、マ執事を目に映した。


「え??」

にこにこと、マ執事も、ミニョを見た。


ぎゅっと、テギョンにもらった髪留めを手に握りしめたミニョ・・。


目は、

  その場をただ、戸惑うように彷徨った・・。


ー・・え??

    『シヌ王子様』・・・?

~~

だだっ!!  

  っだん!!

テギョンが廊下と長い階段を飛び下り・・


~~

「・・・・・。」

話すマ執事とミニョを見つけ、

にこやかに、

   シヌ王子が、ミニョとマ執事のもとへと近づいた・・。

すたすたと、脚を速めた二人が、

    まさに、庭先まで続くドアに差し掛かった時・・・

「・・・・・・。」

   「・・・・・・・。」

互いの姿を、

    その目に映した・・。

どこか鋭い目で・・

      見つめあう二人・・。

~~

ジェルミもジョリーとともに、

   先ほどの奇声の元凶を調べに歩き出してきた・・。

~~

ミニョのどきどきと暴れていた胸が、

   とたんに、小さくなった。

~~

「・・好きでいても・・・いいですか?」

夜空を見上げたテギョンに聞いた・・言葉・・・

ミニョの頭に浮かんだが・・

  それが、ずいぶん前の記憶だった気がする・・。

~~

「シヌ王子様と・・

   結婚・・・?」

ミニョがぼんやりと、マ執事を見つめた・・。


「ミニョさん??

   ミニョさん???」

短い手をミニョの目の前でぱたぱたと振り、

    覗き込むようにして見上げたマ執事・・


「私が・・

   シヌ王子様と結婚すれば、

     魔法が解けるということですか・・?」

ミニョが、

  マ執事に聞いた・・。


何も分かっていないマ執事が、

  からかうようにウィンクすると、正解を示すように、

     歩いてくる野獣の方を指さした・・。   (あぁ・・もう何もかもがうざいわ・・)


ミニョが振り返った時、

   ミニョはその目を、細めた・・。


暗くて色がよく・・見えなかったのだ・・。


すた。

  すた・・。


ミニョとマ執事の元へと歩いてくるその黒い野獣・・。


後ろの城の廊下に、

     ジョリーの手を引いて向かってくる、もう一匹の野獣も見えた。


それから・・

   暗い中、目だけが光って見えると、

     ミニョに見られぬよう・・

      すっと、向かう先を変え、大きな柱の陰に立った野獣・・。


ミニョがじっと見つめているすぐ先に、

    暗い中、真っ黒の野獣が、すくっと立った・・。

~~

「・・・・・。」

近づいてくる黒い野獣が誰なのか・・

    よく・・見えなかったが・・ミニョの静かな心臓が先に、気づいているようだった・・。

~~

~~

じっと・・

    見つめ合ったテギョンと、シヌ・・・。

テギョンがふいと目を逸らすと、

   ミニョとマ執事の元へと・・庭へとその足を出そうとした・・その時・・・

「テギョン・・。

   言っておくことがある。」

すれ違う寸前・・

   シヌが、テギョンの顔を見ず、言った。

「なんだ・・」

脚だけを止め、

   振り返ろうともせず、シヌの隣をすれ違おうとするまま、聞いたテギョン・・。

~~
~~

灯りに照らされてようやく茶色い毛がきれいに輝く・・。


「シヌ王子!」

嬉しそうにマ執事が呼んだ、シヌの顔は、微笑んでいて・・

   野獣だというのに、本当に品があり、大きく、堂々として見えた。


「シヌ・・王子様・・」

ミニョも慌てて笑顔を作ると、

   ぺこりと頭を下げて、自分の横に腰掛けるよう、隙間を空けた。


「どうした?

   こんな時間に・・眠れないのか・・?」


まだ、城の中は家具たちがあちこちで動き、

   騒々しく準備をしていた。


そんな様子を目の端に入れたミニョが、

   こくりと頷くと、大きなシヌが、ゆっくりと隣に座った。


「そっか・・。

   でもあんまり夜風にあたると、熱がぶり返すぞ。」

そっとミニョへと、ブランケットをかけてやったシヌ。


ミニョが、そっとその包まれたブランケットに触れてみた。

それが、

  テギョンの掛けてくれたマントと重なって脳裏をよぎる・・。


「・・・・・・。」

ブランケットの上を撫でるミニョの姿を・・

   柱の陰から、テギョンが見ていた・・・。

~~

ー・・違う・・・。

ミニョは、

  ふと、そのブランケットの上を走らせた手を止めて、野獣を見上げた。

優しく微笑むシヌ・・。

ー・・・ちが・・う・・・

ミニョの目が、

   じっとシヌを見上げた・・。

ー大きくて、ちょっと硬い毛の・・ 

   大きくて、さらりとした茶色い毛の野獣を見ながら、 
     頭でつぶやくミニョ・・。

ー目だってもっと怖くって・・

   やさしく、ミニョへと微笑みかけてくれるシヌを、見た。

ー口だって、

    いっつも尖がって声もちょっと怖くって・・
同じような狼のように長い口元を見て、

    そう目を細めたミニョ・・。           

「ミニョ?

  明日は早いんだ。もう休もう。」

シヌが手を伸ばした。

にこにこと頷きながらそんな二人を見つめるマ執事・・

「あの・・明日の・・

   私に頼みたいことって・・・」

ぎゅっと、テギョンに貰った髪飾りを手に握りしめたミニョが、

   シヌに聞いた。

ー結婚・・・

 シヌの顔を見上げながら、

    その言葉を頭に思い浮かべたミニョ・・

ー・・ケッコン・・

ひどく、その言葉が遠く感じ・・

ツキンと胸が苦しくなったとき・・

     寂しげな、あの一人の男の子の肖像画を・・

      寂しげに、いつも人の輪からはみ出した野獣の目を・・

 寂しげに、そっぽをむいた男の人の肖像画を・・・

        その頭に、思い出した・・・。

そんなミニョの顔を優しく見たシヌ・・

ふ・・。

  しゃがみ込んでミニョの前に座り込むと、

      ミニョの片手を、そっと持ちあげた・・。

それから、大きな手で、

   ミニョの頭をそっと撫でたシヌ・・

「頼みたいことは・・

   明日言うよ。

誕生日にお前が祝ってくれたら、

   それが何より嬉しい。

約束通り、明日はお前を部屋まで迎えに行くから・・。」

撫でながら、

   にっこり笑ったシヌ・・。

ミニョの顔が、

  少し物寂し気に、にこりと笑った。

ー違う・・

    けど・・いつもいつも・・

  ここに来た時からずっと・・

    そばで、優しく、私がこの場所に楽しくいれるように助けてくださった人・・・

にこりと笑ったミニョが、

   こくりと頷いた。

「楽しみです・・」

ミニョがそういうなり、

   シヌがミニョを持ち上げた。

ばっ!!

「ほら。

   行こう。まだお前は病み上がりなんだから。」

そういいながら・・・

「っあ!!!」

しゃり・・・

   予想外に抱き上げられた瞬間、その場に落ちた握りしめていた髪飾り・・

「ん?」

シヌが聞いたが・・

おろおろと・・

   落ちた方を見つめたミニョは

「あ・・・

   いえ・・。

なんでもありません・・。」

落とした髪飾りを求めて、無意識に伸ばした手を、

   そっとひっこめた。

「そ?」

シヌは気づくことなくそう笑いかけると、

   すたすたと、抱えたミニョを大切そうに、運んだ・・。

にこにこと、

   手を胸で合わせて見つめたマ執事・・。

・・・と・・

  ちょうどミニョたちの姿が城の中に消えたとき・・

ジョリーとジェルミが駆け付けた。

「おおっ!」

ご機嫌に、ジェルミを迎えたマ執事・・

「ねぇ!!

   今なんか変な声が聞こえなかった??」   (マ執事のさっきの声ですが)

きょろきょろと見回すジェルミ・・

「変な声?

   ・・・さぁ??」

怪訝な顔で、首をひねったマ執事だが・・

「それよりジェルミ王子!!!

   いよいよ私たちの魔法が解けそうです!!!!」

マ執事が、感極まった声でそう言った。

「・・・え?

   ・・どういうこと・・・・?」

マ執事のもとへと近づいたジェルミ・・

その時・・・

  -パキン・・・

足元で、小さく何か、壊れた音がした・・。

「なに?

   どういうことなの?」

それも気づかず、マ執事に詰め寄ったジェルミ・・

「だからミニョさんとシヌ王子がそれはそれはいい感じで・・」

ジェルミに向かってにやにやとそう話したマ執事・・。

「・・・・・。」

足元に何か踏みつけたまま・・

   ジェルミが黙ってまだばたばたと動く城の中を・・見つめた・・。

「マ執事の考えでは、

 キス・・

   すればいいんだっけ?」

マ執事に何気なく言ったジェルミ・・。

「そりゃあそうでしょう!!

 

   だれか・・誓いがどうとかって言ってたがな!        (ヘイがね・・(笑))

 キスはきっかけでしょう!  

    後は結婚式を挙げて~・・ぶつぶつぶつ・・」

マ執事が懲りずに、

    手と手を組み、独り言のように、忙しく続けた・・。

「シヌヒョンと・・

    ミニョ・・・」

つぶやいたジェルミが・・

    静かに庭から城の中へと向かった。

「お・・

   お~~~い!!

待ってくださいよ~~~!!!!!」

慌てて噴水の脇から、ぴょんと飛び降り、

   ジェルミの後を追ったマ執事・・

「待ってくださいよ~~~~!!!!」

ちょこまかと、

   地面を走るマ執事を見た柱の陰に隠れていたテギョン・・。

「・・・・・・。」

唇を尖らせると・・・

さっき・・

  ミニョをいつかの自分のように抱えて、城へと入っていったシヌを思い浮かべた・・。

「・・・・・・。」

~~

「なんだ・・」

脚だけを止め、

   振り返ろうともせず、シヌの隣をすれ違おうとするまま、聞いたテギョン・・。

そのテギョンに、

「ここからは俺が行く。」

はっきりと、そう言ったシヌ。

「は?」

鋭い目で振り向いたテギョンに向かって、

「熱の時はお前に任せた・・。

だが・・

   今度は俺が行く。」

シヌが、言った。

「・・・・・・・。」

何か言おうとした口をぎゅっと縛り、

    黙り込んだテギョン・・。

「魔女のいう通り・・

   『好き』という感情を初めて知って、

      『好き』になった。」

テギョンの方から、目線をミニョへと移すと、

    そう言ったシヌ・・。

「・・・・・・。」

まだ、黙っているテギョンに・・

「彼女を守りたいんだ。

   支えていきたい。」

シヌが、言った。

「・・・・・・・・。」

ぎりりと口を噛みしめると、

    拳を握ったまま、黙り込んだテギョン・・。

『いっそ・・結婚式を挙げてしまうのはどうだ??

誕生日パーティで王子にプロポーズさせて、

   そのまま結婚させたらいいんだよ!!!!!』

あの日、廊下で聞いたマ執事の言葉が耳に響いた・・。

「・・・・・・。」

黙ったまま止まったテギョン・・。

・・す・・・

その横を・・

   シヌがミニョのもとへと、進んだ・・。

「・・・・・・。」

ミニョの元へと歩いたシヌを見たテギョン・・。

『その日はいきなり初夜だ!!!!!
キスで戻ったっていい!!

   結ばれて戻ってもいい!!!


へたしたら、城の魔法が解かれ、

    思い出されたとたんに、将来の国王が宿っているかもしれないんだぞ!!!!


これぞ一石二鳥ってやつじゃないのか?!

  いや、三鳥か・・?』

マ執事言葉が、

   テギョンの耳につく・・。

『そっ!・・

  そもそも・・っ!!

 ミニョが好きなやつだって・・・』

『シヌ王子だろ?

それに・・テギョン王子はもしかしたら・・国王になることを負担に思っていたのかもしれないし・・。』

あの時の会話が、

    次々とテギョンの頭に繰り返された・・。

「・・・・・。」

テギョンの目に、

   シヌがミニョのもとへと近づくのが見えた・・。

ー胸が、焼け付くように痛む。

  気分が、悪い・・。

テギョンが手をぐっと、握りしめた・・。

~~

マ執事がジェルミの後を追うなり・・

   さっきまで皆のいた、噴水の前に向かったテギョン・・

無残にも、

  その場には、テギョンの贈った髪飾りが、バラバラになって落ちていた・・。

「・・・・・・。」

それを、

  無言で拾い上げたテギョン・・。

ぐっと、そのバラバラになった髪飾りを握りしめるなり・・

「・・・・・・。」

ーぽちゃんっ!!!!!

噴水の水の中へと、放り込んだ・・。

「・・・・・・。」

それから、

  黙って踵を返したテギョン・・・。

「くぅ・・・・・・。」

暗がりに・・

   その場に残ったジョリーが、丸い目を見上げた。

ぽん・・

  その頭に手をのせると、

     

「・・・・っく!!!!」

テギョンが苦しく感じる胸へと・・

    顔をゆがめて、手を握りしめた・・。

~~

「ほんっとに・・

   その鏡ばかり見てるわね~・・。」

呆れた様子でそう言った、ヘイ・・。

「・・・っし!!!」

真剣な目で、ミナムが鏡を見た。

鏡には、

   本当に苦しそうに胸を押さえて足元をふらつかせたテギョン・・。

「・・・・・。」

ミナムが、そんなテギョンをじっと見た・・。

慣れた様子で手をかざすと、

    バラの花を映したミナム・・。

確実に、バラの光は変わっていたはずなのに・・

また、光の色は元の色に戻っていた。

「・・・・・。」

もう一度、

   鏡に手をかざしたミナム・・。

ヘイも一緒に覗き込むと・・

ミニョの部屋の前で、

   別れたシヌとミニョが映った・・。

ぱたんと・・・

   閉まった扉・・

だが・・・

シヌがその場からいなくなるなり・・

キ・・

 その扉が開くと、

   そろりと、誰もいないことを確認したミニョが、走った!!!!

~~

「・・・・・・。」

そんな様子を見ると、

   そっと鏡を置いたミナム・・

その目は何か考え込み・・

    口元に、手を当て、見つめてくるヘイ箒にも行くことなく、

      じっと、ただ、考え込んでいた・・。

~~

はぁっ!!

   はぁっ!!!

はぁ!!!!!

噴水の場所へと戻ったミニョ・・・

息をつく間もなく、

   荒い息のまま、あまりに急に走った足をふらつかせながら噴水の前まで来ると、

 地面に膝を付き、

    スカートの汚れも気にしないままに四つん這いになって何かを探し始めたミニョ・・。

「ない・・・

   ないっ・・・!!!!!」

焦るように手探りで探したミニョ・・・

その時・・

「くぅぅ~~~」

声が聞こえ・・

「ジョリー・・」

噴水の脇に立つジョリーを、ミニョが見上げた。

「ここに・・

   ここに大切なものを落として・・

ジョリー見なかった??」

 ぐすぐすと鼻をすすりながら、

    一心に探し始めたミニョ・・。

「わんっ!!!」

ジョリーが小さく吠えると、

   見上げたミニョの前、噴水の中を覗き込んだ・・。

「・・・・・・・?」

目に、大粒の涙を浮かべながら、

   ジョリーと一緒に噴水の中溜まった水を見たミニョ・・。

下に確かに落ちたものが、

  そんなところにどうして入ったのか、なんて、考える余裕はなかった。

ミニョの目に、

   すぐに、月の光のかけらが、見つかったからだ・・。

「あった!!!」

嬉しそうに顔を綻ばせて、手を伸ばしたミニョ・・

が・・・・

「っ!!!!!!」

つかんだそれは・・

    可愛かった髪飾りの・・ほんの一部で・・

「や・・

  ど・・どうして・・・??!!」

一瞬で、また泣き顔に戻ったミニョが・・

ばちゃばちゃばちゃっ!!!!!!!

   躊躇うことなくスカートをめくり上げると、

     その噴水の中へと入った。

*************************************

遅くなってごめんなさい!!!!!!

  

じりじり戦。

  んでまっだパーティまでいかんかったし・・・・!!!!!!!!!!!!NOOOOOOO

懲りずに楽しんでいただけたら、うれしいです♪

「ありがとうございました。」

ミニョが、おずおずと、

  声を出すと、世話になった布団を整理し、その場に立ってテギョンを見た。


明け方・・寝たふりをしたミニョの横を横切り、

  部屋に戻ったと思ったテギョンは、バラの花の置かれた窓際に座ったまま、ぴくりともしなかった。


それ以降、

   眠ってはいないはずだ。



「・・・・・。」

じっと、ミニョがテギョンを見ていると、

   そんなミニョに顔を向けたらしいテギョン。

ミニョの方からは、ちょうど窓から差し込んできた光で、

   テギョンがどこを向いているのか、どんな表情をしているのか・・

     その目がどんな色をして・・いるのかさえ、見えなかった。


~~

『誕生日パーティで王子にプロポーズさせて、

   そのまま結婚させたらいいんだよ!!!!!』

部屋を出るとなると急に、

   テギョンとともに聞いたその、言葉を思い出したミニョ・・。


ー・・・あれは・・

      本気なのかしら・・・。


ミニョがちらりとまた目でテギョンを見ると、

   テギョンもまた、ちらりと、ミニョの方を見た。


『だってミニョさんはもう、あのお方が好きなんだろ??』

マ室長の言葉を思い出すと、

   途端にミニョの心臓に矢を刺したような痛みが走った。


っ!!!!!

胸を押さえたミニョ・・。


顔が、熱く、

   心臓が、爆発しそうに早まった。


ー私が・・好きな人・・?

   その人と結婚できたら・・・

    愛を誓い合えたら・・・


 魔法は・・

    解けるの・・・?


ぼんやりと、昨日夢の中で近寄ってきた人間の男の人が浮かんできた気がしたが・・

   その姿はひどく曖昧で、

     目の先に映る野獣だけが、はっきりとミニョの目に見えていた。

どきん・・

  どきん・・・・

「・・・・・・。」

黙ったまま、

   さることもなくその場に立ちすくんでいるミニョ・・。


「・・・・?


  なんだ?」

素っ気なく、聞いたテギョンの声にはっとすると、

「あ・・いえ!!!!

   ありがとうございました・・と・・・。」

ミニョが答えた。


ーでも・・

   好きになっていたとしても・・・

      テギョン王子様がプロ・・ポーズ・・??

   そんなこと・・・、してくれるのかしら・・・?

ちらりと・・様子を伺うように見たミニョ・・。


部屋を出たら・・

  もうすぐパーティの日だ・・。

「何でもない。

   お前が最初に俺らを民衆の目から守ろうとしたんだ。

 

 それで医者に行けなかったお前がどうにかなるのが

    俺の道理に外れると思っただけだ。」

テギョンは近づくこともなく、その場にとどまると、

   ミニョの言葉にだけ、そう何ともなげに答えた。


「・・・・・。」


意外だった・・。

  テギョンが、そんな風に考えていてくれたことが、

    意外で・・

 

ーなんだろう・・

    ミニョの胸が、チクンと痛んだ。


また、見えない壁を作られてしまったように感じたからだ・・。


言葉はきつくもなく、

    ミニョのために選んでくれた言葉に感じる・・


それなのに、どうしてだかはわからない・・。

  でも・・・。


「・・・・・・。」

ミニョが黙ったまま、じっとしていたが、

   テギョンは特に、「出ていけ」とも、「早くしろ」とも、追い立てることはなかった。


ミニョの体調が治るまで。

もう熱のない今、出ていかなければいけないのは、分かっている。

  でも、何だか足がその場から動かず、

    ミニョの胸は、ぎゅっと締め付けられた・・。


『シヌの誕生会・・・

    俺が・・連れてってやろうか・・?』

今更ながらにテギョンの言葉を思い出したミニョ・・


っきん!!!!

  心臓が大きく鳴り、


「あの・・シヌ王子様の誕生パーティ・・・」

思わず、声に出して言ってしまった・・・

   ところで・・

~~

『ねぇ。ミニョ、いいかな?

   俺の誕生日・・俺にエスコートさせてよ。


ちょうど、その日に頼みたいこともあるし・・・。』

シヌが、柔らかく笑ったところを、思い出した。


『・・・・頼みたいこと・・ですか?』

きょとんとした顔を上げ、聞いたミニョ・・。

『はい。

  もちろん、いいですよ♪』

にっこりと笑って、ミニョ自身が、答えた・・。

~~

ー・・・私が約束したのだから・・

     やっぱりそれは守らないと・・・。


ミニョが自身を落ち着かせると、


「あの・・王子様たちの誕生を毎年祝うとおっしゃっていましたが・・・

    テギョン王子様の誕生パーティは・・いつなんですか??」

ミニョが聞いた。

考えるよりも先に、ごまかして続けた言葉だった。


それに部屋から出ていくのが嫌で、

      口から出た時間稼ぎの質問ではあったが、

            言葉が繋げたことに、ミニョはほっとした。


「・・・・・。」

黙ったテギョンが、

   ゆっくり立ち上がると、ベッドにおかれたままだった、畳まれたマントの傍に立った。


「お前が今はこのマントを所有する主人だ。

   お前が持っておけ。」

テギョンに言われて、

   不思議そうに頷きながらも、そのマントを手に取ったミニョ・・。


何度も言ってはみたが、

  どうしても受け取ったことにはならないらしく・・手に取ると、ミニョの胸が、痛んだ。


それに、ようやく部屋から厄介者が出ていくときにする質問ではなかったのかもしれない・・。

   

だから、マントを手に取り、

   追い出す口実にそう言ったのかもしれない・・。


そう考えると、自分の幼稚な出ていかないための時間稼ぎの言葉が恥ずかしく・・

      目を向けることもできず、俯いたまま、踵を返した。


「・・・・・。」

部屋から出る扉へと出ようとするのに、

 何がそう感じるのだかはわからないが、

   この部屋を出るとまた、急に距離が出てしまう気がして、脚が出ない・・。


ーもし・・・本当に魔法が解けるなら・・・

    もし・・本当に・・私で魔法が解けるなら・・・


どきんっ

  どきんっ


ミニョの胸が、鳴った。

ミニョがきゅっと、マントを抱いた手に、力を入れた時・・


「誕生日・・」

テギョンが、     

    ぼそりと言った。


「今の俺に誕生日はない。」

ぼそりと言った言葉の意味が分からなくて振り向いたのに・・

  

ーバタンッ!!!!

「ミ~ニョ!!!

   迎えに来たよ♪」

一番に飛び込んだジェルミの声とともに、

   シヌと、その腕に抱かれたマ室長・・


後ろの方には、ミナムとヘイ箒まで、朝からテギョンの部屋へと入ってきた。


「っ・・・・!!」

  「・・・・・・・・。」

驚いて扉を見たミニョと、

   表情の読めぬ顔で、ただ、その場で立っていたテギョン。


尻尾を振りそうな勢いでミニョへと向かってきたジェルミの前、

   すっと、テギョンの手がミニョに襲い掛かる手前で、それを阻止した。


「また踏みつけるぞ。」

ジェルミへとぼそりというと、

  その手をひっこめたテギョン・・。


「・・・・・・。」

一瞬の、テギョンの手を見たミニョだったが・・

    その頬が緩むのを止められず、

       誰にも見られぬよう、そっと熱くなりそうな頬へと手を触れた・・。


「・・・・・・・。」

シヌが、そんな二人の様子をじっと目に映したが・・

つんつん・・!!!

  胸元で、マ室長がウィンクしながら胸をつつくので、


にっこりと笑ったシヌが、ミニョの傍まで歩み寄ると、

「行こう。」

ミニョの手を取った。


「え?

  あ・・・あの・・・・」

ミニョがテギョンを振り返って見た。


呆れた様子で、目を逸らしたテギョン・・。


「ミニョ!!

   ほんっとに熱は大丈夫??

  足は!??ふらふらしない!???」

ミニョの横に、素早くつくと、

   もう片方の腕を持ったジェルミ・・



大きな巨体に挟まれると、

   ミニョからは、テギョンの姿が見えにくくなってしまった・・。


「テギョン王子様っ!!!

    ほんっとうに、お世話になりました!!」

ミニョが、必死で巨体の身体から身を乗り出すと、

   そう、叫んだ。


気が焦る。

  会えなくなるわけではないのに、

     なぜだか、胸が苦しくなる。


誕生日のことも・・

   聞きたかったのに・・こんな状態で聞けるわけもなく・・・


『今の俺に・・』

そう言った言葉だけが、

    ミニョの胸に残った。


ミニョのお礼の言葉にテギョンの返答もないまま、

  あっという間にミニョの身体は、巨体にはさまれたまま、扉まで来てしまった。


「だ~いじょうぶですよ!ミニョさん!

  あの方は、普段冷静冷酷・・時として残忍にスパッ!!!っと、人を切ってしまう恐ろしい人ですが・・・」

こそこそっと、不安げなミニョの顔を、

    またも独特の解釈で頷きながら、シヌの胸でそう、ミニョへと囁いたマ執事・・


「今回ばかりは、なぜか・・

   はて・・??

     ほんとに不思議ですが・・


 なぜなのか・・・

    熱を出したのがご自分の責任だとでも思われたのでしょうか・・

 いや・・責任だなんて・・思うとしても奇跡ですが・・・


 とにかく、ミニョさんは運がいい。

  生きて帰れて、しかも、逆鱗に触れなかったんだから!!


 ささっ!!早く部屋から出ないと・・・!!!」

マ室長の囁きに・・            (いつもながらに余計なひと言・・・(笑))


「・・・おい・・

     聞こえているが・・・」

ぐるると唸る声が、後ろから聞こえた。


ひっ!!

 声を上げると、慌ててシヌを促し、外へと飛び出した一向・・


ーバタン。

大きな扉が、

   厚い音を立てて閉じられた・・。


ーあと一言・・

    もう少し何か・・言えることができればよかったのに・・・。


閉じてしまった扉を見上げて、

    ミニョが口をつぐんだが・・・。


「あ。

   ミニョ・・それ・・・」

ミナムが指をさし

  ミニョの腕の中のマントに近づいた。


王位継承権のあるモノだけが手にすることのできる、

   そのマント・・・。


ミニョが、そっとテギョンの部屋の扉をまた、見つめた・・。


「あー・・・ミニョさん・・・

   その・・私が言うのもおかしな話ですが・・


 こうなってしまった以上、もうあの方に罪悪感など感じる必要はないですよ・・。

 その・・

   ずっと重荷だったのかもしれませんし・・


 王位に就く者を見直すいいきっかけになったのかも・・

    しれませんから・・・。」

マ室長が、

  ちらりと、何か意図するように、ミナム、それにシヌと、ジェルミへと、

     目を送った。

~~

「お兄ちゃん・・」

皆がそれぞれの部屋に戻り、

    もう寝る準備に差し掛かった時・・


ミナムの扉を、ミニョが叩いた・・。


「・・・・・・。」

中からなぜユ・ヘイ箒が出てきたのかは

   小首を傾げてそんなに疑問にも思わなかったミニョ・・


ヘイの顔を見るなり、

「お聞きしたいことがあるんですが・・・」

そういって、

   二人を見上げた。


顔を見合わせた二人・・・

~~

夜風が、少し冷たく感じたが、

   今のミニョには心地よかった・・。


城の大きな庭・・

    噴水の出る、池の傍に腰かけたミニョ・・。


手に、テギョンからもらった髪飾りを握りしめていた。


空を見上げた星が、高い塔の傍に見えた。

  テギョンの部屋からだと、近くに見えた星なのに、

    今、手を伸ばしてみると、それは遠くて・・遠くて、とても手の届きそうにない空の果てに、

      星の光はあった。


そっと・・手を伸ばしたミニョ・・。


「星を取ろうとしてるのか?」

声が聞こえて・・


  びくっと、ミニョがその肩を揺らせた・・。


「・・・・・。」

振り返ってそこにいる人物を見ると・・

「マ執事・・・」

ミニョが、寂しげに笑った。                (・・・え・・・)


城は、明日のパーティのための準備でまだ、

   あちこちに、蝋燭の明かりが揺れていた・・。


50年ぶりにする、パーティなのだ。

以前と違うのは、

   ここ・・今、ミニョの目の前に広がる庭、それに、ミニョもまだ入ったことのない大広間に、

      民衆は集まらないということだけ・・。


小さなマ執事が、

   ちょこんとミニョの横に座った。   

(・・座んない方がいいんじゃないかなー・・。

    もう任せた方が、物語も恋も、早く解決じゃないかなー・・・)

「テギョン王子様は・・・

   どのような方だったのですか・・?」

ミニョが聞いた。


「年の始め1日が、

   すべての王様の誕生日となっていたのですね。」

続けて、ミニョが言った。


さっき、

  あの肖像画の部屋で、ヘイとミナムと、50年前の実録を、読んだのだ・・。


なぜ、テギョンの話を聞くのかがわからず、

   きょとんと顔を上げたマ室長・・。


「なぜその話を・・・」

そこで、全てミニョが知っていることを知り・・   

(て・・もうマ執事の話のせいで、廊下で聞いた時点(後・15)で人間だったってばれてますけど)

   一人、おろおろと体をぎこちなく動かしたマ執事・・・


「王位継承権をなくしたら・・

   テギョン王子様の誕生日のパーティは・・いつ開かれるのですか?」

ぽつりと、ミニョが聞いた。


さっき・・

   ミナムとヘイにも、同じ質問をした・・。


「・・・・・。」

黙ったままのマ執事・・。


「あの・・マ執事様はおっしゃりましたよね・・・。

   

 『魔法を解くためには・・・

      感情を一気にあふれさせるのです!!!!!』

 って・・・。」

ご・・くん・・・。

いよいよマ執事の表情も、固まり、

   目を誰か助けが来ないかと、右往左往、ひげを、時計らしくくるんくるんさせてみた・・。


「私が・・ (ごく・・ん・・)」

意を決したように、ミニョが手に力を入れて、

     テギョンからもらった髪飾りを、震える手で、握りしめた・・・。


「私が・・・

    愛を誓えば・・、魔法は解けるんですよね?」

そう・・震える声で聞いたミニョ・・。


「えっ!!?????」

マ執事の声が、大きく、

    大きく、城を抜け、森までも抜け、響き渡った・・・。

~~

「えっ!!?????」

・・・暗い部屋で外を見ていたテギョンの耳にも・・・

~~

「えっ!!?????」

・・・廊下からミニョとマ執事の姿を見つけた・・

     シヌの耳にも・・・


~~

「えっ!!?????」

ジョリーとともに、

  眠りかけていた、ジェルミの耳にも・・・

~~

 

「どどどっどど・・

    どうしてそれを・・・・」


思い切り目を見開くと、

   ごっくん。

息を飲んだマ執事・・。


「あの・・ですね・・ミニョさん・・


  ここまで来たら・・すべてをお話しましょう・・・」


じっと、ミニョの目を見たマ執事・・


「もう一歩なんです・・。

  おそらく・・もう・・すぐに魔法が解けそうなのです・・。」

マ執事が、

  まっすぐにミニョの目を見て言った。


こく・・ん・・・。

頷いた・・ミニョ・・。


心臓が、うるさく音を立てた。

  それはとても複雑で・・

    でも、どこか浮足立つような音でも、あった・・。


急だけれど・・・

  魔法が解けたら出ていかなければならないと思っていたのが一転して・・

 

残ってもいいんだと・・。

   ミニョにしか、できないことだと知れて・・・


それが・・

  結ばれるために・・

    結婚することだなんて・・・。   (・・盗み聞きのため、全てが単直(笑))


ドキンドキンと・・

  胸の音だけが、響いた。


「ミニョさんさえお気持ちが固まったら・・

   あとは結婚式をするだけです。


 私たちも実は・・

  どうなれば魔法が解けるのかなんてわかっていないので・・


 愛の誓いさえあれば・・」

マ執事が、にこやかに笑った・・。


ーどきんっ!!!!!

ミニョの顔が熱で焼けるほど熱くなり、

   その頬を、両手で隠した。


どきん・・・

頬を、ミニョが両手で覆った時・・


「まぁ~!!

   シヌ王子様なら安心ですよ!!!

三人の中では一番紳士で穏やかな方ですし・・・

   

その反面、

   いつも誰よりも冷静な目をお持ちな方なので、

 あの方がまさか恋という気持ちなど、持つとは思ってもなかったですが・・・」


そのあとの、

  マ執事の言葉は・・


「・・・・・。」

顔を上げたミニョには入っていなかった・・。


「え・・?」

ミニョが、マ執事を見た。


「え??」

にこにこと、マ執事も、ミニョを見た。


ぎゅっと、テギョンにもらった髪留めを手に握りしめたミニョ・・。

~~

だだっ!!  

  っだん!!

テギョンが廊下と長い階段を飛び下り・・


~~

「・・・・・。」

にこやかに、

   シヌ王子が、ミニョとマ執事のもとへと近づいた・・。

~~

ジェルミもジョリーとともに、

   先ほどの奇声の元凶を調べに歩き出してきた・・。


~~

どきどきと暴れていた胸が、

   とたんに、小さくなった。

~~

「・・好きでいても・・・いいですか?」

夜空を見上げたテギョンに聞いた・・言葉・・・


~~

「シヌ王子様と・・

   結婚・・・?」

ミニョがぼんやりと、マ執事を見つめた・・。

************************************

ほんとに最後の最後の、

   マ執事パワーーーーーーーーーー炸裂!!!!!!!!!!!!!!


で、

 どう決着着くのかって(笑)



決戦は・・・


次でしょ!!!



真っ暗で、唯一、

   バラの光が輝く部屋に、テギョンは戻った。


部屋の奥で、ほのかなピンク色の光を放つバラが、

   暗闇では見えないテギョンの目にも、ぼんやりと見えた。


だがそれよりも手前・・

  部屋の真ん中あたりに・・


窓からの月明かりもうっすらと浴びた、

   寝息にわずかな膨らみが上下するモノを、テギョンはじっと見た。


ひた・・

  ひた・・・


ゆっくりと・・その暗闇の中唯一動く場所へと向かった・・テギョン・・・。


すぅ・・

  すぅ・・・


近づく度、静かな空気をかすめる音が聞こえ・・

   テギョンの胸が、変に落ち着かないまま、鼓動を伝えた。


「・・・・・・。」

黙ったまま、そのだんだんはっきりとテギョンの視界に映し出されたミニョの傍へと

   近づいたテギョン・・。


『物語の魔法は、キスで解けるって、

   どんな本にもあるもんな♪』

『愛の誓いだったら結婚でもするのか?』

ミナムが言った言葉と・・

『誕生日パーティで王子にプロポーズさせて、

   そのまま結婚させたらいいんだよ!!!!!』

マ執事の言葉が、

    頭にまたよみがえる・・


じっと・・

  毛に覆われた目で、ミニョを見つめたテギョン・・


何も知らずに幸せそうに眠る顔は、

   熱で苦しんでいた時とは違って気持ちよさそうに眠っている・・。


すぅ・・

  すぅ・・


規則正しく動くその身体・・。


『魔法の解き方を・・

    教えてください。


私でも解ける方法があるのなら・・

   お詫びにそうしたいのです・・。』

ミニョが言った言葉・・


じっと閉じたミニョの目を見ていたテギョンが、

   あの時、まっすぐに見つめてきた目を思い出して、言った・・。


「魔法が解けるために、

       結婚できるのか?

窮屈な王宮で、

   幸せになれるのか・・?


・・・どっかのふざけたお伽話みたいに・・・?」

ミニョを起こさないほどの・・

  囁く声で言ったテギョン・・。


すぅ・・

  すぅ・・・


ミニョの目は相変わらず閉じたままで、

  その息の音も、変わることはなかった・・。


だが・・

  どこか、嬉しそうに緩んだミニョの顔・・。


「・・・・・・。」

テギョンがそんなミニョを見つめた・・。


その頬に・・

   手を触れたくなったが、

     大きな毛むくじゃらの恐ろしい手が目に映ると、

  触れることなく、

    その手はひっこめた・・。


「・・・・・・。」

何か、考えるようにじっと見つめたテギョン・・。

~~

何でも考えなしでやってきて、

   捕えられているのに、だれとでもにこにこと笑って過ごしていたうるさい女・・。

家が壊され・・

   熱が出たにもかかわらず・・

『熱はすぐに下がりますから。

   すぐに元気になりますから・・。

・・・だから・・

    置いては行かないでください・・・』

そう言ったミニョ・・。

『私は・・大丈夫ですから・・・』

熱い身体、潤んだ目で、

    ミニョが言った。


 『一緒に帰ってください・・

       あのお城へ・・』


 『ごめんなさい!!

   ごめんなさい!!


ごめんなさい!!!』

ぼろぼろと涙を流しながら謝るミニョの姿・・

~~

『私は・・・

私はあなたがあの娘を連れ出されたとき・・・・

  あなたがあの娘をお捨てになるのかと心配しました!!!』

マ執事の言葉が聞こえ、

    テギョンも自分を嘲笑うかのように、その口角を上げた自身を思い出した・・

 「俺があの娘を・・?」

そう・・思っていたのに・・。

~~

ミニョを抱き上げたシヌの首に抱き付いたミニョ・・

  そのままシヌが、テギョンをじっと見て、言った・・。

『そういうわけだから・・

    ミニョは俺が看る。』

シヌの言葉が腹立たしく、

    あの目が、許せなかった・・。


『熱があるから

    いろ。』

引き留めた。

   病人だからとか、

      中途半端が嫌いだとか、

 口から出た理由は、なんでもよかった・・。


「・・・・・・・。」

テギョンの口元が、尖らされ、

   静かに眠るミニョを見る・・。


~~

『今はもう・・熱も下がったんだろ?

 ・・・ほんとかな?

   どれ・・・?』

そう言いながら、

   ミニョの額に額を当てたシヌを思い出したテギョン。


気づいているのだ本当は・・。

   アイツがこいつに馴れ馴れしく触れるのが気に食わない。

 こいつも、へらへらと笑って触らせるのも、気に食わない・・。


「・・・・・・。」

そう思うなり、

  テギョンの目が細められた・・。


~~

ほぅ・・・

  ピンクの光が一瞬、大きくやわらかな光を発すると・・・

~~

ゆっくりと・・・

  月明かりに照らされた、大きな巨体が・・

    横たわった、まぁるい山へと傾いていった・・。


「・・・・・・・・。」


暗い暗い部屋・・・


月明かりの僅かな光が、

    その、大きな巨体と、横たわった山の影が、繋がったのを、ぼんやりと映し出した・・。


~~

バラの光が柔らかく大きく放たれる・・。

   あと2枚の・・バラの花びら・・・。


大きく光が放たれた後は・・

   わずかに・・バラの花びらの色が、濃いピンクへと変わった・・。


~~

「・・・・・・。」

暗闇から、顔を上げたテギョン・・・。

   顔には毛が生え、口元はオオカミのように長く伸びている・・。


野獣テギョンはまた、

    眠ったままのミニョを、じっと見ていた・・。


~~

目を閉じたまま夢の中にいたミニョ・・。

ほんわりと明るい光の中で、

  3人の小さな男の子たちが遊んでいるのに気付くと、

    にこにこと駆け寄ったミニョ・・。


肖像画と同じ男の子たちはよく見ると、

   黒髪の表情のない男の子だけが、

     あの、ミニョが包まれたマントを長く、背に垂らしている・・。


「・・・・・・。」

ミニョの目が優しく細められると、

「こんにちは・・」

ミニョが、柔らかく笑った・・。


にっこりと微笑んで振り返った、小さなジェルミ、

  不思議そうにミニョを見上げてから、にっこりと笑った。


その隣の栗色の男の子・・シヌもまた、にっこりと笑って

「こんにちは」

そう答えた。


最後に、

  その隣で、少し距離を置いてそっぽ向いたまま立っている、

     黒い髪の男の子を見たミニョ・・。

「・・・・・。」

ミニョの目が、

   優しく細められると、その少年だけを、見つめた・・。


「・・・・・っ」

ミニョが、その少年を呼ぼうとした時・・

          誰かに呼ばれた気がした・・。


ふと、振り返ったミニョ・・。


目の前に大きな影が映り・・

   次の瞬間、誰かが見えた・・

      黒い・・髪の・・・


その影が・・

   そっと屈んでミニョの顔へと近づいた・・・。


「・・・・・」

驚いて、何も考えられないミニョ・・。

~~

『両想いになれたら・・

    次は結婚式!!!!   

だからっ!ですね!!!

今度のシヌ王子の誕生日パーティで、なんとしてもあの二人が結ばれるために

   私たちも協力しなければなりません!!!

そしたら・・・

   私たちは人間に戻れるのですっ!!!!!」

マ執事が声をあげてそういうのが聞こえ・・


   ミニョは、ふと、自身から離れていく黒い影を見上げた・・。

ー夢・・・

ーテギョンさん・・・?

目の前で暗闇を作り出し、

        その影は、ヒト型だった・・。

~~

うっすらと開いた、ミニョの瞳・・・ 


「テギョン・・さん・・・・?」

起き上がって、

   周りを見渡したが、

 暗闇には、誰も、

    いなかった・・・。


「・・・・・・・・。」  

胸が、なぜだかどきんどきんと音を立てていたミニョ。

胸をぎゅっと握りしめると、

   誰もいない、その真っ暗な部屋を見渡してみた。



窓の外には、相変わらずの星が浮かんでいた。

誰もいない・・真っ暗な部屋・・・


ぽぅ・・・

  バラの花の色には気づかず・・

    ミニョはゆっくりと、窓へと近づいた・・・。


心臓が、なぜだか痛いほど、鼓動を打った。


星々の輝く夜・・・

  だけど、ミニョの目には、はっきりと、月の光のすぐそばで、

    輝いている、一つの星が見えた・・。

~~

シヌもまた、

  窓から星を見ていた・・・。


巨体のシヌには、

  小さなミニョ・・・。


そのミニョが、

  きゅっと首にしがみつくのを思い出すと・・

    シヌの目が、寂しそうにも見えるが、

      やさしく、微笑むように、シヌは、星々を見ていた・・。

**********************************

え?

  え?

ええ????


テギョン・・・????


そして今は、

  どこいったのさ??


さぁ・・・

  いよいよ三者三様、

    行動に出るときです♪