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恋愛小説『Lover's key』

#19-1 衝動(teru's side)






あの時の事を思い出すと、胸が苦しくなるのと同時にもう一度やり直したい気分になる。


由愛とキスしてから、もう4日。


その後、何の音沙汰もなく。。。


オレの心には涼しすぎる風が吹きまくっている。


超、冷え冷えなんだけど。


ってか、超カッコ悪いんだけど。


「連絡しないから」なんて、、、言い放ってさ。


あのときは絶対それが有効だと思って出した“計算”だったのに。


絶対連絡が来ると思ってたのに。。。


なんだよ!!!見積もり違いかよっ!!!!



…それに。



あの時のキスはさすがにガッツき過ぎだよな…と、未だに思い出すだけでのた打ち回りたくなるほど恥ずかしくなる時があって。


考えることはそればっかで。。。


で、めちゃくちゃブルーになる。。。


あーーーー。些細なことでウジウジしてるオレ、、、ちいせぇし、うぜぇ。


オレってこんなにもうぜぇ人間だったのかよっ。


こうしてる間にも由愛とセンセは連絡取り合ってるのは確実で。


オレ、、、、


もう、、、、ダメかも。


ダメだぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!


くそっ!!くそっ!!!!!




「輝、、、オマエ、、、ダイジョブか???」


オレが机に頭をゴツゴツと叩きつけてる姿を見て、達哉が唖然としながら声を掛けてきた。


今日は12月9日金曜日。


SHRも終わって、みんな帰り支度をしている。


「今日、オレん家寄ってくんだろ?」


達哉にそう言われて、オレは机におでこをくっつけたままうんうんと頷いた。


「壮汰は部活だし、律は今日は用事あるって速攻帰ってったもんなー。オレの彼女も今日塾だし。空いてるのは輝だけかよ」


「悪かったな。オレ“しか”空いてなくて」


そんな話をしていると、「一之瀬~。オマエのこと呼んでるヤツが居るぞ」って、教室の入り口のほうから友達の声が聞こえた。


オレはしぶしぶ顔を上げて声のする方へ視線を向ける。


すると、友達の隣に、恥ずかしそうにしている知らない女の子が居た。


達哉も、それに気づいてははっと笑った。


「輝、オマエすげぇな。美月ちゃんと別れてから告白殺到してねぇ?あの子で何人目だよ??」


「知るか!んなのいちいち数えてねぇし。ってか・・・たりぃ。。。達哉、断ってきて」


「はぁ?オマエ、、、そりゃ彼女に失礼だろーが!結構可愛い子だぞ??とりあえず行ってこいよ。待ってっから」


オレはそう促され、渋々席を立つと教室の入り口に向かった。




一応、補足しておくけど。。。


美月と別れたことは、別れ話をした次の日…つまり3日前の昼休みまでに学校中に知れ渡った。


オレは誰にも何も言ってなかったんだけど、美月がその日、泣きはらした目のまま登校してきたらしい。


流石にそういう状況じゃ皆察しがついたらしく。


美月も友達に話したのか、そこから瞬く間に噂が広まった。


そういうのはオレは慣れっこなんだけど、なんとなく、今回は美月のためにもそっとしておいてほしかったんだ。


触れられたくない恋の痛み。そういうのもあるんだって、今回でよくわかったから。


勝手だけど、、、美月には早く立ち直ってもらって、今度はちゃんと守ってくれる彼氏を見つけてほしいと願ってる。




「あの、、、呼び出しちゃってごめんなさい。えっと、、、」


教室の入り口付近の廊下まで出ると、その女の子はオレが傍に居るだけで緊張してるのか、言葉に詰まっていた。


いつものオレなら、笑顔で緊張が解けるのを待ってあげられたのに、今はそんなのも待ってる余裕は無くて。


「ごめん。告白とかだったら、受ける気ぜんぜん無いから」


「…えっ……」


何も言ってないのに的をつかれて、女の子はビックリするのと同時にショックも受けてるみたいだった。


口に手を当てて、ちょっと泣きそうになってる。


そりゃーそうだよな。この子、何年生かも何組かも、名前すら聞いてない。達哉の言うとおり結構可愛い子なのに。


それなのに、即座に断るオレって、、、相当冷たいと思う。


でも、聞いたって何も変わりやしない。どっちにしても断るんだから。


「ごめんな。。。」


一応もう一度謝ってから、その子の反応も観ずにすぐ教室に入った。


その後、パタパタとその子が廊下から走り去る足音だけは聞こえた。


「オマエ、鬼だな…」


様子を伺っていた達哉が、オレが戻るなり開口一番そう呟いた。


「何とでも言えよ。オレはもう、由愛以外とは誰とも付き合わないって決めたんだ」


「ふーん。・・・全然進展してねぇのに??」


達哉はそう言って、からかうようにオレを鼻で笑った。そんな態度にカチンときて。


「うっせーよ!…オレ、今日オマエん家行かねぇ。じゃーな」


一方的に、かばんを持って帰ろうとしたら、「わーーーっ、ごめん輝!!怒らすつもりじゃなかったんだよ」と、結局達哉も追いかけるようにオレの後に付いてきた。





……なんだかなぁ。。。


オレ、由愛のことになるとどうも頭に血が上る。


考えるだけでドキドキして、会いたくて、抱きしめたくて、また(今度はちゃんと)キスしたくて。。。


こんな気持ち、初めてなんだよ。


電話が来るんじゃないかと、一日中携帯を気にしてる。


オレから電話はできない、、、。ってか、あの日、「電話しないから」なんてカッコつけちゃった以上、意地でもできない。


偶然を装って会うなら問題ないと思って、Y駅付近で少し張り込みしてみたものの、由愛らしき姿は見つけることができなかった。


達哉たちにはそういう話も一応相談してて。壮汰に限っては、「輝がそんな風になるなんて、、、ありえねぇーー」ってかなり驚いてるみたいだった。


オレも、そんな自分に戸惑ってる。なんせ、慣れてない。恋焦がれるなんて、初めてなんだから。




相当、由愛にイカれてる──。




すぐに手に入らないと思うと余計に燃えるし。


オトコの狩猟本能が、ウズウズすんだよな。なんか、、、居ても立ってもいられなくなるっつーか。衝動を抑え切れない。


“好き”って感情、、、何気にすげーよ。こんなに、心が燃えるものだとは思わなかった。


パチパチと音を立てて一気に燃え上がったよ。由愛のせいで。


多分、今までのオレの心は、湿った木みたいなもんだったんだな。


火を点けようとどんなに頑張っても、なかなか点かなかったし。


そう考えると妙に納得した。湿った原因はわかんないけど。まぁ、乾いてくれてよかったよ。


これも由愛のお陰なのかな?



「なぁ、、、輝、悪かったよホント。。。ごめん」


達哉は校門を出ても、まだオレの後ろにくっついてきて謝ってる。そんな姿を見たら、逆ギレしたオレもさすがに反省した。


「いいよもう。それより、やっぱオマエん家行っていい?」


そう言いながら振り返ってニカって笑ったら、達哉もニカっと笑った。



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