尼崎脱線事故との接点

事故から2日半が過ぎた。

夕方、会社を出る前に確認したとき、死者の数は95人だった。

アタシがお気楽にジムで汗を流している間に、100人超しちゃったんかなぁ。

これから帰ってニュースを観るのが怖い (>_<)




事故の5日前、アタシは取材を終え、まさにその線のその区間に乗車していた。

車両は確か1両目……。



もしもその事故が、5日前の夕方に起きていたら……。


考えれば考えるほど恐ろしいニアミスである。



だからよけいに他人事とは思えず、仕事中も、頻繁にネットをチェックしてしまう。


原稿の編集後記にまで、その話題を持ち込んでしまった。




テレビでは、アタシが秘書をさせていただいている先生が出演され、事故原因についての
難しい話をされていた。

新聞でも各紙でコメントされていて、改めて先生の偉大さを思い知る。


こんなすごい先生の秘書であることを誇りに思う。




何かと接点のある今回の事故、亡くなられた方の無念を無駄にしないよう、今アタシたち
は、同じことが繰り返されないようにしなければならない。

そのためにも、こういった知識人の方々の意見を聞き、真相が解明されるのを待つことが
大切やと思う。


下手に何もかも鵜呑みにしてしまわないよう、十分に注意しながら……。





ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
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隙のある女

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前回 、痴漢初体験のことを書いたけれど、アタシはその後も何度か痴漢にあったことがある。

要するに、隙が多いのだと思う。


中でも一番インパクトの強いのが、高校生のとき。
下校途中のことだった。

アタシの住んでいる一戸建て住宅団地は、最寄り駅から7㌔も離れたところにあり、その道をいつも自転車で通っていた。
高校までは、そこから10分ほど電車に揺られ、さらに15分ほど歩かなければならない。


そんなわけで、部活を終えて家に着くころには、日の長い夏でも、もう真っ暗になってしまうのだ。



その日もアタシは、いつもの通り、暗くなった道を自転車で帰っていた。

団地は割と高い位置にあるため、行きは気持ちのよい下り坂なんだけど、帰りの上り坂は地獄そのもの。

だけど、中学から通いなれた坂道だけあって、自転車を押しながら歩くなんてことはしない。
意地でも乗ったまま漕ぐのだ。


その坂道にさしかかる少し手前で、アタシは後ろから近づく自転車の音に気づいた。

よほどスピードを出しているのだろう、その音は異様に大きかった。


(めっちゃ急いではるんやなぁ……)

そんなふうに呑気に考えていたのもつかの間、抜かされる直前に、アタシは思いっきり胸をわしづかみされたのだ。


あまりにびっくりして、アタシは叫ぶことさえ忘れてしまっていた。

(何? 今の……!?)


しかし、考えても答えが出るはずもなく、アタシは気を取り直して、前に進むことにした。


さっきの自転車は、どうやら団地とは逆の方向へ曲がっていったようなので、ひとまず安心する。



でも、本当の恐怖はそれからだった。






アタシが団地の方向へ曲がり、少し進んだころ、またあの音が背後から近づいてきたのだ!!


後ろを振り返ると、自転車が1台。

だけど、さっきの人なのか確信が持てるわけじゃないので、ジロジロと見るわけにもいかない。


アタシは力いっぱい坂道を上り、なんとか逃げ切ろうとするが、相手は男。
敵うはずがない。


その自転車は、あっという間にアタシの自転車と並び、今度は股間をまさぐった。


(やっぱりさっきのヤツや!!)



その男は、別の方向へ曲がったあと、迂回して再びアタシのうしろへつき、チャンスを狙っていたのだ。


アタシは怖くなって、自転車から降り、耳をすませた。

すると、微かに自転車の音が聞こえる。


目をこらすと、前方に黒い影が見えた。


アタシの心臓はバクバクと鳴り始め、思うように動けない。

しかし、ここにいるとまたやられる……。



どうしてあの男は、アタシの居場所がわかるのだろう?

音?

でも今は止まっていて、聞こえるはずがない。

ライト?

アタシは慌てて、自転車のライトを消す。


そして、周囲に充分注意しながら、ゆっくりと、できるだけ音を立てないように自転車を押して歩く。


このまま、家まで突き止められたらたまったもんじゃない。



わざと、いつもと違う通りを選ぶ。

そこはもう、アタシの家のすぐそばだった。


しかし、その通りに入ってすぐ、前方から黒い影が近づいてきたのだ!


もう終わりだと思った。


そこは、アタシにとっては上り坂で、相手にとっては下り坂。

10秒もあれば、下りきってしまうだろう。

どう頑張っても、ヤツがアタシのところにやってくるのを避けられない。


でも、最後の足掻きで、路注している車の陰に隠れてみる。


すると、どういうことだろう……。


男は、すれ違うまでアタシに気がつかなかったようで、一瞬で過ぎ去っていった。

結構急な坂道だっただけに、止まることができず、そのまま下っていってしまったのだ。


アタシは、ヤツが戻ってこないうちに、全力疾走で家に帰る。


そんなわけで、かろうじて無事だったわけだ。





こういうことが、一度ではなく何度もあるということは、隙があるんだろうなと痛感する。

変な男に付回されたり、おたくっぽい人に好かれやすいのも、そのせいなのかもしれない。


これじゃ、いい女には程遠い……。



大切な人にだけ、特別な顔を持てる女になれるよう、努力せんとアカンな!!




そう強く思う。






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痴漢初体験の思い出

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日曜日のデートの帰り、アタシは電車の中で、いつものとおり「ありがとうメール」を打っていた。

終点駅が近いせいか、珍しく途中から4人掛けの席に座ることができた。


幸せそうな家族連れ、部活帰りの高校生、自慢話ばかりしているおばさんグループ……

電車に乗っていると、ちょっとした人間観察ができる。


そんな中、隣の車両から50歳前後の男がフラフラとこちらの車両へやってきた。
その男性は、席が空いているにもかかわらず、手すりに腰をかける。

なんだか妙な人だなと思いつつ、特に気にしないように努め、携帯をカバンにしまう代わりに本を取り出した。

読書はアタシの日課――むしろ癖に近いもので、時間さえあればどこでも本を開く。
ジムで一生懸命エアロバイクを漕いでいる最中でも、待ち合わせをしているときでも、そしてデートの帰りであっても……。


そのうち、アタシは本の世界に入り込み、男のことなどすっかり忘れてしまう。
そう、気配を感じるまでは。


なんとその男は、アタシの隣の席に座ったのだ。

もちろん、普通に座ったのなら、アタシも大して気に留めなかったと思う。

しかし、男の座り方はなんとも異様だった。


アタシは身体が小さいので、2人掛けの椅子だと、だいたい3分の1ほどしか占めないのだが、なぜだかその男とぴったりくっついてしまうのだ。
まるで満員電車で立っているときのように。

無性に嫌悪感を覚える。

アタシは、男の下敷きになってしまっているスカートの一部を引っ張り、さらに端に寄った。
するとその男はさらに身体を大きく伸ばす。

(いや、アンタのために端に寄ったんちゃうから!!)

哀しいかな、心の中で突っ込むしかないアタシ。


それほど大柄だとは思えなかったのに、どうしてこんなに狭くなってるんやろう……?? と不思議に思う。


しばらくして、男が口を開いた。

「あ、脚、伸ばしてな。いいから伸ばして」
「え? ……あ、はい」

伸ばすも何も、アタシの向かいには人が座っている。
いったいどこに伸ばせというのだ??

しかし、男はもう一度同じことを繰り返し、席を立った。

「どうもありがとう」
「え?」

アタシは何がなんだかわからないまま、男を見送る。

当然、次の駅で降りるんだろうと思いきや、男はまた別の席へ座った。


そんなふうにして、何度か席を変え、車両を変え、たった5駅ほどの間に、男はアタシの前を何往復もしたのだ。


結局その男が何者で、何のためにあんなにくっついてきたのかは謎なのだが、「いいから伸ばしてな」というその口調に、アタシはあることを思い出していた。




確か、小学校6年のときだったと思う。

アタシはいつものように、両親が買い物をしている間、1人、本の売り場で座り読みをしていた。

一度読み始めると、時間を忘れ、周りも見えなくなるアタシは、近寄ってくる人の気配にまったく気づかなかった。


ふと、お尻のあたりに誰かの手が触れ、アタシは思わず飛びのいた。

「あ、ごめんね」
「いえ、すみません」

アタシはてっきり、そこにいる男が本屋のおじさんで、在庫の棚を開けようとしていたのだと勘違いする。

しかし男は、アタシがそこをのいても棚を開けようとせず、
「ごめんね、いいからもう1回座って」
と言う。


「あ、大丈夫です」

座り読みをしていたことに少し罪悪感があったアタシは、慌ててそう答えた。

「いいから座って。もう何もしないから」
「……あ、はい」

お店の人がここまで言ってくれるなら……と、アタシは再び座ることにした。

すると、またしてもその男の手がお尻に触れる。
しかも今度は、かなり強くギュッとされた。

アタシはさっきよりも驚き、さっきよりも遠くへ飛びのく。

やっぱり棚を開けるのに邪魔だったんだ、と思い、
「大丈夫ですから、立ってますから」
と、アタシは男に言った。


「ごめんね、もう本当に何もしないから、座って」
「いえ、大丈夫です」
「お願い、座って」
「いえ、ホントに大丈夫ですから」
「いいからお願い、座ってよ」


ようやくアタシは気がついた。
この男は、本屋のおじさんではないことに。

そう、痴漢だったのだ。



アタシは、ごく自然に見えるよう、「大丈夫ですから」と言いながら、もっと人の多いコーナーへ移った。

しかし、どうしてもさっき読んでいた本の続きが読みたくて、30分ほど経ったころ、さっきの男が近くにいないことを確かめてから、また元のところへ戻った。

すると、どこで見ていたのだろうか、またそいつが現れたのだ。


アタシが逃げようとすると、その男はアタシの口に自分の指を突っ込み、その指を舐めながら走り去っていった。




しばらく放心していたアタシは、吐き気をもようし、トイレにかけこんだ。

口をイヤというほどゆすぎ、唇が腫れるほどこすった。

だけど、感触は一切消えず、身体は震えが止まらなかった。


自分は悪くないのに、その後一切、親にも友達にも話せなかった。

つまり、ずっと心の奥底にしまいこんでいた、思い出したくない記憶だったのだ。




本、奇妙な男、「いいから~して」……

たったそれだけのキーワードで、いとも簡単に幼い頃の苦い記憶がよみがえってしまった。


今回、電車の中で出会った男は、単にちょっと変わった人だっただけなのかもしれない。

だけど、アタシが抱いた嫌悪感は本物で、警戒したのは事実だ。


自分でもわからないほど奥深くで、知らず識らずのうちに、トラウマになっているのだろうか。



こんなことぐらいでどうして? と自分に問いかける。
そして、自分が思っているほど強くはないことに、ようやく気がつく。



強くないなら強くないなりに、しっかり素直にならなければ、そう痛感した。



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