禁断の……

テーマ:
さんざん、恋人に対する熱い想いを書いておいてなんだけど、実はアタシ、とってもひどい女なのです……。




 妻子ある男性と…………。







それは2年以上も前のこと。
恋人とは、まだ付き合って1年にも満たない頃で、“プチ遠恋”に少し不安を覚え始めていた。

彼自身には何の不満もなかったのだけど、仕事を続けたいアタシにとって、通えない範囲に住む彼との結婚なんてまず考えられなかったし、そんな人とこのままずっと、付き合っていっていいものかどうか、すごく悩んでいたのだ。

他人に相談するのが苦手なアタシは、それでも誰かに話を聞いてほしくて、友達がハマっているというチャットというものを、初めて利用してみることにした。


そして、そのチャットで出会ったのが、妻子持ちの彼。
歳や住む場所が近いこともあり、すっかり意気統合して、メル友になったのだ。

彼に、奥さんと子供がいることは、しばらくしてから聞かされた。
でも、もちろんアタシたちは恋人同士でもなんでもない、ただのメール友達。
残念に思う気持ちはまったくなく、むしろ、めんどくさい関係になる心配もないだろうと、安心したのだった。

彼は、アタシにいろいろなことを話してくれた。
そしてアタシも、彼になら恋人のことを素直に打ち明けられ、素直にアドバイスを聞くことができた。
本当にいい関係だった。


しかし、変わったのは彼のほうからだった。
アタシたちは、顔を合わすことなく、ひたすらメールと電話だけでやりとりしていたのだけど、次第に彼が口説いてくるようになったのだ。

顔も見たことないアタシに対して、「好きやで」などと言ってくる彼。
初めは冗談だと思い、軽く流していたのだけど、そんなアタシの態度に彼は不機嫌になる。

「俺はこんなに想ってるのに、栞は信じてもくれへんのや」

本来のアタシなら、ここで「ウザいヤツ!」と感じるところなのだけど、なぜかちょっぴり愛しい気持ちになってしまった。


とはいえ、彼は妻子持ち、アタシにだって恋人がいる。
倫理的には赦されざる恋。

アタシは正直、自分で自分のことがわからなくなってしまった。



自分には、同時に2人の人を愛することなんて不可能で、浮気なんてする人の気がしれないと思っていたのに……。

結婚している人を好きになるなんて、絶対にあり得ないことだと思っていたのに……。




まるで、アイドルやアーティストを好きになるように、恋人への想いとは別の場所で、愛しく感じてしまっていた。



チャットでの出会いから1年以上が過ぎ、アタシたちは初めて顔を合わすことになった。
その日は、最後に少しキスをした程度で済んだのだけど、その次に会ったとき、アタシたちはどうしても衝動を止められなかった……。




恋人でもないけど、友達でもない。
これも一種の、“友達以上、恋人未満”ってヤツなのだろうか。

例えば、同日同時間、友達と恋人の両方からお誘いがきたとする。
アタシの場合、当然、恋人の誘いを受けるだろう。

ならば、友達と妻子持ちの彼から誘われた場合はどうだろう。
きっとアタシは、妻子持ちの彼の誘いを受けると思う。

では、妻子持ちの彼と恋人だったら?
もちろんこれは、恋人を取る。

そういう意味においても、妻子持ちの彼については、“友達以上、恋人未満”が当てはまるのかもしれない。



(アタシと彼だけの秘密の一夜、そのうち詳しく話します)
AD

仕事が好きな女

テーマ:
昨日(日が変わったから一昨日か……)、取材のために東京へ日帰りで出張した。

なかなか疲れるけれども、それよりも任されているという実感が湧き、嬉しさのほうが勝る長距離出張。
アタシって、本当に仕事が好きなのかも……とつくづく思う。


出張の前日、恋人にメールをした。
「明日、東京へ日帰りで出張やねん」

すると、彼は冗談交じりに、
「え? SHOCKじゃなくて(笑)」
などと書いて送ってくる。

そして、でもちゃんと、
「仕事、頑張ってな」
と、付け加えてくれるから、優しいな、と思う。


でも、アタシはいつも考えてしまう。
本当はこういうとき、男性はどう思っているんだろう……と。
いや、男性は、というより、彼はと限定すべきなのかもしれない。



アタシは短大を出て今の仕事に就いたので、もうすぐで丸4年になる。
彼と知り合ったのは、1年目の終わりごろ。
つまり、仕事を始めた当初、彼とは出会っていなかったのだ。

だから、新入社員の心構えとして、上司や先輩から、「結婚したとしても続ける気はあるか?」というような質問をされたとき、迷わず、
「ずっと続けたいです」
と答えた。


だからなのか、今アタシは、専門性の高い仕事や、独自性の強い仕事を任せてもらえるようになっている。
裁量の幅も広がってきた。

このまま今の仕事を続けることを前提に、
「将来、こういう方向も考えてみるといいよ」
などと、アドバイスしてくれる上司もいる。

彼に出会う前のアタシなら、心からそれを嬉しく思い、意欲的になっただろうと思う。
だけど、実際問題、このまま彼と結婚するようなことになれば、今の仕事は続けられない。

通勤時間に3時間近くもかけていられないし(それこそ、東京から新幹線で通うほうが早いかも……)、第一、彼は親の経営する仕事場で働いているので、そっちの手伝いをしなければならないかもしれない。

まぁ、そんな心配をしなくても、その前にアタシが彼に捨てられてしまうかもしれないけれど……(苦笑)



でも、もし仮に、彼がアタシのことを結婚相手として少しでも意識してくれているとすれば、アタシの「仕事が好き」的な態度をどう思っているのだろう?

あの人のことだから、そんなことなぁんにも考えてない、ということも充分にありうる。
しかし、彼もいいかげん、27歳。
相手はともかく、結婚そのものについて、まったく考えてないということはないと思う。


優しい彼のことだから、仕事が好きなアタシを結婚で縛るのはかわいそうだと思っているかもしれない。

彼を悩ませたくなくて、アタシはできるだけ仕事の話をしないようにしているのだけど、自分のことを知ってほしいという思いももちろんあり、褒めてほしいときなんか、嬉しそうに報告してしまう。

それがかえって、彼の目に「仕事好き」に映ってしまう可能性があるとも意識せず。



もっと、周りの同期たちのように、「結婚したら絶対仕事辞める!!」なんて可愛いことが言えるようになれたら楽なのにな。
もしくは、「アタシは結婚なんてせずに仕事に生きる!!」とバッサリ宣言できるものなら……。


仕事好きとはいいながら、結局、中途半端なアタシ。
女の幸せを、1つに絞れない欲深い女。


あぁ、ホント可愛くない……。

もっと、心を成長させなければ!!
AD

祝☆3年!!

テーマ:
2月19日、彼氏と出会ってから、丸3年。
ここで、「付き合ってから……」と書けないのは、アタシたちの出会い方に原因がある。



3年前、アタシたちは、お互いの知人を通して知り合った。
実際に彼と話した時間は30分ぐらい。


アタシが感じた彼の第一印象は、「お、悪くないかも!」だった。
そして彼のほうはというと、なかなかに口がうまかった。

「うわぁ、びっくりしたぁ~」
それが彼の最初の言葉。

「何がですか?」

どこかで会ったことあったかな? などと思いながらアタシが尋ねると、
「いや、キレイな人やな、と思って……」
なんて、サラッと返す彼。

21歳の純情なアタシは、それを真に受けて、ドキドキしてしまう。

「えぇ、何言ってるんですかぁ!!」
「いや、ホンマホンマ。今まで会った中で一番やと思う」
「そんなわけないじゃないですか!」
「嘘ちゃうよ! まぁ、一般的にどうこうじゃなくて、あくまでも俺目線でやけど……」
「え~、でも……」
「はっきり言って、俺は好みやわ」


飄々とそう言ってのける彼に、アタシは心をかき乱された。


(見た感じ、そうは見えないけれど、こんなに口が達者なら、結構、遊んでる人かもしれないな)
マジメで世間知らずだったアタシにとって、彼の口説きはそんなふうに映った。

(でも、言われて悪い気はしないな)
マジメで世間知らずだったアタシは、落ちるのも実に簡単だったのだ。


その日のうちに連絡先を交換するようなことはなかったが、結局、知人を介して携帯の番号を教え合い、ほどなくして彼からデートに誘われたのだった。





初めてのデートは、京都だった。
彼は仕事休みだったのだが、アタシは仕事帰りだったため、アタシの仕事場に近い場所で待ち合わせたのだ。

京都タワーを一望できる、お洒落なイタリア料理店で、ワインで乾杯をする。
シチュエーションこそ完成されていたが、彼は初対面の時ほど饒舌ではなく、それがかえってアタシに安心感を与えた。

これがもし、このロマンチックな雰囲気の中、女心を揺さぶるような言葉ばかり吐き出されたならば、本当に遊び人だと思ったに違いない。

そういうことを計算できるような人ではないと、今になればわかるけれども、実に巧いなと思った。



食事のあとは、彼の車でドライブ♪
(い、飲酒運転!? もう時効ですよね……アセアセ^^;
 ごめんなさい、今はもうしてませんので、見逃してください!
 それから良い子の皆さんは真似しないでください)


山を越えて滋賀へ抜け、琵琶湖の湖岸で彼は車を止める。
対岸のネオンが見えて、とても綺麗だった。

少し外へ出てみる。
季節が季節だけにやはり寒くはあったけれども、の力なのか、とても空気が澄んでいて気持ちよかった。

アタシたちの話し声は、に吸収される。
しばらくそうしていると、だんだんと車が集まってきた。
どうやらここは、知る人ぞ知るデートスポットらしい。

アタシたちは車に戻ることにした。


「外出てたから、手がめっちゃ冷たいわ(泣)」
「冷え性?」
「うん、かなり……」


アタシが、冷たさを通り越し、すでに感覚のなくなりかけている手をこすり合わせていると、
「ちょっと貸して」
と言って、彼がアタシの手を包み込む。

「あったかい……」
アタシは、少しドキドキしながら、でも平気なふりをしてそう言った。

「良かった」
「何が?」
「ん? こうやってさ、手を握っただけで、『きゃあ』とかって声をあげられるかと思ってた」
「ほぉ、そうなんやぁ」


確かに、手を触れるだけでこんなにドキドキしてるんやから、あながち間違いではないかも、と少し思った。


「お、だいぶあったかくなったね」
「うん、かなりあったまった! ありがと♪」

なんとか自由に動くようになった指を、彼の手の中からするりと抜く。
すると彼は、自分の座席を倒し、寝転がった。

アタシは、妙に居心地が悪くなり、窓の外を見ていることにした。
彼の視線を感じるけれど、振り向くのが怖い。
しばらくすると、座席はそのままで起き上がった。
「あのさ、さっきから思ってたんやけど、隣の車、あやしくない?」

窓の外を見ていたにもかかわらず、彼の視線にばかり意識を向けていたせいで、アタシは隣の車のことなど、気にも留めていなかった。
しかし、彼にそう言われて見てみると、確かに中で動く影が見える。

「すごいなぁ、こんなとこで。車汚れるやん」
「うん、そやね……」


彼と出会う前まで付き合っていた人と、車の中で初体験をしてしまったアタシは、とりあえず、あいまいに微笑んでおいた。


「あぁ、なんか眠くなってきた。ちゃんと家まで帰れるかなぁ……?」
「え!?」
アタシが相当心配そうな顔をしていたんだろう、彼はクスッと笑い、
「大丈夫。ちゃんと送っていくから」
と、アタシの肩をたたいた。

アタシは妙に恥ずかしくて、彼から目を逸らす。
「ねぇ、もう一回、手貸して」
そう言うと、彼は自分の手の平を見せるように、アタシの前に広げた。
アタシは、自分の手をその上に重ねる。
「ちっちゃいなぁ、ホンマ」
彼はそう言って、ギュッと握った。

胸がキュンとなり、彼がさっき言ったことを思い出した。


  「手を握っただけで、声をあげられるかと思った」


彼も同じことを考えていたらしく、
「手は大丈夫なんやな」
と、小さくそう訊いた。

「うん、大丈夫」
アタシも小さく答える。

「じゃあさ、キスは?」
「え!?」

驚いて彼を見ると、彼は目を逸らせた。
「……う~ん、種類によるかな」
「種類?」
「あんまりディープなのは……」
「フレンチキスぐらいがいい?」
「う~ん、もうちょっと大丈夫やけど」


アタシのあいまいな答えに、彼はニヤッと笑った。
「自分からキスしたことある?」
「え? 自分から??」
「そう、自分から」


アタシは過去のそういう出来事を思い返してみる。
そう言えば、エッチの途中で自分からキスしたことはあったかな。
でも、それ以外ではないかも。

そこで、
「ほとんどしたことないなぁ」
と、答える。
「ふぅん」
彼は、満足そうな笑みを浮かべた。

「じゃあさ、俺がもしこのまま寝てしまったら、チューして起こしてくれる? そしたら目が覚めるし」
「何言ってるの?」
「約束やで!」
「ちょっと、そんなんしぃひんで!!」
「いやいや、よろしく」


彼はそう言うと、手を離して寝転び、目を閉じた。


「うそぉ、マジで??」
彼は、目を閉じたままうなずく。
「もう、騙されたぁ」
すると、彼は首を横に振った。

(キスをして起こすなんて、絶対できひんわ。そのうち諦めてくれるやんな!?)
そんな気持ちでしばらく彼を見ていると、彼は本当に寝息をたて始める。
(うそぉ!! なんでこんなことになってるの?)
アタシは、何の気なしに寝ている彼が少し憎らしかった。

「ねぇ、ちょっと、冗談やめてよ、起きて!」
もう、アタシの言葉に彼は反応しない。


(アタシ、家に帰れるのかなぁ? こんな時間になって、絶対帰ったら怒られるやろなぁ。どうしよぉ)
もう、不安で不安でしかたなくなる。


しかし、どうにもできず、寝ている彼の横で、また窓の外ばかり見ていた。
さっきのあやしい車はもういなくなっている。


それからどのくらいの時間が経ったのだろうか。

「なぁ、早くしんと、家に帰れへんで」
後ろから、彼の声が聞こえた。
今までのがたぬき寝入りだったのか、本当に寝ていたのかはわからないけれど、とにかく説得するチャンスだと思った。

「ねぇ、起きてよ」
「じゃあ、チューして。してくれなかったら起きひんよ」
「え~」


彼は、本気で起きる気がなさそうだった。

アタシは小さくため息をついた。
「わかった。ちょっと待ってや」

後ろを向き、座席にひざ立ちする。
そして……

彼の唇に自分のそれを重ね合わせた。


たっぷり3秒ほど、そうしていたように思う。
自分の席に戻ったアタシは、恥ずかしさのあまり、手で顔を覆った。
彼はアタシの頭をなでる。
「もう、めっちゃ頑張ったんやから!」
「うん、偉い、偉い」


そう言うと、彼はアタシの手をつかんで顔の前から取り払い、身体をひねってすばやくキスした。
「これくらいなら大丈夫?」
一瞬何のことかわからなかったが、すぐに“キスの種類”のことだとわかり、アタシは小さくうなずいた。
そして、再び何度かキスを繰り返し、ギュッと抱きしめられる。

「……心臓の音が早い」
アタシの胸の中で彼がつぶやく。
「ヤダ。聞かんといて!」
「大丈夫。俺もドキドキしてるから」


彼はそう言って、逃れようとするアタシを押さえ込んだ。

「あぁ、もうこのまま襲ってしまいたいわ」
アタシは、何と答えていいものかわからず黙っていた。
「でも、それはアカンから……」
彼は、自分で自分に言い聞かせるようにそう言って、目を閉じる。

このまま彼が眠ってしまったらどうしようとハラハラしていると、彼が薄く目を開けて、アタシを見上げた。
「大丈夫。ちゃんと送ってくよ」
「え?……うん」
「そんな不安そうな顔して」

彼は小さく笑った。

「さて、じゃあそろそろ帰るか」
「うん。……まだ眠い?」
「大丈夫。さっきのキスで、君を送り届けるまでぐらいはもつから安心して」
「そのあとは?」
「まぁ、途中で仮眠でもとって、ゆっくり帰るよ」

そう言いながら、彼はカーナビのリモコンを取り出した。

家の住所を告げ、彼が入力すると、最短ルートが出てくる。
それにもとづいて、彼は車を発進させた。

「ごめんね、遠くまで送ってもらって。帰るのかなり遅くなるよね」
「いや、こっちこそ、こんな遅くまでごめんな。家、大丈夫?」
「うん、たぶん……」

本当は、ちっとも大丈夫なんかじゃなかったけれど、自分自身の希望も込めてそう言った。

「お父さん、怖いんやっけ?」
「うん……でも、大丈夫やと思う」
「そんな厳しい家やのに、門限ないの?」
「うん、今まで遅く帰ることもなかったし」
「あぁ、そっか。いい子やしな」

そんな会話をしながら、さすがは真夜中、車はどんどんと進む。
早く帰らなきゃ、と気が焦る。
でも今さら何分早く帰ったところで、きっと怒られることに変わりはないだろう。
とたんに帰るのが嫌になる。

しかし、今、何を思ったって、事態は変わらない。
アタシはなるべく考えないようにして、彼が眠くならないよう、いろいろと話しかけていた。


家の前に到着すると、彼は、
「今日はありがとう」
と言って、アタシの手をギュッと握った。

「こちらこそ、ありがとう」
「また誘ってもいいかな?」
「うん、また誘って」


アタシたちは、すばやくキスを交わし、別れた。


時間は2時だった。
もちろんアタシはものすごく叱られた。
そして、とうとう門限ができてしまったのだ。
「その日のうちに帰ってくること」と。




そういった経緯で、アタシたちの関係はスタートした。
「付き合ってほしい」などと言われたことは一度もない。
でも、アタシたちはお互いを恋人だと認めている。

「ホントにそれって付き合ってるの? 遊ばれてない?」
と、心配してくれる人もいる。
でも、初めこそ大胆だった彼も、実はそんなに器用ではなく、お互いに手探りで気持ちを確かめ合ったりすることも多い。


出会って3年。
だけど、“プチ遠恋”のアタシたちは、会った回数は多くない。
1週間に1度、デートするカップルにしてみれば、まだ1年にも満たないのだ。

でもそんなことは関係ない。
アタシたちはアタシたちのペースで、お互いがお互いを求める限り、一緒にいられるといいな。

AD