sub rosa♪ギイ&託生の二次小説BLブログ

sub rosaが綴るタクミくんシリーズ♪二次小説♪
原作からはかなりかけ離れたパラレルワールドになります。
ご興味のある方はどうぞ♬


テーマ:

『今日は亀さんと一緒に金太郎さんのリサイタルに着て行くスーツを買いに行って来ました。亀さんのチョイスにカナリアはビックリっ!似合ってるかなぁ〜?亀さんに頼んで写真を撮ってもらいました』

 

アイツは何をしにアメリカに行ったんだ。

章三は見ていたサイトを閉じるとタブレット端末の電源を落とし、鞄の中にいささか乱暴に突っ込んだ。

 

「必ず連れ帰る」

 

決意を固めて窓の外を見てもフライト中なので青すぎる空と真っ白い雲しか見えないのだが、章三は決意を固めた現れとして爪が食い込むほど硬い握り拳を作り、スーツの膝の部分に拳を押し当てた。

 

入院先の病院については尚人さんから教えてもらっていた。

託生は手術が終わったらすぐに帰国すると言ったのに・・・

お姫様の投稿によると未だ、声帯再建術を受けていない。

リンパに癌が転移してしまったら託生は声を出す術を完全に失う。

それどころか生命までも脅かされる。

 

章三がアメリカに行くに当たって葉山物産の役員からは託生の家族の事は口外しないでくれ、と言われていた。

このブログの内容から察するに託生は家族の事故を知らず、また家族に関する記事が一切、載っていなかった。

 

『義一君。このキツネとタヌキの間に生まれた金太郎ってもしかして僕の事?』

 

亀による投稿で井上 佐智のハンドルネームは正式には、『天上の音楽で下界にいる人間のみならず、デウスまでをも騙すキツネとタヌキの間に生まれた金太郎』、となった。

 

「ナイスネーミングだろ」

 

髪型もおかっぱで金太郎とそっくりだ。

誰もキツネとタヌキの間に生まれた金太郎が麗しの井上 佐智だとは思うまい。

これでも佐智に憧れている託生や、全世界で佐智を目標に頑張っている、罪もない子羊たち(主にバイオリニストだが)の夢を壊さないように、ブログに王子様やお姫様が登場している事から苦心して可愛く仕上げてあげたのだ。

文句どころか、礼を言ってもらいたいくらいだ。

 

『まだあの事、根に持ってるの?』

「当たり前だ。託生は好きで病気になったんじゃないんだぞ」

『謝ったでしょ?それとも他に何か要求でもあるの?』

 

———要求・・・

カナリアの囁きを目にした事がある者は皆、カナリアの歌声を訊きたいと思っているだろう。

 

「要求はただ一つ。託生に声帯再建術を受けさせる事だ。それが佐智にできたら許してやる」

 

それができなければ一生、佐智を許さない。

ギイの怒りはそれほどまでに強く、深かった。

 

『もしかして、恋、しちゃった?』

 

佐智まで父親と同じ事を言う。

 

「んなわけねえだろ。相手は男だし、喋れないんだ」

『聖矢さんだって男性だよ。性別なんて関係ない。義一君は託生くんが話せないからこの恋を諦めようとしているんじゃない?『愛してる』って自分に言ってくれないから。だから声帯の再建術を受けさせたいんじゃない?』

 

肉体経験だけは豊富なギイだったが今まで恋をした事は一度もない。

だからそれが正しい答えなのか、それすらもわからないのである。

 

「病院の敷地内に入るから切るぞ」

『Fグループとかしがらみに囚われないで自分の気持ちに素直になって』

 

佐智の言葉も安っぽく感じる。

託生に恋をしていると認めれば宮内庁の人間がギイと託生を引き離しにくる。

初恋は実らないものだとよく言われるが、遅い春だからこそ実らせたい。

例え託生が話せなくても傍に置きたいと思う。

これは本当に恋なのか?

 

リムジンを降りて病院の正面玄関を潜るとすでに顔なじみになった警備員が面会バッチを箱から取り出し、ギイに渡す。

行き先は決まっているのでギイの代わりに警備員が先回りしてギイの名前と託生の病室番号を面会者のボードに書いてくれるのだ。

 

『いつもありがとう』

 

満面の笑みで警備員に声をかけるギイの後ろから身なりの良いスーツを着た男性がギイの隣に立ち、

 

『葉山 託生の病室は?』

 

ネイティヴな発音とは言い難い、明らかに日本人が発する米語に隣を見る。

スーツとは不釣り合いな使い込んだ大きなボストンバッグを下げたその男をギイは凝視してしまう。

この男は宮内庁の人間か?

だが、かなり若く見え、ギイと同年代のようにも映る。

 

「オレも託生の病室に行くんだ。一緒に行かないか?」

 

あえてギイは男に日本語で話しかけた。

男は頭のてっぺんからギイの革靴の先までしげしげと眺める。

 

「アメリカは初めてなんだ。案内してくれると助かる」

 

面会者のボードによると男の名前は赤池 章三。

託生の病室に着くまで話をして得た情報によると、幼稚園から託生が渡米する中学卒業まで託生と机を並べていたそうだ。

病気治療のために高校受験をしなかった託生とは違い、健康な赤池は高校受験、入学をし、学校が夏休みに入ったので小遣いを奮発してスーツを買い、アメリカまで見舞いに来たと言った。

 

「キミは託生とどういう関係?」

 

託生の病室に着くまでに赤池の情報を盗み取る。

それは赤池も同様だった。

 

「湖に落ちた託生を助けた。君は?」

「僕は託生と将来を誓い合った仲だ」

 

赤池の言葉にギイは奈落の奥底まで落ちていく絶望に見舞われた。

 

———やはり、自分は託生に恋をしていた。

赤池を目の前にして、ギイは初めて自分の気持ちを悟った。

 

託生の病室に案内すると言った手前、ギイは淡々と廊下を歩いていたが、本心は逃げ帰りたかった。

赤池の前で託生は素の自分をさらけ出すのだろう。

そんな嬉しそうな託生を見たくなかった。

 

「どうやらキミも託生に惹かれているようだね」

 

ギイよりも長い年月、託生の傍にいた赤池は勝ち誇ったように言う。

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