BLACK × SHIGETO

曲技飛行士の日記


テーマ:
今回、はじめてレッドブルエアレースを自分の目で見ています。

昨日の予選前のトレーニングフライト、および予選フライトを見ての解説をしてみたいと思います。

会場(およびおそらくRedBull TVでの放送でも)では元エアレーサーのSteve Jonesの解説が流れていますが、英語とアラビア語の翻訳のみが流れているため日本人の方にはわかりにくいことが多いかと思います。一緒にいる日本人の方にはなるべくそこらへんの解説を多く話しています。

やはりこのレースの見るべきポイント、選手それぞれの違いなどは解説できる人がいなければわからないのでそこをきちんと見る人に提供してあげなければこのレースの魅力が半減してしまいます。



さて、

3年間の休止をへて復活したレッドブルエアレースですが、注目すべき変更点はこれです。

①エンジンとプロペラの共通化。
このルールによる効果は3つあります。
・フェアな環境、パイロットスキルによるタイムの違いが出やすくなります。
・安全性の向上、エンジンはチューンするほど止まる可能性が高くなります。
 またプロペラにカウンターウエイトを搭載したものを義務とすることで
 エンジンが止まった際の滑空性能を確保しています。
・チーム運営資金の高騰を防ぐ。F1と同じようにはなりません。

②レーストラックの簡素化
かつてのクワドロ(強烈なGを持続させて旋回をするゲート)やナイフエッジ(90度バンク姿勢)通過ゲートの廃止により、レーストラックがシンプルなものとなりました。
これは安全面の考慮とゲート通過時の姿勢判定の難しさから変更されたものです。
トラックがシンプルになった分、各選手のタイムは切迫し、より精度の高い飛行が求められます。

③10Gリミット
パイロットが機体にかけていい最大のプラスGが10Gまでに引き下げられました。
これも安全面からの変更です。この制限を超えたフライトは記録となりません。10Gまでに制限することでパイロットが実際に使用するGは、9.5Gが上限となるでしょう。人によっては9.0Gまでの使用を自分にかしているかと思います。それは突風成分などの予期せぬGの変動やパイロットのミスによって10Gリミットを超えることを防止するためのマージンです。

とくにスピードが早いRound 1(各パイロットはトラックを2周まわって1つのタイムを出します、そのうちの1周目がRound 1)ではわずかな力で大きなGをかけることができるので、パイロットは操縦桿の引き方に気をつけなければいけません。パイロットはレーストラックを飛行中は計器を見る余裕がないので、計器盤のGメーターではなく、ヘッドセットから聞こえるG sound systemの音をたよりにその瞬間のGを把握しているはずです。

(体感では精確なGの量はわかりません)このシステムはあらかじめ設定したGの規定値に近づくほど「ピピピピ」という音の間隔が早くなっていくというものです。


この他にもルール変更点がありますが、注目すべきはこの3点のみかと思います。




さらに機体について。

現在レースに使用されている機種は(マスタークラスに限り)下の4種です。

エッヂ 540 V2(曲技機のノーマルエッヂをレース用に改良したもの)
 ポール(UK), 室屋, ニコラス(FR), マイケル(USA)の4人が使用
エッヂ 540 V3(エッヂの最新型、V2に比べ空力の改良、約70KGの軽量化)
 マーティン(Czech), カービー(USA), マティアス(Ger), ハンネス(Austria), ピート(Canada)の5人
カーバス(世界で1機のみつくられたハンガリー製のレース専用機)
 ピーター(Hun)
MXS-R(曲技機MXSをレース仕様にしたもの)
 ナイジェル(UK), マット(Australia)

この中で最も前評判の良い機種がEdge 540 V3です。
おそらくこの機種が今シーズン以降の主力機種となっていくでしょう。

V2を使用している中でも改良がすすんでいると思われるのはポール・ボノム(これまで2回のワールドチャンピオン獲得)のV2や、室屋さんのV2でしょうか。
トレーニングと予選を見た中で、ポールはパイロットの技術としては間違いなく一番でしょう。
古いタイプでどうトップ集団にくいついていくか注目です。

室屋さんのV2もかなりの空力的改良がすすんでいます。もはやノーマルエッヂの原型が見えないほどになっています。

V3を使用する中での大本命はハンネス・アーク(ワールドチャンピオン1回)
さらにエッヂを作っているアメリカのZivko社と最もかかわりの深いカービーがZivko社からどのようなサポートを受けているのか気になるところです。

カーバスという機体を使うピーターについては未知数な感じがしていましたが、
飛び方を見てみると、カーバスは他の機種より大きく、ルール改訂前に設計されたということで今回のレースで使用される540エンジンでは本来の力が発揮できていないような気もします。さらにカーバスを設計製造した会社はもうつぶれてしまったので大幅な改良を加えることができないでしょう。

以前のレースではZivko社とMX社の2つが公式にサポートに加わっていたのですが、MX社が撤退したため、MXを使うパイロットが大幅に減ってしまっています。今シーズンはナイジェルとマットのみ。MXはカーボンファイバーの一体成型なので機体に空力的な改良をほどこすことが難しくなっています。以前はMX社が次々に多くの改良を行って機体を供給してくれていました。そのサポートがなくなったいま、MX勢は苦しい戦いを強いられてくるでしょう。

MXを使う2人のうちナイジェルのMXS-Rはとても特徴的なウィングレット(翼端の板)を装着しています。ここまで大きく大胆なウィングレットを使用しているのは全機種の中でナイジェルただ一人です。レースでは速いスピードで急激なターンを行います。このターンをしている最中には翼端から翼端渦と呼ばれる空気の渦が大きく生み出されます。この渦によって大きな抗力が発生し、機体の速度エネルギーを消費していくわけです。この渦の発生をいかにおさえるかがキーとなるのですが、ただ翼端に板のつければいいというわけではなく、大きなウィングレットを装備すればそれ自体から大きな抗力を発生させます。さらに直線での加速に悪影響を及ぼす可能性があります。ウィングレットの装着にはそれなりの研究、試行錯誤を経なければ意味をなさないので他のパイロットでここまでのウィングレットをつける人はまだ出てきていません。

ナイジェルのフライトを見た限りでは、シケインという旋回をすばやく切り返して飛ぶ部分での速度が他の機体に比べて速いかなという印象を受けましたがきちんとした区間ごとのタイム、コースどりなどのデータを分析しなければ結論は出せません。

マットのMXS-Rはそれほど外見からわかる改良はありませんがナイジェル、マットのどちらも良いタイムを出しているのでそれだけMXの基本性能が高いということなのかもしれません。
MXは他の機種に比べて空気の中をすべっているような飛び方を見せるのですが、ナイジェルもマットもまだ機体を使いこなしていないような印象を受けます。具体的には不必要な細かい動きが多々見られるということ、マットについてはとくにハーフキューバンという技の中でループ部分から直線下降部分に移るさいに不必要な操縦桿のプッシュが毎回見られます。もしかするとMXの操縦翼面がレースには敏感すぎるのかもしれません。


いろいろと書いてしまいましたが、マニアックになりすぎたかなぁ
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今年のユーロピアンは天候に恵まれ、プログラム1~4までの全プログラムを消化して閉幕することができました。

快晴の日が続き、日中の気温は40度Cにまで達していました。

フランスに比べて少し湿度も高いようで日中は少々不快です。
自分はフランスチームと共に行動することが多く、自分のフライト前後なども彼らが手伝ってくれました。

自分のフライト順の直前まで機体をハンガーの影の中におき、自分はコックピットにおさまり、エンジンスタートの直前に機体を彼らが押し出してくれます。

ハンガーの影から出たあとも、日傘と飲料水をは必需品で、彼らがもっていてくれます。


チームとして出場しない自分にとってはこのようなヘルプがあるのはとても嬉しいことです。


(フライトの後、シモンからのダメだしを受けてるところ↓
このフライトでは自分のスピンエントリーがダイナミックすぎ、ありゃPZ(パーセプショナルゼロ)かね~?、と2人で話してました。結果はPZはくらいませんでした。)



今選手権ではフランスチームが表彰台を独占。

総合成績では、

優勝:シモン(昨年の世界選手権では準優勝)
準優勝:オルロウスキィ(今年の全仏エクセロンス優勝)
3位:ホマ・ファル(今年の全仏アドバンスド優勝)

上記3名の実力者が接戦を繰り広げていました。


ロシアチームのパイロットたちはところどころで大きなミスを出し、全プログラムを通してパーフェクトに近い演技をした人がいませんでした。


一方、


自分のフライトは。。

プログラム1(規程演技) → 26位。
プログラム2(自由演技) → 43位。
プログラム3(アンノウン1)→18位。
プログラム4(アンノウン2)→12位。

という具合でしたが、


自由演技でゼロをとるというまたとないことをしてしまい、
期間中にどうしてこんなにうまくいかないのか、と不思議に思い調べてみました。


すると、なるほど!
と思えることが色々みつかりました。

一流のスポーツ選手にとってメンタルトレーニングを行うのは当たり前のことですが、
自分はいまだかつてトレーニングを受けたことがないんですね。

メンタルに関する基本的な知識すらもっていないことがわかりました。


例えば、簡単なことですが、
心・技・体の3つの側面から自分の状況を分析することで、自分が理想的な状況に比べてどこにいるのかがわかります。

心:
緊張、不安、興奮、リラックス、集中などの要素から自分の心理状態を把握できます。
選手がピークパフォーマンスを発揮するゾーンの位置もそれらの要素でわかります。
ゾーンの位置というのはそのスポーツの種類や選手の特性によって異なりますが、曲技飛行はアーチェリーなどのゾーンに近いはずです。
プログラム1、2のときの自分の心理状態はみごとにこのゾーンから離れた位置にいました。

技術:
選手権前に8日間のオフをはさんだことで、明らかに感覚がにぶる、忘れる、という状態でした。オフィシャルトレーニング、プログラム1、2、3と飛行を重ねるごとに感覚がもどったように思います。

身体:
朝の目覚め、熟睡度、疲労感、ケガ痛みの状態、食事の摂取状況など体のコンディションを把握する要素がたくさんあります。
心と体は連動するので、普段から心の状況、身体の状況をモニタリングしてその関連性を見ておく必要があるそうです。



心理状態とはつまり脳の状態のことで、
脳から四肢に伝わる信号をいかに邪魔させずにスムーズに届けられる状態を作り出すのかが大事なようです。うまくいかないときは学ぶ事がたくさん出てきて勉強になります。



(選手権後半にはリトアニアの3人組が観戦?サポート?にきてました↓
選手権後にはワルサワの空港まで車に乗せていってもらいました、たすかります。)


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今回はある人のことを紹介します。


去年(?)もちらっと書いた覚えがありますが、

その人の名はロベール・ロメオ


この人の名前はカタカナにすると発音とかけ離れてしまって違和感があります。。


自分と同じ機体を使って一緒に練習していますが、この人はなんと69歳。

現役の最上級カテゴリーを飛ぶ選手です。


曲技を始めたのは50歳を過ぎてからだそうで、競技歴は20年弱となります。


(シャーロンではメラニー、ロベール、自分の3人で練習しました↓)


そのぐらいの年齢で曲技を飛ぶ人は世界中にたくさんいますが、クラシックスタイルのアンリミテッドで現役として飛ぶ人はほとんどいません。

なぜならクラシックのアンリミテッドはキツいから。

身体的にも精神的にも。


なので、たいがいの人はエアショーや4min. フリースタイルに移ります。


ロベールはエアショー系には興味がないようです。




この人と話をしていても、とても69歳とは思えないような話し方をします。

毎日アンリミテッドのシークエンスに挑戦していくその姿には尊敬の念すらいだいてしまいます。すごい。。。


自分がアドバンスドでさえ、飛んで降りるとぜえぜえ言ってるのに、ロベールは降りてからもぴんぴんしてます。1日3回飛んでもへっちゃら。


はたして44年後の自分は、ロベールのような姿を若いパイロットたちに見せることができているだろうか。。。


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