2009-05-24 23:15:51

グランドの神様⑥

テーマ:お話

結局・・・ほとんど眠れず朝がやってきた。




「おはようございます。岡田さん、検温です。」


看護師さんが部屋に入ってきた。


「おはようございます。」


私は体温計をもらって体温を測り始めた。


「ちょっと脈、測らせてね。昨夜、おトイレは何回行きました?」


「1回です。」


「大丈夫でした?」


「はい、松葉杖でなんとか・・・・」


(ピピピピ・・・)


体温計のアラームがなった。


「はい、体温計出して・・・6度5分ね。


 じゃ、血圧を測りますね。」


「はい・・・・・」


全ての作業が終わると看護師さんと今日の検査のことを


私に伝えた。


「8時半に佐々木先生の回診があります。その時手術のお話を


 聞いてください。


 9時から検査です。お昼には終わりますからね。


 それから昨日も申し上げましたが水分は取らないでいてくださいね。」


「はい・・・」


看護師さんはそう言うと部屋から出て行った。




8時半、昨日私を診てくれた佐々木先生が部屋にやってきた。


「足は痛みますか?」


「いいえ・・・ただちょっとしびれている感じがします。」


「そうですか・・・・え~っと手術のことですが・・・


 明日の10時に手術を開始いたします。」


「あの~手術って・・・痛いですよね?」


「麻酔をしますから痛みは感じないと思いますが・・・ただ・・・」


「ただ・・・?」


「アキレス腱を縫合する時にほんの少しだけね・・痛みはあると


 思います。でもなるだけ苦痛を最短にしますよ。


 時間は最長で一時間半。最短で50分くらいです。

 

 傷跡もなるべく目立たないよう縫合します。」



先生の話を聞いているうちとにかくこの現実を受け入れて


手術をして一日も早く復帰しよう!


そう思えてきた。落ち込んでいても何も解決するわけでもない。



「先生、よろしくお願いします。私、早く復帰したいんです。


 本当によろしくお願いします。」


「わかりました。では明日。」



その後、私は検査を受けに部屋を出た。


血液検査やいろんな検査を受け、部屋に戻ると


ベッドサイドに綺麗な花のアレンジメントが置いてあった。


「誰だろ?」


その側に置かれたカードを見てみると


(お見舞いに伺ったのですがまだ面会時間前でした。


 お花・・・気に入ってもらえると嬉しいです。


 午後、また伺います。


 野久保直樹)


そう書かれていた。


野久保さん・・・来てくれたんだ。


忙しいだろに・・わざわざ・・・・


アレンジメントは淡いピンクの花々で心が和んだ。


真面目で優しい人なんだな・・・野久保さんって


私は彼の笑顔を思い出していた。




夕方になりフミと滝沢コーチがお見舞いに来てくれた。


「はるか、気分はどう?」


「顔色はいいみたいだな。昨日お前がぶっ倒れた時は


 びっくりしたぞ。」


「すみません。ご迷惑かけました。


 あの・・・それで・・・今度の大会、私は・・・・・・」


「はるか、今は怪我を治すことだけ考えろ!


 残念だか今回の大会は登録を外す。


 大会は来年もある。きっと他のメンバーがお前の分も頑張るから。」


「はい・・・・」


「はるか、何か食べたいものとか必要なものない?


 他のメンバーも御見舞いに行くって言ってたからみんなで


 買ってくるから。」


「ありがと・・・でも大丈夫。」


「明日は手術、何時から?」


「うん、10時からだって。」


「明日、午前中なの?来てあげたいけど・・・」


「フミ、いいよ!大丈夫よ。そんなにみんなに甘えてられないし。」


「ごめんね。」


「そんなこと・・こっちこそ迷惑かけてごめん・・・」


「とにかく手術して、リハビリまで焦らずやっていけ!

 

 アキレス腱は焦ると再断裂の恐れもあるからな。」


「はい、気をつけます。」



フミとコーチは一時間ほどして帰って行った。



一人になってまた不安と孤独が押し寄せてきた。


手術なんて生まれて初めて、健康だけがとりえだった。


少しだけど痛いって言ったよな・・・・


あ~怖いよ・・でも誰にも甘えられないし・・・・



そんなことを思っていた時、


(コンコンコン)


扉をノックする音が聞こえた。


「はい、どうぞ。」


『失礼します。』


「野久保さん!!」


『こんばんわ、なんとか面会時間に間に合いました。


 すいません、遅くなりました。』


私は驚いた。まさか本当に彼がやってくるとは正直思っていなかった。


『具合、いかがですか?』


「はい、明日手術することになりました。」


『そうですか・・・何時から?』


「10時です・・・・


 あの~、昨日、お手紙読みました。


 入院費と治療費の件ですけど・・・・」


『すいません、差し出がましいと思ったんですけど・・・』


「昨日も申し上げたように、私の怪我は野久保さんの責任じゃないです。


 ですから、お金を出していただくわけにはいかないです。」


『それじゃ、僕の気がすみません。どうか、僕に責任を取らせてください。


 僕が・・・・・練習に参加しなければこんな怪我をせずにすんだはずです。』



違うって言ってもとても聞く耳を持ってくれそうにない。


それくらい真剣な眼差し。私は言葉を失くしてしまった。




『岡田さんがどうしてもだめだとおっしゃるなら、


 僕のコーチ代として受け取ってください。』


「そんな・・・私・・何も・・お手伝いできてないです。」


『あの・・・これ、読んでみてください。』


そう言うと野久保さんは私にあるものを見せた。



(金曜ドラマ「あの日の君へ(仮)」?・・・・台本?)



『これ、今度僕が演るドラマの脚本です。今日第1話が上がってきて


 顔合わせと本読みがあったんです。」


「はあ・・・・」


私にはわからない世界のことを彼は話し始めた。


『脚本を読んでびっくりして・・・


でもこんなことお願いするのはって躊躇したんですが』


「?」


『とにかく・・・・どう思われてもいいです。


 この台本を読んでください。』


真剣でノーと言わせない目力で彼は私に台本を手渡した。







つづく・・・・・・・・・・・・・・・

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