いわゆる地域主権一括法(第1次)の成立について | 第6の権力 logic starの逆説

いわゆる地域主権一括法(第1次)の成立について

いわゆる「地域主権一括法」(第1次)が国会で可決成立しました。

なお、法律名等から「地域主権」という言葉が削除され、地域の自主性・・・といった言葉になっていますが、このエントリーでは「地域主権一括法」という言葉を使います。


内容の柱は2点で、

(1)国と地方の協議の場の法制化

(2)国が地方を縛ってきた基準の緩和

です。


新聞各社の社説やコメントも出てきており、おおむね好意的にとらえているようです。


たとえば、保育園の基準を緩和することにより、保育の質の低下につながると反対する向きもあるようですが、それこそ地方議会や地方行政の場でしっかりと議論し、監視していけばよいことですし、地方で、いままでの国の基準よりも厳しい基準をつくることもできるわけです。保育園が足りない自治体は多少手狭でもたくさんの子どもが保育園に入ることができるようにしたいと考えるし、余裕がある自治体は広めの基準をとることができ、まさに地方の実情にあわせて判断することができます。

こうした反対の主張に理由があるとは思えません。


それでも、あえて反対の立場で書いてみたいと思います。


まず(1)国と地方の協議の場の法制化ですが、国が決定をして地方が国の決定・指示どうり動くという関係を前提にしているから、このような発想がでてくるわけです。協議もせずに一方的に国が決定・指示するよりは、協議をするほうがましですが、根本は変わっていません。協議の場を設定するのではなく、地方の拒否権を明確にすれば、国は協議をせざるをえない、ということになります。

また、地方代表が、知事会・市長会・町村会というのも、問題です。これらの事務局は、みな、総務省の役人がつとめています。また、同じ基礎自治体を市長会と町村会で分断し、利害を対立させています。さらに、都道府県の仕事を一部担っている指定都市・中核市・特別市は、都道府県の仕事について意見集約をする場がありません。


次に(2)国が地方を縛ってきた基準の緩和ですが、この内容をよく読むと、基準をなくするというのではなく、基準は維持したまま

(ア)絶対守らなければいけない基準

(イ)原則として守らなければならない基準

(ウ)参考にする基準

という分類にするだけです。

(ウ)であっても、「参考にする」義務があるということであり、違う基準を設定した場合、参考したということを地方自治体が証明できない限り、違法となるということのようです。

さらに、これらの基準は、法律ではなく、省令等で定めることが、明らかになりました。

なおかつ、これらの基準によって、地方自治体は条例を定めなければならないということです。

国会の議決を必要としない省令等が、地方議会の議決を必要とする条例よりも、上位に立つことを、明確に定めてしまったわけです。

なおかつ、条例を定める、という義務を新たに自治体に課しています。

地域主権、地方分権どころか、中央集権・官僚支配の強化です。


したがって、地域主権・地方分権に逆行しかねないものといえます。



現在、第2次地域主権一括法案が、国会に提出されています。

これは、仕事を、国から地方に、都道府県から市町村に移すことが内容となっています。

まさに地方分権、といえるわけですが、仕事だけ移して、仕事に必要となるお金を移さなければ、地方にとっては、ただの負担の増加です。

もしそうなれば、まさに地域主権・地方分権どころか、地域・地方を苦しめ、国が楽をするためのものになってしまいます。

なお、4月に国会に提出され、来年の4月には施行する予定ということですが、地方は1年未満で新しい仕事の準備をできるのでしょうか。地方自治体の職員採用試験はもう募集がはじまっています。職員の手当てもできないのではないでしょうか。国は、多くの地方や天下り団体に職員を派遣したり、海外に留学させたりといったかたちで、人を余らせているわけですが、地方自治体はそうした状況にはないと思います。



地域主権や地方分権といった言葉に騙されることなく、内容をよく見ていく必要があるし、地方のための改革だとうのであれば、マスコミは、地方がどう捉えているのかという声を捉えて、知らせていく必要があると思います。