青春の雨音-3-28

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2005-08-20 11:29:39

和哉さんのコンニャク屋は冬が忙しく、冬場になると、親戚筋や近隣
から3、4人ほどの女性が働きに来た。


サヨさんもそのうちの一人で、芳登君の母親筋の遠い親戚の女性で、
昨年に続き2年目だった。


25歳になるが、耳が聞こえないから口がきけない聾唖者だった。
だから、かなり美人でスタイルも良かったが、まだ独身だった。
それに、里が遠いので、冬季間は和哉さんの家に泊まり込みで働いて
いた。そのために、女中のような仕事もさせられていた。


俺は、冬季間になると、和哉さんの家によく行った。
それは、毎年冬場になると多くの女性が働き、その女たちの顔や姿を
間近で見ることができたからだった。


それに毎年その女の顔ぶれも様々に替わっていて、特に若い女性など
がいる冬場は泊まり込みで遊びに行くこともよくあった。
その女たちの中には、毎年決まって1~2人くらいは泊まり込みで働
いており、仕事の後にトランプ遊びや、人気歌手のレコードを聴か
せに誘い出し、和哉さんの部屋で一緒に遊ぶことが楽しみだった。


しかし、サヨさんは耳が聞こえず、遊びに誘うにも誘いにくかった。
2年目になるサヨさんだったから、少しは仲良しになれるかとも思っ
ていたが、幼少の頃からコンプレックスをいだいているサヨさんはな
かなか心を開いてくれず、トランプ遊びにも誘いに乗ることはなかっ
た。

だから、サヨさんが来てからというもの、仕事後の泊り込みの女性た
ちと遊ぶということもなくなっていた。

また、和哉さんも俺も若い子ども時代は無邪気に一緒に遊んでいたが、
今はお互いに体も心も成長し、気軽に女性に声をかけられる年代では
なかった。


とにかく、俺たちにとって、女は謎だらけだった。


「女をものにするってことは、かなり難しいものなんだな」
和哉さんも大人になるにしたがってそんなセリフを口にするようにな
った。
俺も、「難しい…」などと、哲学的な口調で返答した。


あるとき、冗談で、ふたりでこんな話し合いが持たれた事があった。
それは、口のきけないサヨさんを襲ってはどうだろうか?という話で
ある。口がきけないから、ばれないのではないか、というのがその発
端だった。


それはあくまでも冗談で話し合ったのだったが、話し込んでいるうち
に変な気持になり、本当にやってみたらどうなるんだろう? とまで
真剣に考えてみたりもした。

しかし、そんなことが本当にできることではなく、また、俺たちはそ
んなことができるような悪人ではなかったから、実現することはなか
った。


ただたまに、サヨさん以外の女性が泊る時などは、和哉さんも俺も胸
の鼓動の高まりを覚えた。
特にそれが若い女性だったりしたときは、和哉さんも俺もオナニーの
回数が増えた。

「ちきしょう~! 昔のように一緒に遊びに誘えたら、できる機会も
あるかもしれないのにな~」
和哉さんはそんな事を口にしながら、無邪気だった子ども時代を懐か
しがった。
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青春の雨音-3-27

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2005-08-19 19:58:37

俺は、和哉さんからキスで先を越されたことに少しあせりを感じて
いた。
2歳も年上なのだから、順序から行ったら和哉さんに先を越される
のは常識的範囲なのだろうが、対女性やセックスに関しては同じ土
俵内にいるとばかり思っていた。
あせりとは、焼きもちの裏返しの気持なのである。


オナニーについて一つ面白い思い出話があるので紹介したい。
あるとき、和也さんの部屋で、いつものように話し合いながら二人
してオナニーにふけっていたことがある。


和哉さんの空想の女性は、その頃デビューしたての日活女優松原知
恵子だった。中学だった俺は、クラスの中の女の中から、少しは可
愛いと思われる女を片っ端から相手にしては空想したり、やはりも
のたりないと感じると、吉永小百合や、外国映画で好きになった女
優クラウディアカルデナーレなどを思い起こしては空想の相手にし
ていた。


「なあ、みっちゃん」
和哉さんは、俺を呼ぶときはいつも「みっちゃん」といった。
「俺とみっちゃんで、どっちが先に女を知るんだろうね?」
とオナニーの手を動かしながらいった。


この青春の雨音には、自慰とかオナニーとかの言葉がひんぱんに出
てくるが、この俗話は特に下ネタを取り上げて書いているつもりは
なく、本当にあった当時の俺や俺を取り巻く社会というものの一部
を削り取って書き出しているだけである。
だから、けっして嫌らしい物語だとは思わないで読んでほしい。

当時の俺たち若者は、特にやることがないと、自然とまたぐらに手
が伸びて、自然とオナニーをやったものである。
最初は隠れてやるものだと思い、またやっていることも隠さなきゃ
と思っていたが、一度やっているところを見つかると、もう次から
は隠れてやることはしなかった。とはいっても、これはかなり親し
い間柄でのことではあるが。


そんなことで、和哉さんと俺とは、部屋でいっしょにオナニーをす
ることは自然な姿なのだった。

「俺は頭では和哉さんにはかなわないけど、行動力では負けないか
ら、和哉さんよりも早いだろうな…」
「いや、やはり年からいったら俺だろう」
と和哉さん。


オナニーをしながら、こんな話をしていると、静かに唐紙の戸が開
いて女が顔を出した。
女は、和哉さんのこんにゃく屋に冬の間だけ働きに来ているサヨさ
んだった。

サヨさんはまだ25歳で、どちらかといえば美人だった。
ただ、サヨさんは耳が聞こえず、聾唖者なのだった。
和哉さんと芳登君の洗濯物を届けに部屋にきたところなのだった。

急に現れたサヨさんに、俺の手も、和哉さんの手も止まった。
サヨさんも俺たち二人の姿を見て、口を半開きにして固まっていた。
それから、急いで戸を閉め、部屋から立ち去ったが、階段を滑って
転げ落ち、したたかに腰を打ちつけて、二三日寝込んだということ
だった。

俺たちのオナニーが、被害者を出した最初の事件であった。
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青春の雨音-3-26

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2005-08-18 16:17:40

ちょっと体を壊してしまい、長い間「青春の雨音-3」を休ませてい
ただいたことをお詫びします。

私がアメーバブログに書き出した昨年の秋(11月)には、会員数が
3万人もいなかったと記憶しているのだが(間違ったらごめんなさい)
わずか半年後には30万人を超してしまったのに驚いています。
やはり、時代はブログなんですね。

そのようなことで、これからも、青春の雨音-3の後半を書いて行きた
いと思っておりますので、時々はお立ち寄り下さい。
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俺が高校の2年になってから始めた部活動山岳部の活動は、山のシーズ
ンが過ぎるともっぱらランニングや荷物を背負っての学校の階段登り、
または近くの山へのランニングによる登山と、いつもの退屈な訓練へ
と戻っていった。

それでも俺の胸の内は前年にない気持に満たされていた。
前年の高校1年の時は部活に入っていなかったのだから当たり前といえ
ばいえるのだが、そんな単純な理由によるものではなかった。

俺は、この春に山岳部に入ってきた後輩の高校1年生のひとりの女、中
田陽子に恋心を芽生えさせていたのだった。
このことは【21】の中でも書いていたが、退屈な地上の部活動に移って
からは、日々顔を合わせている内に真剣に好意を抱いていったのだった。

中田陽子は静かなタイプの女で、口数も少なく、とくに特長のある女と
いうわけでもなかったが、笑うとえくぼを作り、大きな瞳とあいまって、
魅入られるほどの可愛らしさをかもし出すのである。また、どちからと
いうと小柄でありながら胸は大きく、肉体的にも男心をくすぐるものが
あった。

その頃、俺のオナニーの対象はそんな中田陽子になっていた。
だからトイレに雑誌や広告の女の写真を破って持ち込むことはしだいに
なくなっていたが、連日部活で顔を合わせる中田陽子と眼を合わせられ
なくなった自分に気付いてからは、できるだけオナニーの相手に中田陽
子を選ぶのを止めようと思った。罪の意識が何処かから湧き上がってき
ていたのである。

そんな折も折、いとこで大学生の和哉さんがニヤニヤしながらやってき
た。
部屋に入るなり、「ついにおれキスしたよ」といった。

付き合い始めた同大学の女性がいることは聞いていたが、どちらかとい
えば奥手に入る和哉さんが女性とキスをするなどとは、どうしても考え
られなかったので、俺はその話しを聞いて驚いた。

「キスといっても色々あるけど、どんなキスだ?」
「もう舌を入れたのか?」
と俺は質問攻めにした。

「う~ん」
と和哉さんはキスをしたという割には力がない。
「キスした時間はどれくらいの間だったの?」

「う~ん、10分くらいかな」
「10分?」
「いや、5分かな」

話を聞くうちに、しだいにその事件(?)の全貌が明らかになってきた。
デートに誘い、夜のお堀端を一周した後、ベンチに座って夜空の星を見て
いたのだという。
和哉さんは、今日こそは…、と計画を立てていたのだという。
ベンチに座り、気付かれないようにできるだけ彼女の近くに座り、いつで
も彼女の肩に手を回せる位置を確保したという。

二人は星の話から、しだいに数学の話になったのだという。
和哉さんはムードの無い話を切り出してしまったことを後悔したという。
でも時間は刻一刻と進み、彼女と別れる時間が迫り来る恐怖を思い、この
ままで行ったらまたキスはお預けになるのではと思って心配になったのだ
という。

そこで和哉さんは「ええいどうにでもなれ!」という頭真っ白状態になっ
てしまい、思わず彼女の肩に手を回すと、右手で彼女の頭を押さえつけて、
数学の話の途中だったが、かまわず彼女の唇に自分の唇を半ば強引に重ね
てしまったのだという。

そんなことで、気まずく別れたのだという。
ニヤニヤしながらも、気落ちをしている和哉さんの気持も分かるというも
のだった。

「でも、その間、彼女はじっとしていたんだろう?」
「うん」
「じゃ、大丈夫だよ」
そんなことを話しながらも、数学の話の途中にキスをするとは、と、その
心理状況を俺は理解できずにいた。
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青春の雨音-3-25

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2005-03-24 19:07:55
俺たちの話題は、男だけで集まれば決まって女の話だった。
誰と誰が付き合っているとか、誰と誰は深い仲だとか、くっついた
とか別れたとか、中には相当に知識を持つ者もいて、キスの時に舌
をこう動かすといいとか、やる場所はどこがいいとか、そのような
話ばかりだった。

今と違い、モーテルなどない時代のことで、たんぼのあぜ道や河原
の小道などを歩いていると、何個かは使用済みのコンドームが落ち
ていた。

中学や高校生ともなると、興味があるのにわざと知らぬ顔をして通
り過ぎたものだが、小学生などはそれを棒切れや木の枝先などにひ
っかけて、
「これは何だ?」
とわざとらしくわめきながら走り回り、大人の前に突き出したりし
ていた。

大人の男はただ笑っていたが、大人の女性は、青くなって、
「そんなもので遊んではいけません」
などといっては、追いかけて奪い、ゴミ箱にすてている姿も眼にした。

冬の寒い朝の通学路では、犬同士が尻をくっつけた形で離れずに歩
き回る姿もよく眼にした。
お互いが反対方向に歩いてもくっついた尻は離れないのだった。
あれは今思っても不思議だが、その姿を最初に眼にした時は、この
ようにくっついて生まれてきた可哀相な犬、と真剣に思ったものだ。
だが、それが犬の交尾と呼ばれるセックス行為だと知るのには時間
はかからなかった。
いろんなことを教えてくれる先輩や大人たちが回りに多勢いたので
ある。

豆腐屋のおやじが、
「こんちくしょうめ」
などといいながら、バケツの水をくっついた2匹の犬めがけてぶっ
かけると、2匹の犬はたいていは離れるのだった。

片一方の犬の長くだらりと垂れ下がった男性器からは、湯気が立ち
上っていた。
通学途中の小学生たちは大声で笑って「大きい、大きい」といった
が、女子学生たちは、見ないようにして早足で通り過ぎるのである
。なかには「きゃー」と叫び声をあげる女子児童もいた。

今と現代の大きな違いは、こういった光景を子供の頃から自然に眼
にする機会を失ってしまったことだろう。

俺らの子供時代には、かくれんぼで遊びまわっている途中でも、近
所の家のやぶれ障子戸から、中で夫婦が足を絡めている光景などを
眼にしたり、一人暮らしの男性が雑誌を片手に自慰にふけっていた
り、そういった光景は当たり前のものとして育った。

さすがに、夫婦の交わりをそうしょっちゅう眼にしたわけではない
が、住宅の事情が悪かった時代でもあり、何気なく眼にするという
ことは珍しくなかったのである。

また、いまでこそ露天風呂の混浴などというと男心をくすぐるキー
ワードとして週刊誌などのサブタイトルなどによく見かけるが、
俺の子供時代には、町の中の風呂屋の数件に1件の割合で混浴風呂
屋があった。

家の中に内風呂を持つ家などあまり無かった時代だから、
俺も両親によくその風呂屋に連れて行ってもらったが、大きな湯船
に男女がまたいで出入りする姿を今もはっきりと記憶にある。

中には若夫婦が子連れで来ていたり、夫婦で背中を流し合ったり、
だから、今思うと、けっこう性的にはのどかな時代だったのだと思
うのである。
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青春の雨音-3-24

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2005-03-22 20:53:48
夏休みも終わる頃になると、古い店舗兼住宅の取り壊しも完了し、
いよいよ家の基礎工事も始まった。

父と母は、近くに空き家を見つけ、自分たちだけでそこに住み、俺
たち兄弟は以前のまま、別棟の借家の2階に住まっていた。

食事だけは親の住む家へ出かけて食わなければならないのはこれま
でと同じだったが、300メートルは離れていたので、何かと不便
だった。

2学期に入って間もなく、板垣から電話があった。
約1年半ぶりに聞く声であり、俺はなつかしくもあり、嬉しくもあ
った。

声は相変わらずで、俺は安心した。
ようやくまともな給料がもらえるようになったから、今度飲まない
かという誘いの電話だった。
「寿司食ってもいいぞ」
などと、俺ではとても言葉にできないことを平気でいう。
「滝田はどうしてる? 滝田も呼んでぱっとやろうか?」

給料取りと学生の差がそこにはあった。

「でもあいつは柔道で鍛えてるし、体もでかいから、あいつを呼ぶ
ときは寿司はやめだな、俺の給料ではとても無理だ」
といって、アハハハと笑った。

まだ17歳の年齢でも、片方では寿司を食わせてやるというのだ。
給料をもらえる社会人という者が、やはりまぶしく思われた。

その日は電話の声だけで終わったが、その声の裏には、やはり時間
の流れというものが感じられた。
つまり、いわゆる成長という感触である。

板垣は俺の声を聞いてどう思ったか…。
俺は、奴に、大人になったんだな、という尊敬に似た気持と、友人
に寿司を食わせられるような身分になったことに、不思議な妬まし
い気持も起こるのだった。

いとこの芳登君は野球部に入っていた。
それと、この夏休みから不良仲間ができたとかで、夜遅くまで遊び
まわっている、と和哉さんがこぼしていた。

和哉さんは、大学生という雰囲気が出てきていて、たばこを口にす
る姿も様になってきていた。

その和哉さんが、
「おれいま付き合っている女の人がいるんだ」
とたばこの煙を吐きながら、ぽつりといった。

俺は、
「もう、やったのかい?」
とすぐさま聞いた。

「ばかだな、いくらなんでも、付き合ってまだひと月にもならない
のに、できるかよ」
と、和哉さんは顔を赤らめていった。
聞けば、まだ手も握ってないのだった。
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青春の雨音-3-23

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2005-03-18 11:07:24
とにかく、俺にとっては初めてとなる、5日間の部活合宿を終え、
昨年のバイク旅行とはまた違った意味での貴重な体験をしたのだっ
た。

合宿から家に戻ってみると、もうそろそろ店舗兼住宅の建築が始ま
るらしく、父や長兄は忙しく荷物や道具の整理に追われていた。

いとこの和哉さんも、山形大学の学生生活にも慣れたらしく、とき
どきは遊びに顔を出した。
和哉さんは、大学では体操部に所属していた。

そのために、来るたびに逆立ちやら片手倒立などをやって見せた。
高校のときは文化部にいたのに、和哉さんは器用で、なんでも短時
間で習得する能力を持ち合わせていた。

俺たち兄弟用に離れの別家屋の2階を借りていたが、次兄がいた頃
は和哉さんも次兄に遠慮してかあまり顔を出すことはなかったが、
最近はとみに顔を出すのだった。

「この部屋とももうすぐおさらばだね」
などと妙に懐かしんだようにいっていたが、
最近顔を出すのは、下の階に引っ越してきた新婚家庭に興味がある
かららしかった。

「俺見たよ、すごい美人な奥さんだよね」
和哉さんは、もうたまらん、とでもいいそうな顔をして、
「ちょうどこのあたりに寝てるのかな」
などといって、自分も同じ場所とにらんだ部屋の中に、ごろりと横
になるのだった。

「毎晩やってるんだろうな」
といっては、自分もまたぐらに手を伸ばしている。

俺は、この和哉さんを見て、頭のよさや能力と性欲に関する関係に
ついてずいぶんと考察させてもらった。
それによると、結論からいえば、この両者にはやはり関連性はなさ
そうに思う。

あの天才的な能力の和哉さんが、こと異性のことや性器のこと、ま
た自慰を含めた性欲的なことについては、落ちこぼれ組に属してい
た次兄や俺などと同等のレベルといえたからだ。

「この前、1日に11回できたよ」
と和哉さんは自分の自慰の回数の体験を話した。

「9回までは精液は出たけど、でもあれは精液といえるかどうか」
などと、この人の頭の中はどうなっているのか? と思わせるよう
なことを時々口にするのだった。
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青春の雨音-3-22

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2005-03-17 11:06:00
俺は最初からおとなしく殴られるつもりはなかった。

テントの外の、その男のいる場所へ近寄っていくと、男は先輩風に
どしっと両腕を組んで俺の前に仁王立ちに立ちはだかっていた。

眼は俺をにらみつけ、
「桜木とかいったな、2年のくせに今年から入部しただと」
と酒臭い息を吹きかけてきた。
「俺の見たところでは、2年では貴様が一番生意気だぞ」
という。

俺は、そろそろしびれを切らした気持になってきた。
「先輩、もうちょっとあっちの方で話をしませんか?」
といって、俺からテントを離れた場所の方へ歩き出した。

その男は何をこいつといわんばかりに怒った顔で追いかけてきた。
そして、追いつくなり「このやろー、なめてんのかー」
と大きな声を張り上げた。

俺は立ち止まり、振り向くと、男は「てめー、コノヤロー」とかい
って右手で殴りかかってきた。

俺は計画通り、その殴りかかってきた相手の右腕を思い切り、ナタ
でも振り回す勢いで俺の左手のくるぶし辺りで払いのけた。
男の腕がバキッと音を立てたようだった。

先輩の男は驚いた風で、殴りつけてきた腕を下ろすこともなく、た
だ同じ体型を保ったまま立ち止まり、俺をにらんでいた。
自分でも思いがけない事態に驚いて、体が固まってしまったのだろ
う。

俺はあいているもう一方の右手で拳を作り、その先輩の顔面目がけ
て思い切り殴り下ろした。
が、顔面の直前で止めた。いわゆる寸止めである。だから先輩の顔
には俺の拳は当たらない。

「うぉ~」という変な声を発すると、
先輩の男の顔色が暗い中でも見る見る変化していくのが分かった。
そして、
「悪かった、許してくれ」
といって、俺に頭を下げて、払われた腕をさすりながら男のテント
に戻って行ったのである。

仲間を呼びに戻ったのかとも思ったが、男は再びテントから出ては
こなかった。

翌日になると、昨夜の先輩は、急に仕事が気になりだしたからとい
う理由で、もう一人の先輩を道連れにして、ふたりで合宿の途中で
ありながら山を降りていった。右腕はどうなったのか、左手でしっ
かりとかばっている様子であった。
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青春の雨音-3-21

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2005-03-16 09:27:50
恋をしたといっても、俺の片思いであり、告白したり行動にあらわ
したわけではない。
一学年下の、俺と同じように今年から山岳部に入部した女の子で、
名前は中田陽子といった。

その恋心にしたって、山の大自然がそうさせた心の動揺であったか
もしれないし、そんなに真剣な恋というものではないのかもしれな
かった。

山で感じた俺の恋心とは、女の子の強靭な意志とその力強さに感心させられた心境、とでもいうべきものかもしれなかった。

とにかく、4人の女子部員は、男の前を歩かされるのであるが、
休憩地点と決められた場所までは、誰も小用をしないのである。

男は随所で立小便ができるから、「ちょっと小便」などといっては
山歩きの途中でも何度となく小便をしたが、女の子にいたっては、
休憩地点以外での小用を口にすることさえないのである。

俺は、まずそのことだけを取ってみてもオドロキだった。
女子部員に限って尿意がなかったというわけではないだろう。
ただただ我慢をしていたに違いないのだ。

恥じらいの年齢、尿意を催したからといってちょっとその辺の草陰
で、というわけにはいかないのだろうが、それにしてもその我慢の
強さに俺は驚嘆させられた。

だから、俺の今回の恋をしたという心境も、もしかしたら女のそう
いう我慢強さに俺は驚かされ、尊敬へと変わった心の現われかも知
れないのだ。

それに、男の部員はよくへばった。
もう歩けないというような態度をあからさまにする新入部員が数人
いて、途中で座り込んで動けなくなり、スケジュール時間を大きく
ロスするということも度々あったのであるが、女子部員で根を上げ
た女の子は一人もいないのだった。

それにもまた俺は驚かされた。

そのオドロキが、一人の女子部員に恋心となって現れたのかもしれ
ないのだった。

また、これまで部活動というものを経験してこなかった俺には、部
活動とはどういうものかもよく分からなかったが、今回の夏山の合
宿で、一つの貴重な体験をした。

中学と違い、高校ともなると、先輩後輩という関係がかなり大きな
ウエートを占め、それは同窓生となって卒業後も続いていく関係に
なりがちである。

今回の夏山の合宿にも、俺の知らない何年か前の卒業生という先輩
が数人同行していた。

かれらは名目上は後輩の指導ということになって参加しているらし
かったが、荷物は軽装で、そのほとんどを現在の部員、いわゆる後
輩に担がせ、夜は夜で担当の教師も入った一つのテントに固まって
酒盛りを繰り返していた。

それはそれでいいのだが、その先輩の中に一人くせの悪い奴が同行
していた。

その先輩は、夜な夜な生意気な男の後輩をひとりひとりテントの外
に呼び出しては、酒臭い息を吹きかけながら説教し、最後には必ず
といってよいほどにびんたを食らわしていた。

呼び出された奴はみんなほっぺたを赤く腫らしてテントに戻ってく
るから、俺はある同僚に聞いてみると、去年の夏の合宿にも参加し
て、同じことをされたという。
話では、その男は毎年のように夏山の合宿に参加してきては、気合
を入れるという名目でびんたを張るのは恒例行事のようになってい
るというのだった。

部活担当の教師もそのことは知っているに違いないのだろうが、
知らぬ振りをして見過ごしているというのである。

しかし、いくら先輩とはいえ、あまりにも自分勝手なその男の行動
に、話を聞いて俺は腹が立った。
それでなくとも、日中から自分勝手なことをいってはいじめとも取
れる無理難題を後輩たちに押し付けることもあり、皆からは憎まれ
る存在でもあったのである。

そんな思いでいると、となりのテントに入っている同学年の山本が
、頬を赤く腫らしながら俺のいる4人用テントに顔を覗かせ、
「次は桜木を呼んで来いだってよ」
といって先輩が外で待っていることを俺に伝えた。
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青春の雨音-3-20

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2005-03-15 15:39:36
1学期が終りに近づき、夏休みに入る頃になると、これまで近寄っ
てきたこともない他のクラスの奴らまでが俺のところに顔を出し、
「今年はどこへ行くんだい?」
などと多くの奴らに訊ねられた。

学校文集「山桜」に載って以来、ある意味では学校のヒーロー的眼
差しを向けられており、夏休みが近づくに連れて、昨年の俺のバイ
ク旅行が話題になっているようであった。

「山桜」が発行されて間もなく、俺の顔が血だるまになる暴行事件
が起こったために、その後のことをあまり書いてこなかったが、あ
の文集が発行されて以来というもの、俺は学校では学年を問わず有
名人になり、見知らぬ者から声をかけられたり、見知らぬ女生徒か
ら訳の分からぬプレゼントや手紙をもらったりと、これまでの俺の
人生になかったことが起きていたのである。

ただ夏休みが近づくに連れて、学校側では、俺のまねをする者が出
て、学校にも家族にも迷惑をかけることを恐れており、夏休み前の
各クラスでは、担任がくれぐれも無謀な行動は取らないように、ま
た、遠くへ泊りで出かけるときは、学校へも届け出るように、など
と釘をさしていた。

俺も個人的にも注意されていたこともあり、今年の夏休みはおとな
しく過ごそうと思っていた。

ただ周りではそうは見ておらず、
「桜木は今年は去年以上のことを何か企んでいるようだ」
などという勝手な憶測が噂となって流されていた。

「今度行く時は、俺もいっしょに連れて行ってくれ」
などと頼む奴らも数え切れずいて、俺も嫌気がさし、
「今年は最上川を一人でいかだで下るつもりだから、誰も連れて行
くつもりはない」
などと冗談でいってしまったものだから、それがまたたく間に広ま
って、俺はすぐに担任に呼ばれて注意されたりした。

そんなこともあり、高校2学年の夏休み前は何かと騒々しかったが
、1学年の時と違い、今年は山岳部という部活に所属している。

そんな俺にとって、部活以外のスケジュールを立てること自体が無
理な話だった。

山岳部では、夏休みには夏山の合宿があり、今年の合宿はいきなり
飯豊連峰を縦走するというもので、まだ山岳部に入りたての新米の
俺にとっては、厳し過ぎる内容のものだった。

しかし始まってみると、近くの山でわらび採りくらいしかしたこと
のない俺にとって、大自然の壮大な風景は、俺に新しい境地という
ものを見せつけてくれたのだった。

俺はすっかり大自然のとりこになった。
それと同時に、この山行きを通して一人の女の子に恋をしてしまっ
た。
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青春の雨音-3-19

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2005-03-14 10:16:02
春の県高校総体が終り、1学期が終わる頃、我が家に一つの出来事
が起こることになった。
それは決して悪い出来事ではなく、よい変化であった。

父の始めた事業、牛乳販売店がうまく軌道に乗り、発展したために
家を新築しようというものである。
連日建築店の設計士さんがやって来ては部屋の間取りや店舗の設計
を検討していた。

俺も自分の部屋が持てるということを聞いても、ぴんと来なかった
が、嬉しいことには違いなかった。

あんなに自分の部屋を欲しがっていた次兄が高校を卒業したとたん
に家を建てる話が巻き起こるとは、なんと時間の流れとは不思議で
あり、またこの世はなんと残酷なものなのか、などと俺は感じた。

丁度そのころ、兄弟だけが住むために借りていた別棟の家屋の下の
1階に、新婚の夫婦が借りて住み始めた。

2階だけを借りていた俺たちは、とはいってももう次兄はおらず、
長男と二人だけが住んでいたのだが、新婚と聞いて、なんとなく胸
の奥が騒いで、昼でも夜でも、そわそわとして落ち着かないのだっ
た。

若い奥様はきれいな方で、昼はほとんど家にいて、部屋で内職をや
っているらしかった。

俺は、山岳部の激しい練習運動にもすっかりなれ、体力を持て余し
気味の生活を過ごしていたが、下の部屋に若い新婚の奥様がいると
いうだけで、これまでに味わったことのない不思議な興奮を覚え始
めていた。

学校から帰ってからや、休みの日など、俺は自分の欲望を抑えきれ
ずに、下の部屋にいる奥様の姿を想像しながら、自慰にふけること
が多くなった。

こんなことは初めての経験だったが、女性という者は何という不思
議な存在であり、かつ引き付ける魅力を持つ生き物なのだ…、と俺
は実感した。
思えば、家に女性といえば母親しか居らず、男三人兄弟の中で育っ
た環境でもあったから、女性に人一倍関心はあったが、知っている
ことといえば何もなかったのである。

時おりは、長男にばれないように、夜の布団の中で、下の奥さんを
思い、自慰をしたりもした。

若夫婦というものの不思議な匂いが、俺たちの住む2階の部屋にま
で、いやというほど満ちているのだった。
長男も気になるようで、ときどき俺たちは、畳に耳を付けて、下で
話し合う若夫婦の会話に聞き耳をたてたりもした。

長男は長男で、寝苦しい夜を過ごしているようでもあった。

次兄がいたなら、たぶん家が揺れるほど自慰を行ったろうにと思う
と、笑いがこみ上げてきたが、それにつけても、下の階に若夫婦が
住み始めたことといい、家を新築する話といい、なんて次兄はツイ
テナイ男なんだと俺は思ってしまうのだった。
(次号へ)
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