近道をした。
いつもは通らない道だ。
今夜は先を急ぐ理由があった。
坂道のさらに上に上がると見晴らしのいい高台に出る。
そこからは町が一望のもと見渡せる。
夜景とはいえ、田舎町、あまりネオンの灯りはないが、遠くの水平線にはイカつり船の青白い光が揺らめいている。
ちょうどてっぺんにさしかかった時だ。
掘られていた穴に足をとられ、足首を捻挫した。
激痛が走りその場にしゃがみ込み、やがて立ってはいられなくなった。
脂汗が流れて、見上げる星空が苦痛でゆがんだ。
「痛い、痛い、でも、こんなことしておられん、おばあちゃんが・・・」 死にかけているの。
急がないと間に合わない。なのにそこから一歩も歩き出せない。
足首がどんどん腫れ上がってきたような気がした。
最悪。こんな場所じゃ、誰も気づかない。
悔しかった。
だって、小さい頃から可愛がってくれたおばあちゃんだのに、その死に目に会えないだなんて。
その時どっからか犬の声が聞こえ、やがて坂道を駆け上がる人の声がした。
「ここだ、ここだ、なしたや、人が倒れてる、あれま、新屋(しんや)の姉ちゃまじゃないかや?」
「うんだ。おら、新屋のもんだ」
「どうした?」
「おらいのばあちゃんな、死にそうだあに、近道しようとしたらば足くじいてしもで、歩けねあんだ、連れていってくり」
「いいども」
男たちが三人がかりで、担ぎ上げて運んでくれた。
新屋に着くと、みなが心配して出迎えた。
「早う、ばあちゃんな・・・息ひきとらすがな」
足を引きずりながら、座敷のばあちゃんのところへかけつけた。ばあちゃんが少しうす目をあけてつぶやいた。
「うな・・・よお・・・来てくったの・・・ありがど、ベス」
その言葉が別れの言葉だった。
運んでくれた男たちは、消防団の若者たちだった。
「おかげで、ばあちゃんな最後、間に合いましたが。おら、ありがとございました・・・」
「なんの、おれら、あの赤犬が来んかったら、あんだが倒れてることすらわがらんがった。あん赤犬に感謝せばなんねでば。うんだ、賢い犬だのお・・・」
「赤犬・・・」 なんて、いない・・・と言おうとして、ふとおばあちゃんの言葉に思い当たった。
ばあちゃんが飼っていたベスだ。
きっとそうだ。
死んだベスが、あたしの居場所を知らせてくれたんだ。
きっと
そうに違いないから・・・
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