2009年03月31日(火)

『地底旅行』ジュール・ヴェルヌ<驚異の旅>―第15号「楽しい読書」別冊編集後記

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レフティやすおの作文工房-ヴェルヌ 地底旅行

レフティやすおの作文工房-ジュール・ヴェルヌ
●「レフティやすおの楽しい読書」―別冊編集後記
2009(平成21)年3月号(No.15)-090331-『地底旅行』ジュール・ヴェルヌ<驚異の旅>


<驚異の旅>シリーズ第二作
『地底旅行』ジュール・ヴェルヌ/作(1864)


つい今しがた大人になった私、ずっと以前から大人であった私は、自分の内にある子供という痛ましい死骸の残り少ない断片を探してみようと思った。この子供は相も変わらず草原(ステップ)や大渦巻(マエルストローム)、氷原や太平洋に魅せられている。海も、私の生半可な学問も、生活の火もこの子供をヴェルヌから解き放ってはくれなかった。...

 ミッシェル・セール/著『青春 ジュール・ヴェルヌ論』豊田彰/訳 法政大学出版局 叢書・ウニベルシタス396(1993,原著1974)「扉の言葉」より

少女のころ、父が私に「ジュール・ヴェルヌのこの作品がおもしろいよ、読んでみたら?」と、大人向けの単行本を何冊か薦めてくれたことを、今でもはっきりと覚えている。... 当時、十一~十三歳の、つまり子どもの世界と大人の世界の境目にいた私は、大人が読む本を読みたくてたまらなった。しかし、大人の本はむずかしすぎて、最後まで読み通せず、やはり楽しめない。そのころの私にとって、ジュール・ヴェルヌの作品はぴったりだった。大人と子どもを両方満足させる魔力をもっている作品である。その魔力のおかげで、私は「パパといっしょに」読書を楽しむことができた。

 コリーヌ・ブレ「まえがき―金庫の中の一〇〇年間」より
    『20世紀のパリ』ジュール・ヴェルヌ/著 菊地有子/訳 ブロンズ新社(1995,原著1994,執筆1863頃?) 

私にとってもジュール・ヴェルヌは、高校生になりたてのころ、読書人生最初期において、子供から大人へ移る時期の読書習慣をつける役割を果たした一連の作家の一人でした。


いえ、高校生時代、私にとって最も価値ある存在でした。


この時期、ヴェルヌの本を次々と読んでいました。


幸い、この時期、集英社コンパクト・ブックス版ヴェルヌ全集・全24巻の刊行の末期でもあり、ヴェルヌの本が幾つも出版されていました。


それは、ヴェルヌによって予言されたといわれる、1969年のアメリカのアポロ計画による、人類初の月面着陸の時期に当たっていたからでした。


しかし当時の高校生の私には、この全集の本は文庫本に比べて高価なもので、面白そうな、選りに選った作品を四冊のみ、買えただけでした


それ以外は、もっぱら文庫本でした。
幸いなことにこの時期、角川文庫からいくつかのヴェルヌ本が新たに出版されたのです。


お陰様で私は楽しい時間をすごすことができたのでした。


最初に楽しんだジュール・ヴェルヌは、この『地底旅行』でした


中学生時代、学校の図書館で一冊に本に出会いました。

そこには、巨大キノコの森のなかを歩む探検家たちや、海か湖から首を出す恐竜のイラストが描かれていました。


これが、私のジュール・ヴェルヌとの最初の出会いであり、『地底旅行』との最初の出会いでもありました。



それから、二、三年後の高校一年(1969・昭和44年)のことです。

大人向けの『地底旅行』を読んだのは。



ちなみに書いておきますと、テレビで『地底旅行』の映画を見ました。(※1)
そこでは、この冒険の旅に女性が参加していました。
しかし、通常のヴェルヌの小説には女性はまず同行しません。
それは、マルセル・ブリヨンが指摘しているように、「間違いであり、たいへんな錯誤」なのです。(※2)


これが始めに書いた、私にとっての読書の先導役となった一番好きな作家との出会い―再会?―でもありました。


その後、色々な本を読むようになった私でしたが、心の奥に懐かしく残っているのは、ヴェルヌの小説を読んだときのワクワクでありドキドキでした


集英社文庫版の<ジュール・ヴェルヌ・コレクション>が刊行されたときは、どれほど喜んだことでしょう。


しかし、残念なことに、この企画は一部本邦初紹介作品が含まれていたものの、私にとっては半ば幻の、羨望の的でもあった以前の全集をすべて網羅するものではありませんでした。


その後、いくつかの作品を「拾った」ものの、やはり、当時の全集の作品、角川文庫の作品等は、私にとっては「伝説の名作」とでもいうべきものになっています



今手元にある、集英社文庫版ヴェルヌ・コレクション作品やその昔に手に入れたヴェルヌの文庫作品は、すべて未読のまま置いてあります。


全集で読んだり、他の版で読んだりした作品も含まれていますが、これらの本は基本的に老後の楽しみのためにとってあるのです。


いつの日にか、緑の庭を目の前にして、穏やかな陽射しのもと、揺り椅子にもたれて、これらヴェルヌの本に読みふける、そんな日が来ることを夢見ています。



(※1)梅棹忠夫『知的生産の技術』(岩波新書 1969.7)第9章日記と記録168-9p に、テレビで見た『地底大探検』という映画版『地底旅行』についての記述がありますが、この作品と同一のものである可能性が大です。なぜなら筆者はこのテレビを見て数日後(1969.3.22)、原作の本を買ったからです。

(※2)マルセル・ブリヨン「密議参入の旅」有田忠郎/訳 『ユリイカ』1977年5月号「特集ジュール・ヴェルヌ」167p 参照。


*『レフティやすおの左組通信』
「ジュール・ヴェルヌ Jules Verne コレクション」
*『レフティやすおの本屋』
支店「海外名作文学館」<ジュール・ヴェルヌが好き!>の棚
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