2013年05月31日(金)

ローマの哲人~セネカ『生の短さについて』

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生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)/岩波書店
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―第105号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記


★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2013(平成25)年5月31日号(No.105)-130531-  
ローマの哲人~セネカ『生の短さについて』
http://archive.mag2.com/0000257388/20130531120000000.html



 ●日本の西洋哲学史とセネカ


本誌本文で紹介しましたように、中野孝次氏のセネカに関する著作『ローマの哲人セネカの言葉』(岩波書店 2003.9)

ローマの哲人 セネカの言葉/岩波書店
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の中で、こんなふうに書いています。


氏は日本ではセネカの著作は、茂手木元蔵氏の訳業以外にほとんど何もない状況であるのに対して、氏が留学されていたドイツやイギリスなどでは比較的安価に、かつすべての著作が手軽に手に入れられる状況にあるのだ、と。
これはセネカの哲学というものが、『論語』のようなものだからで、『論語』を教養として身につけていた明治期の日本人は、セネカを必要としなかったからではないか、というふうに解釈されています。


しかし、これからの日本人にとってセネカは、役に立つ処世術としての価値があるだろう、と。


中野孝次氏が経験されたように、ドイツ始めヨーロッパ諸国ではセネカの哲学書というものが、比較的安価で気軽に手に入る状況にあるそうです。
これは、岩波文庫『生の短さについて 他二篇』大西英文氏の「解説」によりますと―


一つにはキリスト教との絡みがある、ということ。
博愛主義や神の試練、奴隷制批判、人類平等の思想といったセネカのストア哲学の思想とキリスト教の思想との間にある重なり―類似性が親近感を抱かせる。


もちろん、セネカはキリスト教徒ではないのですが、彼の描く神のイメージがそのままキリスト教の神のイメージとかぶるのです。
それが、のちのキリスト教発展の基盤ともなっている、ということでしょう。


もう一つの理由としては、欧米文化の基層として古代ギリシアやローマの文化が位置づけられていること、古典教育の伝統として連綿と続いているという点があるそうです。


一方、わが国では、哲学と言えば、本家本流の元祖・古代ギリシアの哲学―ソクラテスはじめ、プラトン、アリストテレスといったところであり、その後は、主だった近代の哲学者たちへと進んでしまいます。


しかし、歴史の流れとして、古代ギリシアの後には古代ローマがあり、中世から近代へとつながってゆきます。
確かに、大きな流れの中では、少なくともキリスト教徒でもない東洋のわれわれにとってはあまり大きな存在ではない、と解釈されるのでしょう。


古代ローマの文化にはオリジナルが少ない、とも言われるそうです。


哲学にしてもそうでしょう。
ローマの哲人と言われる人―キケロにしてもセネカにしても、ギリシア哲学をラテン語に翻訳紹介するような業績はあっても、自ら体系的な哲学を生みだしてはいません。


私の手元にある初心者向け<西洋哲学史>の本にも、セネカの文字はありますが、後期ストア派の哲学者の一人という程度の記述です。
著作にはまったく触れられていません。


*『概念と歴史がわかる 西洋哲学小辞典』生松敬三 木田元 伊藤俊太郎 岩田靖夫編(ちくま学芸文庫 2011.9) 

概念と歴史がわかる 西洋哲学小事典 (ちくま学芸文庫)/筑摩書房
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古代ローマで挙げられているのは、マルクス・アウレリウスの『自省録』だけ。


それゆえ彼らの哲学は、無視されてしかたないような卑小なものに過ぎないのかもしれません。


しかし、だからと言って、無碍に捨ててしまってよいものとは言えないでしょう。
人によっては、何かしら大切なものがあるような気がします。


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2013年05月15日(水)

齋藤孝『古典力』(3)~私のおススメ50選候補

テーマ:メルマガ「楽しい読書」

―第104号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記


★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2013(平成25)年5月15日号(No.104)-130515-  
私の読書論-45- 齋藤孝『古典力』を読む(3)
http://archive.mag2.com/0000257388/20130515120000000.html


齋藤孝『古典力』についてです。

当初は、一、二回で前半を終え、後半の「第三章 マイ古典にしたい名著五○選」および「おまけのプラス五○選」について書くつもりでした。


ところが、意外に前半を詳しく当りすぎて、三回目に突入。

しかもそれでも足りず四回目に至るという状況です。


まあ、古典の読み方について考えておくのは、よいことなので、「まあ、いいか」という感じです。


でもそろそろ飽きてきた方もいらっしゃるかも。


本当は、この「マイ古典にしたい名著五○選」&おまけ50選についてを、実は一番取り上げたかったのです。
これは言ってみれば、ベストテン・ゴッコなわけです。


ある程度本を読んできた人なら、どなたでも自分なりのベストテンなり、それこそ50選なりがあるはずです。
もちろん、私にもあるわけで、それを語りたかったのですね。

まあ、その辺はいずれ本誌で書くことになりますが。


まずは、小手調べに「私のおススメ古典50選」をリストアップしてみましょうか。


古典の定義として、本誌では、幾世代かに渡って読み継がれてきた名著・名作と呼ばれるもの、と規定しています。
具体的には、とりあえず出版以来50年以上経過して、かつ読み継がれているもの、という枠を設けて来ました。


今回は、齋藤先生の選定も鑑みて、近代のものは除けて、だいたい古代から18世紀ごろまでのものを挙げてみようと思います。


近代以降のものは、日本で言えば明治以降、西洋では、主に19世紀(1800年代)以降とします。


(「近代」の解釈も実は一様ではありません。しかしここでは私の考えで、こうしました。
 理由としては、蒸気機関の発明が1695年、ワットの蒸気機関の改良が1765年、イギリスでの産業革命が18世紀後半から19世紀初め、アメリカの独立宣言雅1776年、フランス革命が1789年、スティヴンソンの蒸気機関車が1814年というように、19世紀以降急速に科学技術が進歩し、社会制度も大きな変化を起こした時期になると考えられ、著作活動も大きく花開いた時期だと思うからです。)


まずは、近代以降の著作を除外して、選んでみようと思います。


いままで本誌で取り扱ってきたものが、第一候補群です。

このうち近代以降のものを省くと―


2013(平成25)年4月30日号(No.103)-130430- 
ヨーロッパ精神の始原~『アエネーイス』ウェルギリウス


2013(平成25)年3月31日号(No.101)-130331-  
牧歌的恋愛小説の祖~『ダフニスとクロエー』ロンゴス


2013(平成25)年1月31日号(No.98)-130131-  
真紅の外套~『ガリア戦記』ユリウス・カエサル


2012(平成24)年12月31日号(No.96)-121231-  
愛から生ずる崇高な徳に勝る友情はない~
『友情について』キケロ


2012(平成24)年10月31日号(No.92)-121031-  
魂の不滅~『老年について』キケロ


2012(平成24)年9月30日号(No.90)-120930-  
我々は哲学すべきである:アリストテレス「哲学のすすめ」


2012(平成24)年6月30日号(No.84)-120630-
笑いの原点~ギリシア喜劇:アリストパネス「女の平和」他


2012(平成24)年5月31日号(No.82)-120531-
恋について『饗宴』プラトン


2012(平成24)年4月30日号(No.80)-120430-ギリシア悲劇:
エウリピデス「バッコスの信女(バッカイ)」


2012(平成24)年3月31日号(No.78)-120331-ギリシア悲劇:
"ギリシャ悲劇の代表作"ソポクレス「オイディプス王」


2012(平成24)年2月29日号(No.76)-120229-
ギリシア悲劇:"ギリシャ悲劇の創造者"アイスキュロス


2012(平成24)年1月31日号(No.74)-120131-
最良の処世訓『イソップ寓話』


2011(平成23)年10月31日号(No.68)-111031-《死すべき者》人間~
夫婦と家族『オデュッセイア』ホメロス


2011(平成23)年9月30日号(No.66)-110930-《死すべき者》人間~
<アキレウスの怒り>『イリアス』ホメロス


2011(平成23)年8月31日号(No.64)-110831-《死すべき者》人間
~二大英雄叙事詩~ホメロス『イリアス』『オデュッセイア』


2008(平成20)年12月号(No.12)-081231-
『ソクラテスの弁明』まとわりつく虻


2008(平成20)年8月31日号(No.9)-080831-
『歎異抄』弱きを救う阿弥陀さま


2008(平成20)年5月号(No.5)-080531-
『三教指帰』空海版青年の主張


2008(平成20)年3月号(No.3)-080331-
“水”のような生き方『老子』


2008(平成20)年1月 創刊号(No.1)
『論語』―学ぶことは楽しい


―以上、ざっと19本です。


因みに2009年、2010年は、先に挙げた近代―日本では明治時代から大正時代始め、西洋では18世紀の作品を主に取り上げていました。


これに対して、齋藤先生の「マイ古典にしたい名著五〇選」を書名のみ列挙してみますと―


1)作品世界にどっぷり浸かる
 ○カラマーゾフの兄弟/源氏物語/千夜一夜物語(アラビアンナイト)/○百年の孤独/○嵐が丘/○ファウスト/ドン・キホーテ
2)たった一冊の本が、時代を、社会を変えた
 方法序説/星界の報告/社会契約論/○共産党宣言/○種の起源/▼学問のすヽめ/○生物から見た世界/○精神分析入門
3)古代の世界は骨太!
 旧約聖書・新約聖書(福音書)/古事記/▼オイディプス王/ギリシア・ローマ神話/史記/万葉集/▼論語/▼饗宴
4)書き手の感性や人となりを味わう
 ○福翁自伝/フランクリン自伝/徒然草/枕草子/おくのほそ道/○ゴッホの手紙
5)人間のおろかさ弱さを見つめる
 ○阿Q正伝/○罪と罰/○変身/■赤と黒/ブッダのことば/マクベス
6)社会の中の人間
 ○監獄の誕生―監視と処罰/○プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神/○マネジメント/風姿花伝/君主論/○悲しき熱帯
7)生きる覚悟、生の美学
 ○きけ わだつみのこえ/平家物語/○「いき」の構造/○存在と時間/○死に至る病/■武士道/五輪書/○ツァラトゥストラはこう言った/○夜と霧


8)おまけのプラス五〇選
 <本誌で取り上げたもののみ列挙>■怪談/▼ガリア戦記/▼老子/▼歎異抄/■ポー短編集/■日本近代文学(一葉/露伴/鴎外)


(▼:第一候補群 ■:本誌の近代以降の作品 ○:近代以降の著作)


・齋藤孝『古典力』(岩波新書 2012.10.19)

古典力 (岩波新書)/岩波書店
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