るーちゃんのブログ

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テーマ:
『将の器』より5年昔の物語
雅にタイトルを読み上げる紀古佐美

※ト書きは辻本氏に読んでいただきました

紀古佐美  ちょぉ~て~~貴族のぉ・・・にち、じょぉ~
(朝廷貴族の日常)

時は延歴8年、西暦でいうところの789年。物語は5年の時をさかのぼる。征東大使として蝦夷(えみし)討伐に赴いていた紀古佐美は、奈良の平城京にて牛車に揺られておりました

紀古佐美  『やはり、都の町をゆく牛車は雅じゃのう。なんといっても道が平らであるのが心地よい。牛飼童の振るう鞭(むち)の音(ね)、前駆(さき)の華やかな掛け声を耳にし、人々のざわめきを感じながら、車副(ぞい)がつき従って、ゆるりゆるりと進むこの感じ。懐かしや。この雅な振る舞いこそ朝廷貴族』

紀古佐美は、ミズラに結った自慢の長い髪を撫でつつ、朝堂院(ちょうどういん)へと向かう道すがら物思いにふけります。彼の趣味は車でした

紀古佐美  『いずれはこの、ありふれた萌黄色の八葉車(はちようのくるま)ではなく、せめて漆で飾られた網代車(あじろぐるま)に乗ってみたいものだ。かやぶき屋根のついた檳榔(びろう)毛車もいいのぉ。ああ、死ぬまでに一度でも、桓武天皇が乗っておられる唐廂車(からびさしのくるま)のような、赤いスダレの絢爛豪華な牛車に乗れたなら・・・。牛車は貴族のステイタスであるからな。ほほほ。あいたた、背中が。・・・石ころばかりの山道を何日もかけて帰ったので、腰も背中も。これでは、私がまるでこの牛車を引く牛のようではないか。老体に鞭打って、急ぎすぎたか。はあ、蒸し風呂にでも出向きたいものだ


疲れ果てていた紀古佐美ですが、桓武天皇のお呼びたてならば休んでもいられません。奥州から奈良へ戻ったその足で、すぐさま桓武天皇のもとへ向かいました


桓武天皇  『よお、きのこ』
紀古佐美  『これはこれは桓武天皇。紀古佐美、ただ今、戻りつかまつり・・・』
桓武天皇  『お前さ、負けたらしいじゃん』
紀古佐美  『あぁ、それは・・・』
桓武天皇  『東北の、蝦夷に、お前、負けたらしいじゃん』
紀古佐美  『それはでございますね』
桓武天皇  『言い訳すんのはもう少し待って、今ね、田村くるから』
紀古佐美  『田村、でございますか。どなたでございましょう』

そこへ、凛とした姿の田村麻呂がやってきました。そうは見えないかもしれませんが、紀古佐美と田村麻呂の年の差は25歳。紀古佐美は、この無表情な若者が誰か分かりませんでした

田村麻呂  『桓武天皇。お心遣いありがとうございます。わざわざ檳榔(びろう)毛車(げのくるま)でお迎え頂けるなんて』
紀古佐美  『なにっ、檳榔(びろう)毛車(げのくるま)ですと』
桓武天皇 (『聞いておらず田村麻呂へ)あれさ、こないだ作らせたばかりの新車(しんしゃ)なんだよね。乗り心地(ごこち)どうだった』
田村麻呂  『大変(たいへん)優雅(ゆうが)でした』
桓武天皇  『スダレのすそに、差し色(いろ)でちょっと赤(あか)いれたんだけど、
   恰好よくない?』
田村麻呂  『はい、とても』
桓武天皇  「だろー』

紀古佐美 『(独白)私の憧れの檳榔(びろう)毛車(げのくるま)に・・・!』
桓武天皇  『でね、蝦夷に負けたんだって。どう思う』
田村麻呂  『つまりこちらのかたは大将殿であられますか』
桓武天皇  『うん、この戦の責任者』
田村麻呂  『そのかたを、わざわざお呼びたてに?』
紀古佐美  『取るものも取らず、駆けつけました 』
桓武天皇  『うん。早かったよね。それは凄いと思う。わしへの忠義
   を感じる』
紀古佐美  『ありがたきお言葉』

田村麻呂 『(溜息)』


桓武天皇 『 どうした、田村』
田村麻呂  『まずい、かもしれませんね』
紀古佐美 『(カチンと)なにがでございますかな』
田村麻呂  『敗戦ののち、大将殿が、都(みやこ)へ急いだとならば、敵(てき)はそれを、朝廷軍(ちょうていぐん)が戦(いくさ)を諦め、逃げ帰ったと考えやしませんか?』
桓武天皇  『そうだね。だめじゃん、きのこ、なに急いで帰って
きてんの!』
紀古佐美  『それは・・・』
桓武天皇  『お前さ、大将の資質(ししつ)ないわ』
紀古佐美  『資質(ししつ)がない』
田村麻呂  『桓武天皇。これはまだ私の推測(すいそく)に過ぎません。だのに、お言葉が過ぎるのではありませんか』
桓武天皇  『だってこいつ、陸奥(むつ)国司(こくし)になったの8年も前だぜ。手柄の一つもたてないでさ! お前もう十分、奥州詳しいっ
しょ、奥州博士っしょ、今までなにやってたの!』

桓武天皇に、散々ドヤされた紀古佐美は、日を改めて陳情に赴くことにしました。

翌日、紀古佐美が朝堂院(ちょうどういん)へ着いたのは昼どき。紀古佐美は、朝廷からふるまわれた食事を堪能しています。

紀古佐美  『やはり、都の食事は雅じゃのう。山暮らしが長かったもので、海の幸など久しく口に、せなんだ。これはタコか。こちらはエビか。しょっぱいばかりの獣の佃煮と違い、うしおの香りと薄口醤油、なんとも上品であるぞ。しかし、いつかは桓武天皇のように、生牡蠣を腹いっぱい食べてみたいものだ。あれは鮮度が命。つやつやでぷりぷりの生牡蠣こそが権力の証。死ぬまでに一個でも食べてみたい。いいや、贅沢は言わん。蒸し牡蠣、焼き牡蠣でもいいのぉ。そういえば、近頃はやりの、蘇(そ)、という食べ物があるそうだ。牛の乳から作られた、1000年先ではチーズと呼ばれているアレだ。なにやら酒との相性がいいらしい。それも食べてみたいのぉ』

紀古佐美は美食家でもありました。そこへ、桓武天皇と田村麻呂がやってきました



桓武天皇  『どうしてダメなんだYO』
田村麻呂  『無理なものは無理なのでございます』
紀古佐美  『どうなされましたかな』
桓武天皇  『今、田村と一緒にランチしてたんだけどさ、こいつ全然食べないんだよ』
紀古佐美  『はて』
田村麻呂  『朝廷に仕える者、自身の体調管理も勤めのうちです』
桓武天皇  『だって田村を喜ばせようと、せっかく・・・』
田村麻呂  『これも、桓武天皇への忠義心の証(断言)』
紀古佐美  『なぜ、召し上がらなかったのですかな』
田村麻呂  『生牡蠣だったからです』
紀古佐美  『なまがき』
田村麻呂 『(抗議として)盆(ぼん)の上に、崩れんばかりの生牡蠣の山ですぞ』
紀古佐美  『生牡蠣の山』
桓武天皇  『焼き牡蠣もあったじゃん』
田村麻呂  『蘇(そ)を乗せた、未来式に言えば牡蠣のチーズ焼きなど食べられません』
紀古佐美  『美食家の心をわしづかみにする料理を、なぜ!』
田村麻呂 『(激怒)牡蠣にあたったら、どうするのですかー!』
紀古佐美 『(独白)慎重(しんちょう)すぎる・・・!』
桓武天皇  『やっぱさ、田村みたいに、このわしに歯向かうぐらいの威勢のよさがなくちゃ大将の器(うつわ)じゃないわ~』
田村麻呂  『歯向かっているわけではございません』
桓武天皇 『(いちゃいちゃ)じゃあ、なんなのぉ~』
紀古佐美  『なるほど、それはそうでございますな。では、わたくしも恐れながら一言申しましょう。
お言葉ですが、桓武天皇』
桓武天皇  『わしに反論するなぁぁぁ!』
紀古佐美 『(動揺かドン引きか)ええっ・・・』
田村麻呂  『落ち着いてください』
桓武天皇  『あぁごめん、ついね、条件反射で』
田村麻呂  『(紀古佐美へ)お話しの続きをどうぞ』


紀古佐美  『蝦夷は結束の固い集団です。こまごまとした枝葉に攻撃や寝返りをけしかけましても、結局のところ一つの成果もあがりませんでした。ですので私は狙いを絞り、蝦夷を束ねるリーダー、阿高楽に・・・』
桓武天皇  『お宝?』
紀古佐美  『胆沢の長、阿高楽に手傷を負わせることにしたのです。奴は戦に優れ、人望も熱きリーダーの鑑。武術の達人である阿高楽の右腕、滝隼なる男と2人、蝦夷の民の期待を一身(いっしん)に受けておりました。・・・しかし、その背にまたがる将を失えば、馬は行く先さえも見失い野(の)へと帰りますからな』
田村麻呂  『なるほど』
桓武天皇  『それで、成果はあがったの?』
紀古佐美  『阿高楽が、再び蝦夷の長となる日は訪れませんな』
桓武天皇  『やるじゃん、きのこ』
紀古佐美  『ははあ』
桓武天皇  『阿高楽って死んだの?』
紀古佐美  『いえ、片目(かため)片足(かたあし)を・・・』
桓武天皇  『中途半端だなっ!』
紀古佐美 『(慌て)しかしながら、華々しきリーダーを失った蝦夷の民が、長く続くこの戦への戦意(せんい)を喪失するのも時間の問題でございます。阿高楽の跡目を継ぐのは、その弟、阿弖流為ともうす若者。しかしこいつは仲間からの信頼も薄い、戦ぎらいの腑抜け者との噂・・・』

田村麻呂 『(遮る溜息)』

桓武天皇  『どうした、田村』
田村麻呂  『まずい、かもしれませんね』
紀古佐美 『(カチンと)なにがでございますかな』
田村麻呂  『手負いの獣ほど気を付けろと、父に習ったことがあります。そして阿高楽の傷を見るたび、蝦夷の民は、我ら朝廷軍への怒りを思い出し、その心を奮い立たせることでしょう』
桓武天皇  『一理ある。目に入ると、忘れられないもんね。やっぱお前クビだわ。いや、斬首にしよう。お前の首をとってやろう』
紀古佐美  『そんな、この私めは、この世に生(せい)を受け今まで、ただひたすら一身に朝廷へ尽くして参りました。どうか、どうか温情を、桓武天皇・・・!』
桓武天皇  『でもさ、わし、この負け戦のこと忘れたいし。きのこのこと見ると思い出しちゃうじゃん』
田村麻呂  『では、こうしたらいかがでしょうか。こちらの奥州博士と、どなたかを組ませ、我ら朝廷軍も2枚看板と致すのです』
桓武天皇  『なるほど、さすがは田村。そうだ、適任がいるぞ。
大伴弟麻呂って、なんかすごいファイトありそうな奴いるわ』
田村麻呂  『決まりですな』
桓武天皇  『弟麻呂、ちょっと年取ってるから心配だけどな』
紀古佐美  『おいくつなのですか』
桓武天皇  『きのこの2こ上。(田村麻呂へ)こう見えて、きのこ59歳なんだよ』
田村麻呂  『お若くみえますな』

紀古佐美は、なんだか納得いかない心を隠して朝堂院をあとにしました。とにもかくにも自分の命はつながった。これでまた、朝廷への助力を尽くせると、人知れず喜びながら。

奈良の都で出陣の指令を待つ紀古佐美は、従者に笏(しゃく)を磨かせておりました。笏(しゃく)です。こう、右手に持つ細長い板、貴族が必ずその手に持っている、笏(しゃく)を眺めておりました

紀古佐美  『都に戻ったついで、桜の木の笏(しゃく)を、イチイの木に作り替えた。見る者が見れば分かる、そうでないものは気付かない。そんな程度の違いにさえ、こだわることこそ貴族の嗜み。雅じゃのぉ。しかし、こう私が独りごちをするたびに、あの、田村とかいう若者がその上をいくパターンだ。よし、ここは奮発して、世にも珍しい犀(さい)の角でこしらえた笏(しゃく)を用意しておこう』

紀古佐美の予想通り、朝堂院(ちょうどういん)へ行くと、桓武天皇と田村麻呂が、笏(しゃく)のプレゼントについて、もめていました


紀古佐美  『どうなされましたかな』
桓武天皇  『わしがプレゼントした笏(しゃく)が気に入らないから、受け取れないっていうんだYO』
田村麻呂  『受け取れませぬ!』
紀古佐美  『そうそう、私めも笏(しゃく)を新たに、こしらえましてな』
桓武天皇  『へー。どんな』
紀古佐美  『犀(さい)の角(つの)でございます』
田村麻呂  『こちらは象(ぞう)の角(つの)、すなわち象牙(ぞうげ)でございますぞ!』
紀古佐美 『(もはやショックも薄く)象牙(ぞうげ)かー』
田村麻呂  『アフリカ象は、象牙(ぞうげ)目当ての密猟者による乱獲で、絶滅の危機に瀕(ひん)しているのですぞ!』

時代考証がおかしい田村麻呂の訴えも、紀古佐美の耳には届きませんでした。紀古佐美は、ただただ、この朝廷の理不尽さに、魂が抜けていく思いを痛感していました

田村麻呂  『どうなされました(紀古佐美は)』
紀古佐美  『ああ、いえ・・・』
桓武天皇  『考えたんだけどさ、きのこ。お前、若く見えちゃうのも問題だよね。威厳が足りないもん。せめてなにかインパクトが欲しいよね。だからさ、きのこだしさ、お前これからずっとマッシュルームカットにすれば』
紀古佐美  『マッシュルームカットでございますか』
桓武天皇  『そしたらすぐ名前覚えてもらえるし、いいじゃん』
田村麻呂 『(遮る溜息)』


桓武天皇  『どうした、田村』
田村麻呂  『まずい、かもしれませんね』
紀古佐美 『(カチンと)なにがでございますかな』
田村麻呂  『マッシュルームという西洋きのこだけでは、あらぬ疑いをかけられましょう。ここは我が国、最強の毒キノコ、ベニテングダケの力を借りるのが得策かと』
桓武天皇  『なるほど。ベニテングダケいいじゃん。あの赤くて白いドット模様の強そうなやつでしょ。さっそくきのこの着物に刺繍しよう、アップリケでもいいや』
紀古佐美  『しかし、この年で・・・』
桓武天皇  『イメチェンだよ。新しい自分、切り開いてこーよ』
紀古佐美  『ははあ・・・(独白)おのれ、おのれ若造め。この私を愚弄しおって!』
桓武天皇  『田村麻呂』

田村麻呂  『はい』
桓武天皇  『なにが聞こえる、きのこから』
田村麻呂  『・・・聞こえてくるのは』
桓武天皇  『うん』
田村麻呂  『奥州博士殿の、朝廷への厚き忠義心のみです』
紀古佐美  『(怒りのあまり聞こえていなかった)どうなされましたかな』
桓武天皇  『ならよし。じゃあペナルティはこれぐらいにしてやるよ。しっかり働くんだぞ、きのこ』
紀古佐美  『ははあ』

桓武天皇は上機嫌で去っていきました。残された紀古佐美は、敗(ま)け戦(いくさ)の処罰を免除されたことにホッと肩を撫で下ろしましたが、なぜそうなったかが分かりません。事情を聞こうにも、目の前には無表情な若者が一人いるのみ。紀古佐美は不快な気持ちを飲み込み、年長者として、優美に、貴族らしく田村麻呂に声をかけました

紀古佐美  『おほん。さて、はてさて、そなたは結局どちらの御方(おかた)でござ・・・』
田村麻呂 『(本心だが無表情で)よかったですね、奥州博士殿。きっとお似合いでございますよ、マッシュルームカット』

田村麻呂は、紀古佐美を思いやり心からそう言いました。けれど紀古佐美には全く伝わりませんでした

紀古佐美 『(叫び)』


紀古佐美の叫び声は、広い広い朝堂院(ちょうどういん)の庭にある、葉桜(はざくら)が風に揺れるとすぐに消えてゆきました。断髪を終えた紀古佐美は、ショックのあまり、しばらく人払いをしていましたが、入間(いるま)に「よくお似合いです」と目を輝かせられ、まんざらでもない気持ちになりました

田村麻呂  『私もいつか、この名に合ったイメチェンをせねばならぬかもしれないな』
桓武天皇 『(遠くからの呼び声)田村~』
田村麻呂  『はい、ただいま!』

五年後、田村麻呂はマッシュルームカットが板についた紀古佐美と再会しますが、この時の奥州博士と紀古佐美が同一人物であることに、田村麻呂は全く気付きませんでした。が、紀古佐美の方はどうだったのでしょうか。それは皆様のお心のままに。そんなこんなで、朝廷貴族は、今日も平和です。
おしまい
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