今朝のNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」で、ぐっさん演じる出版社の社長兼編集長が、「検閲」をめぐって当局に身柄拘束され、発行する雑誌の何ページかを切り取らされる場面がありました。私たち世代にとっては、当局の「検閲」なんぞは「前世紀の遺物」にしか感じられませんが、実は、近い将来またまた繰り返されることだってあり得るのです。

そんなアホなぁ…というアナタ。憲法改正で取り沙汰されている「緊急事態条項」をご存じないですか? 自民党の改憲草案の中に盛り込まれているもので「大災害などの緊急時に憲法秩序を一時的に停止させ、首相や政府の権限を強化・集中させて緊急事態を乗り切る」ためのものとされています。

熊本の大震災を受けて、いまは盛んに「大災害の発生した緊急時」が連呼・強調されていますが、もちろん「武力衝突などの有事の場合」も対象になります。本当はそっちの方に軸足があるのでしょうけれど、「大災害」を理由にしておけば、誰も反対することが出来ず「思考停止」に陥るので都合が良いわけなんですよね。

問題の「緊急事態条項」が我が憲法に加えられてしまうと、首相が「緊急事態だ!」と判断すれば内閣の同意だけで「緊急事態宣言」が発せられてしまいます。国会の承認は「事後」でもOKですし、与党が過半数を占める状況下ではまったく「歯止め」にはなりません。

私がもっとも怖いと感じるのは、想定し得る「人権侵害」です。たとえば「緊急時に誤った情報が伝わることで国民に混乱が起きてはいけない」という判断から「マスコミ」だけでなく「ネット情報」「電子メール」「SNS」といったツールをすべて政府の統制下に置くことも絶対に起こり得ないことではありません。つまりは昭和20年以前の「検閲」の復活です。

いやいや考え過ぎ…と言うアナタ。戦前の日本国民も好むと好まざるとにかかわらず、あっと言うまに「戦時体制」に組み込まれ、言いたいことも言えないまま辛酸をなめさせられる結果となったことを思い出して下さい。いま与野党を問わずほとんどの政党が「緊急事態条項」について賛成の方向にあると言われています。私たち国民が「無関心」でいると、気づいたときには、とっとと憲法改正の発議がなされているかも知れないのですから…。

兵庫県弁護士会/神戸市中央区/藤本尚道法律事務所
職人かたぎの法律のプロ、弁護士藤本尚道です!
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実は、昨日は私の誕生日でした。FaceBookなどでたくさんの皆さんからお祝いのメッセージを頂戴し、たいへん嬉しい限りです。ホントにありがとうございます。

さて、誕生日つながりで「年齢計算ニ関スル法律」についてお話をしたいと思います。まず、ここでクイズです。私は1958年6月21日午前9時20分に誕生したのですが、私がひとつ歳を取る瞬間はいったいいつでしょうか。
(A)6月20日午後12時
(B)6月21日午前0時
(C)6月21日午前9時20分

正解は(A)の6月20日午後12時です。え? 6月20日の午後12時と6月21日の午前0時はまったく同じ瞬間じゃないか…って、そこに気付いたあなたはエライ。たしかに同じ瞬間なのですが、それを誕生日「前日」とみるか、誕生日「当日」とみるかに大きな違いがあるのです。

この点「年齢計算ニ関スル法律」の第1項は「年齢は出生の日より之を起算す」として、民法の「初日不算入の原則」の例外を定めています。そして第2項が民法第143条を準用する結果、「年齢は暦に従って計算すること」や「期間は起算日に応当する日の前日に満了する」こと等が明確にされています。これらの規定により、6月21日生まれの私が1つ歳をとるのは、6月21日ではなく前日の6月20日が満了する「午後12時」(24時0分0秒)と解されているのです。

それで結局は何がちがうの…というあなた。実は、この法解釈から私たちの日常生活に発生する影響が幾つかあるのですよ。たとえば選挙権。まさに今日、参議院選挙が公示され、7月10日の投開票がなされることはご存知ですね。そして今年から「18歳選挙権」が実施されますが、今回の参議院選挙に投票することができるのは、平成10年7月11日生まれの人までです。平成10年7月11日生まれの人は平成28年7月10日の満了をもって18歳となるので、投票日当日には18歳です。したがって、投票日翌日が誕生日である人にも選挙権があるという結論になるところです。

同じく「学齢」の問題があります。学校教育法は、保護者が子どもを小学校に就学させる義務について、「子の満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから」と定めています。そのため、4月1日生まれの子どもは3月31日の満了時(午後12時)に満6歳になり、4月2日生まれの子どもより学年が1つ上になるという計算になります。

たった1日の違いですが、学齢については1年の差を生む大きな違いになるのですね。たかが年齢、されど年齢…と申し上げておきたいと思います。

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昨日(平成28年3月9日)、高浜原子力発電所3号機及び4号機について運転差し止めの仮処分決定が大津地方裁判所によって発令され、関西電力は3号機の運転停止作業に入りました。4号機が再稼働直後に「緊急停止」したことで右往左往していた関電にとって、この仮処分決定は正に「泣き面にハチ」というところでしょう。

それにしても、この仮処分決定の論旨は実に明快です。とは言っても、裁判所独特の言い回しがありますので、裁判所が「仮処分を認めるべき理由がある」と判断した思考過程について、私なりに噛み砕いて説明すると以下のとおりとなります。

(1)原発は一般的に危険性を有する。
(2)東日本大地震による福島第1原発事故という原発の危険性を実際に体験した現段階では、関電が、高浜原発の設計や運転のための規制が具体的にどう強化され、それにどう応えたかの主張・立証(疎明)を尽くさない限り、高浜原発の運転により住民らの人格権が侵害されるおそれがある。
(3)高浜原発については、次の①~③の問題点につき危惧すべき点がある。
①福島第1原発事故を踏まえた過酷事故対策についての設計思想
②外部電源に依拠する緊急時の対応方法
③耐震性能決定における基準地震動策定
(4)また、津波対策や避難計画についても疑問が残る。
(5)このように住民らの人格権が侵害されるおそれが高いにもかかわらず、その安全性の確保について、関電が主張及び立証(疎明)を尽くしていない部分があるから、住民らには本件仮処分を求める権利が存在する。
(6)高浜原発のうち3号機は今年1月29日に再稼働し、4号機も2月26日に再稼働したから、仮処分決定をする必要性が認められる。

つまりは、すでに福島第1原発の事故により、原発の危険性が明らかになったのであるから、高浜原発の再稼働にあたっては、その安全性確保のためのハードルが高くなることは当然であり、関電としてはどのように安全性を確保しているかと言う点について、十分な主張と立証を行う義務があるにもかかわらず、それらを尽くしておらず、このままでは住民らの人格権を侵害するから、高浜原発の再稼働は認められない…という極めてわかりやすい論旨なのです。

とりわけ、この決定全文の中で、私たち人間の「おごり」とも言うべき部分に対する真摯かつ辛辣な指摘はたいへん感動的とも言うべきです。この点については、私の稚拙な説明よりも原文を読んで戴きたいので、そのまま以下に引用します。

「地球温暖化に伴い、地球全体の気象に経験したことのない変動が多発するようになってきた現状を踏まえ、また、有史以来の人類の記憶や記録にある事項は、人類が生存し得る温暖で平穏なわずかな時間の限られた経験にすぎないことを考えるとき、災害が起こる度に『想定を超える』災害であったと繰り返されてきた過ちに真摯に向き合うならば、十二分の余裕をもった基準とすることを念頭に置き、常に、他に考慮しなければならない要素ないし危険性を見落としている可能性があるとの立場に立ち、対策の見落としにより過酷事故が生じたとしても、致命的な状態に陥らないようにすることができるとの思想に立って、新規制基準を策定すべきものと考える。関電の保全段階における主張および疎明の程度では、新規制基準および本件各原発に係る設置変更許可が、直ちに公共の安寧の基礎となると考えることをためらわざるを得ない。」

原子力発電に関しては、国全体のエネルギー政策に絡むものですから、ただ「反原発」を叫んでも「それなら対案を出せ」と言うことになりがちです。これまでの裁判所の判断も、ともすれば時の政権サイドに「気遣った」結論が多かったと感じていますが、この大津地裁決定を読んで、久々に「人権の砦」としての裁判所の存在価値を彷彿させられました。

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報道によると、覚せい剤取締法違反容疑で再逮捕された清原容疑者の保釈が3月中旬以降にも考えられる中で、鹿児島・最福寺の池口法主がTV番組の取材に答え、「責任が持てないから」と身元引受人になることを否定したそうだ。

保釈については、前回の「号泣元県議」に関するブログで「権利保釈」に関する説明を若干させて戴いた。清原容疑者は、今後、覚せい剤の「所持」及び「使用」という2つの罪状で起訴される見込みだが、同容疑者には前科がなく、本件の罪状関係だけからは法定の保釈不許可理由は存在しないようだ。しかしながら、「罪証隠滅のおそれ」や「事件関係者に対する威迫のおそれ」が問題となるところ、薬物事犯ではこれらの点がかなり重視される結果、保釈は「不相当」との結論になる公算が高い。

私自身の経験だけから言わせてもらえば、「覚せい剤取締法違反」で保釈が認められた事案は数にしても割合にしてもたいへん少ない。また、保釈が認められた場合に、釈放されてすぐに「ネタモト」に走った被告人すらいる。弁護人としては「何をかいわんや」なのである。そんなわけで、私の個人の意見としては、清原容疑者が本当に反省し、クスリとの縁を切りたいと考えているならば、保釈請求はしない方が良い。

それより、私自身の興味は正に彼が複数の「ネタモト」を正直にウタっている(自白しでいる)かどうかだ。これなしにクスリとの「縁切り」は極めて困難であるし、真の更生は不可能であると思う。一時は「野球小僧」たちのあこがれの的だった同容疑者。彼が立派に更生し、社会復帰することを願っている人が多いことを彼自身が知るべきだ。

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昨日「号泣元県議」が保釈された。保釈保証金は800万円らしいが、この手の事件としてはかなり高額な方だ。「号泣元県議」はすでに1800万円余りを弁償しているから、経済的には決して楽ではないだろう。保釈を許可したとは言え、裁判所の厳しい姿勢がひしひしと感じられる。

ただ、我々弁護士の目から見れば、「号泣元県議」の保釈はむしろ当然のことなのである。一定の要件に触れなければ、保釈は「権利」として認められるからである。被告人には前科がなく、本件の罪状関係から法定の保釈不許可理由は存在しない。あとは「罪証隠滅のおそれ」や「被害者等に対する威迫のおそれ」が問題となるが、すでに検察側・弁護側ともに立証を終え、論告求刑と弁論が残っている段階だし、本件の被害者は「兵庫県」のはずだから「威迫」もクソもない。

「地裁は保釈理由を明らかにしていない」などと書いた新聞があったが、不勉強も甚だしい。保釈請求に対しては「相当」か「不相当」かの判断しかなく、不相当の場合にのみ「理由」がつく。この新聞の論調は「保釈の理由を明らかにすべき」との意見に見えるが、それでは「せっかく悪い奴を獄につないだのに、それを金の力で解き放つとはケシカラン」といった「居酒屋談義」のレベルに等しい。

マスコミには、被告人が現に「保釈」されたかどうかの確認が取れていない。神戸地裁から保釈決定が公表されてすぐに神戸拘置所に走ったようだが、時すでに遅く、拘置所から出てくる被告人の姿を捉えたマスコミはない。そして、保釈を請求した国選弁護人は当然ながら取材にはまず応じないだろう。彼が取材に応じない理由は例の
「愛車事件」に関するブログで述べたとおりだ。地裁は保釈決定をしたこと及び保釈保証金の額程度しか公表しない。マスコミはウラが取れない限り、憶測で報道するわけにはいかないのだ。

しかし、私には「断言」することが出来る。弁護人の保釈請求に関する動きは、昨日の保釈請求より以前に、検察官への根回しを含め、じっくりと行われている。2月26日(金)の保釈請求書提出は形式的なものに過ぎず、請求の時点で保証金も準備されていたとみるべきだ。地裁の保釈決定を受けて検察官が「抗告」をせず「釈放指揮」を出した時点で、神戸拘置所前に「迎えの車」が待機していたことは言うまでもない。

マスコミは、被告人の行方をあちらこちらと探し回っているようだが、弁護人の作り上げた「ガード」は高いはず。弁護人の高笑いが聞こえてきそうだ。もうそろそろ、こんな「狂想曲」には終止符を打ったらどうか…と思わずにいられない。

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