中華の足跡・改

中国から帰り、北海道に暮らしつつ、台湾とつながる生活。

マジメな話からくだらないネタまで、国籍・ジャンル・多種多様。

いざ、情報発信~!


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文化祭前日だからといって、桃井家の夕食が変わるということも無く。

普段どおりの時間に普段どおりの夕食を食べていた徹司だったが、そんな中、NHKの気象情報が不穏な情報をもたらしたのだった。

「大型で強い台風17号は、沖縄県の南大東島近海を勢力を保ったまま北東に進んでいます。このままの進路を保ちますと、21日には紀伊半島付近に上陸する可能性があります。17時現在の中心気圧は965ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は30メートルほどです」

徹司は、体ごとテレビに向き直った。

台風だと?

箸を止めて、食い入るように気象情報を見つめる。

進路予想図を見ると、千葉県北西部は明らかに暴風域に巻き込まれるようだ。

「あら、台風がきちゃってるのね。大丈夫かしら?」

朝子も、心配そうな顔でテレビを見ている。

なおも続く予報によれば、関東地方が暴風域に入るのは21日土曜日の夜、或いは22日の未明。

ということは、文化祭の2日目に大きな影響が出るかもしれないということである。

「おいおい、勘弁してくれないかなぁ」

思わず、大きなため息が出た。

「もし台風が直撃したら、文化祭ってどうなるの?中止?」

朝子が不吉なことを聞いてきた。

「いや、そんなことはないとは思うんだけど」

徹司が言うのは、予想というよりも願望である。

演劇は屋内でやるものだから、風雨の影響を受けることはないが、校外からの客足に大きな影響が出ることは避けられない。せっかくここまでやったのだから、できるだけ多くの観客に見て欲しい。とはいえ、相手が台風ではいかんともしがたいところである。台風の進路が変わってくれることを祈るくらいが関の山だった。


残念ながら、普段から不信心の徹司がこんな時にだけ祈ったところで、結果が劇的に変わる訳も無く、21日朝の天気予報では相変わらずの関東直撃コースが発表されていた。

現状ではまだ雨は降り出してはいなかったが、鈍色の雲が厚く垂れ込め、そしてまた生暖かい風が少しずつ強まり、大荒れを予感させる天気模様となっていた。

最高の気分で迎えるべき朝なのに、大いに水を指された気分になり、徹司は釈然としない気分を抱えたまま高校へと向かうのだった。

雨雲は時と共に密度を増していき、徹司が昇降口にたどり着くのとほぼ同時に降下作戦を開始した。登校中の徹司を狙わなかったのは、せめてもの慈悲だったのだろうか。

「よお、モモ」

教室に入った徹司にまず声をかけたのは、横石だった。普段は遅刻の多い男だが、さすがにイベントの日は寝坊はしないらしい。陣八役という大役が控えていることも、もちろん無縁ではないだろう。

そう思って教室を見回すと、確かに普段よりも早い時間に登校している人が多い。そうであるなら、本来はもっと興奮の粒子に満ちていてもよさそうなものだが、ちらほら見える不安気な表情がそれをかき消している。

みんな、やはり台風を気にしている。

――どうなるのかね。

――さあな。

――中止にはならないよね。

――大丈夫でしょ。

そんな会話が、教室のあちこちから聞こえていた。

徹司は、窓の外を見た。雨足は、既にかなりの強さになっていた。

やがて開会式の時間になり、体育館への移動が始まった。

ぞろぞろと体育館へ向かう列。

良く観察したならば、どちらかといえば沈んだ顔をしているのは、三年生に多いことに気がついたかもしれない。逆に、一年生たちからは、この台風が近づいてきていることに対する悲壮感のようなものはほとんど感じられない。

それはつまり、文化祭というものに対する思い入れと全く比例している証左なのだ。


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渡辺監督って、すごい。

と、フツーに思った。


去年の雄星6球団競合の当たりくじを引き、そしてまた今年も。

6球団競合となった大石の当たりを、またまた引き当てた。

引き当てたというか、正確には最後に残ったくじを取ったらそれが当たった、ということなのだが、まあ強運には違いない。


今年のドラフトは、事前情報が錯綜していてなかなか見ごたえがあった。

大学生投手を中心に、豊作年と言われていたのだが、その中心はやはり早稲田の斉藤。

その斉藤と並んで、ビッグ3と言われた同じ早稲田の大石、中央大の沢村。

他にも、ドラ1素材が何名も。


評価の高い選手ほど、競合の可能性が出てくるわけで、あえて抽選に挑むか回避するか、その辺は各球団の判断になる。

事前の情報合戦が重要な意味合いを帯びてくるのだ。

早々と一位指名選手を表明した球団もあれば、当日まで態度を表明しない球団もある。

今年のライオンズは、後者である。

チーム事情からして即戦力の投手を欲しがっているのは当然として、さあ誰を選ぶか。

スポーツ新聞などは、当然この時期の主要ニュースとして、各球団に探りを入れて、予想を立てる。

そして、ソースの違いか記者の判断によるのか、紙面によってかなり異なる情報が開示されるのがまたおもしろい。

西武の場合は、1位指名を大石という新聞、いや社会人の榎田だとする新聞、はたまた仏教大の大野か、なんて意見も。

共通しているのは、当日まで判断は保留されそうだ、という不確定要素。


結果として、ライオンズは競合覚悟で大石の指名に踏み切った。

大石は斉藤や沢村をしのぐ6球団の競合となり、冒頭の通りにライオンズ渡辺監督が見事に交渉権を獲得。

今のところ、特に西武入団を拒否するような情報はなさそうだから、ほぼ入団は確定だろう。

よかったよかった。


大石は、大学ではクローザーとして活躍していたが、西武ではまずは先発として育てる方針らしい。

ちょっと意外。

基本的に投手の育成方針としてはまず先発、というのはわかるけど、今のチーム事情を考えるならはじめから後ろを任せる投手として育ててもいいかと思っていたんだけど。

もちろん、先発として大成してもらえるならそれはそれでいいが。


とはいえ、毎年の事ながら、この時点での評価は未知数の域を出ない。

鳴り物入りで入団したものの、思ったほどの活躍を出来ずに去っていった選手もまた多い。

願わくば、将来のライオンズを代表するような立派な選手にならんことを。


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そして、用紙の締めの部分の文章に目をやった。

『全体的に、まだ詰まったり止まったり台詞間違えたりが、いっぱいありました。もちろんそれがなくなるのが一番いいけど、いくら練習しても、本番は緊張してることもあって、絶対そういうことがあると思う。だから、何が肝心かというと、間違えた時のフォローをどうするか。見てる人は台詞知らないんだから、違う言い方しても意味通ってればいいし、多少台詞抜かしても何とかなる。だから、いかにも間違ってしまいましたーって顔をしたり、「ごめん。」なんて言ったりしないこと、そして、台詞が出てこなかったりしたら、周りが次の台詞出してあげたり、ちょっとアドリブを出したりして助けてあげることが大事。役になりきってれば、それぐらいできるさ。今日は普段の練習の時から、そうやって、いざという時に慣れておこう。

明日がいよいよ本番だ。みんな頑張るぞ。オー!!』

間違えた時のフォロー。大事なことだが、言うほど簡単に出来ることではない。本番中の緊迫した場面で予想外の事態に直面した時に、咄嗟に最善のフォローができるものか、どうか。

徹司には、正直自信はなかった。

だが。

後に、まさにその事態がおこり、そして朋子が貫禄のフォローで役者達の窮地を救うのであった――



「……てなわけで、いよいよ明日が本番だ。役者の人たちも、裏方の人たちも、ここまでよくがんばった。もちろんみんなアカデミー賞を意識はしてるだろうけど、あまり気にしすぎないように。さっき最後の通し稽古をみせてもらったけど、すごくいい出来だった。平常心を持ってやれば、必ず後から結果はついてくると思います」

担任教師の小原の話が続いている。真剣な表情で聞き入っている者もいれば、なにやら考え事でもしているのか、まるで上の空という者もいる。いつも通りの光景のようでいて、それでも何かが違う。かすかに張り詰める緊張感――なのだろうか。

それでは明日、がんばりましょう、という小原の言葉で、この日のホームルームは終了となった。

あちこちからガタガタと椅子から立ち上がる音が教室中に響き渡る。

徹司も、さてと、とつぶやきながらゆっくりと立ち上がった。

斜め後ろの席の古兼を振り返る。

「剛志、今日はまっすぐ帰るか?」

古兼はちょっと笑って、

「や。こんな日に寄り道する気かね、キミは」

と言い返す。

「まさか。俺は帰るさ。お前がドムドム寄るとか言ったら止めにゃならんかな、と思ってな」

徹司も肩をすくめてやりかえした。

そこへ、

「おつかれさまーっ!」

と、元気な声が割って入った。

「トッコも、おつかれさま」

「ね、モモちゃんも剛志くんももう帰るでしょ?一緒に帰ろ」

朋子はいつも以上にテンションが高い。

明日という日を一番楽しみにしているのはきっとこの子だろうな、と、徹司は思う。

実際の時間で言えば、数ヶ月程度の短い時間に過ぎないのかもしれない。だが、その間、いろいろなことがあった――実にたくさんの事が。

朋子の夢。

徹司の夢。

クラスメート達の夢。

いくつもの夢が交わり、ぶつかり、変貌し、そして一つの実を結ぼうとしていた。

「トッコ」

「うん?」

「ありがとね」

「またそんな、神妙な顔しちゃってー。この前の電話の時にも言ったけど、あたしにお礼なんていいんだってば。そうね、明後日、アカデミー賞取れたら、お礼言ってくれてもいいよ。堂々と受けてあげるから」

そう言って、朋子は笑った。

「是非そうさせてもらうよ」

ほれ、さっさと帰ろうぜ、と古兼が言った。


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ミニバス、秋季大会。

早いもので、これが6年生にとっては最後の公式戦ということになる。

勝ち進めば全市、全道とつながるが、今の真駒内には絶対にムリ。

事実上、ムウの最後の公式戦試合ということになる。


1回戦の相手は、澄川。

春先に試合をした時は、50点取られて惨敗を喫した相手。

もともと身長の高い選手がいたのだが、さらにもう1人高いのが加わり、160cm前後の選手が二人。

ただでさえ低い真駒内には少々厄介なところだ。


第一クォーター、シュウヤ・アキヒト・ムウ・トモヤ・タイキでスタート。

高さでは全く及ばないものの、シュウヤとタイキが珍しくパスをつないでのボール運びにトライし、それが功を奏して、リズムは悪くない。

もっとも、ラストパスがつながらずに相手ボールになってしまうことも多いのだが。

また、澄川にファウルが多く、4分にフォーファウル。

・・・それでも、もらったフリースローが入らないのも相変わらず。

トータルでは健闘したが、デカイ相手5番にこのクォーターだけで12点献上し、7-15。


第二クォーターはユウダイ・ハヤト・ツバサ・ユウスケ・リオ。

開始早々にユウダイがゴール下のシュートを決めていいスタートかとも思ったのだが、そこからどん底。

ボールが運べないし、リバウンドも取れないし。

延々攻め続けられる時間帯が続いて、終わった頃には9-34となっていた。


第三クォーターは、ユウダイ・シュウヤ・ムウ・トモヤ・タイキだった。

ムウが出ているのは、明らかに最後の試合ということでの温情である。

澄川もベストがそろったので、やられっぷりはさらに加速。

いつも通りといえばいつも通り。

ドリブルミス、パスミス、キャッチミス。

ルーズボールは拾わない、リバウンドは取れない、ボックスアウトはしない。

高い相手に取れないのはある程度は仕方ないとしても、外れたシュートが床に落ちてバウンドまでしてるボールを取れないというのでは、身長は関係ない。

ボールに対する執着心が全員そろってあまりにも薄すぎる。

第四クォーターもまったく何の変化もない。

後半だけのスコアで言うなら2-40・・・。

トータル11-74という、普通ではあまりないけど真駒内にとっては普通になってしまったスコアで、終戦。


<得点>

ユウダイ:2 シュウヤ:1 アキヒト:2 トモヤ:4 タイキ:2


たくさん出場させてもらったムウだが、やはり何の活躍もできず。

結局シュートは1本も打つことすら出来ず、敵にパスをしたり、キャッチミスしたり、あっさりと奪われたり。

唯一、偶然かもしれないが相手からチャージングを取ったところだけが、成果といえば成果。

二年近くやっての集大成がチャージングを一つ取っただけ、と考えると、空しいというか何と言うか。

期待はしていなかったとはいえ。

現実はこんなものか。

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残り準備期間は1週間を切り、空気はさらに濃密さを増していった。

生徒の自主性を重んじるこの高校では、様々な行事においても運営等は基本的に生徒に任されていて、あまり教師は口を挟まないのが通例である。

そのためなのか、担任の小原(おはら)はこれまで、演劇部の顧問であるにもかかわらず、芝居についてもほぼ口出しはしていなかった。

或いは、演劇部顧問であるからこそ、自分のクラスにだけ助言をすることに抵抗があったのかもしれない。

だが、ラストスパートに入ったこの段階で、ついに稽古の指導を始めるに至った。やはり血が騒ぎ出したのか――或いは初めから最終段階に少しだけアドバイスをする計画だったのか。

いずれにしても、徹司たちにとっては心強い助勢となったのは間違いなかった。

今日も、また――

「ちょっと、ストップ。桃井、今のところな」

「はい」

「まだ雷太の必死さが足りないぞ。嵐の海で、絶対に徳造を死なせないという気持ちがあるんだからな。お前の呼び方じゃあ、それが感じられない。『とくぞー』って、街中で呼びかけてるわけじゃないんだ。『とくぞぉ!』って、しっかりと叫んでくれ」

――わかりました」

「それから、目線も。徳造のジャンパーを見つけたんだ。そうしたら、絶対に見失っちゃダメなんだから、その一点を凝視する。そうしないと、観客に徳造の姿が見えないぞ」

「はい!」

こうなると、徹司も意地である。

この小うるさい担任を黙らせるような演技をしてやる――と、これまで以上に熱が入るのだった。

9月19日の木曜日。本番の二日前である。この日は、仕上げのための通し稽古が行われた。

そして、その翌日の20日には、その通し稽古での反省点や改善点が、演出サイドから提出された。

御丁寧に文章を作って印刷までしてくれたのは――無論というべきか、朋子だった。

『これより、演出からのいわゆる「ダメ出し」です。もちろん良いところもいっぱいあったけど、直すところは、まだまだあるぞ!これから上げること以外でも、もう一回自分の台詞の言い方、反応の仕方、動き方を確認してみて下さい。役者同士で話し合うと良いかも。今日がとうとう練習最終日、みんな集中していこう!』

そして、各シーンごとに、演出の遅坂(ちさか)や朋子が気付いた点が書かれている。A4の用紙の表裏に、びっしりと。

徹司はまずは、自分の名前が出てくる場所を目で追った。当然のように、雷太の名前がたくさん挙げられている。つまり、明日本番までの間に修正しなければならない箇所である。

自分ではあまり意識しなかった箇所、すぐに修正できそうな箇所もあれば、表現に苦闘しているもののまだ満足の行く結果が出せていない箇所もある。

『雷太さんへ いつも熱演ですごーいと思うのだけど、「徳造!」とか「それでも武士か!」とかの台詞と「何がよしだ!」の叫び方が全く一緒なのは、やっぱりまずいと思います。シリアスなシーンじゃない所は、もっと力を抜いてリラックス、リラックス。ただのつっこみにしては、迫力ありすぎです。』

むむ、と徹司はうなった。

確かに、全くその通りである。

初体験の演劇に挑戦する――という意識が強すぎて、あらゆるシーンに全力で挑んできた。そして今度はその中で、力を抜くことを意識しなければならない。

それは、当然の話だ。スポーツであっても、全力で試合をすると言っても、全ての瞬間で全力疾走するということにはならない。

あと一日でどこまで直すことができるか、自分自身でもいささか心もとなかったが、とりあえずは『リラックス、リラックス』のキーワードを、徹司は心に刻んだ。

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「全国書店員が選んだ いちばん!売りたい本 本屋大賞」

と、いうものがある。

俺も、注目しだしたのは今年に入ってからなのだが。


読書好き、とはいうものの。

いやまあそれなりに数は読んでいるけれど、いわゆる文学作品とかはほとんど読まないし、なんだか作家が偏ってるなーという思いは、ずっと抱いていて。

さりとて、新規の開拓というのもこれがまたなかなか難しい。

とっかかり、或いはきっかけのようなものが欲しいところだ。

そんなことを思っているときに、本屋大賞というものにハタと思い至ったわけだった。


本屋大賞とは、公式サイトによると、

『「本屋大賞」は、新刊書の書店(オンライン書店も含みます)で働く書店員の投票で決定するものです。過去一年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。』

という性質のもの。

主旨が、いい。

文学性とか技巧とか、そういうものよりも、まず「面白いもの」。

そうそう、やっぱり小説は面白いものが一番だ。


2004年からスタートしていて、2010年まで、都合7年分。

年毎に1~10位まで発表され(2006年だけ何故か11位まで)、挙げられている作品は71作。

既に読んだことがある作品も混ざってはいるが。

なんだか、宝の山を見つけたような気分である。


全部帰るほどの経済力も置き場もないので、基本的には図書館依存。

年度や順位は無視して、全冊をまず自分でリストアップ。

あとはもうフィーリングでランダムに、図書館にリクエストをかける。

2010年のものや、話題作(ちょうどドラマや映画化されたものなど)は、リクエストが集中しているので後回し。


で、読み漁っているわけで。

うむ面白い。

ジャンルは様々ながらも、エンターテインメント色の濃い作品が多い。

重厚な作品であっても、すっきりとした終わり方のものが多いせいか、後味が悪くない。

言ってみれば、俺の好みによく合っている。

無論これだけの数があるから、個人的にあまりヒットしないものもあるのだが。

女流作家が描く女性の恋愛中の心理や行動を中心に進む恋愛小説・・・なんかが、ちと苦手。

全く感情移入できず。


一方で、青春モノが、なかなか、よい。

あまり今までは読まなかったのだが。

高校生ボクシング界の天才と努力家の親友たちの成長を描く「ボックス!」、箱根駅伝出場を目指す変わり者の一団の苦闘を描く「風が強く吹いている」などのスポーツ物から、一晩で80km歩き通す学校行事の一夜を描いた「夜のピクニック」、14歳の少年たちの成長を描いた「4TEEN」などなど・・・清涼剤のようにさっぱりする作品が多々。


数えてみると、今のところ71作中35作まで読破。

ちょうど半分だ。


別の楽しみ方。

例えば2007年の受賞作。

1位:「一瞬の風になれ」

2位:「夜は短し歩けよ乙女」

3位:「風が強く吹いている」

4位:「終末のフール」

5位:「図書館戦争」

6位:「鴨川ホルモー」

7位:「ミーナの行進」

8位:「陰日向に咲く」

9位:「失われた町」

10位:「名もなき毒」

と、なっている。

適当な順番で読んでいる為、今現在、1位と9位以外の作品を読了したところだ。

そしてこの年度、非常に面白い。

「夜は短し歩けよ乙女」→独特の語り口と少し不思議な設定とおかしな登場人物たちの喜劇。主人公の自分自身に対するセリフ、『恥を知れ。しかるのち死ね』に、噴いた。

「風が強く吹いている」→先ほど少し触れた青春物。天才が一人二人混ざっているくらいで箱根駅伝に出場できるもんかいな、という疑問は置いといて、それでも科学的視点やデータ・数字等も駆使した描写は臨場感たっぷりで、最後の白熱のレースには夢中で引き込まれた。

以下、「終末のフール」は本屋大賞常連でもある伊坂幸太郎の作品の中でも、個人的には大ヒット。「図書館戦争」は先日別記事でも書いたけど、これまた大ヒットの連作。「鴨川ホルモー」は、よくもまあこんな荒唐無稽な話を思いついたもんだ、と敬服させられるような。

そんなこんなで秀作ぞろいの中、堂々のトップに立った「一瞬の風になれ」。

さぞや面白いのだろう。

期待は、いやが上にも高まっていて。

むしろ今は、いつ読み始めようかとタイミングを計っている状態である。

連作ものでもあるし、他にも読みたいものはたくさんあるので、引っ張って引っ張って、いっそ年末にゆっくり楽しもうか・・・などと。

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「あれなら、ポスターの賞ももらえるんじゃね?」

と、上山が言う。

「え、ポスターの賞なんかもあるの?」

西崎が聞いた。

「結構な数の部門で賞が用意されてるみたいだぜ。細かくは覚えてないけど」

「そうなんだ。そういえば、主演男優賞とかもあるんでしょ?モモ、狙ってる?」

西崎が今度は徹司に聞いてきた。

徹司は苦笑した。想像もしていなかった。

「そんな簡単に獲れるもんじゃないでしょ、それは。それと、今年からは『主演男優賞』とかじゃなくて、一律に『個人賞』ってなるらしいよ」

全ての役者に機会を与えよう――ということなのかどうか、変更の経緯は徹司も知らないのだが。

「何でもいいから、狙ってけよ」

「そういう横石だって、チャンスはあるわけだろ?」

「いやあ俺の陣八じゃ無理よ。剛志の永吉なんか、いけるんじゃん?」

「や、どうかな。まあくれるものならもらうけどサ」

「……なんて偉そうなヤツだ」

あははっと、笑い声が上がった。

と、そこへ、

「桃井くんと横石くん、ちょっといい?」

大弓冬実が声をかけてきた。

「雷太と陣八の、シーン1の衣装が出来たの。ちょっと試着して欲しいんだけど」

シーン1というと、五稜郭から雷太たち3人が小舟で脱出する場面である。この時は3人の身分は武士なので、それらしい格好が必要になるのだが、さすがにちゃんとした武士の装束を用意するのは難しい。そこで、黒い装束の作務衣に似た簡単な衣装を作ったのである。

大弓に連れられて教室の隅に行くと、既に騎一郎役の内建(うちだて)が、黒装束に着替えていた。

徹司も、渡された衣装を手にとってみた。

見た目は漆黒の作務衣のようだが、薄い生地で、涼しげだ。

真夏に演じる身としては、非常にありがたい。

もともと黒というのは徹司の好きな色であり、徹司は一目で気に入った。

身に纏ってみると、軽くて肌触りもよく、動きやすい。

「いいな、これ」

と、横石も言っている。

「いい出来でしょ?製作者にはあとでちゃんとお礼言っておいてね。苦労したみたいだから」

と、大弓がいう。

「誰作ったの、これ?」

横石が聞くと、

「わたしたち」

との答えが背後から返ってきた。

徹司は意表を突かれた。春谷と、川下だった。

「どう?悪くないと思うけど」

いつも通り強気で得意気で、だが微かに不安そうな表情ものぞかせながら、春谷が訊いてきた。

徹司は意味もなく自分の左袖のあたりを軽く引っ張ってみた。もちろん、その程度で糸がほつれたりするはずもない。

「すごく、いいと思うぜ」

横石も、同感だというように頷いた。

それをみて、春谷と川上の表情もわずかに綻んだ。

「じゃあこれで、貸し借りは無しよ?」

わざと吐き捨てるような口調で言って、二人は背を向けた。

「相変わらず生意気だなぁ」

横石があきれたように小声でつぶやいた。

徹司もニヤリとして、全くだ、と小声で言った。

衣装が出来て、ポスターも出来て。

いよいよ、本番も近い――と、徹司は実感したのである。

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5年ぶりに中国での大規模反日デモ、ということだ。

5年前というと、ちょうど俺が現地にいたころで、目の前で見ていたアレだ。


今更反日デモが起きたっても驚くようなものでもないし、起こるべくして起こったような気もするが。

中国への批判はあちこちで勝手にやってくれてるだろうから、そちらに任せるとして。

やっぱり違和感を感じてしまうのは、マスコミの報道姿勢。

5年前にも感じたが、どうにもこのデモによるマイナス面(中国の負の姿)を強調しているように見えることが多々ある。

今回は、直接のきっかけは東京での反中デモへの対抗ということになっているのだが、その事実はちょこっとだけ触れられているような扱い。

きっかけにすぎないから、という意見はもっともではあるが、言ってしまえば双方ともにデモをした、それだけだ。


それはそれとして。

杭州で反日デモの渦中にあったころ、日本にいる友人たちが心配してくれるほどには、実は危険でもなければ切迫した空気でもなかった。

街中が敵・・・ということにはならなかったからだ。

アパートの向かいの部屋のおばちゃんとか、行きつけの飯屋とか、床屋のおばちゃんとか。

基本的には、相変わらずフレンドリーで、心配してくれて、同情してくれていた。

若い連中がなんかしらないけど勝手に騒いでいるだけだから、と。


その「若い連中」の中でも、俺の友達の学生たちは、やはり一様にデモには厳しい目を向けていた。

つまりは、大騒ぎしているのはあくまでも少数派の一握り、という見方もできるわけで。


ところが日本のニュースを見ている限り、とてもそんな雰囲気ではない。

中国全土が日本の敵に回ったかのような騒ぎである。

そんなのを見せられた日本人が、中国人に友好感情を持つはずもない。

うがちすぎかもしれないが、どうもそこら辺の報道姿勢に、何らかの意図を感じてしまうのだが。


デモをデモとしてニュースで伝えるのはいいとして、もう少しこう、デモとは関わりのない一般市民の声を拾ってくれないものだろうか。

たぶん、中国という国への受け止め方が随分変わるんじゃないか、と思っている。



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宣伝用のポスターが、出来上がったらしい。

徹司、古兼、横石らが固まって雑談に興じていたところに、ポスターを手にして朋子が輪に加わってきた。嬉しそうな表情で、どう?どう?と、手にしたポスターを机の上に置く。

校内の廊下や掲示板等に貼るもので、大きさはA4サイズ。

下地は濃いインディゴブルーで、夜空を表現し、左上から右下にかけて、天の川をイメージして薄く白い点をエアブラシで散らしてある。その天の川は、左上は細く、中央にかけてカーブを描きながら大きく広がり、遠近感を表していた。

そして中央には、「REINDEER EXPRESS」の文字が、薄桃色、山吹色、檸檬色のグラデーションをかけて記されている。この文字も、左側の文字が大きく、右に行くにつれて文字は小さくなり、わずかに右肩上がりの並びになっていた。この文字列に沿うように、上部には「3-A」のクラス名が流れ星をイメージするように配置してある。

右下部分には白文字で、

「トレーニングルーム 21日10:00 1:00 22日12:30 2:00」

の上演案内が、三段で記載されていた。

完成品を見た人間は、みな感嘆の声を上げたものだった。

徹司ももちろん、例外ではなかった。色遣いの鮮やかさや、演劇の中身を反映させたスタイリッシュなデザインなど、申し分のない出来である。

すげえじゃん、と横石が言った。

素晴らしいね、と後藤が断じた。

朋子が徹司に尋ねた。

「どう、モモちゃん?」

「いやあ、すごくいいと思うよ。綺麗で、インパクトもあって、目立つし」

「だよね。さすがだよねー」

「さすがって……えーとそういえばこれ、誰の作品?」

朋子はニヤッと笑って、

「涼ちゃん」

と、告げた。

「美術部だから、やっぱり絵がうまいのよね。センスもあるし」

どことなく、してやったりの笑みを浮かべて、朋子は立ち上がった。

徹司が言葉を返す前に、朋子はポスターを持ったまま少し離れた席の涼子のところへ歩いていった。

「涼ちゃん、モモちゃんからもOK出たよ」

などと、聞こえよがしに報告をしている。

OKを出す、などというとよほど徹司が偉そうな立場にいるように聞こえてしまうが、わざわざ訂正に行くのも妙なものなので、徹司は聞こえないフリをした。

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2学期の始まりは、9月の1日。文化祭の日程は9月の19,20日の土日二日間なので、残りは三週間を切っていた。

夏休みの間の演劇の稽古は、ほとんどが役者だけ登校しての稽古だったが、学期が始まると、様子がやや異なってくる。

大道具や衣装係などの裏方の人間も見ているし、他のクラスの人間なども廊下から稽古風景を覗き込んだりもする。

初めのうちはそれが少し恥ずかしくもあった徹司だったが、それもすぐに慣れた。大勢の知らない人の前で演じるのが、演劇である。演じることに楽しさを感じ始めている徹司は、ギャラリーの数はだんだんと気にならなくなり、やがてはギャラリーがいないと一抹の物足りなさを覚えるようにすらなってきたのであった。

そしてそれは、何も徹司だけに限った話ではないようだった。他の役者たちも、観客の目を意識した演技をするようになり、それがどうやらいい方向への相乗効果をもたらしたようで、A組の芝居はだんだんと精度を増していったのだった。

さらに日が近づくにつれて、生徒の間では、今回の文化祭演劇部門アカデミー賞をめぐっての下馬評がささやかれるようになった。毎年ハイレベルな争いが繰り広げられる賞であるだけに、どのクラスも必死である。この時期の評価は、無責任な噂に過ぎないとはいえ、各クラスの人間に少なからぬ影響を及ぼすのである。

今回、3年生で演劇に挑むのは五つのクラス。

A組の『レインディア・エクスプレス』

B組の『マウイ 太陽をつかまえる』(但しこれは、人形劇である)

C組の『MOTHER』

D組の『嵐になるまで待って』

F組の『アルジャーノンに花束を』

である。

2年や1年で演劇に挑戦するクラスもわずかに存在はするのだが、こと文化祭の演劇に関する限り、3年の牙城を崩すことはほぼ無いに等しく、アカデミー賞争いに参戦することはない。

そして下馬評によれば、アカデミー賞有力候補は、A組かD組だろう――とのことだった。

奇しくも、キャラメルボックス劇団の作品同士の激突ということになる。

この高評価は、A組の人間をさらに奮い立たせることになった。

少しでも、いい舞台を作り上げようと。

クラスは、まさに今、一丸となっていた。

春谷、川下といった、かつては意見を異にしたクラスメートたちも、今は持ち前の行動力をいかんなく発揮して、各自の仕事を精力的にこなしていた。

雨ふって地固まる、などというのは言い古された言葉だが、それはつまり変わらぬ真理を突いた言葉だということなのだろう。

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