中華の足跡・改

中国から帰り、北海道に暮らしつつ、台湾とつながる生活。

マジメな話からくだらないネタまで、国籍・ジャンル・多種多様。

いざ、情報発信~!


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×月×日

雷太の役を演じていて、やっぱりやりやすいシーンと、やりにくいシーンがある。

やりやすい、やりにくいという表現は正確じゃないか。

恥ずかしい、というべきかな。

熱血に叫んでる場面なんかはいいんだけど、ギャグを飛ばすシーンなどが、やっぱりどうも。

普段からそういうことをあまりしないせいか?

結局は度胸の問題なんだろうが。

永吉に竹刀で殴られて前歯が折れて、「しかも2本」と自分で言うところとか。

……難しい。

もっと冷静に感情を込めずにさくっと、との事なんだけど。

うまくできないなぁ。



×月×日

シーン11では、雷太と永吉が竹刀を交える場面がある。

雷太が貫禄を見せる場面だ。かっこいい。

俺的には大事な見せ場の一つなので、そのシーンの動きは、剛志としっかりと練習した。

「どうした。俺が怖いのか」

の雷太のセリフに誘われたように、永吉が踏み込む。

竹刀は、右上段からの袈裟斬り。

それを、雷太が竹刀で受ける。

永吉はすかさず、左から切り返す。

再び雷太はしっかりと受ける。

そのまま、しばらく鍔迫り合い。

そして、力に勝る雷太が永吉を突き放す。

数歩後退してよろめいた永吉は、何とか体勢を立て直す。

そしてまた走りこみながら、雷太へ向けて上段から渾身の一撃。

雷太は、寸前で体を開いて避ける。

永吉の剣先は、空しく地面を叩く。

雷太はその隙を逃さず、小さく鋭い一閃で、永吉の竹刀を叩き落す。

得物を取り落とした永吉は一瞬呆然とするが、すぐに竹刀を拾おうとしゃがんで手を伸ばす。

竹刀をつかもうとした瞬前、雷太が足を踏み出して永吉の竹刀を踏みつける。

そのままの姿勢で固まった永吉が、雷太を見上げる。

その永吉の眼前に、竹刀を踏みつけたまま、雷太が竹刀を突きつける。

永吉、思わず後ろに下がって尻餅をつく。

……と、こんな感じで。

文章にすると長いけど、やってみると数秒のものだ。

けどここはしっかりと仕上げたい。



×月×日

家でぶつぶつとセリフを言っている分には、なんとか全部のセリフを言えるようになった。

ただ、当然演技の方に集中しなけりゃならないだろうから、そうなるとまたセリフが飛びそう。

自然に言える様になるまでは、まだまだ先は長そうだ。



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しばらくぶりの、ミニバスの試合。

先週末が合宿だったから、その成果を試す絶好の場。

とはいえ、相手はひばりが丘で、強い。

何をどうしたって真駒内の勝てる相手ではないのはわかりきっているので、問われるのは勝敗ではなくて内容。

俺としては、得点15以上、失点60以内なら上出来かな、くらいに思っていたのだが。


さてフタを開けてみると。


シュウヤ・アキヒト・ムウ・トモヤ・タイキでのぞんだ第一クォーター。

開始早々やられるやられる。

相手はプレスをかけてくるでもなく、完全にハーフまで戻ってのディフェンスだから、怒涛のように一気にやられることはない・・・はずなのだが。

引いている相手を崩すことが全くできず、パスをカットされて速攻を喰らい、追いつけずに失点、というパタンの繰り返し。

あっという間に録画再生モードに入ってしまい、2-24というスコア。


第二クォーターはユウダイ・ハヤト・オカ・ツバサ・ユウスケだったが、まあ内容的にはほとんど変わりなし。

ま、1Qのメンバーよりは多少ディフェンスがよくなっているか。

このところ、ハヤトはディフェンス力が非常に伸びているし、高さという面ではチーム内ではユウダイが一番だ。

それでも、全く相手にならないことは変わりなく。

4-39で前半終了。


後半はユウダイ・シュウヤ・ハヤト・ツバサ・ユウスケ。

やはりほとんど変わりなし。

ごくわずかに、ユウダイが練習したポストプレイらしきものを何度か見せたが、決められたのは1本だけ。

他に攻め手が無い。

一度だけツバサが綺麗なカットインを見せたが、シュートは入らず。

7-60となり、この時点で60失点以内という目標は果たせず。


最終クォーターは、ひばりが丘は練習のためかどうか、メンバーをガラリと変えてランクダウン。

それでもまだまだ実力差は大きいようで。

流れはほぼ全くかわらず、結局のところ11-80という大差での惨敗となった。


<得点>

ユウダイ:4 オカ:4 ユウスケ:1 タイキ:2


秋季大会を間近に控えて、この結果かぁ。

そもそも同じ小学生同士でここまで差がつくってのは何なんだろうね。

負け癖がついちまったかな・・・やってる当人達があまり悔しそうじゃないのが見てるこっちとしては非常に腹の立つところなのだが。

精神面だけでも何とかしろや。

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×月×日

ようやく、雷太のセリフを大体覚えてきた。

けど、まだまだ完全じゃない。がんばって暗記しないと。

自分のセリフを覚え切れてないのに、自分とは関係ないスタート部分の群読のセリフは覚えてしまったっぽいぞ。

6人で一斉に、「明治二年、5月。戊辰戦争のさなか……」ってヤツだ。

まだみんなタイミングとかもバラバラだけど、ときどきそろったりすると、すごくかっこよく聞こえる。

まあそれを本番までに、完璧にそろえるようにしなけりゃならないんだけど。

みんながんばれー、と。

群読は劇の途中でちょこちょこ出てくるけど、俺は一度も群読はやらないから、その辺は気楽なもんだ。



×月×日

あらためてキャラメルボックスのビデオを見てみる。

やっぱりすごいなあ、と実感。

いや当たり前なんだが。

人気のプロ劇団と、ド素人の高校生とを比べること自体、おかしいんだけど。

それでもねえ。

雷太を演じるのは西川さんという人だけど……すごい。

俺は、たくさん練習をして、ほんの少しでも、カケラ程度でも、チリほどでも、近づくことはできるんだろうか……。



×月×日

ギャグに対してのツッコミっぽいノリなんだけど、数人で一斉に前転をするというシーンがある。

ええと、確かシーン4。

雷太は、前転はしないから、俺とは直接関係ないんだけど。

マット運動ではなく、床の上で直接前転するから、ちょっと体が痛そうだ。

その、前転で。

ニシンのヤツが(西崎の通称『ニシン』も、だいぶ浸透してきた)、柔道の受身で習ったという、少し変わった前転を披露した。

右肩を斜めに入れて先に地面につけて転がるイメージで、回り終った所で左手で地面をバン!と叩く。

まあ受身なので。

その回り方も音も、何とも新鮮で、みんなに大ヒット。

せっかくだから、このやり方で前転しよう、ということになった。

そんなわけで、剛志やサッチーなんかが、ニシンの指導の下、特訓。

女の子の方が大変かな、と思ってたけど、サッチーなどは運動もできるし格闘技もやってるから、剛志よりもよっぽどうまかったな。



×月×日

音響の人たちも、がんばってるようだ。

いろんな音楽を準備して、何があうかとか、検討しているらしい。

それで、今日。

音響の山地、それから加古井や遅坂とかと、ちょっと冗談っぽく話をして。

シーン3で、拓也が永吉と口論しているところに、雷太が勘違いして飛び出す場面があるのだけれど。

客席の後方から舞台まで走って、「オラーッ!!」と、永吉役の剛志に跳び蹴りをかます。

で、野球帽のつばに手を当てて、かっこつけながら、拓也役のニシンに向かって「ここは俺に任せて、逃げるんだ」と、大間違いのセリフを投げかける、と。

そこの登場場面のBGMに、ゲームの音楽を使ったらおもしろいんじゃないか、なんて話になった。

たまたま、「ロマンシングサガ3」にハマっているけど、そこに出てくる、いわゆるヒーローっぽいキャラのロビンというキャラがいて、そいつの登場シーンに、いかにもって感じの曲があるのだ。

ちょっとバカっぽい音楽ではあるけど。

シーン3あたりだと、まだ雷太は三枚目っぽいところがあるから、ちょうどいいかも、と、話がまとまってきた。

そこでやめときゃよかったのに、みんなで調子に乗って、ボスキャラの音楽をここに使ったらウケるかも、などと好き勝手に冗談言って爆笑してたもんだから、トッコに睨まれてしまった。くわばらくわばら。




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徹司はビックリした。

「おやまあ、そんなこと言ってたんだ」

「うん。モモちゃん、ごめんね。あたしのせいで迷惑かけちゃって」

「そんな、とんでもない。トッコは悪くないさ。むしろ、俺の進め方がヘタだったせいで、トッコに嫌な思いさせちゃって」

徹司の言葉を聞いて、朋子は電話の向こうでうふふ、と笑った。

「じゃあ、お互い様ってことにしようか?」

徹司も、笑って応じた。

「オーケー」

「じゃあ、これで集中してできるわね。明日からも、練習がんばろうねー」

「うん。御指導、よろしくね」

「まっかせといて!」

電話を切って、徹司は居間に戻った。

すると、朝子が妙な目つきで息子を見やって、

「珍しいわね、クラスの子から電話なんて。随分楽しそうだったけど」

と、言う。

確かに珍しいことだったので、徹司は反論もできない。

なぜだか気恥ずかしくなり、

「いや、文化祭で演劇やるんだけど。役もあるし、文化祭委員だから、いろいろと」

と、必要のない言い訳を並べた。

話をそらそうと、徹司はテレビの野球中継に目をやった。

「お、西武追加点入ってるじゃん。誰が打った?」

朝子は相手にならず、さあね、と言って台所へ去っていった。


徹司たちの気分に合わせたかのように、太陽はこの時期らしい陽射しを降り注ぎ始めた。

アブラゼミたちも、ここぞとばかりに大合唱を響かせる。

良くも悪くも夏らしい日々を、徹司は必死に稽古をして過ごしていた。

記憶が苦手ではない徹司は、台本の自分の台詞は、既に大体覚えてはいた。

だが、演技はまだまだ不自然である。

グループでの台本の読み合わせ、或いは立ち稽古でも、初めのうちは照れを捨て切れなかったせいか、つい笑ってしまったり、視線がさまよってしまったり。

もっとも、それは徹司だけに限ったことではなかった。何しろ、大半の人間が演劇など初体験なのである。

そこへいくと、さすがに朋子は大したものだった。

何度も観劇経験があり、舞台にも立ったことがあるだけに、演劇のイロハを理解している。自然、朋子を中心にした稽古が展開されるようになっていた。

演出の遅坂(ちさか)にしても、演劇指導経験などあるわけでもなく、それでも全体に目を配り、朋子にあれこれ教わりながらの演出指導だった。

それでも、日一日と演じられるシーンが増え、記憶した台詞数も増え、細かい動きもついてくる。

自分達が、まさに今この劇を創りあげている。

そんな感覚が、役者達を捕らえて離さない。

無論、徹司とて例外であるはずもなく。

その空気の中に、どっぷりと浸かりきっていた……。


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桃井家では、平日に家族がそろって夕食をとることは少ない。

専業主婦である朝子(あさこ)は、だいたい6時くらいに食事ができるように用意をするのだが、徹司の父・征司(せいじ)は毎日の帰宅時間は8時から9時というところで、一緒に食卓に着くことはほとんどない。一歳違いの兄の建司(けんじ)は大学生なのだが、なにしろ大学生といえば最も時間がデタラメな――もとい、不定期な人種である。普段からそれほど仲がいいともいえない徹司にしてみれば、兄が一体いま大学に行ってるのかサークルに顔を出しているのかバイトに精を出しているのかふらふらと遊んでいるのか、さっぱりわからないし、また知りたいとも思わないのだった。

そんなわけでこの日は、徹司は母の朝子と二人で夕食を食べることになった。

昔は万事に厳しい――と徹司は思っている――朝子だったが、学校の成績や受験については何故かあまり口を出してこない。無関心ということはあるまいから、勉強については徹司の自主性を尊重している、ということなのかもしれない。

もっとも、こと学校の成績だけで言うなら、徹司はあまり親に心配させるような成績はとっていない、との自負があるのだが。

この日の食卓での話題は、桃井家での夏休み恒例家族旅行についてだった。

「また今年も二泊三日くらいになりそうだけど、どこか行きたいところ、ある?」

「いや、べつに」

徹司がそっけなく答えたのは、正直言ってこの旅行がそれほど楽しみでもなくなってきているからだった。

旅行そのものが嫌いなわけではない。また、桃井家ではたいてい夏は長野方面に行き、登山がコースに入るのだが、徹司は運動することも山に登ることも好きなほうである。

では何が嫌なのか――ということになると、本人にも実はよくわからない。

つまりは、この年頃の少年にありがちな、「家族と一緒」あるいは「親と一緒」というものに対しての、漠然とした忌避感なのかもしれない。

とは言っても、不参加を宣言するほどに嫌だったわけでもないので、徹司は朝子の話に適当に相槌を打ちながら、食べるほうに専念していたのである。

テレビのニュースではプロ野球の途中経過が映され、徹司は手を止めて画面を見た。徹司は大の西武ファンなのだが、今夜は近鉄との試合で、3回裏で4-1とリードしている。

よし、と徹司がつぶやいたとき、玄関口で電話が鳴り出した。

桃井家の電話は昔ながらのダイヤル式黒電話である。

朝子が素早く玄関口へ向かい、受話器を取り上げた。

さして気にも留めず、徹司は味噌汁の椀を手に取ったが、すぐに朝子が居間に戻ってきた。

「クラスの、鈴本さんっていう女の子からよ」

「え、トッコ?」

思わずつぶやいた徹司は、慌てて居間を出た。

受話器を取り上げる。

「もしもし、お待たせ」

「あ、モモちゃん?ごめんね、今大丈夫だった?」

「全然、大丈夫だよ」

「あのねあのね、さっき、春谷さんから電話があったの。それで、ごめんなさいって謝ってきて、これからはちゃんと協力するって言ってくれたの!」

よっぽど嬉しかったのだろう、朋子の声はいつも以上のハイテンションである。

「あたしも、謝ったの。やっぱりちょっと強引だったかな、って思ってたし。でもそうしたら、春谷さんは笑って、『もう桃井くんに謝ってもらったからいいよ』って」

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徹司はあらためて、深く息を吸い込み、そして春谷に体ごと向き直った。

「春谷さん。ええと……。――ごめん」

言ってから、頭を下げる。

下を向いたまま、続けた。

「みんなの気持ちとか考えないで、確かに突っ走りすぎたと思う。だけど、その……悪気があったわけじゃないんだ。それで、不快に、というか、嫌な想いをさせちゃったのはアレだけど……」

話せば話すほど、なんだか支離滅裂になってきてしまい、言葉に詰まった。

「桃井君……もう、いいよ」

春谷が、そこで静かに声をかけた。

徹司は、顔をあげた。

春谷はこわばった表情のまま、視線をさまよわせていた。

「私の方こそ、悪かったと思ってる。ずるい方法だっていうのも、わかってる。でも……すごく悔しくて、それで……」

春谷の声はだんだんと小さくなっていった。

静寂が、その場を支配した。

店内の有線放送で流れるJUDYMARYの「OVER DRIVE」が、場違いなほど明るく響いた。

沈黙を破ったのは、佐野だった。

「じゃあ、もう大丈夫じゃね?春谷も、協力できるだろ?モモに頭下げてもらったんだし」

佐野の言葉に、春谷はこくりと頷いた。

「うん……もう、変なことは言わない。私に、できることを、やるよ」

それを聞いた途端、徹司の肩から重荷がすうっと消えた。

「よかった……」

心から、つぶやく。

「トッコには、私がまた電話で謝っておくね」

と、春谷が立ち上がりながら言った。

佐野も、同時に立ち上がった。

「ありがとう、本当に」

徹司は二人にもう一度軽く頭を下げた。

春谷は、ううん、と首を振り、佐野は、いいよ、と笑った。

二人が去った後、徹司は涼子にも頭を下げた。

「栗橋さんも……ありがとう。ホントに助かったよ」

「ううん、私は何もしてないよ。でも、よかったね」

「うん。トッコも喜ぶよ、きっと」

上機嫌な徹司を見て、涼子は一瞬だけ、複雑そうな表情を浮かべた。

「……モモちゃんってもしかして」

つぶやくような声だったため、徹司にははっきりと聞こえなかった。

「え、なに?」

「ううん、なんでもない。ええと、じゃあ私も、そろそろ行くね」

何となくそそくさと、涼子は立ち上がった。

徹司は、自分も一緒に店を出ようかとも考えたが、机のトレイにはまだポテトの山が残されていて、これを放って帰るのも不自然か、と思いなおした。

「うん、じゃあ、またね」

「バイバイ。練習、がんばってね」

涼子は左手にトレイを持ち、右手をひらひらさせて、徹司に背を向けた。

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徹司は、思わず気おされて、言葉を飲み込んでしまった。

涼子は、ゆっくりと口を開いた。

「モモちゃんの気持ちも、トッコの気持ちもよくわかるよ。けど、私、春谷さんたちの気持ちもすごくわかる。えっと……どういえばいいのかな」

涼子は言葉を慎重に選ぶように、一度口を閉ざし、わずかに首をかしげた。

徹司は黙ったまま、涼子を凝視していた。

「トッコたちのやり方が、間違ってたとは思わない。でもね、やっぱりちょっと急ぎすぎたんじゃないかな。やりたいやりたいっていう気持ちがすごく出てて、私は個人的にはイヤじゃなかったけど、でも、それについていけない人もいたんじゃないかなぁ?それで、戸惑ったり、何となく置いていかれた様な気持ちを感じたり……。春谷さんとかはほら、気が強いから、反発しちゃうんじゃないのかな」

徹司は、頭をガンと殴られたような衝撃を覚えた。

涼子の言葉は――正しい。

それを、無意識のうちに、理解していた。

なぜなら――少し前までの徹司自信が、まさに『ついていけない人』だったから。

盛り上がり、熱くなっている連中を、冷めた目で一歩後ろから眺めている人間だったから。

演劇の「熱」に浮かされていた徹司は、そんなことすらも忘れていた。

今までの自分を、初心を、忘れていいはずが無い。

徹司はうつむいて、唇をかんだ。

「春谷さんたちのやり方も、すごく問題はあるけど……でも」

「栗橋さん」

徹司は、涼子の言葉をさえぎった。

「俺――わかった。ちょっと調子に乗りすぎてたみたいだ」

「違うよ、モモちゃん。私そんなつもりじゃ……」

慌てて身を乗り出した涼子を、徹司は手振りで制した。

「いやいや、ホントに。なんか俺……わかったような気がする」

徹司は、ニッと笑った。

その言葉は、嘘ではなかった。

「俺さ……ちょっと、浮かれてた。なんかもう、初めての体験尽くしで、でもそれが全部おもしろくて。この年になって――といってもまだ17歳でしかないけど、新しい世界を見つけたような、さ。それに、周囲のヤツラも盛り上がってたから、他のみんなもそうだろうと勝手に思い込んじゃって。……だから、春谷さんたちに反対意見出されて、カッとなっちゃったみたい」

恥ずかしそうに言って、徹司はコーラを一口飲んだ。

なんだか涼子の顔を正視できずに、ややうつむき加減で、続けた。

「春谷さんに会ったら、俺、謝るよ。それで、もう一回協力をお願いしてみる。それで……大丈夫かな?」

徹司は、おそるおそるという風情で涼子を見た。

涼子は、にこっと笑って、言った。

「うん、それがいいと思うよ。きっとわかってくれるよ。……ね?」

最後の一言は、徹司の背後に向かっての言葉だった。

徹司は、慌てて振り向いた。

徹司の背後に立っていたのは――佐野と、春谷だった。

「あ……あれ、いたの?いつから?」

混乱する徹司に、

「今来たばっかりだけど。モモの懺悔は、バッチリきかせてもらったよ」

佐野が、明るく言った。

そして、徹司の隣に腰を下ろす。

春谷は、佐野の向かいに座った。

「えっと……二人とも、何か買ってこなくていいの?」

混乱の収まらない徹司は、どうでもいいことを言う。

春谷は、固い表情のまま、黙って首を横に振った。

佐野も、

「とりあえず、いいや。先に話をすませちゃおうと思って。……ああ、別に盗み聞きするつもりなんかなかったんだけどさ。なんかこう、真剣な顔して話してたから、邪魔しちゃまずいかなーと……」

と、おどけたように言った。

徹司は、ふうっと息を吐いた。

そして、気持ちを落ち着かせる。

そうだ、どのみち話をしなくちゃいけない。

手間がはぶけてよかった、と思うことにした。

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請け負ったものの、徹司にいい知恵があったわけではない。

が、何とかしなければ――と、とっさに思ったのは間違いない。

(これ以上、アイツらに邪魔されてたまるか)

その、一念であった。

帰宅後、徹司はしばらく考えをまとめ、もう一人の文化祭委員の佐野に電話をすることにした。

佐野は立場的には中立であり、春谷たちのグループともつながりを持っているからだ。

徹夜は電話で、佐野に今日の出来事を伝えた。

「……そんなことがあったんだ」

「そうなんだ。正直、困ってて」

「そうだろうね……」

佐野も、困惑したように沈黙した。

「それで準くん、申し訳ないんだけど――俺、直接春谷さんたちに会って話をしようと思うんだ。で、準くんにも一緒に来て欲しいんだけど、どうかな?」

徹司の申し出に、佐野は少し間を置いたが、

――いいよ。それが一番よさそうだしね。じゃあ春谷には俺から話しておくから、時間と場所決まったらまた連絡するよ。それでいい?」

「ありがとう、よろしく頼むよ」



指定された場所は、新松戸駅前のロッテリア。

改札口を出て、頭上の武蔵野線のガード下に沿って横断歩道を渡ると、すぐ目の前である。

ロッテリアという場所が話し合いの場としてふさわしいかどうかわからないが、高校生という立場を考えるなら、案外適当なものなのかもしれない。

あえて早めに約束の場所に着いた徹司は、てりやきバーガーにかぶりつきながら考えていた。

春谷を、どう説き伏せるか。

理は、こちらにあるはずだ。

筋道を立てて話し、論破するのは難しくはないだろう。

問題は、感情論である。

徹司の説得も、まかり間違えば火に油を注ぐ結果になるだけかもしれない。

だが、失敗するわけにはいかないのだ。

じゃあ、どうすれば――

と、その時。

「あれ、モモちゃん?一人?」

呼ばれた声に顔をあげると、両手にトレイを持った涼子が、立っていた。

「あ……栗橋さん。うん、ちょっと……そっちも一人?」

少しだけ慌てて、徹司は訊いた。

「うん。予備校の帰りなんだけど、ちょっとお腹すいちゃって」

と、涼子は照れたように笑った。

「えーと――座る?空いてるけど」

「ありがと」

涼子は軽やかに向かいの席に腰を下ろした。

トレイを、机に置く。シェーキと思われるコップが、載っていた。

涼子が向かいの席に座った途端、徹司は何やら落ち着かない気分になった。少しだけ、顔が赤くなったような気すらしてきた。学校外での遭遇だからだろうか?普段から私服だから、見慣れていないわけでもないのに……。

(ええい俺、何をゴチャゴチャと!そんな場合じゃないだろうに)

そんな徹司の内心のドタバタを知ってか知らずか、涼子は、

「モモちゃんは、どうしたの?なんかこう、すごく深刻な顔してたけど?」

と、質問を投げかける。

徹司はまたもドキリとする。まさか先ほどの逡巡を見抜かれたのか?

「そ、そうかな。いや別に……」

不自然極まりない台詞でごまかす。

「でも、ずいぶん怖い顔してたよ?声かけるのためらっちゃったもの」

その言葉で、徹司は自分の勘違いにようやく気がついた。

春谷の件だ。

涼子は役者ではないため、昨日の練習には出てきていない。。

涼子に話すべきかどうか、一瞬迷った徹司だったが、ことさら隠し立てするようなことでもないと思い返し、簡単に昨日の教室での出来事を涼子に説明した。

話を聞いた涼子は、困ったように眉をひそめた。

「そう――だったんだ。知らなかった……」

その口調と、表情。

徹司は、ふと違和感を感じた。

何だろう。

――そうか。

涼子には、昨日徹司が――或いはその周りの男子達が――抱いたような、怒りの感情を見せていない。

春谷の言動に、怒っていない。

ただ、困っている。

何やら釈然としないものを覚えた徹司は、思わず涼子に訊いた。

「勝手だと、思わない?自分達で提案して、負けたら従うって言ってたクセに、また文句言い出して」

涼子は、徹司の言葉には乗ってこなかった。

ただ、悲しげな目で徹司の目をのぞきこんだ。



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味覚として、甘いものを好んでいるのと関係があるんだかないんだか。

読む本としても、ベタ甘のラブコメテイストが、実は嫌いではなかったりする。

さすがにそれが主題の本となると、食傷気味にはなるのだが。


そんなわけで、有川浩の「図書館戦争」シリーズ(別冊含め全6冊)。

検閲を認める架空の法律「メディア良化法」が制定されたパラレルワールドの日本を舞台として、法に基づいて強制力を持って検閲を進める機関とそれに唯一対抗措置を持つ(準拠法は地方自治法)図書館との抗争。

銃器の使用も含めた実力行使も認められた検閲機関「良化特務機関」と、やはりそれに対し実力で図書を守り抜くべく結成された「図書隊」。

現地レベルの交戦から国家機関レベルの政争もからめて、両者間の争いは続く。


物語は、図書隊側に立って語られる。

図書隊員にあこがれて入隊した侵入隊員を主役に、その同僚や教官、上司などの交友、成長、恋愛模様などをライトノベルのような軽快なリズムの会話で織り成していく。

こと人間関係で言うなら、このキャラとこのキャラが最終的にはくっつくんだろうなーという予想がそのまんま実現するハッピーエンドなわけで、結末がわかっていながらもその間のドタバタ劇を見せるほうが主眼なのかもしれない。

そういった展開を好むかどうかはこれまた読者の性質によるものかもしれないが、俺個人としては気楽に読めて嫌いではない。エンターテインメントとしては十分だ。


読み終わってから知ったのだが、アニメ化もされたらしい。

確かに、アニメにできうる作品かもしれない。

別にそれを見たいとも思わないが。

やっぱり活字ならではの楽しさが一番だ。

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あっという間に、一学期の終業式が終わり、夏休みが始まった。

高3の夏休みは、大学受験の天王山――とは、誰が言ったか。

世の中の声をよそに、徹司は夏休み初日からさっそく始まる演劇の稽古に、学校に出向いた。

劇の稽古というものがどういうものか、全く分からないものの。

新しいことを始める時につきものの、独特の高揚感が徹司を包んでいた。

否、徹司だけではない。大半の人間が、やはり演劇初体験ということもあり、集合した役者たちはみなどこか浮ついた様子を見せていて、それが相乗効果を生んで、教室内はなんとも形容しがたい空気に満たされていた。

ところが。

その中心にいるべき朋子の、様子がおかしい。

一番はしゃいでいるか、あるいは逆にはしゃいでいるみんなを貫禄でもってなだめているか、そんな姿を予想していたのだが。

打ち沈んだ様子の朋子からは、稽古始の気配が微塵も感じられない。

傍らにいる麻弥、紗千子の表情も冴えない。

どうやら朋子から既に何やら話を聞かされているようだった。

「トッコ……?」

徹司は静かに話しかけて、少し言葉につまった。

その頃には、集まった人たちも、朋子たちの異様な様子に気がついていた。

何とはなく、鈴本三姉妹を中心に人の輪が出来上がった。

「何かあったみたいだけど……どうしたの?」

みんなに背中を押されたように、徹司が聞いた。

朋子は、目を伏せたまま、語りだした。

「昨日の夜、(はる)()さんから電話があったの。いろいろ話したけど、結局、やっぱり協力できないって……」

そこまで話して、朋子はうなだれた。

「ちょ……なんでだよ?何でまだそんなこと言ってんだよ?!」

横石が叫んだ。

後藤も舌打ちして、

「アイツら、頭おかしいんじゃねえのか?」

と言う。

怒りを覚えたのは、無論徹司も同様だ。

「結果はどうあれ、協力するって言ってたのは自分達じゃねえか。今さら何言ってんだ?」

それ以外にも、春谷たちを非難する声があちこちからあがった。

「ちがうの」

朋子が、弱々しく言った。

「あたしは、春谷さんたちが協力してくれない事よりも……ううん、それもイヤなんだけど……それよりも、みんながこうやってクラス内で悪口を言い合うのがイヤなの……」

絞り出すような声に、小さな嗚咽が混ざる。

朋子は、泣いていた。

教室は、静まり返った。

徹司は、自分の言動を恥じた――が、だからといって春谷たちへの怒りは消えなかった。

ただ、それはそれとして、この場を放っておくわけにはいかない。

徹司には、文化祭委員としての責務もある。

徹司は、周りを見回して言った。

「わかった、後で俺からも話をしてみるから……どっちにしてもこの劇をやることはもう変わりはないから、予定通り始めない?」

「そうだね、モモちゃんの言うとおり。ね、トッコ?」

朋子の傍らの麻弥が、朋子の肩を優しく叩いた。

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