中華の足跡・改

中国から帰り、北海道に暮らしつつ、台湾とつながる生活。

マジメな話からくだらないネタまで、国籍・ジャンル・多種多様。

いざ、情報発信~!


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もやもやした天気が続いていたものの、昨日の土曜日はからりと晴れ上がり。

絶好の運動会日和となったわけで。

いつの間にやらムウも6年生となっていて、これで運動会も見納めとなるのだった。


バスケの練習でさんざん走らせたおかげで、技術は進歩しないものの走力だけは上昇しているムウ。

最後の運動会にして、ようやくのこと、リレーの選手の座を獲得できたようだ。

タイム的にいえば、学年で2番目というポジションらしい。

・・・もっとも、今の学校は人数も少なく、2クラスしかないので、分母が少ないという事情もあるのだが。


高学年の色別対抗リレーとなると、運動会の大トリの種目である。

この学校では、基本は紅白対抗なのだが、リレーの時は4色に分けられて、4チームで走る。

4,5,6年から2人ずつ代表が選ばれて、各チーム合計6人でレースを行う。


で、ムウは緑チームのアンカー。

運動大好きの俺が、自分の夢やら希望やらを子供に重ねてしまうことの是非に関してはしょっちゅう考え込むところではあるものの。

ここは素直に喜んでおこう。

俺自身は小学校の頃はリレーの選手にはなれなかったという事情もあるし・・・。


レースは序盤からその緑チームがトップを走るが、後続とはそれほどの差はつかず。

最終のムウにバトンが渡った時も、1位。

これで抜かれたりしたら相当かっこ悪いぞ、と、少々ハラハラさせられたが、どうにか1周、逃げ切ってそのままゴール。

よしよし。


褒美の意味を込めて、晩メシは好きなものを食わせてやるということで、回転寿司に行ってきた。

するとこれがまた大混雑。

3世代の家族連れも多いところをみると、やはり各家庭で運動会後に繰り出してきているようだ。

1時間以上もまたされた。

まあめったにない外食だから、いいだろう。

ちなみに俺自身は寿司はあまり好きじゃないので、5皿くらいしか取らなかったのだが。

ムウもレイもここぞとばかりに食い漁り、合計は48皿。

・・・けっこう高くついたな。

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その日の帰り道。徹司は、ずいぶんとぼんやりと歩いていたらしい。どんな考え事をしていようと、足だけは通学路をたどるものだが、さすがに自動的に知人を知覚する能力はない。

目の前の人影に気がついたのは、衝突の1メートル手前、というところだった。

「どうしたい桃井、難しい顔しやがって」

はっと顔を上げると、目の前には上山と鈴本()千子(ちこ)が立っていた。

「モモちゃん、自殺でもしそうな顔してたけど――大丈夫?」

紗千子はそんなことをいいながらも、全然心配そうな表情をしていない。

「いやいや、こんなことくらいでいちいち自殺してたら、命がいくつあってもたりゃしないよ」

徹司は苦笑した。

「こんなことって……なにかあったの?」

紗千子に続いて、上山も、

「恋愛相談だったら俺が聞いてやるぜ」

などという。

その言葉に徹司が少し考え込んだのは、図星だったからではなく、この二人に話を聞いてもらおうか、と思い立ったからである。どのみち、自分ひとりで考え込んでいても仕方のないことだ。

「あれ、マジで恋愛相談だった?」

「違うって。そうじゃないんだけど――普通の相談ならあるんだけど、ちょっと時間もらえないかな?」

徹司の言葉に、上山と紗千子は顔を見合わせた。

「あたしは構わないけど」

「俺も、いいよ。じゃ、どっかでお茶しながら話そっか」

「なら、あそこ行かない?新しくできた喫茶店、スターバックスだっけ。一度入ってみたかったのよね」

柏という街は、千葉県北西部の中心都市、と言ってもいいかもしれない。常磐線と東武野田線が交差する柏駅前は、昼夜を問わず、人並みが途絶えることはない。

繁華街は『千葉の渋谷』などというかっこよくもない異名をとるほどの賑わいがあり、夜ともなると駅前広場にはストリートミュージシャンがあふれだす。

駅前の様子がカラオケの映像に使われているのは、地元民にはよく知られている。映画館やカラオケ、飲み屋にゲームセンターと、娯楽場所にも事欠かない。自然、周囲の住人たちは、遊ぶときや待ち合わせのとき、「とりあえず柏で」ということになりやすいのだった。

徹司は厳密には柏市民ではないのだが、最寄り駅(といっても歩けば一時間はかかる)が柏駅のため、普段の通学でも柏駅を使うし、街にもなじみが深い。

ただ、あまり喫茶店などという場所を利用したことはない。もっとも、これはまあ高校生としてはめずらしくもないかもしれない。

上山と紗千子と共にスターバックスという名のしゃれた喫茶店に足を踏み入れた徹司だったが、こういうところでどんなものを注文すれば良いものか、少し迷ってしまった。

悩んだあげく、とりあえず無難そうなところでブレンドコーヒーだけを注文し、さっさと席を見つけて腰をおろした。上山も、同じくコーヒーだけを持って、徹司の向かいに座る。紗千子は、なにやら食べるものも注文したいようで、陳列ウィンドウの前でどのケーキが一番おいしいものなのか、真剣な顔で検討しているようだった。

「おいおいサッチー、いつまで悩んでんだ?」

たまりかねた上山が、声をかける。

「だってこの子たちみんな、食べて欲しそうな顔してるんだもの」

紗千子はこちらを振り向きもせずに言った。

「じゃあみんなの希望をかなえてやったらどうだ?」

「そうしたいところだけど、そうすると今度はお財布が文句言うのよ」

猫舌の徹司は、まだコーヒーには口をつけず、無意味にマドラーでぐるぐるとかき混ぜながら、二人の会話を聞いていた。まだ何一つ話をしたわけでもないのだが、心が少しずつ軽くなっていくのがわかる。

(この前もそうだったけど)

と、徹司は思った。

(一人で悩み事なんかするもんじゃないらしいな)

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最近の(というほど最近の話でもないのだが)プロ野球界には、韓国や台湾出身の選手がちらほらと見られる。

主力級の選手もいれば育成途中の選手まで、立場はそれぞれだが。

中国大陸出身の選手もわずかにいるが、まだ一軍で活躍する選手はいないようだ。


さて、韓国はおいといて、台湾(或いは中国)の選手。

その、登録名だ。

以前から疑問に思っていたところもあるのだが・・・。


野球の登録名は、それほど厳密な決まりはないようだ。

「イチロー」などは説明不要だろうが、彼の活躍辺りから、下の名前だけの登録名、或いはフルネームやニックネームでの登録名も増えてきた。

欧米系の外国人の場合は、ほとんどがそのままカタカナ読みをさせるものである。

しかして、台湾系の場合はどうなるのか。


本名は漢字で書くので、そのままの名前でも通用する。

それをどう読ませるか・・・つまり日本語読みするか、中国語の発音にあわせるか、で変わってくるわけだ。

ざっと調べてみると、これがまた統一性のないことで。

どういう基準で登録名を決定しているんだか、本気で知りたいぞ。


だいぶ時代をさかのぼり、俺らが子供のころの台湾人選手というと、例えば西武の郭泰源や中日の郭源治などが有名どころだ。

このころの選手は、そのまま漢字の日本語読みが登録名。

「かくたいげん」、「かくげんじ」という呼び名になる。


時が流れ。

台湾との交流が深い西武に、二人の台湾投手が在籍した。

「許銘傑」と「張誌家」だ。(許は、今も元気に一軍で投げている)

この二人の登録名は、中国語の発音を日本語に直したものになっている。

つまり、「きょめいけつ」ではなく「シュウ・ミンチェ」であり、「ちょうしか」ではなく「チャン・ズージャ」だったのだ。

この頃から、だんだんと現地の音で呼ぶやり方が浸透し始めたようだ。


で、今現在。

統一感のない状態が続いているわけで。


例えば、去年セリーグで最優秀防御率を獲得した、中日のチェン。

「チェン」が登録名である。呼び方のみならず、表記までカタカナという例は珍しい。

ちなみにチェンの本名は「陳偉殷」である。

陳の中国語読みのチェンを、そのまま登録名にしたわけだ。

こういうパターンの選手は、他には阪神のジェンなどがそうだ。

ジェンの本名は「鄭凱文」で、鄭→ジェンと読ませている。


では阪神はこういう方針なのか、というと、そうでもない。

野手の「林威助」は、表記は漢字、呼び名は「リン・ウェイツゥ」と中国語読み。

「りんいじょ」ではない。

ところが投手の「蕭一傑」は、日本語読みで「しょういっけつ」が登録名。

中国語読みならさしずめ「シャオ・イージェ」とでもなるのだろうが・・・。


球団内で統一性がないのは、実は西武も同じことで。

上述の許銘傑以外にも、中国出身の「朱大衛」という投手がいるのだが、彼の登録名は「しゅだいえい」と、日本語読み。

中国語の「チュー・ダーウェイ」ではないのだ。


ソフトバンクは、中国語読みにしているようで。

「陽耀勲」は「ヤン・ヤオシュン」と呼び、「李杜軒」は「リー・トゥーシェン」と呼んでいる。


ややこしいのが、日ハムの「陽岱鋼」である。

この選手は、名字を日本語で、名前を中国語で読ませるという手法で、「よう・だいかん」という登録名だ。

陽は中国語なら「ヤン」になるのだが。

(ちなみにソフトバンクの陽耀勲とは兄弟である。ソフトバンク陽はしっかり「ヤン」となっている)


日ハム陽岱鋼は、昨シーズンは別の名前で登録してあり(今年改名したのだ)、その時は「陽仲壽」だった。

呼び名は、やはり独特で「よう・ちょんそ」。日本語名字+中国語名前、の組合せである。

一体何のポリシーなんだろうか・・・?

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数日後の、昼休みのことだった。

昼食を終えて、上山(かみやま)や後藤らとのんびり話をしていた徹司(てつじ)のところに、佐野と谷崎大輝(だいき)がやってきた。谷崎は普段と変わらないのんびりした口調で、

「モモ、ちょっと話したいことがあるんだけど……いいかな」

と、声をかけてきた。

「ああ、いいよ」

徹司も軽く返事をし、立ち上がった。どうやら谷崎たちは場所を変えたいらしい。直感的に、文化祭のことだな、と、徹司は思った。

谷崎と佐野は、そのまま教室を出ていく。徹司は黙ったままその後を歩いた。

何か話しにくいことでもあるのかな、とは思ったが、普段から明るく冗談ばかり言っている谷崎が、あまり深刻な話を持ち込むとも思えなかった。

普段使っている教室がある棟は、一般に教室棟と呼ばれている。4階建てで、一つの階に6つの教室がある。全部で24の教室があるわけだ。

現在の大金高校は各学年、からHまでの8クラスあるから、ちょうどこの教室棟全てが埋まっている。

その教室棟と、中庭をはさんで向かい合うように、もう一つの建物が建っている。特別教室棟と呼ばれているのだが、その名のとおり、音楽室や化学室などの特別教室、さらに各教科の研究室などもこの棟にある。

この二つの棟は、手前側と奥側でそれぞれふたつの渡り廊下でつながっている。このうち、手前側の渡り廊下の中央部分から、さらに手前側に延びる様な形で、もう一つの小さめの棟がある。これが、職員室や校長室のある棟である。

上空から見ると、教室棟と特別教室棟、それに渡り廊下で長方形になり、その長方形にさらにアイスの棒のように職員室棟がくっついているように見えるのだ。

さて、渡り廊下自体は2階建てで、1階と2階のどちらでも通行可能である。さらに3階部分は渡り廊下棟の屋上になっていて、ここも通行可能だ。

いま徹司たちがやってきたのは、この渡り廊下の屋上だった。

手すり部分にもたれかかるようにして、佐野が言った。

「悪いね、こんなとこまで引っ張り出しちゃって」

「いや、別に構わないけどさ」

「ちょっとモモに、相談――じゃないな、なんていえばいいかな……」

佐野は、言葉を選ぶように話す。

徹司は、軽く左手で頭をかるくかいて、言った。

「いいよ、準くん、ダイキ、はっきり言ってくれて。……文化祭のことかな?」

谷崎が、決まり悪そうに笑った。

「あ、わかった?」

「そりゃあ、まあね。……で、なんだろ?」

谷崎と佐野は、一瞬ちらりと視線を交わした。

口を開いたのは、谷崎だった。

「ま、そんなたいした話じゃないんだけどさ。実はね……」

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昨日は、珍しく西武-日ハムのイースタンの試合が札幌ドームで行われたので、観戦に行ってきた。

実はファームの試合を観るのは初めてである。


席も、いつもと違う。

バックネット裏やフィールドシートなどの一部の特殊席を除いて、全席自由で価格も同じ。

俺はいつもは外野席に入るのだが、せっかくだからと、内野のベンチの上付近(普段ならA指定席?)あたりに陣取った。

一応ライオンズ側ではあるけど、札幌ドームだから基本的にはハムファンばかり。

そのなかに、ちらほらとライオンズファンが混じっているような状態。

呉越同舟、といえなくもないが、何しろファームの試合だけに、勝敗はあまり関係ない。

終始のんびりしたムードで、野球を楽しんでいた。


ちなみにこの日の観客数は5,640人。

公式戦に比べれば無論少ないが、ファームでこの数字はものすごい。

平日のファームの試合の観客数を観てみると、200人とか300人とか、そういう数だ。

桁が違う。


さて試合のほうは。

西武の先発はルーキー岩尾。今年のドラフト3位の投手である。

立ち上がり、先頭の陽にいきなりツーベースを浴びて、その後内野ゴロと犠牲フライであっさりと先取される。

だがその後は、ランナーを度々背負いながらも粘り、得点を与えない。

打線は3回、先頭の大島が一塁線を破るツーベースで出塁。

一死後、斉藤のレフト前ヒットで1,3塁とし、2番の梅田がライト前へタイムリーを放ち、同点。


6回、日ハムは投手を木下にスイッチ。

この木下が、先頭の黒瀬にデッドボール、続く梅田と浅村に連続四球を与えて満塁とする。

4番の後藤はここできっちりと犠牲フライを打ち上げ、勝ち越し。

だが続く2,3塁のチャンスでは坂田・野田が凡退して追加点はならず。


西武投手陣は、岩尾から宮田-岡本-大沼とつないで、その後は無失点。

スミ1に抑えて、2-1で競り勝った。


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文化祭の出し物を決定するべく開かれたホームルームの時間は、当然のことながら文化祭委員が仕切らなければならない。担任の小原も参加はするが、話し合いに口を挟むことはほとんどない。

このクラスの文化祭委員は二人で、徹司と、佐野準次である。徹司は、佐野とは決して仲は悪くないし、苦手なタイプでもないが、友人のグループが違うため、これまであまり親しく話したことはなかった。

徹司は、この日の昼休みの佐野との会話を思い出していた。

少しだけでも、このH・Rの進行などについて打ち合わせをしておきたかったのだ。

ところが、佐野は、

「ごめん、俺そういう司会とかすごい苦手でさ、話とかは全部やってくれないかな?黒板に書くのとかはやるからさ」

と、徹司に手を合わせたのだった。

徹司は、下手に出られて頼まれると、どうも弱い。思わず、承諾してしまったのだ。

出し物については、

「なんか、演劇で決まりそうだね。別に演劇でいいんじゃん?」

というのが、佐野の意見。

無責任ととれなくもないが、徹司とて他に意見があるわけでもない。

むしろ、演劇に反対されなかったことに、かすかにほっとしていた……。


「では、はじめます。連絡しておいたとおり、今日は文化祭での、このクラスの出し物を決定したいと思います。ちょっと急かもしれませんが、夏休みに入る前までには具体的なことまで全部決めなければなりませんので……」

徹司は壇上で話を始めた。人前で話すのはあまり好きではないのだが、過去に数回学級委員の経験もあるので、どうにかこうにか形にはなる。

もっとも、今回のホームルームでは、司会進行の手腕など問われることもない。いみじくも昼休みに佐野が言ったとおり、演劇をやるなら演劇でいいや、という雰囲気が既に大半を占めていたからである。

賛成多数――というよりも、反対意見がほとんど出ないままに、「演劇」という出し物が確定した。

となると次は、具体的にどんな劇を演じるか、ということになる。とはいえ、大半の人が、その選択肢をもっていないのが現実である。当然の流れで、朋子が提案することになるのだった。そしてもちろん朋子に抜かりのあろうはずがなく、既に候補の演目を決めてきていた。

「『レインディア・エクスプレス』っていう題名なんです」

壇上で、朋子はクラス全体に向かって説明した。

「レインディアっていうのは、トナカイのことなの」

黒板に題名を書きながら、注釈を加える。

「トナカイ特急、か」

というつぶやきがクラスから聞こえた。横石の声だったようだが、はっきりはわからない。

「あたしが大好きな、キャラメルボックスっていう劇団があるんですけど、その中でもすごくおもしろくて、やってみたらおもしろいだろうなって思ってたんです……」

眼を輝かせるようにして、朋子は語った。

横合いからそれを眺めながら、徹司は、

(いやはやトッコ、楽しそうだなぁ)

と、思った。

(まあ、無理もないか。高校生活の最後に劇をやるっていう夢が、実現に向かってるんだもんな)

「それで、その劇のビデオがあるんです。時間のあるとき――次のホームルームとかで、みんなで見たいと思ってるんですけど……」

すっかり司会役におさまった朋子が、ここで小原の方を見た。

「その劇、どのくらいの時間のなんだ?」

朋子の視線を受けた小原が質問した。

「大体二時間くらいです」

「そうか。わかった、近いうちに視聴覚室おさえておこう」

「ありがとうございます」

こういった具合に、話はトントン拍子に進んでいった。少なくとも、演劇に賛成する人たちにとっては、おもしろいくらいに順調だった。


順調すぎた、ということが、ひとつ。

そして、いつの間にか、演劇という未知の体験に惹かれ始めていた、ということがもうひとつ。

客観的に言って、このときの徹司は、冷静な判断力が多少失われていたのかもしれない。

40人もいるクラスの全員が、簡単に思いを一つにすることなどできはしない、という、当たり前すぎる事実を、このときは見落としてしまっていた。

ましてや、やや強引とも取れる朋子たちのやり方を、苦々しく思っている人たちの存在には、全く気がつかなかったのである……。



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「だからね、あたし――劇もやりたいけど、でもそれよりも、みんなで何か一つのことを成し遂げた、っていうのかな……そういうのができたら、高校生活最後のいい思い出になるかなって……。あ、ごめん、いいたいことわかる?」

徹司はちらりと朋子を見て、軽く頷いた。

「わかるよ。トッコ、そういうの好きそうだもんね」

何気なく発した言葉だったが、それを聞いた朋子は不思議そうに徹司の顔をのぞきこんだ。

「モモちゃん、好きじゃないの?」

「え?」

「みんなで一つの目標に向かって一生懸命にやるっていうこと。モモちゃん、好きじゃない?」

「え、いや――

そんなことはないよ、と、徹司は言った。

だが。

言った後で、徹司は思わず自問した。

本当か、俺?

本当に好きか?

確かに嫌いではないけど、好きだと言い切れるだろうか?

逡巡した様子の徹司を見て、朋子はなぜか、にこりと微笑んだ。

「ふふ、モモちゃん、そんなに悩まなくてもいいのに」

それを聞いた徹司は、心の中を見透かされているような気がして、思わず苦笑いを浮かべた。

「たぶんモモちゃんは、そういうの、やってみたらものすごく熱中してやるタイプだと思うんだよねー。あ、これ、マヤもサッチーも同意見だったよ」

「鈴本三姉妹、全員一致ですか。じゃあ……そうなのかなぁ」

と、徹司はなんとも主体性のないことを言った。

「ま、何事も経験よ!」

締めくくるような口調で、朋子が宣言した。


教室に入ると、三姉妹の長女――麻弥が既に登校していた。教科書を開いて、なにやら勉強しているようだった。

「マヤー、おはよー!」

朋子が元気に声をかけた。

「おはよ、トッコ。あ、モモちゃん、今日一緒だったんだ」

何気ない麻弥の言葉に、ごくわずかに動揺を覚えてしまった徹司は、

「うん、たまたま駅でばったり会って」

何故だか弁解がましく言った。

朋子はというと、

「モモちゃんを演劇賛成派に引っ張り込むいいチャンスだと思ってさ」

と、本人を目の前にしてあっさりという。

麻弥はそんな二人を等分に見て、

「で、どう?説得は成功したの?」

と、落ち着いた口調で訊いた。

徹司が口を開くより早く、

「バッチリ!」

と、朋子が元気よくさけんだ。

あまりの歯切れのよさに、徹司は一瞬で反論する気をそがれた。

――ま、いいか。

苦笑して、自分の席へ向かう。

そこで、徹司はふと麻弥に聞いてみたくなった。

「そういえば、麻弥さん」

「なに?」

朋子とおしゃべりしていた麻弥が振り返る。

「麻弥さんも、演劇……そんなに好きだったの?」

徹司は、麻弥とは一年生のときも同じクラスである。明るい性格で、スポーツも勉強もできる麻弥だが、なんといっても『しっかりしたひと』という印象が強く、あまり舞台の上で演技をするイメージが浮かばなかったのだ。

「そうね。好きって言うか、やってみたらおもしろそうだな、とは前から思ってたのよ。それで、今回が最後のチャンスでしょ?せっかくトッコみたいに詳しい人もいるんだし、ね」

「ふーん……なるほどねぇ」

さすがにいい事を言うねえ、と、徹司は思ったが、皮肉に聞こえるかもしれないので口に出すのはやめた。

最後のチャンス、か。

たしかにそうかもしれない。

大学に行ったとして、徹司は自分がどんなサークルを選ぶかなどまだ考えてはいないが、おそらくは運動系の――それも球技系のサークルを選ぶだろうな、と思う。

となると、劇をやる機会などありはしない。

大学を卒業したら、そんな機会など皆無だろう。

――今だけ、か。

徹司の思考は、知らず知らずのうちに、『演劇』に引き寄せられつつあった。


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ミニバス、フレンドリー大会。

前節は大型連休中で、俺は仕事で行けなかったのだが、スコア的には藻岩北・本郷と二戦して、ともに惨敗。

そして今日は、羊が丘。

わるいチームではないが、いかんせん人数が少なく、新しくメンバーも加わっているようだがそれでも10人に満たない。

5年と4年が主体になっているチームで、来年は楽しみなチームであるものの、現状においてはまだパワー不足。

6年生不在という意味では真駒内と同条件で、5年の数で言うなら真駒内の方が多い。

勝たなければならない相手である。


第一クォーターは、シュウヤ・リオ・ムウ・トモヤ・アキヒト。

このクォーターは、まず互角。

先制点をトモヤが決めて、その後シュウヤが追加点を加えたが、その後は取って取られての展開。

相手の不慣れなセンターの3秒に何度か助けられたけど。

ファウルも向こうの方が多く、4ファウルまでいってフリースローももらえたものの、相変わらず真駒内はフリースローが入らない。

もらったチャンスを生かしきれない形で、9-8という滑り出し。


第二クォーター、ユウダイ・オカ・ユウスケ・アキヒト・ハヤト。

ここから、相手のエースの6番が登場する。

5年生だが、実にいいセンスをしているプレーヤーだ。技術も高いので、これでさらにパワーとスピードが増えてくれば相当いい選手になりそうだ。

その6番には、ハヤトをぶつけた。

が、ハヤトには少々荷が重かったようで、抑えきることはできなかった。

ユウダイがなかなかいいヘルプを見せてくれたものの、やはり全部を抑えることはできなかったし、或いは6番のドライブから崩されてフリーの7番に通されてゴール、というパターンも何度か。

ディフェンスがうまくいかなかったせいか、ハヤトが少々萎縮し、ボール運びにもミスが目立ち始める。

相手ディフェンスも正直それほどよくはないから、なんとかゴール下のアキヒトに渡してゴール、というシーンが何度かはあったものの、それ以上にミスが増えて失点が嵩み、逆転を許してしまう。

15-19で折り返した。


第三クォーターは、ユウダイ・シュウヤ・リオ・オカ・ハヤトで。

毎度の事ながら、後半から差は開きだす。

半分以上は精神面だと思うのだが。

シュウヤが、スティールして速攻、というシーンが二度ほどあった。

スピードがあるので相手を振り切れ、ほぼノーマークでのレイアップだったのだが、それを二度ともはずしてしまう。

そのフォローやリバウンドに他の誰も行っていないほうが問題ではあるのだが。

いずれにしてもその影響だろう、シュウヤの本業のボール運びもリズムが狂い、簡単に抜けそうな相手のゾーンプレスにあっさり引っかかる。

パスミスもあるし、もらう方も待って取ろうとするから簡単にカットされる。

何度も注意されてることなのに。

シュウヤが突破してゴール下のユウダイにさばいてシュート、という、今現在では一番確率の高そうな攻撃パターンは、4分にたった一度だけ。

もっとこのラインを活用して欲しいのだが。

去年のノリ-カツのラインは実によく機能したのだが・・・。

そんなわけで、17-30と。


最終は、ユウダイ・シュウヤ・ユウスケ・アキヒト・ハヤト。

やっぱり、プレスに弱い。

何度もやられてるんだから、少しは突破方法を考えればいいのに。

ましてや、相手のプレスはそれほど強烈でもないし、バランスもあまりよくない。

一度は、前線を突破した際に、ゴール前で4対1という圧倒的有利な状況まで持ち込んだものの、その状況でシュートは入らずリバウンドも取れず・・・。

処置なし。

20-36で、完敗。


<得点>

ユウダイ:4 シュウヤ:4 リオ:2 ユウスケ:2 トモヤ:2 アキヒト:6

ちなみにフリースローは、全13本中2本。

入らねえなぁ・・・。


何が悪いって、全部悪いからお手上げ状態だが。

なんといっても、ボールに対する執着心と反応が、どのチームと比べても悪い。

ルーズボールは取れない。

リバウンドも取れない。

羊が丘は全体としてそれほど大きなチームではないし、1人少し大きい選手(欧米系)がいるけど、まだバスケに不慣れなようであまりアウトやジャンプはしない。

それなのに、オフェンスリバウンドはおろかディフェンスリバウンドすら、取れない。

10本中8本くらいは取られているだろう。

なんかこう、「飛びつく」という行為が、ない。

邪魔もしない・・・つまりアウトをしない。

そのくせ、邪魔されるとあきらめる。

それじゃ取れない。


なんかもう、勝てる相手がいない。

ブロック内最弱チームになってしまった。

試合を見るごとにこっちの精神力が削られていく・・・。

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その次の日の朝。

徹司の通学経路は、家から最寄り駅である柏駅まで自転車で20分ほど走り、そこから電車に乗って新松戸駅まで約10分。駅から高校までは、徒歩約20分の道のりである。

始業時間は8時40分なのだが、その時間にあわせていくと、駅から高校まで、大金(おおがね)校生が群れを成して歩いているため、徹司はあまりその時間帯が好きではない。それで、8時過ぎくらいには高校に着くように、少し早めに家を出るようにしているのだった。

そういう考え方をする生徒もちらほらといて、徹司と同様、早い時間に登校する生徒がいる。

朋子も、その一人だった。

とはいえ、電車の本数が多いこともあり、駅で朋子と顔を合わせることも少なかったのだが。全くの偶然で、この朝は、徹司と朋子は改札口でばったりと顔を合わせることになった。

「あ、モモちゃん、おはよー!」

と、朋子は全く屈託がない。

徹司は、せいぜい何気ない様子をよそおって、おはようトッコ、と返したものの。

いくばくかの緊張を禁じえなかった。

これは無論、徹司が朋子のことを意識したというのではなく、「女の子と二人で登校する」という状況に対して緊張を抱いたのである。

なんとも情けない話だが、徹司にはこういった経験が皆無なのだ。だからこそ、以前、男子と一緒に歩いている朋子を見かけただけで、あの二人はつきあっている、などと単純に思い込んでしまったわけなのだが。

――他の人に見られたら、とか、考えないのかなぁ……。

そんな徹司の心中を知ってか知らずか、朋子は当然のように徹司の隣を歩く。

暑くなったねぇ、とか、もうすぐ夏休みだからね、などと、ごく平和な会話が続いた。

途中、私鉄の踏切りにさえぎられ、二人は足を止めた。

流山(ながれやま)電鉄(でんてつ)、通称(りゅう)(てつ)というこの私鉄は、単線でごく小規模の私鉄だが、なぜか自然災害に強く、台風のときや大雪のときでも不通になることがないらしい。さらに、いかにもローカル線らしいのが、各車両の車体の色が全て異なり、それぞれに名前がついていることだろう。

黄色の車体には「なのはな」、銀色の車体には「ぎんが」、黄緑の車体は「わかば」、青色は「あおぞら」などなど、実にわかりやすいネーミングである。

この単純明快さが、徹司はけっこう好きである。

この日は、赤い車体の「あかぎ」が、多くのサラリーマンや高校生を乗せて踏切を通り過ぎていった。

徹司が走り去っていく「あかぎ」をなんとなく見送っていると、視界に朋子の横顔が入ってきた。どちらかといえば小柄な朋子なので、175cmの徹司からは、やや見下ろす形になる。なおもぼんやりと、朋子の束ねられた長めの髪を視界の端におさめながら、徹司は思った。

――他の人からは、一緒に歩いている俺とトッコは、どんな関係にみえるんだろう。

カップルに見えたりするんだろうか、と、そんな想像をしかけた徹司だが、しかしすぐにその考えを頭から振り払った。朋子は活力に満ちた大きな眼が印象的な疑いようのない美少女だったし、一方の徹司は自分自身の容姿にこれっぽっちの自信も持っていなかったので、考えるのがバカらしくなったのである。

「どうしたの、モモちゃん?ぼんやりしちゃって」

不意に朋子が徹司の顔をのぞきこんだ。

徹司は慌てた。まさか今の想像を口にするわけにもいかない。

そして、

「えーと、あ、いや、演劇っておもしろいのかなぁ、って……」

などと、自分でも予期せぬ言葉が口をついた。

それを聞いた朋子は、ちょっと考え込む表情になった。朋子にしてみれば、演劇がおもしろいのかなどどいう質問は、「夏って暑いんだっけ」と訊かれたのと同様で、肯じることすらバカバカしい。

だが、徹司が何やら考え込んだ後に発した台詞だっただけに、

――きっとモモちゃん、文化祭のことでいろいろ考えてるんだろうなぁ。責任感強そうだし……

と、思考が飛躍した。

「劇は、見るのとやるのじゃ全然違うんだけどね。それぞれ違ったおもしろさがあるよ。でも……」

「でも?」

「見るのはさ、この後いくらでも見にいけるでしょ?でも、自分たちでやることって、もうあんまりないと思うの。特に、今の仲間たちとやることなんて、もう絶対にない」

「そう……だね、たしかに」

朋子は、遠くを見るような眼で話を続けた。逆に徹司は、なんとはなしに視線を落として相槌をうっていた。
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徹司は、あまり人前に立つことが得意ではない。内向的、とはいわないまでも、小心者なんだろうな、と、自分では思っていた。

――それが、人前で演技だと?悪い冗談だぜ!

徹司は冷めかけたコーヒーをぐいっとあおった。

そして、おもしろそうな表情でこっちをみている古兼の視線に気がついた。

「どした?」

「いや、なんかお悩みのようだったからさ」

「だったらなんだ?青少年お悩み相談室でも開催してくれんのか?」

「おうよ、今なら特別キャンペーンでお安くなってますぜ」

「そうか、そいつはありがたい。じゃあ出世払いで頼むわ」

古兼は安物のカップを手に取り、そして既に中身がカラになっていることに気がついた。

「待って、おかわり淹れてくる」

「あ、俺も」

徹司も続いて立ち上がった。この店では、おかわりはセルフサービスになっている。もしセルフではなく毎回店員に頼まなくてはならないとしたら、毎回こうも長居したかどうか、はなはだ疑問である。

席に戻り、クリープとガムシロップを入れる。カップに眼を向けたまま、徹司はぼそりと尋ねた。

「劇って、そんなにおもしろいのかねぇ?」

古兼は、使い捨てのマドラーでくるくるとコーヒーをかき混ぜている。

「そうだなぁ……まあ俺も実際にやったことないからアレだけど、おもしろいとは思うぜ。少なくとも見る分にはおもしろいから、やればもっとおもしろいんだろ」

「どんな理屈だ、それ?」

「だってそうじゃなきゃやる人がいなくなっちまうぜ」

「そ、そうかな……」

わかるようなわからないようなことを、古兼は自信たっぷりに言う。この男は一流のペテン師の素質をもってるぜ、と、徹司はこういうときによく思う。

「ま、それはともかくとして」

古兼は続けた。

「難しく考えないで、高校生活の最後の記念ってことで、楽しくやれればいいんじゃね?」

「楽しく、か……」

それもそうかもしれない。

「みんなもそう考えてんのかな……」

徹司がつぶやいた。

「ん?みんな、ってーと?」

「いや、誰ってわけじゃないけど。俊のヤツなんか、さっき随分乗り気だったみたいだしさ」

「ああ、俊ね」

古兼はおもしろそうに笑う。

「アイツは劇そのものよりも……トッコがやりたがってるから乗り気なんだろ、たぶん」

「え?……ということは、つまり……そうなの?」

古兼は今度はにやりと、人の悪そうな笑みを浮かべた。

「見てわかんない?アイツの場合、けっこうわかりやすいけど」

確かに徹司にも、思い当たる節が多々あった。

「なるほどねぇ」

ただそこで、徹司はまた別の事実に思い当たる。

「あれ、でもトッコって、彼氏いるんじゃなかったの?」

それを聞いて、古兼が意外そうな表情になる。

「え、マジ?知らないけど……そうなの?」

「えーと、いや、俺もよく知らないけど……いつだか、朝トッコが誰か男と一緒に登校してるのを見かけたことがあったら、そうなのかな、と」

徹司にもあまり自信がない。

むしろ古兼のほうが、納得したような表情を浮かべた。

「や、それだけなら、わからないぜ。なにしろトッコはああいう性格だから、平気で男と二人で歩いたりするからねぇ。むしろ、それで男のほうが騙される――というと言葉が悪いけど」

「その気にさせられる、というパターンか」

「そうそう。俊もそのパターンじゃないのかな」

――だとしたら、哀れだな」

「ま、でもこの先望みがないわけじゃないだろうし」

徹司と古兼は、演劇そっちのけで、後藤の話で盛り上がった。

そんなことをしているうちに、徹司は自分の正体のわからない悩みがたいしたことのないもののように思えてきた。

これは今に始まったことでもないが、どちらかといえば徹司は物事を悲観的に捉える癖があるようだった。

「ちょい疲れたな……。どうだ剛志、ちょっとゲームやってくか?」

「おう、いくか」

古兼は1ページすすんだかどうかも怪しい参考書を片付け、その間に徹司はトレーを片付け、そのまま受験生らしくない二人はダイエー3階のゲームコーナーへと歩を進めた。

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