初動最高のメロドラマ

 

初日だけで2億元を売り上げ、中国の映画史上記録を塗り替えた映画というのだが、以降の評判は、初動の金額の多さほどすごくない。

 

それでも、2018年の労働節(”五一”と表記されること多し)は、この映画の一人勝ち。それは、ライバルになるような面白い映画がないから。←ほんと。

 

そして、”才女” と言われる台湾出身の歌手、刘若英(リウ・ルオイン 又はレネ・リウ)の初監督作品というのも、みんなを期待させた。

(刘若英は、台湾出身の歌手。アメリカの大学で音楽の基礎を学び、歌うだけでなく曲も作るし、俳優業に進出したら数々の賞を獲ってしまうし、この映画の原作小説も書いている。おじいさまが軍の偉い人で、家柄もいいのよね。)

 

刘若英の代表曲は、日本の女性デュオkiroroの『未来へ』を中国語でカバーした『后来(後来)』だ。中国人ならみんな知ってる。今もあちこちで聞く、息の長いスタンダードC-POPだ。

映画の題名にも『后来的我们』と”后来”の文字がしっかり入っているのは、計算の上だろう。

 

チケット解約騒動

そんなことで、多くの人が期待して見にいき、初日だけで2億元を売り上げ、中国の初日売り上げの最高記録を塗り替えたというのだけれど、2日目になったら、ネット上で予約されたチケットが大量に解約されて話題だった。

 

解約されたチケットは、約38万枚!!!

 

「売り上げの不当操作」ではないかと言われている。

が、本当のところは分からないままだ。

初日に見た客が「面白くない」とSNSでつぶやき、じゃあ見ないと解約した人が多くいた可能性もないわけではないが、1晩で38万枚も解約って多過ぎる・・・、もしそうだとしたら、SNS社会おそろしい・・・。

そもそも、初日の売り上げ2億の中に、ネット予約の金額が含まれていたのかもよく分からないのだが。

 

結局、今後は予約を解約できないようにするらしい。

しかし、こんな騒動起こして、チケット販売の仕組みが変わるかもしれないというのも、別な意味で映画史上に残る映画になるのかもしれない。笑。

 

 

純正メロドラマ

内容は、メロドラマかな。

 

わたしは、可もなく不可もなくと思った。

主演の二人、周冬雨と井柏然が好きだし、それだけでけっこう満足。笑。

 

でも、評価が高くないのも分かる。

過去にヒットした映画と同じパターンを感じるのだ。

だから、既視感がある。なんか見たことあるなあ、という。

内容は、今は成功した中年に差しかかった人物が、過去の恋愛を振り返り胸がキュン痛、

そして当時の社会の様子や世相が描かれ、観客にとっては懐かしいという作り。

テレビドラマだったら、初回見たけど2回目以降は見なくてもいいかな、というあれである。

 

もし、他の似たような映画を見たことがなかったら、ここ10年くらいの”中国あるある”を知ることができるし、面白く見れるかもしれない。

 

 

あらすじ(ネタバレ注意)

別れた恋人同士が偶然に再会する場面から始まる。

画面はモノクロ。

 

林見清;リン・ジェンチン(井柏然 ;ジン・ボーラン)は、飛行機の中で昔の恋人・方小晓;ファン・シャオシャオ(周冬雨 ;チョウ・ドンユイ)を見つける。

飛行機は天候不順で飛ばず、ファーストクラスの林見清は航空会社が準備してくれた部屋に入る時、方小晓に一緒にどうぞと声をかける。エコノミーで部屋の準備が間に合うか分からない方小晓は、林見清についていく。ぎこちない空気の2人・・・。

 

 

画面はカラーになり、二人が出会った2006年(2005年だったかも・・・)の年末。

春節(旧正月)で北京から故郷に帰る電車の中、方小晓が落した切符を林見清が拾ってあげたのが縁で、偶然にも同じ街の出身だと分かり、林見清と彼の友人2人と一緒に4人で故郷の街へと帰り、その後北京でも4人は付き合いが続くことになる。

 

林見清と友人たちは北京の大学生、卒業後は自分たちで起業、パソコン機器を売る商売を始める。

方小晓は、子供の頃から母親と北京に住み(出稼ぎ?)大学には行っておらず、ずっと下層の労働者だ。

 

方小晓は、男でいつも失敗。高学歴でお金や持ち家があるなど条件がいい男性ばかり狙うが、相手の親に反対されたり、奥さんがいたり、うまくいかない。

林見清は方小晓のことが気になってはいるが、彼女が男性に求める条件が高く、おもしろくない。好きと言えないのだ。

それでも同郷であるということで、友人として仲良くしている。

 

そうこうしているうち、林見清たちの仕事はじり貧になっていく。友人の1人は親のコネで公務員(←中国で一番人気の職業です)になると故郷に帰り、もう1人は会社に就職すると去って行ってしまう。林見清だけは、いつか絶対に成り上がってやるとがんばるのだが、気持ちの強さほど成果が出ない。

 

結局金に困って、方小晓の狭くて周囲の音が筒抜けのひどいアパートに転がり込む。そして、2人は恋人関係に進展。

恋はうまくいったが、林見清の仕事はうまくいかず、路上で違法のDVD(アダルトなやつ)を売るようになる。

 

お金がなくて、ひとつのインスタントラーメンを分け合うふたり。

 

恋人同士になり幸せな2人だったが、突然、林見清が逮捕されて刑務所に入ってしまう。(違法DVD販売の罪だと思う)

方小晓は、その年の春節には故郷に1人で帰り、林見清の父親(田壮壮;ティエン・ジュアンジュアン)や親戚には、彼は忙しくて帰れないからと替わりにお土産を配ったり、すっかり内助の功。

 

林見清が出所してくると、2人は再び同棲生活。

方小晓は林見清を支えるために、不動産屋に就職して働き始める。一方、林見清はコールセンターのオペレーター。でも、お客と喧嘩してしまったり、仕事はいつも空回り。

 

 

それで、林見清はどんどん荒んでいく。部屋では、パソコンでずっとゲームをし続け、方小晓のことも無視。目も座ってどっかにいっちゃってる状態。

それに我慢できなくなった方小晓は、「2人が別れたら、もう2度と会うのはやめようね」と言い捨てて出て行くのだが、ヘッドホンをしている林見清は方小晓の言葉が聞こえているのかいないのか、ゲームをし続けたまま。

 

方小晓が出て行った後しばらくして、林見清はハッとして、あわてて地下鉄の駅まで追いかけるが、車内にいる方小晓を見つけても声もかけられず立ち尽くすだけしかできない。2人が見つめ合ううちに、電車は出て行ってしまう。

 

ホームにとりのこされてしゃがみ込む林見清。

 

林見清は、方小晓が去った後、まるで目が覚めたようにゲームを作り始める。

それは、以前、方小晓に語ったことのある物語を元にしたもので、宇宙人にさらわれた恋人を宇宙に探しに行くというゲームだ。

 

夢中で設計して作ったものをアップすると、それがたちまち人気ゲームとなった。

 

あんなに困窮していた林見清だったが、この成功により大きなゲーム会社と契約し、ゲームクリエーターとして、あこがれていた都会の生活を手に入れることができた。超高級マンションも購入するのだ。

 

そして、林見清は方小晓にSNSでメッセージを送る。次の春節に一緒に田舎に帰ろう。父親に2人が別れたことを言えないから、一緒に来てくれないかと。まだ方小晓を忘れられない林見清にとっては、こじつけでも必死の誘いだ。

 

結局2人は一緒に林見清の父親の所へ帰るが、父親と方小晓と3人で北京のマンションで暮らそうという林見清の提案を、父親は故郷を離れたくないと拒否。方小晓にも、もうやり直すことはないと言われてしまう。

方小晓を幸せにしたいと、金持ちになったし、北京に高級マンションも買ったし、なにが不満なのか分からない林見清を残して、方小晓は去って行ってしまう。

 

 

・・・こんな風に過去の物語が語られ、途中でちょこちょことモノクロの現在の2人がホテルの部屋で話すシーンが差し込まれる。

あのときはどう思ってたのか、もしこうしてたら現在は違ったのかな・・・みたいな話しだ。

 

 

2人で過去を思い出し、いい雰囲気かなと思うと、林見清に電話がかかってくる、子供からだ。もちろん奥さんからは、「いつ帰ってくるの?」と叱られる。

そう、林見清は別の女性と結婚していたのだ。

わたしも結婚する予定の人がいて、もうすぐアメリカに移住するんだと言う方小晓。

それを、うそつくなよ、と言う林見清。

 

結局2人は飛行機をキャンセルして、レンタカーで北京に帰ることにする。

少しでも2人の時間を引き延ばしたいという切なさ。

しかし、車は北京の方小晓の家に着き、別れの時が・・・。

 

 

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この映画は、エンドロールも最後までしっかり見ないといけません。

 

何度も書いているので、前から読んでくださっている方には繰り返しになるが、中国人は99・9%エンドロールを見ないで帰る。(少なくとも南通では)本編が終わると、すぐに会場が明るくなるので、みんなすぐ出て行ってしまう。

 

しかし、この映画はエンドロールにも見どころが「二段構え」で仕込んである。

 

まず、一般人の方が次々と、フリップというのですか、胸の前に紙を出すとそこには、別れた恋人に向けたメッセージが書かれている。

「あなたのことは恨んでません」とか、「今でも会いたい」とか、「君が僕を成長させてくれた」とか、たくさんの人たちのメッセージ、読んでるとおもしろい。

 

そして、それが終わると、いきなり監督の刘若英のコンサート。笑。

どこかのコンサート会場で、観客たちが刘若英のヒット曲『后来』を大合唱してる様子が映る。

 

私個人の感想ですが、

一般人のメッセージはよかったけれど、刘若英のコンサートにはちょっとひいた。

 

映画は映画で、監督の歌手活動とは別でいいんじゃないのと思ったからだ。

こんな風にすると、監督が歌手であることを利用して観客を動員しようとしているようで後味悪く感じた。

 

それに、大ヒット曲だから、曲の印象が映画に勝ってしまった。そのため、映画の余韻が薄れてしまったと思う。

そこは、計算ちがいだったのではないだろうか。

 

と思いつつも、刘若英の大ファンという方もたくさんいるから、そういう方たちにはウケてるのかもしれない。

ただ、日々、評価は下がり気味なのは気になるところ。

 

すでに他の分野で成功した人が映画監督をするというのは、いろんな意味で難しいものだなあと感じた1本。

 

 

 

 

 

 

 

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