心って?

テーマ:

僕は歩き続けていた

歩き続けてある小さな町にたどり着いた

その町の人達は皆働き者でいつも一生懸命自分の仕事をしていた

僕は町のベンチに腰をおろして町の人達を眺めていた

皆一生懸命仕事をして

自分の仕事以外の事は見えていないようだった

たまに仕事中の人が僕の前を通る時にこちらを見て通り過ぎて行った

僕が頭を下げてもまるで僕が見えないかのように仕事を続けた

子どもたちも自分の部屋で机に向かって勉強していた

僕はあるお店に歩いていきお店のおばさんに話しかけた

「今日はいい天気ですね」と声をかけると店の奥で仕事をしていたおばさんが「いらっしゃいませ」とでてきた

僕は「この町は皆働き者なんですね」と言ったがおばさんはそれには聞こえないように「なにをおさがしでしょうか?」と聞いた

僕は「りんごを二つとパンを一斤ください」と言うとおばさんはそれらを袋に詰めて僕に差し出した

僕はお金を払って歩きだした

僕はベンチに座って考えていた

この町の人達は人形のようだなと思った

仕事をこなすだけ、他にはなにもない

なんだか僕は寂しくなって町を後にした

丘を登って星の見えるところに寝そべった

手を伸ばすと星がつかめそうで僕は星に包まれているのを感じた

僕の頬を涙が伝っていた

僕は朝が来るまでそこで眠っていた

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苦しいよぉ

テーマ:

ねぇ、もうずっとおとなしかったのに

どうして今、そんなに暴れているの?

痛みも苦しみも悲しみも妬みも憎しみも

全然消えてなんかいなかったの?

ねぇ?どうしてこんなに苦しいの

ねぇ、なんにも見えないよ

ねぇ、なんにも聞こえないよ

ねぇ、なんにも感じないよ

心の内側から浄化しきれない者達があふれ出してくるよ

この体いっぱいにそれがいきわたれば

もう僕は僕じゃなくなるんだ

僕が僕でいられなくなる

抑えきれないよ

止まらない

頭を奪われて思考も奪われる

でも、それはだめだよ

絶対にそんな事はできない

僕には無理な事だとしても

僕はそれを願ったんだから

もしもだめなら僕が一緒に持っていく

トンネルを抜けて山の上から反対側の世界まで連れていく

手を離したりしない

皆抱きしめて連れていく


でも、きっと大丈夫

明日にはちゃんとまた元に戻るから

大丈夫

もう少しでおとなしくなるから


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一人じゃない

テーマ:

僕は子犬のいなくなった後も歩き続けた。

一人で歩く道はなんとなく寂しかったけれど、でも僕は前に進まなきゃいけないんだ。

そうして子犬の事を想いながら歩いていると隣に子犬がいるようで少し安心していられるんだ。

僕が歩いていると夜の公園に誰かがブランコに乗っている。

小さい子どものようだった。

僕はブランコに近づいてその子を見た時少しだけ驚いた。

ブランコに乗っていたのは鬼の子どもだったんだ。

頭には小さなつのが二つ生えていた。

でも鬼の子は泣いていた。

僕はもうひとつのブランコに座って少し揺らしながら鬼の子に話しかけた。

「どうしてこんな時間にこんな所で一人で泣いているの?」と…。

鬼の子は僕を見て「皆僕を嫌うんだ」と泣きながら言った。

鬼の子は誰も傷つけたくなかったし優しい心を持っていた。

でも彼が鬼だという理由で嫌われ続けた。

一緒に遊ぶ友達もいなかったしいつも一人ぼっちだった。

僕は鬼の子に「じゃあ今から一緒に遊ぼう」と言ってブランコを降りて彼に手を差し伸べた。

鬼の子は戸惑って「君は僕が怖くないの?」と聞いた。

僕は「僕が君を怖がる理由はないよ、君は確かに鬼かもしれないけど僕には優しい子どもと同じだよ」と言って彼の手を取った。

鬼の子は少し震えながら「砂場で遊びたいんだ」と言った。

それから僕らは砂場で遊んだり滑り台で遊んだりして一緒に過ごした。

そして朝が近づいてきた頃鬼の子は「僕、もう帰らなくっちゃ」と言った。

僕は「そう、せっかく仲良くなれたのにもうお別れだね」と言った。

鬼の子は「またここで遊んでくれる?」と僕の眼を覗き込んだ。

でも僕ももう行かなくてはいけない、だから「ごめんね、僕は行かなくてはいけない所があるからもうここにはいられないんだ。」と言った。

すると鬼の子は悲しそうな顔をして「そう、僕はまた一人ぼっちになるんだね」と言った。

僕は無償にやりきれなくなって彼を抱きしめた。

そして僕らは大きな声で泣いたんだ。

僕らが泣いているとその泣き声を聞いた鬼の子のお父さんとお母さんがやってきた。

鬼達は僕をにらみつけ「お前は誰だ!」と言った。でも僕は自分が誰かもわからないので「わかりません」と答えた。

すると怒った鬼は僕をつかみ空高く持ち上げ「お前を殺してやる」とにらみつけた。

僕は鬼の眼を見て「貴方がたがそうやって乱暴をするから貴方の子どもは友達もできずに一人でどれだけ寂しい想いをしてきたかわかりますか?」と言った。

すると鬼は「お前達は私達が何もしていないくても私達を嫌った。鬼だからと私達を追いやり苦しめた。」と言った。

「私は元はお前達と同じ人間だった。だが親に捨てられ、友達もいない、たった一人で私は苦しんだ。そして私は鬼になった。その苦しみがわかるか!」と涙を流しながら叫んだ。

その叫び声は遠くの山にまで響きわたった。

そして鬼は僕を地面に降ろし「まだ何か言う事があるか!」といった。

僕は何も言わず鬼を抱きしめた。

「僕にはあなたの苦しみがわかる、とは言いません。どれほど苦しかったか、どれほど寂しかったか、どれほど悔しかったか。僕を殺せば貴方の心が少しでも楽になるなら殺してもかまわない。でも貴方は僕を殺せば更なる鬼となるだけだ。だから僕は貴方に殺される訳にはいかない。」

「貴方が欲しかったもの、僕があげられるとは想わない。でも少しでも僕ができるだけ…。」

僕は泣いていた。鬼も泣いていた。

その後鬼は帰っていった。

僕は殺されることはなかった。

鬼の置いて言った金棒は公園の真ん中で大きな木になった。

子ども達が遊ぶ公園に大きな木が立ちきれいな華を咲かせた。

僕は公園を後にしてまた歩きだした。


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別れ

テーマ:

僕らは歩き続けていた。

子犬はもうずっと何も話さなかった。

僕はなぜだか不安で仕方なかったけれど、それ以上に怖くて何もいえなかった。

ただ黙って歩いていた。

あたりはすごく寒くて凍えてしまいそうだったし、おなかもぺこぺこで僕らはもうフラフラだったんだ。

僕は少し座って休みたかったけれど子犬が休む気配もないので僕もただ黙って後について歩いていた。

突然子犬は足をとめてこちらを振り返った。

僕は突然の事に驚いてその場で硬直していた。

その後に起こるであろう恐ろしい事をなんとなく予測していたからだろう。

子犬が何か言おうとしたが僕は聞きたくなかった、だから首を振って彼を見つめた。

子犬は困ったように少し笑ってから「君といられてすごく楽しかった、素敵な名前ももらえた。でもここから先には一緒にはいけないんだ。君はまだこちらに残らなくてはいけない。まだ順番じゃないから。でももう僕の番が来てしまったから僕はもう行かなくてはいけないんだ。」と落ち着いた声で諭すように言った。

僕は何も言えずただ泣きながら首を振り続けた。

足はふるえて目の前は涙でゆがんで、僕はしゃがみこんで泣き続けた。

子犬は僕の横に座って僕の涙をぬぐいながら「僕らはもう別々じゃないんだ、一度同じ気持ちを共有して、ひとつになった、どんなに離れていても、なにをしていても僕らはひとつなんだ。君の心に僕は生き続ける、だから怖くもないし寂しくもないよ。」といいながら僕を抱きしめてくれた。

僕も頭ではわかっていたんだ。でも心がまだ受け入れられなくて、彼がいなくなって一人で歩くなんて僕にはできなかった。

子犬は「君は僕に素晴らしい時間をくれた、君と一緒に歩いた。それはとても素敵な時間で、僕は君が大好きだ。だけれど捨てるべきだとわかったものに執着してはいけない。それは君が苦しむ事になるだけだから、僕はここを離れても君の傍にいるから。」と一生懸命僕を慰めてくれたけど、僕はどうしたらいいかわからなかった。

「僕も君と離れるのは正直辛いんだ、君を残して先に行くのは悲しい、でも仕方ないんだ。もう僕の番が来てしまったんだ。だからここからは君は一人で歩かなくてはいけないんだ。でもいつでも思い出して、君のすぐ隣に僕は一緒に歩いているから。」

どれくらいの間そうしていただろう、僕は泣き続け、子犬は僕を慰め続けた。

子犬の時が近づいてきたのがわかったんだ。

少し眠そうにでもすごく寂しそうに子犬はこちらを見ていた。

もう慰めの言葉もでてはこなかった。

僕は子犬を抱き寄せ僕のあげた名前を何度も呼んだ。

そのたびに彼はこちらを見て少し悲しそうに笑っていた。

「君が寂しくないように僕が抱きしめていてあげる、だから安心して行くといいよ。僕はちゃんと一人で歩くから、そしてちゃんとたどり着く、そしていつの日か僕もそっちに行くから。だから、それまでは安心してゆっくりしていてよ。」僕がそういうと子犬は安心したように僕を見て涙の雫を一粒流した。

子犬は最後に僕に一言だけ言葉を残していった。

僕はこれからはその言葉を抱きしめて歩いていくんだ。

子犬が眼を閉じ、だんだんと力が抜けて、子犬はそこから行ってしまった。

子犬が行ってしまってから僕はずっとそこに座っていた。

まだ彼がいなくなったのが信じられなくて、もう少し待っていたら帰ってくるんじゃないかと想って。

でも…子犬は帰ってこなかった。

僕はゆっくりと立ち上がり歩きだした。

どこへ向こうのかはわからない。

でも、今度は隣を一緒に歩いてくれた子犬はいなかった。

いつもなら彼のいたそこは少し寂しくてなんだか物足りなくてちょっと涙が出そうになったけれど。

でも僕はまた歩きだすんだ。



ありがとう

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僕らはそこに座っていた。

景色のいい丘の上で。

そこまで歩いて、僕らは座った。

まだ喉は渇いていた、おなかもぺこぺこだったけれど、そこに呼び寄せられるようにたどり着いて座って何かを待っていたんだ。

それが何か、何が起こるのかもわからなかったけれど怖くなんかなかったし僕らは黙って座っていた。

子犬も僕も何も話さず、ただ座っていた。

その丘にたどり着いた時、そこには一人のおじいさんが座っていた。

おじいさんはチラリとこちらを見て、軽く頭を下げた、僕らも軽くお辞儀をして隣に腰を下ろした。

ほんの些細な事だったけれど、その丘の上ではそれ自体がとても神聖な儀式のように輝いていた。

そして子犬も僕もおじいさんもそれから何も話さずただ黙って景色を見ていた。

それからウサギがやってきて、また同じように僕らはお辞儀をして、ウサギもまたお辞儀をして、僕らの横に座った、クマもオオカミも小鳥もキツネもおとこのこもおんなのこもおばさんもシカもネズミも皆が同じようにお辞儀をして座った。

気づくとそこらじゅうに誰かが座っていて、皆黙ってただ景色を見つめていた。

だんだんと夕方になって夕日が沈み、夜になった。

皆黙って座っていたが寒さで皆だんだんと近づき身を寄せ合うように集まってきた。

誰かが皆の真ん中に小さな焚き火を焚き、皆その周りで体を寄せ合っていた。

皆が皆を思いやり、ただ黙って身を寄せ合っていた。

一瞬あたりの寒さが増したように感じた。

そして皆空を見上げた。

皆黙ったまま空を見上げた。

僕らの上にはオーロラが空を覆っていた。

見たこともないような素晴らしい空にただ黙ってそれを見つめていた。

誰も何も言わなかった、ただ黙って見つめていた。

それから少ししてオーロラは消えて、集まってきていた皆はだんだんとその場を離れた。

そしてそこに残ったのは子犬とおじいさんと僕だけだった。

オーロラの消えた空から小さな焚き火へと眼を移していた。

黙って座っていた。

するとおじいさんが「ありがとう」と言った。

子犬と僕も「ありがとう」と言った。

おじいさんは「私もそろそろ帰るとしよう、辺りはまだ寒いから風邪などひかぬようこの上着を着るといい」と言って僕らに自分の着ていた上着をかけてくれた。

子犬と僕はお互いに寒くないよう一層寄り添っておじいさんの上着に包まれた。

おじいさんは少しの間僕らを見つめ「君達は本当に仲が良いのだね、この奇跡を君らと見られて良かった。本当にありがとう、君らの事はずっと忘れないよ」と言って帰っていった。

僕らは遠ざかるおじいさんの背中に向かって小さく「ありがとう」とつぶやいた。

それから子犬と僕は黙って焚き火を見つめていた。

僕はなんだか眠くなってきて子犬を見ると子犬も眠たそうな顔で僕を見た。

そして「君とあの奇跡を見られて良かった」と僕が言うと「君と見た奇跡は僕の心に永遠に刻まれるだろう、そして僕の中にあの奇跡も、君も永遠に行き続ける。あの奇跡は僕になり、君も僕になる。僕があの奇跡になって僕が君になる。」と言った。

そして僕らは少しだけ笑ってまた焚き火を見つめた。

僕は焚き火から眼をそらさずに子犬に名前をあげた。

子犬も焚き火から眼をそらさずにその名前を繰り返し口に出していた。

僕も子犬の名前を繰り返して焚き火を見つめた。

子犬の顔は見られなかったけれど彼は確かに少しだけ泣いていた。

そして僕らは朝が来るまで寄り添って眠った。



僕は自分が嫌いだった。

いつも人の目を気にしていた。

人の汚い所やずるさ、そんなモノが嫌いで、同じモノを持ってる自分が嫌いで。

人という種を憎むと同時に自分を憎んだ。

全てが敵に見えた、自分自身すらも…。

誰も助けてなんてくれないしどんなに逃げても抜け出す事はできない。

自分の足に絡みついた重たい足かせが飛び立つ自分を地の底へと引きずり戻すと思っていた。

その日何か辛いことがあった訳ではない、苦しい事や悲しい事があった訳でもない。

でもこの世界に愛想がつきて、ここにいる自分に納得がいかなくて…。

だから僕は死のうと思った。

大好きなバイクに乗って、何処か知らない所に行って、そのまま死んでしまおうと思った。

なんとなく、最後に海が見たくて、海の見える方に走った。

海沿いに北へ走りながらどこで死んでもかまわなかった。

行ける所まで行って、できるだけ遠くで死ぬのもいいな…。

そんな事を考えていた。

そして丘を登りくだりに差し掛かった時調度海へ向かう下り坂の下に小さな町があった。

すぐ海があって少し先には風車が二つ並んでいた。

その景色を見た瞬間僕はなぜだかバイクを止めて泣いていた。

道端で、通る車に泣き顔を見られる事も、泣き声を聞かれる事も気にせずに大きな声を出して、小さな子どものように泣きじゃくった。

何処にでも行けると思った。

世界は僕が思っているより素晴らしいと知った。

その景色に抱かれて愛を感じた、強さをもらった、赦されて、励まされて、それは世界のすべてで、僕だけのすべてで…。

その景色は今でも鮮明に覚えている。

でも、何度その後その場所に訪れても、最初に出会った時程素晴らしい景色にはならない。

それは僕が変わったからじゃない、その場所が変わった訳でもない。

それは僕だけの、その瞬間だけの奇跡だから。

その場所が例え二度とあんな素敵な景色にならなくても、僕の心にはいつまでもその景色は残っている。

何処にでも行ける。

どんな事でもできる。

僕自身がその景色で、

その景色自体が僕だから。

道端にバイクをとめてどれくらいの時間そこで泣いていただろうか。

それから僕は来た道を引き返し、家に帰った。

それからほんの少し心が軽くなった。

皆違う

テーマ:

僕らは歩き続けた。

喉はまだかわいていたけれどとても幸せだったんだ。

だから僕らはゆっくりゆっくり一緒に歩いた。

すると遠くから誰かがやってくるんだ。

その人は痩せたおじさんでうつむいて歩いていた。

おじさんは僕らの前まで来て顔もあげずに立ち止まった。

「こんにちわ」どうしてあなたは地面ばかり見て歩いているの?」と僕が尋ねるとおじさんは「虹を探しているんだ」と答えた。

僕は「虹は空にあるものでしょう?地面を見ていても虹は見つからないよ」と言うと「でも僕は顔を上げられないんだ」とおじさん。

「どうして顔をあげられないの?」と子犬が聞くと「だって恥ずかしいだろう?顔を見られたら恥ずかしいよ」とおじさんは言った。

「それじゃあいつまで経っても虹は見つけられないよ?」というと「それは困った、でも僕は虹が見たいんだ」とおじさんは言った。

僕らは少し考えていい事を思いついたんだ。

「おじさん、僕らについてきてよ!」そして僕らは虹の見える所まで来て水溜りに映った虹を見せてあげた。

でもおじさんはなぜだか浮かない表情をしていたんだ。

だから僕が「どうしたの?」と聞くと「これは違うよ、虹は空に大きくかかるんだ。こんなに小さいハズがない」と言うんだ。「それなら顔をあげてごらんよ、大きな虹があるから」と子犬が言うと「だめだよ、恥ずかしい」とおじさん、僕が「それじゃあ僕らはもう行くから、そしたらおじさん一人になる。それなら恥ずかしくないでしょう?ゆっくり虹を見てよ」と言うと「だめだよ、もしかしたら遠くで誰かが見ているかもしれない。そんなの恥ずかしいじゃないか」とおじさん。

僕らは困ってしまって「それじゃあ虹は見られないよ」と言うとおじさんは少し悲しそうな顔をして「ありがとう、もう僕の事はいいから行っておくれよ」といったんだ。

僕らはおじさんの言うとおりその場を去って少し歩いてから顔を見合わせた、「不思議な人だったね」と僕、「きっと彼は虹を見てしまったら探すモノがなくなってしまう、だから虹を見ないようにしているんだろう」と子犬、僕はよくわからなかったけれどそういうものなんだと思って「そうだね」といった。


僕らはまた歩きだした。

少し歩くとむこうから太ったおばさんが歩いてきて僕らの前まで来ると立ち止まって僕らをにらみつけるんだ。

僕は「どうしたんですか?」と聞くとおばさんは「あいさつもできないの!?」と言うので僕は「こんにちわ」と言った。

すると今度はおばさんは「今は夜なのに”こんにちわ”だなんてなんて子でしょう!?」と言うんだ。

でも僕らの立っている場所はまだ昼間なんだ、そして一歩前に出ておばさんの立っている場所は夜なんだ。

だから僕は「でも僕らのいる場所はまだ昼間なんです、だからこんにちわと言ったんです。」というと「そんなこと知りません!」とおばさんは顔を真っ赤にして怒っていた。

なんだか僕は悲しくなって「ごめんなさい、じゃあ僕はもう行きます」と言って歩きだすとおばさんが「さようならも言えないなんてなんて子でしょう!」と言っているのが聞こえた、でも僕はなんだかもう何も言いたくなくて黙って歩き続けた。

少し歩いてから僕らは顔を見合わせた、「あんなに怒らなくてもいいのにね」と僕、「あの人はきっと色々なことを人のせいにしてみないと気がすまないんだよ。いつでも自分は正しくて悪いのは全部人のせいなんだ。」と子犬、僕はよくわからなかったけれどそういうものなんだと思って「そうだね」と言った。


僕らはまた歩きだした。夜の中をどんどん歩いた。明かりも持っていなかったし街灯もなかったけれどお星様とお月様の光があれば十分だった。

それに暗い道でも友達がいるから怖くなんかなかったんだ。

それから少し歩いていくとどこからか声がするんだ。

「君達はこんな時間に何処に行くのかね?」

僕らはどこから話しかけられているのかわからなくてキョロキョロと辺りを見回した。

「あなたは誰?どこにいるの?」と聞くと「僕はふくろう、上を見てごらん?そうそう君達の前にある木の上だよ」

木の上には大きな眼をしたふくろうがいました。

「こんばんわ」と僕が言うとふくろうさんはまるで聞こえていないように「何処に行くのかね?」と聞いた。

僕らは「わからないよ、でも僕らは喉がかわいているんだ。そしておなかもすいているんだ、水が飲める所や何か食べられる場所を知っていますか?」と聞くと「私はこの森に昔から住んでいる。君達はどこから来たんだね?」とふくろうさん。

僕が「どこから来たのかもわからないんだ、ねぇ?水や食べ物のある場所を知っていますか?」と答えると「そうかそうか、君達は自分の事すら何もわからないんだね。私はなんでも知っているんだ。」とふくろうさんが言った。

僕はもう一度「なんでも知っているなら水や食べ物のある場所を教えてよ」と聞くとふくろうさんは「うん、それは大変だ。私もおなかがすいたから帰るとするよ。それじゃあ気をつけて」と言って夜の闇の中へ飛んでいってしまいました。

子犬と僕は訳がわからなくなって眼を丸くして顔を見合わせた、「なにも教えてくれなかったね」と僕、「きっとあのふくろうは本当はなんでも知っているわけじゃないんだ、自分の知りたいことだけを知って、あとのことには目を向けないんだ、だから僕らの質問にも答えなかったんだろう」と子犬、ぼくはよくわからなかったけれどそういうものなんだと思って「そうだね」と言った。


子犬は「今は僕の言っている意味がわからないかもしれないけれど、いつかわかる時が来るよ。」と言った。

僕は「うん、そうなるといいな。それにしてもここまでにもいろんな人に会ったけれど皆それぞれ全然違うんだ。うつむいてばかりの人もいたし、怒ってばかりの人、何も教えてくれないふくろうも他にも色んな人に出会ったけれど皆全然違うんだ。」と言った、すると子犬は「それが嫌なのかい?」と聞くので「嫌じゃないよ、でも不思議だなって思ったんだ」と言うと「皆同じじゃ面白くないだろう?皆それぞれ違うから皆それぞれいいところも悪い所もあるんだよ」と子犬が言った。

僕は「あぁ、確かに皆同じじゃ面白くないね」と言って歩き出した。

でもうつむいてばかりのおじさんが虹を見れたらいいな、と思ったし怒ってばかりのおばさんが楽しく笑えたらいいのにと思ったし、ふくろうさんももっとなんでも見られたらいいのにとも思ったんだ。


一緒だから

テーマ:

僕らはまた歩いていた。

でも今度は一人じゃなかった、大切な友達の子犬が一緒に歩いている。

それだけで自分の進む道が明るくなったように見えた。

僕らは色々な事を話しながら歩いた。

話すことがなくなってもまた最初から話した。

とにかくずっと話しをしていたんだ。

そして歩き続けた。

僕らは前よりもっとお互いを知り仲良くなった。

ずっと歩いていくと小さな井戸があった、僕らはもう喉がカラカラだったので嬉しくて井戸の中を覗き込んだ。

すると井戸の中には一人分くらいの水がほんの少しあるだけだった。

どんなに頑張っても子犬と僕の喉を潤すのには足りないくらいだったんだ。

僕は困ってしまった、僕も子犬も喉はカラカラだけど水は一人分しかない。

子犬は僕の顔をじっと見ていたけれど決心したように僕に言った。

「君が飲むんだ」

僕は子犬の眼を見てこう答えた。「僕はいいから君が飲んでよ」

だけど子犬は「僕も君も喉がかわいている、だから僕だけ水を飲むなんてできない。それに君は僕の友達だから僕は君が喜ぶと嬉しい、だから君が飲んでおくれよ」と言った。

でも僕は「それは僕も一緒だよ。それに僕は僕だけが喉が潤っても君が喉が渇いていたら全然嬉しくないんだ」そう答えた。

僕らは困ってしまってただ見つめあっていたんだ。

すると子犬がこう言った「じゃあこの一人分の水を二人で分けて飲もうじゃないか」と、僕も「うん、僕も同じ事を考えていたよ。二人で分け合って飲めばいいね」と言った。

そして僕らは一人分の水を分け合って二人で飲んだんだ。

喉はまだ乾いていたけれど、でも僕はそれ以上に満ち足りた気持ちだった。

半分の水でもすごく満足したんだ。

そして子犬に「僕は君のおかげで今すごく嬉しいよ」と言うと子犬も「僕もだよ」と笑ったんだ。

そして僕らはまた歩き始めたんだ。

僕はまだ子犬に名前をつけてあげられなかったけれど、本当はもう素敵な名前を思いついたんだ。

でももう少し一緒に過ごしてから名前をつけようと思うんだ。


一緒に歩こう

テーマ:

僕はただ歩き続けていた。

何処からきたのか、何処にむかっているのかもわからなかったけれど…。

でも行かなくてはいけない事だけはわかっていた。

ここにいてはいけないから、だから歩き続けた。

もうどれくらい歩いたのかもわからない。

あとどれくらい歩くのかもわからない。

でも辿りつくまで歩き続けなくてはいけない。

僕は歩き疲れて、喉もカラカラで、その場に座りこんだ。

急がなくてもゆっくりいけばいいから、少しここで休んでいこう、そう思って足をとめたんだ。

ゆっくりと地面に腰をおろして空を見上げたらあの泣いていた彼の事を思い出した。

彼は今も泣いているのだろうか、それとも素敵な笑顔を見つける事ができたのだろうか…。

彼が今も泣いているのかもしれないと思うと心が張り裂けそうに苦しくなった。

彼が素敵な笑顔を見つけたかもしれないと思うと踊りだしたくなるくらい嬉しくて心が少しあったかくなった。

そんな事を考えていると向こうから小さな子犬が近寄ってきた。

どうやらその子犬も喉が渇いているらしかった。

僕も喉は渇いているけど水なんて持っていないし食べ物も持っていない。

僕はその子犬にとって役立たずなのだ。

でも子犬は僕の足に擦り寄って離れようとはしない。

僕は子犬をなでながら「ごめんね、僕は水も食べ物も持ってはいないんだよ」そう言った。

すると子犬は「わかっているよ、君も僕と同じで喉はカラカラ、おなかもペコペコで疲れているんだろう?」と優しい眼で答えた。

「それじゃあなぜ僕の所に来たの?僕は君の役には立たないんだよ?」そういうと子犬は少し寂しそうな眼をして「僕は君が役に立ちそうだと思ったから来たんじゃないよ。君は同じ境遇の友達だ、だから一緒にいたかっただけだよ。」と言った。

僕はなんだか急に自分の言葉に恥ずかしくなった。

少しの間子犬は何かを考えていたが「君の名前は?」と僕に聞いた、僕は「…わからない」と答えた、僕には僕のことすらわからなかった、僕は子犬に「君の名前は?」と聞いた、すると子犬は「わからない」と答えた。

「君も自分のことがわからないのかい?」と僕が聞くと子犬は「違うよ、僕にはまだ名前がないんだ、だから僕の名前を知らないんだ」と言った、僕が「じゃあ自分でつけたら?」と言うと子犬は「それはだめだよ、自分で自分に名前はつけられないから」と言う、僕にはどうして自分でつけられないのかはわからなかった。

すると子犬は僕の眼を見つめ少し考えてから「じゃあ君が名前をつけておくれよ、だって君は僕の友達だから」と言った、僕は誰かに名前をつけた事なんてなかったので困ってしまったが彼に素敵な名前をつけてあげたいと思った。

「君に素敵な名前をプレゼントしたいんだ。でも、僕はまだ君の事をあまり知らないし素敵な名前が思いつかない、だから少しの間一緒に過ごしてゆっくり考えたいんだけれど、それでもかまわないかい?」と聞くと子犬は嬉しそうに「うん、僕は君が素敵な名前をつけてくれるのを待つことにするよ」と言ってくれた。

そして僕らはそれから少しの間黙って隣に座っていたんだ。


うん、ゆっくりね。

テーマ:

フと耳を澄ますとどこかから誰かの鳴き声が聞こえていました。

その声があまりにも頼りなく苦しげでなんとなく気になって泣き声のする方に歩いていきました。

するとそこにはなんだか見覚えのある人がしゃがみこんで泣いていました。

その人が誰だったのか、どこでその人と知り合ったのかすら思い出せなかったけどとりあえず隣に腰を下ろして一緒に座っていました。

どれくらいの時間が経ったんだろう、彼は泣き止んでこっちを見る事もなく言いました。

        「どうして横に座ったの?」

僕はなにも言えなかった、だってどうしてそうしたのか自分でもわからなかったから、だからただ「わからない」と答えました。

今度は僕から彼に「どうして泣いていたの?」と聞いてみましたが彼は少しの間考え込んで「わからない」と小さく答えました。

でも彼がどうして泣いていたのかは知っていました。

彼もどうして隣に座ったのかわかっていました。

ただ何も言わずにずっと二人で座っていました。

でももう僕は帰らなくてはいけない時間が近づいています。

「僕はもう行くね、あまり長くはここにはいられないから」そう言うと彼は寂しそうに「そう」とだけ答えました。

その姿があまりに小さく頼りなく見えて彼が苦しみや悲しみに押しつぶされて消えてしまうんじゃないかと不安になりました。

だから彼の正面にしゃがみこんで彼を優しく抱きしめました、彼は少し震えていました。

それから彼の目をまっすぐに見つめて「大丈夫、心配しなくてもいいよ。君の人生はこれから大きく変わっていく。今の苦しみや悲しみから抜け出すのもそう遠くない、だって夜明け前が一番暗いんだから。」そう言うと彼は「どうしてわかるの?」と聞きました。

僕は少し笑って「だって君は昔の僕だから」そう答えました。その時初めて彼が少しだけ笑ったように見えました、まだ少し寂しそうな笑顔だけど…。

それから僕はまた歩きだしました。

何処へ向かっているのか、どこへ帰るのかもまだわからないけれど、でも前より少し胸を張って歩くことができる気がしました。



昨日はお母さんとお婆ちゃんに紅葉を見せてあげたくて神仙沼と言う所に言ってきた。

紅葉はキレイだったんだけれどあまりにも人が多くて少し落ち着けなかった。

でもゆっくりできたらすごく気持ち良かったと思う。

それからニセコで軽く食事をしてから長万部に行きかにめしを買って海沿いに豊浦まで行き、そこから留寿都方面に、そしてきのこ汁を買ってかにめしを食べた。

それから定山渓の温泉に入って帰ってきた。

お母さんもお婆ちゃんも喜んでくれた。

楽しかったし嬉しかった。

10月にアメリカに行く予定だったけれど色々予定も変わったりしなくてはいけない事も増えて今は行けなくなってしまった。

でもやめたんじゃない、延期しただけだから。

だから大学を卒業したらゆっくりいろんな所を旅しようと思う。