どのような経緯で来院したのか?
患者さんを長く診ていると、「この人はどのような経緯で来院したのだろう」と思うことがある。そう思う期間はさまざまで、10年くらい経った時もあるし、2年未満のこともある。
特に入院歴がない人。
外来だけだと、長期間になると経緯など全く忘れている。かつては結構憶えていたような気がするが、今は全然である。
来院の経緯はカルテを診るとすぐにわかることもあるが、10年くらい経っていると初診当時のカルテはカルテ庫に入れている人もおり、わからないこともある。だから、本人に直接、なぜここに来たのか聴くわけである。
われながら、お粗末な話。
直接聴いた際に、そんなことも忘れているのかと怒るような人はほぼいないが、もっと些細なことで怒る人がいる。例えばペットの話など。(ペットの種類はあまり重要でないので忘れる)
これも患者さんが多すぎるからなんだと思う。最近はレセプトを整理していて、顔が全然思い出せない人が結構いる。特にリエゾンの人。
このようにある日、「なぜここに来たんだろう」と思う機会は、「ある種の区切り」だと思うようになった。その患者さんに最も聴きたいことは、
ここに来てから良くなっているかどうか?
である。病院なので当たり前である。ほとんどの人から良くなっていると言われるが、実際にはどう見ても良くなっていないか、変わらない人もいるのはいる。ごく僅かだが、現在も苦戦中なのである。
このような流れで、最近最も驚いた事件。ある患者さんは、うちに転院して薬をジプレキサに変えた。
8年経って、なんと20㎏体重減少していたのである。
僕は言った。
ジプレキサに変更し7~8㎏減量する人は時々いるが、貴方のマイナス20㎏はたぶん新記録だと思う。さすがに、ジプレキサを飲み始めて20㎏減る人は滅多にいない。
その人の反応は、
えっ、ジプレキサって体重増えるんですか?
だったのである。平均的な患者さんは、インターネットの人たちより薬に詳しくない。