労災のリエゾン患者 | kyupinの日記 気が向けば更新

労災のリエゾン患者

精神科医は、一般の外来患者も労災のリエゾン患者も同じように診察治療するが、そのあとの書類の量はかなり違う。

本来、精神科は提出書類の多い科であり、例えば一般の外来患者さんでも、自立支援法の書類は書く機会が非常に多い。それ以外でも、医療保護入院、措置入院、精神保健福祉手帳、職場や学校に提出する診断書、傷病手当金、生活保護の提出書類(外来と入院は別)、障害年金、介護保険の診断書などがある。

あまりにも雑用が多いためか、例えば自立支援法の書類はずっと以前よりは簡略化されている。

精神科では時に特殊な書類がある。たとえば検察官からのある精神疾患と犯罪とのかかわりについての照会などである。これは、その人を起訴するかどうか参考にしているようである。

リエゾンで労災患者を診ている場合、精神科疾患が最初の労災対象の疾患ではないこともあり、どのような因果関係なのか説明を求める書類が来る。これは交通事故も同様である。

自分がかかわった患者さんの場合、身体機能の喪失から来るうつ状態が多いが、それ以外もあったように思うが、細かいところまで覚えていない。とにかく、わかりやすいように記載することに気を遣う書類である。

自分は再提出を希望されたことがないので、なんとなく意見が受け入れられていると思っているが、真相は謎である。

書きながら思い出したが、かなり以前、テレビでベルギーで安楽死を希望するイギリス人青年のインタビューを観たことがある。

その20歳を少し超えたくらいの青年は、交通事故で四肢が全く動かせない後遺症があり、生涯、誰かの介護を受けないと日常生活ができない状態にあった。インタビューでは、その青年は「自分の人生は終わってしまったのでベルギーに来た」などと話していたが、明らかにうつ状態も合併していると思われた。

実は積極的安楽死を認めている国はあまりない。ここでいう「積極的」とは日本的に言えば、第三者の自殺ほう助による安楽死である。

安楽死を認めているのは、スイス、ベネルクス3国(オランダ、ベルギー、ルクセンブルク)およびアメリカのごく一部の州である。最も古くから認めているのはスイスで、なんと戦前の1942年である。なお、べネルクス3国は2001年以降である(法律が成立した年は異なる)。

交通事故や労災で、このような重い麻痺の状況に至った人はずいぶん診たことがあるが、うつ状態は必発と言ってよく、うつ状態の治療を並行して行うだけで、本人の人生への考え方はかなりプラスの方に向かう。

したがって、個人的に、安楽死を認めている国々がその人の意思の「信ぴょう性」をどのように判断しているのか非常に興味がある。

参考
自分が自分を殺したら・・
奇跡があるように言ってはいけない
精神科医は書類に忙殺される(前半)
精神科医は書類に忙殺される(後半)