不安という精神所見とガバペン | kyupinの日記 気が向けば更新

不安という精神所見とガバペン

昨年10月から向精神薬の処方制限が始まったが、一部の患者さんに限られるが、おそらく最も対処に困るものは睡眠薬と思う。不眠で困ってる人々は多く、数種類の眠剤を投与されている人が比較的多かったこともある。

それに対し、抗精神病薬と抗うつ剤は3剤まで使えるので外来レベルでは問題にならない。

その中間にあたるのは抗不安薬であろう。個人的に、元々、デパス、ソラナックスは出さないタイプなので、処方制限の前も自分の患者さんで抗不安薬で溢れかえることはなかった。

しかし、転院してきた人たちには多くの抗不安薬を処方されている人もいないわけではない上、自分の場合、急いで変更しないので、そのまま多い人もいた。実際のところ、転院してきた人でも抗不安薬が3剤以上処方されていることは稀である。ただし、2剤がいずれも上限ということはあった。

いざ減らせと言われても、SSRIを使わずにベンゾジアゼピンを減らさねばならないことが結構ある。その理由は、日本人の場合、ベンゾジアゼピンに比べ、SSRIの方が服薬できない人がずっと多いからである(実感的に)。

ガイドラインではSSRIが推奨されているが、この辺りのことをきちんと把握し、あの処方制限を開始したのだろうか?と思う。

海外では、なぜかベンゾジアゼピンの処方量が徐々に増えている国々が多い。海外でベンゾジアゼピンの処方量が増えている理由はよくわからない。しかし、今なお、トータルの量では、日本の方が断然多い。今回の制限を実施した後、海外のレベルにちょっとだけ近づくと考えている。

今回はパニック障害の治療について、モーズレイのガイドラインを参考に推奨される薬物治療を挙げる。

第一選択薬
SSRI
(薬効が得られるまで時間を要する場合がある。導入直後はパニック症状を増悪させることがある)

その他の治療
(忍容性が低いか、保健適応外か、支持するエビデンスが弱い)
MAOI
リフレックス・レメロン
一部のTCA(トフラニール、アナフラニールなど)
デパケンR
ベンラファキシン(SNRI)

可能性のある治療
ガバペン
イノシトール
ピンドロール(増強療法として)

非薬物療法
CBT
リラクゼーション訓練などによる不安感の軽減
(薬物療法と心理療法の併用は、薬物療法単独と比較して常に優れているとは限らない)

モーズレイのガイドラインでは、パニック障害に対し救急外来の場面でさえ、「英国立医療技術評価機構(NICE)は、パニック障害治療でのベンゾジアゼピン使用を推奨していない」という記載がみられる。

今回、この記事を書いた意図の1つは、パニック障害に対する可能性のある治療の1つにガバペンが挙げられていること。

ガバペンは疼痛系疾患にも効果を持つ抗てんかん薬の1つで、リリカの近縁の薬でもある。ガバペンをてんかんや疼痛性障害に使う際、この薬が抗不安作用も併せ持っているのを良く感じる。

このようなことから、ベンゾジアゼピンを減薬する際に、ガバペンの処方も一考と思われる。

しかしながら、たまにソラナックスやワイパックスを使う程度の患者さんでは、抗てんかん薬を飲み続けるのはどうかと思う。(個人的に)

というのは、ガバペンに限らず抗てんかん薬は頓服で使う薬ではなく、毎日飲み続けてはじめて効果がみられる薬だからである。

モーズレイのパニック障害に対する可能性のある治療として、ガバペンが挙げてあったのは、なんとなくそのような感触があったため、ちょっと感動した。

なお、もはやテーマが増やせないため、今回、リリカとガバペンは1つのテーマにまとめた(元々、リリカはこのブログでは抗てんかん薬にカテゴリーしている)。他のガバペンの記事はたぶん疼痛性障害のテーマに入っていると思うので参照してほしい。

参考
ガバペンがリリカより切れない話
線維筋痛症とパニック②
トピナは精神療法をするのか?