光療法と睡眠相後退症候群 | kyupinの日記 気が向けば更新

光療法と睡眠相後退症候群

光は感情障害、睡眠に関係が深い。季節型経過をとる気分障害に 光療法などが行われることがある。この疾患は秋~冬にかけ光線が欠乏することで脳内のメラトニン、セロトニンが影響をうけ、抑うつ、不安状態、集中困難、意欲低下などの症状が出現する。 またこの時期、食欲増加、過眠傾向となる人もみられる。 光療法をこの疾患に実施すると眼に対する光刺激を通して松果 体に影響しメラトニン分泌が促されるらしい。これで身体のcircadian rhythm が整い精神症状を改善する。 睡眠相後退症候群になると、朝起きられないので学校や仕事に行けない。小学校~中学校なら不登校状態になる。高校でも不登校と言うんだろうが、義務教育ではないですからねぇ。明け方まで起きていて、朝から寝て「ふくろう」状態になるのはいいが、こんな風だと、深夜営業のコンビニのバイトとか漫画家とかなら生活できるけど、学生はやっていけないのである。


うちの病院に、この疾患で紹介された人が数人いる。何をするかと言うとうちの病院で「光療法」をするため。うちには光療法の装置があるのである。5~6年前、僕が病院に言って機械を購入するように頼んだのだが、医療機器にしては、それほど高価なものではなかったので買って貰えたのである。日本では治療法としては認可されていないので診療報酬はない。希望者には無料でしているが、特に「光療法やってます」とかは言ってないので、たぶん患者さんは知らないのではないかと思う。ところで、うちの病院のホームページはあるにはあるが、肝心なところが欠けているし、なんだか知りたいと思うことが全然書いていないので、僕があのホームページを見たなら多分行かないと思う。病院はきれいだけど。たまに患者さんの何でうちに来たか聞くと、インターネットというので驚く。それを放置している理由は、良いように見えると、患者さんが増えて死ぬかもしれないから。今でさえいつも満床という感じで忙しいのに。改善するメリットがない。


クリニックを開業している友人は光療法が可能なのを知っているので、睡眠相後退症候群っぽい症状の時には紹介してくる。光療法自体は無料。が、再診料だけはもらっている。電気代が赤字になるから。光療法の装置だけど、すべてのスペクトルが入るとか高照度だとか基準があるが、見かけは強めの蛍光灯を集めただけに見える。


うつ病に光療法は有効だというような書物もある。僕は、日本人に対する効果の程度を見るに、光療法は白夜があるような北欧の地域の季節型経過をとる気分障害にこそ有効だと思うのである。日本の場合、光が比較的強く、冬は晴れの日が多いので、光療法が気分障害に与える効果は少ないのではないかと思う。(北陸などの雪国は良いかもしれないけどね) うちの病院で光療法をした人に感想を聞いてみたが、光療法を受けた日は少しだけ気分が晴れるという人が数名いた。まあプラセボ効果もあるんだろう。アナフラニールを点滴する時、ついでにすることがあるが、こんな時はどの程度関与しているか不明。


うちに「睡眠相後退症候群」で紹介された数名だが、2名はトフラニールで決着した。睡眠相後退症候群以前にうつ状態があったから。トフラニールはあまり眠さが来ないし、睡眠リズムを変えるようなところもあるので、睡眠相後退症候群のうつ状態なら良さそうなのである。子供たちは不登校だったので、そういう治療をした。不登校でも内容によるのである。タイプによっては特殊な治療で一発で良くなるパターンがある。これはいつか別の機会に話したい。睡眠相後退症候群だが、治療の可能性としては、光療法、メラトニン、ビタミンB12療法、抗うつ剤などがあるが、他に1時間ずつ生活をずらしていく治療がある。どれがどのくらい効果があって、エビデンスもあるのかまでは知らない。


参考
メラトニン
トフラニール