誰が近代資本主義を作ったのか | 旅行、美術館、書評

誰が近代資本主義を作ったのか

労働基準法の規制緩和で
日雇い労働の派遣で儲ける企業がでてきて、
ネットカフェ難民なるものが発生してきた構造
にいまさら気がついたことを昨日書いた

それで、先日、ブックオフで見つけて
積んだままの本を思い出した。

金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ



金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ

マックス・ヴェーバーの犯罪
序 ユダヤ人だけが、なぜ金儲けが上手いのか      
によると、この本のきっかけは
『マックス・ウェーバーの犯罪』であるという。
―『倫理』論文における資料操作の
詐術と 「知的誠実性」の崩壊
右の本 はかなり強烈な論文なようで、
山本七平賞 を受賞していたりすることもあり、
かなり議論が沸騰している。 *1

詳細はさておき、 マックス・ヴェーバー
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
は素人目にも、なにか違和感があった。 *2

では、プロテスタントでないとすると
誰が近代資本主義をつくったのか

(MINERVA人文・社会科学叢書)
/羽入 辰郎


 ウィーン郊外で
イングランドのリチャード1世 を捕らえた
 ( ドイツでの捕囚 ) 身代金で貨幣を鋳造した
 12世紀末のユダヤ人。 
   (参照: ウィーンの環状道路と世紀末芸術.12

 ナポレオン戦争の援助金により、ロスチャイルド家が
 貴族の称号を与えられたのが1817年。

 この20年前までは富はあっても
 なお忌むべきシャイロックの後裔として
 ユダヤ人居住区に住んでいたとは。 *6
 

ヴェニスの商人
それはユダヤ人に他ならないと、
金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ 」は
マックス・ウェーバーと同時代の
ヴェルナー・ゾンバルト著

ユダヤ人と経済生活 」をあげる。


ユダヤ人を追放したスペイン、ポルトガルは没落し、
移住先のオランダが繁栄する...
その後、英国、そして米国へと ... 

近代資本主義の成り立ちについては、
こちらの説明の方が納得できる。

少し、すっきりしたような気がする。


しかし、これらに関わっているのは
「アシュケナージ」のユダヤ人のごく一部 *3
だけのことでもあるためか(?) ユダヤ人自身は
この説を拒否。 *4


ユダヤの花嫁
イサクとリベカ ( ユダヤの花嫁 ) *5
レンブラント 1666年

「ユダヤ人」レンブラントを追う
につづく



参考

*1
羽入が言っていることは、「犯罪」とか「詐欺師」とかの挑発用のレトリックを全部除いて
簡単に言えば、「『プロ倫』でウェーバーは、ルターが本当は Beruffと訳してない語を、
ルターの原文にあたらずに普及版聖書だけ見てBeruffと訳したとして論じている。

また、ウェーバーのフランクリン像にあわないフランクリンの叙述を、強引に原意と違えて解釈したり、
意図的に引用しなかったりしている」ということである。  

これは、文献学的事実の指摘としては、周到緻密な一つの業績なのだと思う。
もっとも、マルクスなんか扱っている身としては、この程度で「犯罪者」扱いかよという感じだ。
なにしろマルクスなど、論敵の論旨を強引にねじ曲げる不当なわら人形攻撃は毎度の手口。
どうでもいい表現に過剰な政治的意味をかぎとっていちいち噛み付くし、
明らかに他人からヒントをもらった議論でも名前をあげないし、
こんな人間にだけはなりたくないといつも思う。

人格的欠陥を笑い飛ばしながらその思想の側で研究対象にしているのは私だけではあるまい。
松尾匡のページ 羽入-折原論争を読んだ  より
http://www.mii.kurume-u.ac.jp/~tadasu/essay_409081.html


*2
禁欲的労働によって蓄えられた金は、禁欲であるから浪費されることもなく、再び営利追求のために使われることになる。

こうして(結果的に)プロテスタンティズムの信仰が資本主義の発展に作用したが、近代化とともに信仰が薄れてゆくと、営利追求自体が自己目的化するようになった。元々「内からの動機」であった営利追求が、「外圧的動機」に変貌していった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%86%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%BA%E3%83%A0%E3%81%AE%E5%80%AB%E7%90%86%E3%81%A8%E8%B3%87%E6%9C%AC%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E3%81%AE%E7%B2%BE%E7%A5%9E

*3
「スファラディ」(スファルディ)のユダヤ人で、
旧約聖書にアブラハム、イサク、ヤコブの子孫として歴史に登場する「モーセの民」
「アシュケナージ」のユダヤ人で、その多くは東ヨーロッパで多数のコミュニティをつくっていたのだが、
ロシアのポグロムやドイツのホロコーストで迫害され、西ヨーロッパあるいはアメリカに移住した。

千夜千冊 『ユダヤ人とは誰か』
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0946.html


*4 キリスト教と共産主義の創始者はユダヤ人だ、ということをユダヤ人はあまり気が進まぬにも
   一応認めるが、資本主義を創始したのはユダヤ人だといわれれば、それは断固として拒否する。
   ドイツの経済学者ヴェルナー・ゾムバルトが例の物議をかもしだした....
               マックス・I・ディモント『ユダヤ人 神と歴史のはざまで 』 朝日選書 P58
   金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ
 P114 より

*5
またあまり表現されない主題であり、レンブラント独特の謎めいた秘密的な印象から、
キリスト教圏外の国の儀式を描いたものであると考えられたことから『ユダヤの花嫁』と呼ばれた
http://www.salvastyle.com/menu_baroque/rembrandt_jewish.html

この絵は長い間、娘を嫁がせるユダヤ人の父親を描いたものだと解釈され、《 ユダヤの花嫁 》
というタイトルで知られていました。 しかし最近では、レンブラントの描き溜めていた素描
などの研究から、聖書にあるイサクとリベカ ( アイザックとレベッカ ) を描いたものだと
考えられるようになっています。
そう、あのアブラハムに神への供え物にされようとしたイサク ( 《 アブラハムの犠牲 》 参照 )
が成長し結婚したリベカとのひとときを描いた、歴史画という位置付けです。
http://stephan.mods.jp/kabegami/kako/Rebecca.html

*6
1816年、オーストリアの宰相メッテルニヒは、
ロスチャイルド家に貴族の称号を与える決断をした。
その理由は、オーストリアの対ナポレオン戦争の援助金を
ロスチャイルド商会が送り届けたから、というものだった。
反ユダヤ感情から、反対する声も強かった中での決断だった。

ユダヤ人全種族の社会的解放、勝利の鐘であったのだ。
僅々20年前までは、ドイツ名流に伍する富をもちながら、
なお忌むべきシャイロックの後裔として、
彼らにあのユダヤ人区の不潔な陋屋(ろうおく)生活を
強制していた社会差別そのものが、
まさにいま破れ去ったのだ。
中野好夫「血の決算報告書-ロスチャイルド王国の勃興」
(『世界史12の出来事』ちくま文庫所収)
金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ P34 より


以下
金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ
序 ユダヤ人だけが、なぜ金儲けが上手いのか より
 
ユダヤ教だけが金儲けを肯定している。だからユダヤ教(=ユダヤ思想)を信仰するユダヤ人たちが、世界中でお金持ちになっているのである。
そして世界中には彼ら以外に『隠れユダヤ人(クローゼット・ジュー closet Jew )と呼ばれるユダヤ人たちが大勢いる。
 
西暦1391年にヨーロッパ各地で政治弾圧を受けたユダヤ人たちが、大量にキリスト教に改宗した。
それらの人たちは「マラーノ maranos )」と呼ばれたが、現代に続くヨーロッパ近代知識人の大きな流れの基となっている。
 
1197年 第3回ラテラノ公会議では「利子を取る者は、キリスト教徒して埋葬しない」と決議している。
それがやがて崩れて、カトリック教会では、1517年 第5回ラテラノ公会議では「利子を取る貸し金を認める」と決定した。
このときをもって、人類の近代社会(モダン modem )の成立の日とすべきではないか、と私は考える
・・・
きっかけとなったのは『マックス・ウェーバーの犯罪』(2002年、ミネルヴァ書刊)という衝撃的な本を書いた羽入辰郎・青森県立保健大学教授の業績である。
このきわめて学術的な本で、羽入教授は、マックス・ウェーバー(Max Weber 1864-1920)という、20世紀最大の社会科学者(社会科学者、経済史学者、政治学者)を今も世界中で認められている大学者の学問犯罪を、証拠付きで詳しく証明した。
私たちは、この羽入辰郎著『マックス・ウェーバーの犯罪』に大いに啓発されて、それを土台として、導きの糸としながら「近代資本主義の精神(エトス)をつくったのはプロテステンティズムではなくて、本当はまさしくユダヤ大商人たちそのものだったのである」
という新しい大理論を本書で提起している。
・・・・
1816年、オーストリアの宰相メッテルニヒは、ロスチャイルド家に貴族の称号を与える決断をした。
その理由は、オーストリアの対ナポレオン戦争の援助金をロスチャイルド商会が送り届けたから、というものだった。反ユダヤ感情から、反対する声も強かった中での決断だった。
 
ユダヤ人全種族の社会的解放、勝利の鐘であったのだ。僅々20年前までは、ドイツ名流に伍する富をもちながら、なお忌むべきシャイロックの後裔として、彼らにあのユダヤ人区の不潔な陋屋(ろうおく)生活を強制していた社会差別そのものが、まさにいま破れ去ったのだ。
中野好夫「血の決算報告書-ロスチャイルド王国の勃興」(『世界史12の出来事』ちくま文庫所収)より