橘外男「双面の舞姫」(「私は呪われている」ミステリ珍本全集) | 行雲流水的くっぞこ

橘外男「双面の舞姫」(「私は呪われている」ミステリ珍本全集)

 こういう探偵小説の全集がでています。なかなか再版されなくて古書の市場ではプレミアが付いている探偵小説を集めた「ミステリ珍本全集」。その中の一冊なんですが、橘外男さん好きなんですよね~

 橘外男「私は呪われている」


 橘外男さんは明治27(1894)年石川県生まれ。昭和11(1936)年デビュー。昭和13(1938)年直木賞受賞。昭和34(1959)年逝去。


 この「私は呪われている」には、長編や短編が何作か収録されているんですが、一番気になったのが「双面の舞姫」という探偵小説。と言うのも、私が橘外男さんの探偵小説を初めて読んだのがこの「双面の舞姫」だったからなんです。


 「双面の舞姫」は昭和29年に雑誌「少女の友」に連載された少女向けの探偵小説。私が読んだのは昭和43年に「ジュニア探偵小説」という少年向けの探偵小説全集の一冊として出された単行本ですが、リアルタイムで読んだのではなくて、1980年代半ば・中学校の図書館で出会いました。

 解説のページにモノクロですが表紙の写真が載っていました。

 こんな感じでしたね~懐かしい!


 その「双面の舞姫」(と単行本に同時収録されていた「人を呼ぶ湖」)が単行本の挿絵(伊勢田邦彦・画)も含めて再録されているんですよ。

 かなり衝撃的な作品で、のちに元々は少女雑誌に連載していた小説だったという事を知った時は驚きましたけどね。


 昭和27年の1月、東京・警視庁の捜査課にある身上相談所を、終戦まで銀行の総裁だった大金持ちの松村氏が訪れる。昭和12年に長崎の雲仙で家族旅行中に行方不明になった娘が、去年の暮れに突然帰ってきたのだが、変な注射を打たれて体中が腐ってしまう病気になっていた。誰に誘拐されたのかを聴いても、信じられないような不思議な話をするので、どうしたらいいのか分からず思い余って相談しに来たのだと。はたして娘はどのように15年間くらいてきたのか。


 こういうお話で、読んだのはおよそ30年ぶり。「ミステリ珍本全集」に収録されているくらいなので、再刊されておらず読めなかった、というのが正しいんですけど(笑)

 覚えている(と思っていた 笑)大まかなストーリーは合っていたんですけど、細かな部分が全然違う話として記憶していて、読みながら、あれあれ?こんなストーリーだったっけ?と(笑) 他で読んだ小説と混同してしまっていたのか、自分のアタマの中で勝手に創作した話と混同してしまったのか。30年近く経ってしまうと、人の記憶なんて確かじゃなくなるんだな~と冷や汗をかきながら、懐かしく読みました。

 相変わらず面白い小説でした!


 同時収録されていた「人を呼ぶ湖」も幻想的な小説で大好きなんですが、1996年に出た「橘外男ワンダーランド」という全6巻の作品集の「怪談・心霊篇」に収録されて既に読んでいたんですよね~

 挿絵は懐かしく堪能しました!


 この作品は中学生の時に出会ったと書きましたが、橘外男さんのお名前と「双面の舞姫」という書名はそれ以前から知っていました。

 小学生の頃、うちの近所にある大型スーパーのイベントスペースに、年に何回か他の地域にある古本屋さんが出張してきてワゴンセールをやっていたんですね。そこで「ジュニア探偵小説」の一冊の横溝正史「大迷宮」を手に入れました。

 小学生の時から探偵小説は好きで、テレビドラマや映画の影響が大きいんですけど、日本の名探偵と言えば、江戸川乱歩さんの明智小五郎か、横溝正史さんの金田一耕助でした!(小学校のとき、明智が変装を解くマネを効果音を口で付けながらやってました 笑)

 ちなみに、↑の「大迷宮」の表紙(沢田弘・画)で、後ろで白い羽織り袴姿なのが金田一耕助。当たり前ですが、石坂浩二さんにも古谷一行さんにも似てないですよ(…もちろん彼らが主役の映画やテレビドラマはこの単行本が出た後のことですからね 笑)


 当時も角川文庫で横溝作品は手に入ったんでしょうけど、文庫本は小学生の私にはアタマの範疇になくて、「大迷宮」を手に入れたときは大喜びで、今も大切に手元にあるんですけどね。扉絵がこれですからね~

 挿絵(岩田浩昌・画)もタイトルの字体も良いんですよ~


 巻末には「ジュニア探偵小説」の一覧が載っていて、その中に橘外男「双面の舞姫」と書かれているんですよね。

 それ以外の「ジュニア探偵小説」の単行本は持っていなかったですし、当時本屋や小学校の図書館にも置いてなかったので、書名だけでどんな小説なのか想像するすべもなかったんですけどね~

 中学校の図書館にあった「ジュニア探偵小説」の単行本は、「双面の舞姫」と柴田錬三郎「スパイ13号」の2冊。当時はもちろん読みましたけど、「スパイ13号」のあらすじはもう覚えてないですね~


 よく考えると、この「大迷宮」の単行本は昭和43年刊行ですから、50年近く前の本なんですよね~なんだか気が遠くなっちゃいました(笑)