FUJITA'S BAR
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2016-05-06

豚コラム 「記憶力と表現力が優れている人たち」

テーマ:豚コラム
農業という仕事に就いて、2年11ヶ月になりますが、

この業界の人たちは、会話力がすごいなあとつくづく感じます。


言葉で簡単に表現できないことを、あれこれ試行錯誤し、

今現在において、一番適切な表現を探すように会話するんです。


いやあ、これは、脳を使いますな。



今日は、大物の獣医が来社。現場を視察されて、色々お話を窺いました。

先生はいつも、聡明で品格のある、魅力的な話し方をされるんですね。



例えば、今日のやり取りのひとコマ。


「換気が大切ですよ」という会話の中で、

先生『…天気をコントロールする術を体得できれば…』

桑畑『…はあ、諸葛孔明みたいな能力でしょうか。』

先生『…いやいや、X-MENにいたでしょう?』

桑畑『…はいはい、ストームですね。ハル・ベリーが演じてました。』

先生『…そうそう!でもあれは、雨降らせるだけですから(笑)』

桑畑『…そうですね、雨乞いくらいしか使い道がないかも(笑)』

先生『…まあ、換気した方が楽ですよ。』


う~ん、この会話の内容は、俺ら2人にしかわからんかったと思います。



何と言うか、彼の思考は、実に柔軟。

常に、あらゆる視点で、物事を考える。


こんな会話もありました。


桑畑『…隣りの建物が、風を遮って、この空間が蒸れやすくて…』

先生『…ほうほう、それならあの建物、ぶっ壊してなくしましょうか。』

桑畑『…いやいや、あれは、堆肥舎として重要な…』

先生『…あはは、冗談ですよ(笑) まあ、それは無理でしょうから。』



問題点があると、その真逆のことを言ってから、本題に入る。

そういう思考をすると、頭が整理されてくるんですよね。



いっぱいいっぱいな状態の人に、何でもいいから話をさせると、

話しているうちに、整理されてくるものなんです。


ビジネス用語の「5S」でも、整理は1番目にきますよね。

整理ができて初めて、整頓ができる。


心が整理されると、冷静に考える「余裕」が生まれます。



話し方がうまい人は、人に心を開かせるのもうまい。

物事の本質を見抜く人は、相手の気持ちを大切にするものなんです。


その方が、会話がスムーズにいくから。

問題を解決する最短コースは、理屈や理論を越えたところにあるから。


それがちゃんと理解できる人は、品格がある人なんです。


「信頼」って、目に見える実績とか、肩書きだけで得られるものじゃない。




入社して、しばらくは、皆さんの会話の意味が、さっぱりわかりませんでした。

今は、ほんの少しだけ、理解できます。

でも、まだまだ、わからないことがいっぱい。

だから、面白いのかもしれない。 (大変だけど)



まだ、半人前の半人前くらいのレベルですが、

それなりに、少しは成長しているのかも。


今日の肥育舎巡回では、上司よりも俺の方が、先生と話していました。

わからないことは聞くけど、答えられることは、俺が答えていました。


先生も、「現場の情報」を得ようと、真剣に聞いてくれます。

言葉が足りない部分は、先生がフォローして補ってくれているみたい。



現場視察が終わった後のミーティングも、熱を帯びて続きます。

嬉しかったのは、「豚の状態がいい」と言われたこと。

自分が一生懸命やっていることを認めてもらえると、救われる思いです。



何をやっても否定され続けた人生だったから、尚更…




記憶力は、データバンク。

表現力は、人に正確に伝えるための、高等テクニック。


あらゆる角度から考え、最善の方向を示すための、先人の教え。

今現在において、ベストな選択をするための、道標。


職人の仕事もそうだったけど、

農業を営む人たちの思考力は、ものすごいレベルなんだと思う。


蓄積された、膨大なデータがあって、

それを、臨機応変に引き出して、現在の状況を分析していく。


いやはや、高度な作業だと思います。


農業って、カッコいい。




今週も、脳がオーバーヒートするくらいまで、苦悩しました。

でも、それだけ、自分の能力の領域が、広がったようにも感じます。




あ~ マジでホントに疲れた~





7日間連続勤務して、1日休んで、4日勤務。

この土日は、久々の2連休となりました。



明日は、映画館に行きたいと思います。

何を見るかは、明日になってから考えます。



晩酌のウイスキーが、心に深く沁み込んでいく。


…俺、知らないうちに、いい仕事をしているのかもしれない。


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2015-12-31

豚コラム 「女神救出作戦」

テーマ:豚コラム
29日の夕方に、アクシデントが起きました。


(あ、この記事は、食事中の方はご遠慮下さい)



温度確認の見回りで、午後4時頃、第1肥育舎のシャッターをガラガラ開けたら、

いきなり、豚が3頭ばかり、顔を出しました。


…うわ、えらいこっちゃ!


豚が、柵をぶっ壊して外に出ちゃったんですね。

過去にも何度かそういうことはあったんですが、

出入り口にまで豚が出たことはありませんでした。


外に出ようとする豚を蹴っ飛ばしながら、何とか中に入る。

見ると、一番手前の豚たちがいた豚房の柵がなくなっている…

あった、あんなところに。

通路のあんな奥まで、お前ら、鼻で押していったんか~



豚舎というのは、ある場所にすのこが敷いてあって、

豚の糞尿が下に落ちるようになっています。

それを、手前まで自動的に引っ張ってくる装置がついてるんです。

朝と夕方に回収するので、入り口付近には、糞尿がたまる場所があります。



…何と、そこに豚が落ちている!



しかもこいつら、出荷用の肉豚ではなく、母豚になる「商品価値の高い」豚なんです。

これが1頭死ぬと、損失が大きいのです。

俺たちにとっては、女神のような、大切な豚…



いかん。今機械が動いたら、豚が挟まれてしまう。

慌てる心を押さえつけ、冷静モードに。

とりあえず、装置のブレーカをOFF。

こういう時は社長に連絡なんですが、あいにく不在…


まず、携帯で上司に連絡。

『…第1が大変なことになってます!』

『…わかった、すぐに行く!』




とにかく、上にいる豚たちを、1頭ずつ、豚房に戻す。

5頭くらい戻したところで、上司が到着。


豚を入れるのを上司に代わってもらって、俺は柵を持ってくる。

人力で柵を押さえて、連携しながら、1頭ずつ戻していく。

下に落ちている豚は後回しにして、柵を応急処置で固定させることに。

暴れる豚たちを抑えながら、針金でしばる。

すぐに破られるかもしれないけど、これでしばらく時間が稼げる。


さあ、今度は下に落ちた豚を救出にかかる。

はめ込んである鉄板やら木の板やらを、1枚ずつ外しにかかる。


豚の全体が見えたので、とりあえず俺は下に下りて、生きているかどうか確認。

…と思ったら、俺の真横に豚の顔。うわ、びっくりした!

何てこった、2頭落ちていたんだ。


下から上までは、1メートル以上の高さがあります。

120キロ以上ある女神様は、人の力では持ち上げられない…


頭を使え。

女神救出作戦開始だ!


まずは、木の板を斜めに並べて置き、登る道を作る。

そこを、豚を誘導して歩かせることに。


水平なところを歩かせるなら、力づくでも何とかなるんですが、

坂道は、なかなかキビシイものがあります。


しかも、相手は糞尿まみれ。

尻尾をつかもうとして、ヌルリ。

耳をつかもうとしても、ヌルリ。


『…仕方ない。かわいそうだけど、ワイヤーを使おう。』

豚が死んだ時に引きずるのに使うワイヤーを持って来て、耳にかける。

俺が上から引っ張り、上司が下から押し上げる。


せえの、…うりゃあああ~!


女神1号、何とか昇り切った。柵を一時的に開けて、中に押し込む。

さあ、今度は女神2号の救出だ。


う~ん、こいつ、動かないなあ。

うんこ風呂に浸かって、気持ちよさそうでやんの。

呑気なもんですねえ~



まずは、糞尿の浴槽から、上に上げねば。

さっきのフォーメーションで、俺は耳にワイヤー、尻側に上司。


ぶっひ~!

ぎゃあ、豚が暴れると、あたり一面に糞尿が飛び散る。

じたばた、バシャバシャしながら、何とか上に上げるのに成功。


『…このまま、板まで誘導して歩かせるぞ!』


さっきの2倍の距離を、ぎゃあぎゃあ言いながら移動します。


せえの、うおおおおりゃああああ!

せえの、うおおおおりゃああああ!

せええの、うおおおおおおりゃああああああ!

(戦士のことを英語でウォリアーといいます)



女神2号、小麦色のお肌になって、無事に帰還。仲間たちのもとへ。




やった…




どうやら、豚舎の構造上の問題があったらしく、

豚房の柵が壊れても、通路にも柵があるので外に出ることはないんですが、

手前の豚房だけ、柵が壊れると、アウトなんですね。


じゃあ、こんな応急処置では不充分だ。

何とかしてバリケードを作れないか、考えてみる…


そうだ、出荷用の柵を逆向きに取り付ければ、真横に持ってこれるじゃん。

もう片側を、何かで固定できれば…

お、このシャフトを抜いて、柵を壁に押し付けて、飛び出た金具にこれを挿せば…


ガッシャン。

『…おっ、いいですねえ。これで大丈夫だと思います。』

上司がOKを出したので、俺もほっこり。

俺って、意外と頭よかったりして(笑)


うつで療養している時に、知恵の輪やパズルやった思考回路がオンしたのかも。



…いやあ、やれやれです。



このタイミングで、社長と連絡が取れ、間もなく到着。

社長のプロ職人の腕で、あっという間に柵を強化。すげえ~


で、ゲートの方は、俺のアイディアを採用してもらい、これでいい、と。


やったあ、俺、今日、いい仕事したわ~





もともと、構造上の問題があったので、これを機会に、改善を検討することに。


俺ひとりだったら、どうなっていたことやら…

上司にたくさんお礼を言うと、

『…いやいや、2人いたからできたんですよ。』と労ってくれました。


これがもし、年末年始だったらと思うと、

休日とか、残業時間で、農場にひとりしかいなかったらと思うと、

夜中で、無人になった時に起きていたらと思うと、

昼間で、人が農場にいる時で、上司と俺がすぐに対応できたことを幸運に感じます。


そうだ、不運なんかじゃないんだ。


俺が失敗したわけじゃないし、

俺のせいで大惨事になったわけでもない。


俺はいつも、何か悪い事が起きると、自分のせいじゃないかと思う癖があった。


でも、そんなことばかりあるはずがないんですよね。

何もかも自分が悪いなんてことはないし、

何もかもあいつが悪いなんてこともない。



事故や災難やトラブルは、起きてしまうものなんです。

そこから何かを学んで、次に生かせばよろしい。



大変だったけど、

動悸がずっと続いて、薬飲んじゃったけど、

しばらく、放心状態になっちゃったけど…


何か、とても大切なことを学んだように思います。





「火事場の馬鹿力」って、前借りして使う力なのかもしれませんね。


右腕が、ガタガタになっちゃいました~



まるで、映画で人殺しした後、拳銃から手が離れない状態に似ているかも(笑)

いやいや、殺していません。生かしてますから。


あ、でも、最終的には殺して食っちゃうんですけどね(汗)



たぶん、自分でも信じられないくらいの力を出しちゃったんでしょうね。


女神さまたちは、おかげさまで元気にエサ食ってます。





このアクシデントがあったので、スターウォーズの記事が遅れました。

でも、それはそれでいいんじゃないかと。



今日は、仕事納めでした。

去年も大変だったけど、今年も大変でした。


でも、そういう仕事ですから。




そうそう、年末ギリギリで、新しい人が採用されました。

1月4日から出社するそうです。楽しみですね~



右腕はまだ痛いけど、動かせるようになってきたので大丈夫です。


俺のお休みは、1日、3日、5日。

明日は休みですが、2日が初仕事です(笑)


でも、豚を見ると安心できるから、メンタル的には問題ないです。



今夜は、ゆっくりゆっくり、飲んでいます。

今宵は、新しいブランデーを開けます。



もうすぐ、年が明けますね。



今年のブログは、これが最後の記事となります。

明日、新年のごあいさつ記事をアップします。



恒例のランキング記事は、年明けに発表します。

今は、慎重に検討中です~



では、読者の皆様、今年もお世話になりました。

来年もよろしくお願いします。




よいお年を。









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2015-11-07

豚コラム 「廃業していく人たち」

テーマ:豚コラム
先週、ウチの農場の仕事仲間の送別会が行われました。


「後継者がいない」というのが理由です。

豪快な社長さんで、いつも太陽のように輝いている、陽気な方でした。

俺も、たった2年半のお付き合いでしたが、色んなことを教わりました。


養豚は廃業するそうですが、米作りは続けるそうなので、

これからも、顔を合わせる機会はあると思います。

でも、やっぱり寂しいもんですね…


養豚という仕事は、製造業の中でも特殊な部門なので、マニュアル化が難しい。

数字で表せることもありますが、ほとんどが「人の感覚」でやることだから。

人材育成もなかなか大変らしく、入ってくる人は多いけど、辞めていく人も多い。


生き物相手なもんで、「休みがほとんどない」のも、理由の1つだと思います。

豚は、機械みたいに電源OFFできないもんね(笑)



日本のおいしい豚肉は、勤勉な人たちに支えられて、世の中に出ます。

種付け、出産、保育、離乳、肥育、出荷までが、ウチの会社の担当領域。

その後、屠殺、血抜き、解体、各部位ごとに分類、加工されてから市場に出ます。


ドキュメント映画で何度も見たけど、食品の中身って、目に見えない世界。

だから、ごまかそうと思えばいくらでもできるし、

使用禁止の薬物を使って早く太らせたり、休薬期間を守らずに出荷したり、

産地や日付を偽装したりなんて、やろうと思えば誰でもできちゃう。



俺が育てている豚は、一応「ブランド豚」なので、育て方を統一して、

出荷される豚が同じ品質になるように、システムが出来上がっています。

だから、変なことをすると、味がおかしくなっちゃうから、すぐにわかるんじゃないかな。


おいしい豚肉をできるだけ安く生産するのには、大変な労力が必要なのです。


豚を育てると、人間も自然と「育って」いくのを感じます。

農場の人たちは、工場の人たちと、「何か」が大きく違う。


俺はまだ半人前ですが、基本動作を身に付けた後の「応用」が深い。

理論や理屈じゃなくて、動物的な感覚なんだと思います。


豚とは会話できませんが、「対話」はしているつもりです。

様子がおかしかったり、何か雰囲気に異常を感じた時は、何かが起きているんです。



生産のプロが1人いなくなるというのは、養豚業にとって大きな損失です。

現場のプロたちが、命懸けの連携プレーをしているからこそ、

安くておいしくて「安全」な豚肉が、お店に並ぶのです。


去って行く人がいれば、新しく入ってくる人がいる。

ウチの24歳の新人君も、今、ゼエゼエ言いながらがんばっています。

俺は直接一緒には仕事しないんですが、できるだけ声をかけています。

貴重な労働力であり、金の卵だから。



TPPが導入されれば、豚肉の値段も、影響を受けるでしょう。

外国産の安い豚肉が、多く市場に出回るでしょう。

でも、俺らの仕事は、変わりません。

経費節減していくら安くしても、品質だけは絶対に落とせないですから。

それが、「ブランド豚」を育てる者たちの誇りであり、プライドです。



前の仕事よりも収入は少ないですが、深夜まで残業がないのがいい。

休日は月に6日しかない(祝日はなし)けど、早く帰れるので、健康的。

夜は早く眠くなるし、朝は、お腹が空いて目が覚める。


そして、真冬でも汗をダラダラかいて、息が切れるほど体を動かします。

体重は、ずっと変わらず、64キロをキープ。(身長は170)

こりゃあ、太っているヒマがありませんな。



何よりも、食べ物がおいしい。お酒がうまい。(抜けも早い)

昨日は、1万9千歩歩きました。


体を動かしていると、余計なことを考えなくなる。

苦悩は減らないし、いつも不安な状態は続いているけど、

豚の様子を観察していると、何かが心の中を煽いでくれるような気がする。



先週も、死にかけた豚が、奇跡の復活をしました。

ガリガリにやせた体で懸命に立ち上がり、いじめに立ち向かい、給水器に向かう。

その姿を見たら、俺はたまらなくなって、拳を握りました。


ちくしょう、カッコいいじゃねえか。




養豚業は、素晴らしい職業だと思います。

出会いがあれば、必ず別れがある。


苦労して育てた豚を、誇らしく出荷して、豚舎をきれいに洗浄して、

また、新しい子豚たちを迎える。


生まれてすぐに死んでしまう豚。

母豚のお腹の中ですでに死んでしまう豚。

うまく育たずに、出荷できず、淘汰されてしまう豚。

他の豚たちに噛み殺されて死んでいく豚。

大きくなったのに、急性肺炎にかかって、数時間で死んでしまう豚。

神経をやられ、動けなくなって衰弱死する豚。



運よく生き残った「エリート」が、皆様の食卓に並ぶのです。



プロが育てた豚は、絶対においしい。

俺も、プロの端くれとして、精進したいと思います。


明日は日曜だけど、早朝から出荷があるので、7時に出勤します。

お昼で上がって、午後からは、最後ののあのあシアターを仕切ります。


仕事があるのは、幸せなこと。

飲み仲間がいるのは、ありがたいこと。



Tさん、30年間おつかれさまでした。

俺は、定年まで働いてもあなたに追いつきませんが、

あなたの背中を見て学んだことを、しっかり覚えておきます。


これからは、少年野球の監督に専念できて、いいですね☆



いい豚を育てられるように、俺もがんばります。





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2015-08-22

豚コラム 「続々々・生きようとする命」

テーマ:豚コラム
あの豚さん、どうなったんですか、と聞かれたので、また書きます。


奴は、ちゃんと生きています。

体重も、少しずつですが、増えています。

早ければ、来週あたりに出荷できる可能性が出てきました。



この間長岡花火を見たこともあったので、

俺は奴を「フェニックス」と命名しました。


フェニックスは、みるみる回復して行きます。

もう、他の豚たちと、ほとんど区別がつかなくなってきました。


今では、あの頃のように俺に寄って来ることはなくなりましたが、

奴が元気に餌を食べている姿を見るのが、とても誇らしい。



先ほど巡回した時は、すやすやと寝ていました。

たぶん、月曜日にまた会えるでしょう。


フェニックスを応援して下さる方々に、感謝申し上げます。


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2015-08-05

豚コラム 「続々・生きようとする命」

テーマ:豚コラム
奴はまだ、生きています。


月曜日に出勤すると、豚房にポツンと、奴がいました。

よかった。処分されずに済んだんだな…


背中を叩いてみます。

よろよろしながらも、何とか立ち上がりました。


よし、いける。


ゆっくりと、さするように、奴を歩かせます。

この豚房は、洗浄して消毒しないといけないから。


2~3歩トコトコ、お尻ペタン。ふうふう言って、また立ち上がる。

声をかけながら、寄り添って、約10メートルほど移動します。


さあ、仲間たちのいるところに行こう。

彼らはきっと、お前をいじめたりしないから。


“長旅”を終えて、奴は、仲間のいる豚房へ「お引越し」しました。


あ~ やれやれ。



上司も社長も、不思議がっていました。

この暑さの中、3日くらい飲まず食わずで、よく回復したなあ、って。

仲間の小便でも飲んだんじゃないか、なんて笑ってましたが、

俺が内緒で水をあげたことは、言いませんでした。



さて、月曜日から、治療再開。

症状にあわせて薬を変えて、月火水と、投与しました。

少しずつ、少しずつ、奴は、よくなっていきます。



今日の夕方に巡回した時は、

餌箱の前にしっかり立って、もぐもぐ食っていました。

少し食っては休み、また少し食っては休み…


その姿に、俺は、生命力を感じました。


上司と話したら、もしかしたら出荷できるかも、ということでした。



先週、奴をあのまま放っておいたら、もうすでに死んでいたかもしれません。

もし、めでたく出荷できれば、俺のしたことは、意味があることになります。

もし、運悪く体調が悪化すれば、俺は、余計なことをしたことになります。


さて、吉と出るか、凶と出るか。





奴は、俺が注射器を持って近づいても、全く警戒しません。

逃げないので、ちょっと撫でてやると、目を閉じます。


周りの豚も、邪魔してこないので、しばらくコミュニケーションが取れます。



寿命が、ほんのちょっと延びただけなんですけどね。



それでも、何となく、嬉しくなったりするんです。




猛暑の中で、少しばかり、ほっこりするひととき☆
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2015-07-31

豚コラム 「続・生きようとする命」

テーマ:豚コラム
陰ながら応援して下さる数名の皆様のおかげで、

桑畑は今週も、何とか生き残ることができました。


麦とホップの青缶で、ほうれん草のおひたしでやってます☆




さて、今日は、出荷していなくなった豚房の清掃を始めました。

出荷残りの豚たちを、詰めて移動させます。

いわゆる、お部屋の引越しですね。


しかし、奴は、自分で歩くことができないため、

その豚房で、1頭だけ、取り残されました。


そのまま回復しなければ、殺処分されます。


治療は、今朝も行いましたが、あまり効果がないみたい。

でも、水をあげると、喉を鳴らしてごっくんごっくん飲むんですよね。



午後から、粉砕機で作業を始めました。

豚舎内の温度は、34℃。

滝のように汗が、したたり落ちます。



奴のいる豚房だけを避けて、作業を続けます。

隣りの豚房で、ドガガガ~って音がすると、奴も、動揺します。



しかし、次の瞬間、奴の動きを、俺は見逃しませんでした。


…奴が、上体を起こした!



道路工事みたいな、すごい音がするので、

さすがの奴も、殺されると思ったのかもしれません。

命の危険を感じると、生き物は、何らかの反応を示します。



でも、しばらくすると、またべったりと寝てしまいました。

う~ん… 自分には関係ないやと思ったのかなあ。




そんなこんなで、夕方の巡回の時間となり、

若い豚から順番に、肥育舎を周って行きます。


で、奴のいる豚房にさしかかった時、俺は思わず、小躍りしました。




奴の居場所が、変わっていたんです。


これは、奴が自力で這い回っていたことの証明です。


自分で動き回れれば、給水器から水を飲むことができる。

餌箱から、餌を食べることもできる。


こうなると、もう容器で水をあげる必要はありません。

奴が自分で、欲しいものを求めて動けばいいのです。


豚房には、奴1頭のみ。

邪魔する豚も、いじめる豚もいません。


後は、奴の生命力に委ねましょう。


奴は、俺をじーっと見ていました。



もう、水はやんないよ。

飲みたかったら、自分で動いてゲットしろ。



俺は、明日と明後日が休みです。

俺が休んでいる間は、上司と社長が交代で肥育舎を巡回します。


奴は、処分されてしまうかもしれない。

もしかして、生き残るかもしれない。


それはもう、俺の力では、どうにもならない世界。


俺は今週、精一杯がんばりました。

だから、明日から、堂々と休みます。



週明けに出勤して、奴がどうなっているか。

また、その時に、お知らせしたいと思います。



豚たちよ、自分の生を、しっかり生きろ。

お前たちの命は、すごく価値のある贈り物なんだから。



…俺が、しっかりと見届けるから。
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2015-07-30

豚コラム 「生きようとする命」

テーマ:豚コラム
今日も、猛暑の中、130頭の豚を出荷しました。


滝のように汗をかき、120キロの豚と相撲を取りながら、

体力の限界に挑戦して、何とか生きて帰って来れました。




生き物を扱う仕事は、色んなことを学べます。







3ヵ月ほど前に、ある豚が、具合悪くなりました。


その豚は、立ち上がる力を失い、這いずり回ることもできず、

ただ、横になって、死を待つだけのように見えました。


治療も効果がなく、どの薬を注射しても、改善しません。

上司は、言いました。

『…もう、そっとしておいて下さい。』


豚は、自分で動けないと、餌も食べられないし、水も飲めません。

このままでは、ただひからびて、死んでいくだけ。



俺は、この豚を何とかできないかと思い、

容器に水を汲んで、豚の口元に垂らしました。


すると、ぐったりしていた豚が、狂ったように首を動かすんですね。


…奴は、生きようとしている。


上司に報告すると、余計なことするなと言われそうだから、

黙って、3日ほど、1日に3回くらい、水を飲ませました。




すると、4日目の朝、豚の寝ている位置が変わっていたのです。


これは、奴が自力で這い回った証拠。



俺が巡回していると、奴は、俺を横目でチラッと見ます。

水くれ~ と言っているみたい。


俺が水を持って近づくと、首を起こして迎えてくれます。

首が起こせると、水を効率よく飲むことができます。


ゴクンゴクンと、いい音を立てて、豚が水を飲みます。



他の豚が俺に体当たりしてきますが、ミドルキックで蹴散らしてやります。


今、こいつが生きようとしてるんだ。邪魔すんじゃねえ!




奴は、みるみる回復して、一週間後には、立ち上がりました。

上司とは、不思議なこともあるもんだねえ、なんて話してたんですが、

俺は密かに、奴とアイコンタクトしてました(笑)



生き物は、時として、予想外の力を発揮する時がある。


その時の俺は、少しばかり、有頂天になっていました。





しかし…



その豚は結局、あと少しで出荷という段階で、肺炎にかかってしまい、

治療しても治らず、最終的に、殺処分となりました…




奴を殺す時は、切なかったです。






出荷すれば、その日か翌日には、屠殺されてしまいます。

遅かれ早かれ、豚は、長く生きることを許されません。


でも、俺の立場としては、いい状態で出荷して、おいしい豚肉になって、

世の中の人たちを、幸せにして欲しい。


そういう思いで、いつも送り出しているんです。





奴を生かしたのは、決して、無駄じゃない。

奴を殺したのも、決して、無駄じゃない。


奴が、俺に教えてくれたこと。


命ある限り、生きよ。


何でかは、わかりません。



でも、豚を見ていると、そう感じるのです。






実は、昨日、もう少しで出荷という豚が、具合悪くなりました。


昨日今日と、治療をしています。

明日まで治療して、効果がなければ、殺処分になる可能性が高いです。



今朝見に行った時、奴は昨日よりも、げっそりしていました。

やはり、餌も食べられず、水も飲めない。

このままでは、衰弱死してしまうでしょう。


俺は、またしても、容器に水を汲んで、奴の口元に垂らしました。



うんともすんとも言わなかった奴が、狂ったように首を動かします。

目は、見えていないみたい。

水の感覚を全身で受け止めようとしているかのように、感じます。


首がうまく動かせないので、ジタバタしながら、喉を鳴らすだけ。

でも、少しは、飲めているみたい。

今日も3回、飲ませてやりました。

夕方に行った時は、2杯あげました。



奴が、明日、どうなっているのか。

死んでいるかもしれない。

回復しているかもしれない。

あんまり、変わらないかもしれない。



俺は、余計なことをしているのかもしれません。

経済動物なんだから、出荷の可能性が低いものは、

どんどん淘汰するべきなのかもしれない。



それでも、俺は、奴に水をやります。



…奴が、生きている限り。











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2015-07-22

豚コラム 「灼熱地獄」

テーマ:豚コラム
毎日、暑い日が続いております。


今日の肥育舎の温度は、37.5℃まで上昇しました。

仕事中に、何度も頭がふらふらしてしまいます。


水分補給をしても、全部汗で出て行くみたいで、

滝のように、全身から汗が吹き出てきます。


単独行動は、90分が限度かな…


6月から、新人くん(24歳男性)が入社したんですが、

昨日、熱中症でダウンしました(笑)


まあ、こんな暑さじゃあ、無理もないわな。

でも、この仕事をやりたいと応募してきた根性は買いましょう。

今、Cさんのもとで、修行中。

彼の呼称は、「D君」にします。

将来、この業界を背負って立つ若者に成長してくれるといいですね。




この仕事は、何といっても、体力勝負です。

体が動かなければ、何にもできない。

足腰の痛みは、一年中。

生傷や青アザも、絶えません。


獣と格闘しながら、時には触れ合いながら、じっくりと育てていくのです。



暑い日が続くと、豚が餌をあまり食べなくなります。

当然ながら、増体が悪くなっちゃう。

予定の日よりも、出荷日が遅れてしまうから、その分だけ経費がかかっちゃう。

次の豚を入れる場所が乏しくなるから、生産ラインが滞っちゃう。

豚の世話をする時間が長くなるから、洗浄や消毒をする時間を奪われちゃう。

具合が悪くなれば、治療も増えて、薬代もたくさんかかっちゃう。


工場で機械部品を生産するのとは、また違う問題があるんですよね。



で、こんなに暑いと、人間の脳も、まともに機能しなくなる。

ぼーっとしていると、危険が多くなる。

過酷な状況においても、状況を冷静に判断して、的確に処理せねばならない。


まさに、「灼熱地獄の戦場」なんですね。




俺は、この仕事に就いてまだ2年だけど、まだまだ慣れません。

毎日、新しい発見をして、目下勉強中の身です。


プレッシャーは多いけど、体中が痛いけど、

毎日、暑さで死にそうになるけど、

今日も、奇跡的に無事帰って参りました。



冷えたビールを喉に流し込むと、生きている実感がします。


あ~ 体中の力が抜ける~

48歳のおっさんは、悪戦苦闘しながら、毎日がんばっております☆

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2015-06-25

豚コラム 「危険がいっぱい」

テーマ:豚コラム
今日は、危機一髪でした。


豚舎の洗浄作業をしていた時、ホースが巻き込まれたのです。


豚舎は、下がすのこになっている部分があり、そこに糞が落ちて、

数メートル下に、スクリッパーと呼ばれる糞移動装置が稼動しています。

たまった糞を運ぶために、数時間に1回、一往復するんですが、

すのこの中に、よくホースが落ちるんですよね。


いつもは、気がついたらすぐに抜き取っていたんですが、

今日はたまたま、駆動部に引っ掛かってしまったのです。


…しまった!



いったん食いつくと、もう人力では取れません。

ズルズルとホースは巻き込まれ、本体ごと引き摺られて行きます。


とにかく、洗浄機の動きを止めようと、本体のスイッチに手を伸ばそうとしたら、

もうすでに本体は半分宙吊りになっている。

コンセントを抜こうにも、斜めに力が加わってしまって、土台が壊れそう。


あ~もう、こうなったらしょうがない。

怒られるのを覚悟で、操作盤を開けて、主電源を落とす。

豚舎全体の電源が落ちて、とりあえずSTOP。


社長に電話して、駆けつけてもらいました。

スクリッパーを逆転させ、ゆっくりとホースを抜く。

擦れて表面がボロボロになったけど、やぶけてはいない。

さすがは高圧洗浄機のホースだ、丈夫だねえ。


曲がったコンセントの先をペンチで戻して、再起動したら、ちゃんと動きました。

よかった~ 壊れてない。

本体も傷だらけになったけど、動作は問題ないみたい。

この洗浄機、まだ新しいので、壊したらどうしようかと思いました。


俺って、色んな会社で、色んな機械をぶっ壊しているんですよね(汗)

でも、どういうわけか、人間は無事なんです。

頭を挟まれそうになったり、腕を巻き込まれそうになったり…


今日のアクシデントも、もし俺の体にホースが巻きついていたら、

動けなくなって、ジワジワと体を締め付けられたかもしれない。


う~ん、ジワジワとゆっくり死んでいくのは嫌だなあ。

「死刑台のエレベーター」とか、エドガー・アラン・ポーの振り子とか…

どうせなら、スパッと即死がいいよね☆

重機につぶされて即死とか、首をはねられて即死とか、

機関銃で蜂の巣にされるとか、バズーカで吹っ飛ばされるとか…

あ、そっちの方がずっといいや(笑)


とりあえず、今日の俺は無傷です。

全く、悪運の強い男だぜ。


この仕事は、危険がいっぱいです。

豚に吹っ飛ばされてコンクリートの壁に頭をぶつけたり、

体当たりされて、柵に挟まれたり、

噛みつかれて流血したり、足を踏まれたり、腿を噛まれたり。


ひとりで黙々とする作業も多いので、携帯電話は必需品なんですね。



今日はとにかく、疲れました。

朝7時から、110頭出荷し、肺炎の豚を30頭くらい注射し、

猛暑の中、汗だくになって洗浄作業をし、ホースが食い込まれ…

夕方は急激に温度が低下したので、カーテンの開け閉めで駆け回り、

今日の歩数は、2万歩を軽く越えました。



あ~ ビールがうめえ。ちくしょう。
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2015-06-10

豚コラム 「豚はそんなにきれい好きじゃない」

テーマ:豚コラム
飲み屋の女性から、よく言われます。

『…豚って、きれい好きって言うよね!』


そういう情報を、どこから仕入れているのかわかりませんが、

どうやら、彼女たちの間では、それが常識らしい。



俺が知る限りでは、そんなことないと思います。


肥育舎の中では、柵で囲まれたスペースで、18~25頭くらいいるんですが、

豚の数だけ、個性豊かな特徴があるものです。


大半の豚は、寝る場所と排泄する場所を、区別しているようです。

これがきっと、「きれい好き」と言われる由縁なのかも。


しかし、中には、みんなが寝てる場所に、平気で糞をたれる輩がおります。

ひどいのになると、エサ箱の中に、糞尿をたれます。


布団の上で、堂々とウンコする奴が、きれい好きなのか?

食卓の上で、堂々とウンコする奴は、はたしてきれい好きと言えるのか?


顔や体にいっぱい糞をつけて走り回っている、元気な豚たち。

糞のついた鼻を近づけて、作業服を汚す、悪戯な豚たち。


それが、俺の職場の、日常風景。



あと、それから、「豚はデブ」じゃありません。

豚の体脂肪は、大体14%くらい。

俺が育てている豚は、15%くらいだそうです。


つまり、「デブ」ではなく、「マッチョ」なんですね☆



豚って、人を罵る時によく引き合いに出されますが、

そりゃあ、豚に失礼というものでしょう。



実際に世話をしていると、色んなことがわかります。


何となくしかわからないことって、多いもんですね。







※イオンシネマの映画館で上映される「みんなのぶた」というショートフィルムに、

 今言ったような内容が歌われています。機会があればご覧下さい。
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