「無頼侍」 が面白い | 映画熱

「無頼侍」 が面白い

カッコ悪さがイカしてます。人間の本性に迫る、ギャグとシリアス紙一重の怪作。


作者は、鈴木マサカズ。月刊コミックビームにて連載中のマンガ。ちなみに、“ぶらざむらい”と読みます。


書店で並んでいるのを見て、変な絵柄だなあ、「バガボンド」 もどきかなあと思ったんですが、何やら面白そうなオーラを感じて、1巻目だけとりあえず買ってみました。


医者の待ち時間が長いので、読みかけの小説の合間にチラッと読んでみたら…、面白いじゃん!何の予備知識もないまま読み出したんですが、もう止まらない。診察終了後には、2巻目を買いに本屋に走りました。


ストーリーは、いたってマヌケです。見た目も腕もパッとしない貧乏侍が、何とか目にもの見せてやろうとがんばる話。賞金のかかったスゴ腕の侍を相手に、どう戦うのか。


しかしこの男、泣きたいくらいに情けない。でも、そこがいい。今に何かやるかもしれないが、やらないかもしれない。意気込みだけは立派。行動力もある。しかし、弱い。でも、あきらめない。バカなんだけど、気になる男。


侍って、実際は、みんなカッコいい人ばかりじゃないと思う。でも、この男を見ていると、自分だったらどうだろう、と同じ目線でモノが考えられるような気がするんです。そこに、臨場感というものが生まれる。


「羅生門」 の三船敏郎のように、「ひとごろし」 の松田優作のように、言うこととやることが矛盾しているタイプの侍はいろいろいますが、ここまでバカだと、ある意味すごい。これは、新しいキャラクターだなと思いました。


ダメだって言われても、何とかなると思っている。バカだと言われようと、真剣にがんばる。そして救いようのないうぬぼれ屋。いいですねえ、こういう男、イカすじゃないですか。彼を見ていると、“俺だって何かできるかも” って思えてしまう。


男ってバカだけど、そこがいい。自分はダメかもしれないって思うけど、みんなそこから立ち上がって、本物の男になる。弱さを克服した強さこそが、本当の自分の強さ。本気で生きようとする男は、やっぱり美しい。


この主人公、ひたすらマヌケですが、そのうち何かキラッとしたものを見せるかも。楽しみです。