FUJITA'S BAR
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2015-12-31

豚コラム 「女神救出作戦」

テーマ:豚コラム
29日の夕方に、アクシデントが起きました。


(あ、この記事は、食事中の方はご遠慮下さい)



温度確認の見回りで、午後4時頃、第1肥育舎のシャッターをガラガラ開けたら、

いきなり、豚が3頭ばかり、顔を出しました。


…うわ、えらいこっちゃ!


豚が、柵をぶっ壊して外に出ちゃったんですね。

過去にも何度かそういうことはあったんですが、

出入り口にまで豚が出たことはありませんでした。


外に出ようとする豚を蹴っ飛ばしながら、何とか中に入る。

見ると、一番手前の豚たちがいた豚房の柵がなくなっている…

あった、あんなところに。

通路のあんな奥まで、お前ら、鼻で押していったんか~



豚舎というのは、ある場所にすのこが敷いてあって、

豚の糞尿が下に落ちるようになっています。

それを、手前まで自動的に引っ張ってくる装置がついてるんです。

朝と夕方に回収するので、入り口付近には、糞尿がたまる場所があります。



…何と、そこに豚が落ちている!



しかもこいつら、出荷用の肉豚ではなく、母豚になる「商品価値の高い」豚なんです。

これが1頭死ぬと、損失が大きいのです。

俺たちにとっては、女神のような、大切な豚…



いかん。今機械が動いたら、豚が挟まれてしまう。

慌てる心を押さえつけ、冷静モードに。

とりあえず、装置のブレーカをOFF。

こういう時は社長に連絡なんですが、あいにく不在…


まず、携帯で上司に連絡。

『…第1が大変なことになってます!』

『…わかった、すぐに行く!』




とにかく、上にいる豚たちを、1頭ずつ、豚房に戻す。

5頭くらい戻したところで、上司が到着。


豚を入れるのを上司に代わってもらって、俺は柵を持ってくる。

人力で柵を押さえて、連携しながら、1頭ずつ戻していく。

下に落ちている豚は後回しにして、柵を応急処置で固定させることに。

暴れる豚たちを抑えながら、針金でしばる。

すぐに破られるかもしれないけど、これでしばらく時間が稼げる。


さあ、今度は下に落ちた豚を救出にかかる。

はめ込んである鉄板やら木の板やらを、1枚ずつ外しにかかる。


豚の全体が見えたので、とりあえず俺は下に下りて、生きているかどうか確認。

…と思ったら、俺の真横に豚の顔。うわ、びっくりした!

何てこった、2頭落ちていたんだ。


下から上までは、1メートル以上の高さがあります。

120キロ以上ある女神様は、人の力では持ち上げられない…


頭を使え。

女神救出作戦開始だ!


まずは、木の板を斜めに並べて置き、登る道を作る。

そこを、豚を誘導して歩かせることに。


水平なところを歩かせるなら、力づくでも何とかなるんですが、

坂道は、なかなかキビシイものがあります。


しかも、相手は糞尿まみれ。

尻尾をつかもうとして、ヌルリ。

耳をつかもうとしても、ヌルリ。


『…仕方ない。かわいそうだけど、ワイヤーを使おう。』

豚が死んだ時に引きずるのに使うワイヤーを持って来て、耳にかける。

俺が上から引っ張り、上司が下から押し上げる。


せえの、…うりゃあああ~!


女神1号、何とか昇り切った。柵を一時的に開けて、中に押し込む。

さあ、今度は女神2号の救出だ。


う~ん、こいつ、動かないなあ。

うんこ風呂に浸かって、気持ちよさそうでやんの。

呑気なもんですねえ~



まずは、糞尿の浴槽から、上に上げねば。

さっきのフォーメーションで、俺は耳にワイヤー、尻側に上司。


ぶっひ~!

ぎゃあ、豚が暴れると、あたり一面に糞尿が飛び散る。

じたばた、バシャバシャしながら、何とか上に上げるのに成功。


『…このまま、板まで誘導して歩かせるぞ!』


さっきの2倍の距離を、ぎゃあぎゃあ言いながら移動します。


せえの、うおおおおりゃああああ!

せえの、うおおおおりゃああああ!

せええの、うおおおおおおりゃああああああ!

(戦士のことを英語でウォリアーといいます)



女神2号、小麦色のお肌になって、無事に帰還。仲間たちのもとへ。




やった…




どうやら、豚舎の構造上の問題があったらしく、

豚房の柵が壊れても、通路にも柵があるので外に出ることはないんですが、

手前の豚房だけ、柵が壊れると、アウトなんですね。


じゃあ、こんな応急処置では不充分だ。

何とかしてバリケードを作れないか、考えてみる…


そうだ、出荷用の柵を逆向きに取り付ければ、真横に持ってこれるじゃん。

もう片側を、何かで固定できれば…

お、このシャフトを抜いて、柵を壁に押し付けて、飛び出た金具にこれを挿せば…


ガッシャン。

『…おっ、いいですねえ。これで大丈夫だと思います。』

上司がOKを出したので、俺もほっこり。

俺って、意外と頭よかったりして(笑)


うつで療養している時に、知恵の輪やパズルやった思考回路がオンしたのかも。



…いやあ、やれやれです。



このタイミングで、社長と連絡が取れ、間もなく到着。

社長のプロ職人の腕で、あっという間に柵を強化。すげえ~


で、ゲートの方は、俺のアイディアを採用してもらい、これでいい、と。


やったあ、俺、今日、いい仕事したわ~





もともと、構造上の問題があったので、これを機会に、改善を検討することに。


俺ひとりだったら、どうなっていたことやら…

上司にたくさんお礼を言うと、

『…いやいや、2人いたからできたんですよ。』と労ってくれました。


これがもし、年末年始だったらと思うと、

休日とか、残業時間で、農場にひとりしかいなかったらと思うと、

夜中で、無人になった時に起きていたらと思うと、

昼間で、人が農場にいる時で、上司と俺がすぐに対応できたことを幸運に感じます。


そうだ、不運なんかじゃないんだ。


俺が失敗したわけじゃないし、

俺のせいで大惨事になったわけでもない。


俺はいつも、何か悪い事が起きると、自分のせいじゃないかと思う癖があった。


でも、そんなことばかりあるはずがないんですよね。

何もかも自分が悪いなんてことはないし、

何もかもあいつが悪いなんてこともない。



事故や災難やトラブルは、起きてしまうものなんです。

そこから何かを学んで、次に生かせばよろしい。



大変だったけど、

動悸がずっと続いて、薬飲んじゃったけど、

しばらく、放心状態になっちゃったけど…


何か、とても大切なことを学んだように思います。





「火事場の馬鹿力」って、前借りして使う力なのかもしれませんね。


右腕が、ガタガタになっちゃいました~



まるで、映画で人殺しした後、拳銃から手が離れない状態に似ているかも(笑)

いやいや、殺していません。生かしてますから。


あ、でも、最終的には殺して食っちゃうんですけどね(汗)



たぶん、自分でも信じられないくらいの力を出しちゃったんでしょうね。


女神さまたちは、おかげさまで元気にエサ食ってます。





このアクシデントがあったので、スターウォーズの記事が遅れました。

でも、それはそれでいいんじゃないかと。



今日は、仕事納めでした。

去年も大変だったけど、今年も大変でした。


でも、そういう仕事ですから。




そうそう、年末ギリギリで、新しい人が採用されました。

1月4日から出社するそうです。楽しみですね~



右腕はまだ痛いけど、動かせるようになってきたので大丈夫です。


俺のお休みは、1日、3日、5日。

明日は休みですが、2日が初仕事です(笑)


でも、豚を見ると安心できるから、メンタル的には問題ないです。



今夜は、ゆっくりゆっくり、飲んでいます。

今宵は、新しいブランデーを開けます。



もうすぐ、年が明けますね。



今年のブログは、これが最後の記事となります。

明日、新年のごあいさつ記事をアップします。



恒例のランキング記事は、年明けに発表します。

今は、慎重に検討中です~



では、読者の皆様、今年もお世話になりました。

来年もよろしくお願いします。




よいお年を。









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2015-12-30

映画 「スター・ウォーズ フォースの覚醒」(4DX字幕)

テーマ:アニメ・特撮
迷った時は、フォースの声に従うべし。


今年最後の映画は、スター・ウォーズにしました。

しかも、話題の4DXで!

しっかりと、字幕版で!


思えば、最初のエピソード4が公開された時、俺はまだ小学生でした。

500席あった新潟市内の東宝スカラ座での興奮を、いまだに覚えています。


ビヨーンと光る、ライトセイバーがカッコよくて、

スピーディーな特撮が、円谷ともサンダーバードとも違う新鮮さ。

子供心に、何かすごいもの見ちゃった感があったんですね。


それから、3年ごとに続編が封切られ、エピソード6の時は高校生でした。

そして、娘が生まれた年にエピソード1が公開され、

俺がブログを始めた年に、エピソード3だったんですね。


いやあ、歴史を感じますなあ~



そしていよいよ、全9部作の最終章がスタートです。

(3部作でワンセットだと思えばよろしい)




しかしまあ、J.J.エイブラムスって、やっぱり天才ですね☆

旧世代に敬意を表しつつも、新世代に上手にスイッチしていきます。

「スタートレック」「スーパー8」も素晴らしかったけど、

本作は、SF映画の金字塔ともいえる、超大作。

彼の研ぎ澄まされた才能と、抜群の映像センスが光る、堂々たる作品になりました。



内容は、ネタバレを極力避けるために、最小限の情報にしますね。




主人公は、砂漠のど真ん中でジャンク品を集めて収入を得ているおねえちゃん、レイ。

最初は何だか、ナウシカっぽいなあなんて思いました。

演じるのは、デイジー・リドリー。

清楚で気が強そうな顔立ちは、何だかスター・ウォーズっぽい(笑)

レイア姫の若かりし頃を思い出しますなあ~

歯をむき出して戦う姿が、何ともセクシーです☆



それから、にいちゃんが2人出てきます。

ひとりは、白人のポー・ダメロン。(何て弱そうな名前!)

演じるのは、オスカー・アイザック。

彼がヘルメットを被ると、何だかマーク・ハミルっぽい(笑)

いいですなあ~ スター・ウォーズしてますなあ~


で、もうひとりが、黒人のフィン。

演じるのは、ジョン・ボイエガ。

いやあ、泣きたいくらいヘタレですなあ~

彼の動向を中心に物語が展開していくので、どうかご注目。


強いおねえちゃんと、ヘタレにいちゃん。

よくある組み合わせですが、実は…おっとっと。


内容は、言わない約束でしたね。



そして、もうひとり(というか、1体)ご紹介しておきましょう。

BB-8というドロイド(ロボットの呼称)が登場します。

雪だるまみたいなデザインですが、こいつ、どんな構造になっているんだろう?

R2-D2よりも身長が低いので、何だか、かわいらしいです。

こいつきっと、人気が出ますね☆


以上のキャラを頭において、映画をお楽しみ下さい。


オールドファンにはなつかしい、あの人もあの人も、まさかのあの人も…出ます!



俺が一番驚いたのは、マックス・フォン・シドー!

このジイさん、まだ生きているんだ~

調べたら、現在86歳だそうな。

スター・ウォーズは、ホラー俳優を起用することでも有名ですが、

まさかのエクソシスト!

そして、フラッシュ・ゴードン!(ジョージ・ルーカスの恨み節かな~なんて)

ついでに言えば、砂の惑星!

さあ、彼がどんな役柄で登場するかは、見てのお楽しみ☆



まだまだ言いたいことはあるけど、このくらいにしましょう。



で、問題の4DXですが、

3Dメガネをかけて、座席が動くシステムです。

風が吹いたり、水がかかったり、フラッシュがピカッとなったり、

匂いが漂ったり、背もたれも電動マッサージ椅子みたいに動きます。


うは~ こりゃ楽しい~


若い頃に、ディズニーランドで体感した「スター・ツアーズ」とか、

富士急ハイランドの「ガンダム・トゥ・ザ・ライド」に比べれば、

基本的にユルい動きなので、体力とかは使いません。

ベルトもしなくていいので、思ったより安全でした。



注意事項としては、

身長100センチ未満の方は、ご利用できないそうです。

身長120センチ以下のお子様は、保護者がいれば大丈夫だそうです。


妊娠中の方、ご年配の方、車椅子の方、心臓や首に障害のある方もアウト。

身体的、精神的に敏感な方、車酔いしやすい方もアカンそうです。


う~ん、俺ってアウトなのかなあとも思ったんですが、全然問題なかったです。


あと、飲み物を持った時に座席が動くと、バシャッとこぼれる恐れがありますので、

飲食物と手荷物には、充分ご注意下さい。

劇場内に専用ロッカーが設置されていますので、貴重品などはそちらに。



水がかかるのが嫌だったら、座席右の肘掛に、OFFのボタンがありますので、

自由に切り替えることができますよ。



まあ、俺としては、最初は面白いなあと思ったんですが、

細かい場面でもいちいち動くので、イラッとくることも(笑)


チケットは完売で超満員だったので、場内が暑くなった頃に、

アクションシーンで風が吹くと、何だか気持ちよかったです☆


まだまだ始まったばかりのアトラクションなので、

どんどん改良して、色んなバリエーションを楽しめるようになるといいですね。


俺としては、記念すべき初体験がスターウォーズで、大満足です♪



今年は、嫌なこともたくさんあったけど、

61回も映画館に行けたので、生きたかいがありました。



こりゃあ、次が気になるので、なかなか死ねませんな(笑)



たぶん、こうなるんじゃないかなあなんて想像もできますが、

そこは、監督のアレンジに期待しましょう。



最初は、普通に2Dで見ようか、3Dの方がいいかと迷ったのですが、

どうせなら、話題の4DXでいったろか~ということになり、

ずっと一緒にシリーズを見に行っている、親友のYD君と行きました。



おかげさまで、楽しい年末を過ごすことができました。


映画に対しては、後悔のないようにしたい。

見に行って、正解でしたね。



迷った時は、心の声に従え。

これが俺の座右の銘ですが、スターウォーズ風に言うと、

迷った時は、フォースの声に従え。になりますな。




読者の皆様、今年も応援して下さって、ありがとうございました。

桑畑は、まだ現役で突っ走っております。



…皆様に、フォースの導きあれ。








【作品データ】


製作・監督・脚本:J.J.エイブラムス

撮影:ダン・ミンデル 音楽:ジョン・ウィリアムズ

出演:デイジー・リドリー ジョン・ボイエガ オスカー・アイザック

   アダム・ドライバー ドーナル・グリーソン マックス・フォン・シドー

   ハリソン・フォード キャリー・フィッシャー マーク・ハミル



 (2015年アメリカ 上映時間:136分)



☆熱狂的ファンの方にご注意。

 今回から配給がウォルトディズニーになったので、

 おなじみの20世紀フォックスのファンファーレは出てきません。

 でも、何だか寂しい気分は否めないですね(苦笑)







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2015-12-29

U-NOTE Ⅱ「右腕がガタガタ…」

テーマ:ケガ・病気
今日は、仕事でアクシデントがあって、ちょっと大変でした。


がんばって切り抜けたんですが、右腕がうまく動きません…

ただの筋肉痛だと思うのですが、今夜は無理っぽいので、

最後の映画記事は、明日書きます。



がんばったので、クラシックラガービール飲んでます☆


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2015-12-28

映画 「杉原千畝」

テーマ:邦画
風格を感じさせる、いい映画でした。


本当は「海難1890」の次に見る予定だったのですが、

精神的なアクシデントがあったので、遅ればせながら行って参りました。



「日本のシンドラー」なんて聞くと、若い世代は、

あのすぐ壊れるエレベーターのメーカーの社員ですか、なんて聞かれそう(笑)

いやいや、多くのユダヤ人を救ったオスカー・シンドラーのことですから。



スピルバーグ監督の「シンドラーのリスト」が公開された時に、

日本人にもそういう人がいるんだよ、くらいのことは聞いていましたが、

どういうわけか、日本人がすごくいいことをした話って、

学校でも必死で封印しなければならなかったような事情があったらしく、

俺らの世代は、まともにそういう教育を受けていないんですね。

聞いたのは、日本がいかに過去の歴史で悪いことばっかりしたか、ということ。


原子爆弾を投下されたことまで、罰があたったみたいに言われると、

そんな授業を聞いて、俺は「これは何かがおかしい」と怒りを感じたものです。

だから俺は、中学の時、社会の成績だけ悪かった。

頭にきたから、勉強しなかったんです。

高校の歴史の授業も、似たようなもんだったので、勉強するのが嫌になりました。


今思うと、このクソジジイども!ですね。


井沢元彦氏の本のような、人間的に歴史を読み解く「新しい見方」を学んだので、

今、俺の心は、歴史をちゃんと学びたいという方向に向かっています。


マスコミの偏向報道も、中国や韓国から言われる悪口の洪水にも、もううんざり。


日本には、世界に誇れる輝かしいちゃんとした歴史があるのだ。

それを、誠実に正しく伝えてくれる媒体があっていいはずなのだ。


だから、世界に誇れる文化である映画で、それをやって欲しい。

映画こそは、人の心を広く世の中に伝えられる、優れた手段なのだから。



「海難1890」は、慌てて作った感もあったし、

映画としてまだ未熟な側面も否定できなかったけど、

このタイミングで世に送り出されたタイムリーな功績があった。


インチキクソ映画「ザ・コーヴ」は、ひどい一方的なバッシングだったけど、

優れたドキュメンタリー映画「ヒロシマナガサキ」は、日本人の長所を、

意図的なものを感じさせない自然な形で丁寧に作り上げてくれたから、救われました。



「氷雪の門」は、ソ連の圧力を受けて公開させてもらえなかった映画だし、

「鳥よ翼をかして」は、一部の限られた上映会でしか見ることができなかった。

こういう埋もれた名作を、俺は幸運にも劇場で見られたので、「運がよかった」です。




そして、いよいよ待望の「杉原千畝」の公開です。


クソ親父のせいで、見るのが遅くなってしまったけど、

困難を乗り越えて、こうしてちゃんと見ることができたので、

それはそれで、きっと意味があることなんだと思います。



杉原千畝(すぎはらちうね)は、第二次大戦中の、日本の外交官。

英語、ロシア語、ドイツ語、フランス語などに堪能で、

満州、フィンランド、リトアニア、ドイツ、チェコ、ルーマニアなどに滞在し、

身の危険を冒しながらも、混沌とする世界情勢の情報を収集して日本に発信。


ソ連から、「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)に指定された、

日本初の外交官となった、超やり手の男なんだそうです。スゴイ!



本作は、リトアニアで行き場のなくなったユダヤ人たちに、

独断で「命のビザ」を発行した彼の生き様を中心に、

根井三郎をはじめ様々な人物にスポットを当て、

「命のリレー」が継承されていく過程も、丁寧に描いていきます。



唐沢寿明という俳優は、個人的にはあまり好きではないんですが、

彼の持つ独特の雰囲気が、映画的にいい効果を出していたように感じました。

クールなまなざしの向こうに、「要注意人物」というイメージが浮かびます。

いかにも物腰のやわらかそうな俳優だったら、お人よし過ぎて弱そうだし、

ミステリアスで頭の切れる男としては、彼はいいんじゃないでしょうか。


奥さん役が小雪というのも、何だか符号のようですね。

彼らは、「嗤う伊右衛門」で、夫婦を演じていましたから。

唐沢千畝を暗殺しようものなら、小雪お岩が仕返しに現れそうですね(笑)




この映画、普通の邦画と雰囲気が違うな、と思ったら、

監督がアメリカ人なんですね。

チェリン・グラック監督もまた、英語、日本語、フランス語に長けた男。

だから、外国人同士が会話する場面が多いのに、すごく自然に感じられました。


俳優も、すごい実力派を揃えたみたいで、皆さんの演技が素晴らしい。

特に、リトアニアの日本領事館の職員を演じたツェザリ・ウカシュヴィチがよかった。

彼は、少ない動きで多くを語る、深い表現力を持ったいい俳優ですね。

彼の素晴らしい演技を見て、俺、やっぱり死ななくてよかったと思いました。



日本の出演陣も、すごかったです。

小日向文世は、こういう役柄だと、光りますねえ~

濱田岳も、滝藤賢一も、オイシイところを演じていますよ。


不思議なんですが、悪役まで、妙に人間くさい。

戦争という特殊な状況において、精神がおかしくなって、追いつめられて、

上の言う言葉に従う以外、選択肢がないという苦しさは、身にしみてわかりますから…



人間の心をきちんと真正面から描こうとしているからこそ、美しさがある。






本作には、「風格」というものを感じます。


長尺を感じさせない、スリリングな展開。

派手な銃撃戦ではなく、人の心の葛藤で、ハラハラしていく演出の腕。



ああ、先週のあの状態で、無理矢理見なくてよかった。

このタイミングで、大正解だった。





2015年10月に、杉原がビザを発行したリトアニアのカウナスにおいて、

ワールドプレミアが開催されました。

杉原の家族と、カウナス副市長が出席し、450席の劇場は超満員になり、

立ち見客が50人くらい出る事態になっちゃったみたい。

上映後は、5分間のスタンディングオーベーションが起きたそうです。




今年は、この映画を見ずして、終われない。

俺はそう思って、土曜日の夜に、レイトショーで見て参りました。


体は疲れていたけど、心が熱くなって、最後までちゃんと見られました。


最近は、コンディションを心配しながら映画館に行かねばならないので、

若い頃みたいに、たくさん見られなくなっちゃいました。

でも、その分だけ、本当に見たい映画を、本気で見ることの大切さがわかります。



俺の人生は、もう終盤かもしれない。

今日を生きられただけで奇跡だし、明日生き残れる保証なんてどこにもない。



だから、毎日、悔いのないように、生きたいと思います。


杉原千畝のように、最善の努力を、最後まで続けたい。

人はやっぱり、国が違っても、もともと同じ心を持っている。

お人よしの日本人は、そういうことがわかる、稀有な国民なのかもしれない。





いつの時代にも、サムライはいる。

志を同じくする者同士が、音叉で反応するように、何かが伝わっていく。

静かに、熱を帯びながら、確実に、深いところでつながっていく。



「海難1890」で、必死で救助をした村人たち。

「氷雪の門」で、女と子供たちを守るために盾になって死んでいった老兵。

「永遠の0」で、限界を越えてしまい、心がつぶれて病んでしまったパイロット。


彼らのギリギリの戦いぶりが、誰かに伝わって、誰かが生かされていく。



最近読んだ本で、いい言葉を教わりました。

「恩送り」という言葉です。


「恩返し」は、助けてくれた人に感謝して、恩をお返しすること。

「恩送り」は、助けてくれた人の気持ちを大切にして、

今度は自分が、他の誰かを助けてあげること。


つのだじろうの将棋マンガ「5五の龍」で学んだこととおんなじですね。


いくらお礼を言っても言い尽くせないくらい、感謝する相手がいたのなら、

その志を、誰かに「行為」として伝えていけばいい。



俺は、色んな人に支えられて、ここまで生きて来られました。

すぐにエネルギーが切れてしまうし、周りに迷惑かけてばっかりの俺ですが、

こんな俺でも、必要としてくれる人たちがいるんです。


罵倒されたり、悪口を言われる度に凹んだりしますが、

それ以上に、俺を大切にしてくれる人たちがいるんです。不思議なことに。



杉原千畝だって、あれだけの協力者がいてくれたからこそ、偉業を成し遂げられました。

それはまた、彼自身が、信頼を得るに値する人物だと思われたからに他なりません。


真に強い人は、弱い者に優しい。

強さは、弱い者を守るための力です。


「強さ」の対義語は「弱さ」ですが、

「優しさ」の対義語は「厳しさ」です。


自分に厳しく、人に優しくあれ。

常に、最善を尽くせ。

失敗を悔やむのではなく、反省して、次に生かせ。


彼が、そう言ってくれているように感じました。




杉原千畝、根井三郎、小辻節三、ビューローなど、

誰かが命懸けで始めたことを、勇気を出して伝えていった人たち。

「命のバトン」は、ひとりの力では、最後まで届かない。



今日まで日本が平和でいられたのには、ちゃんと理由がある。

彼らの勇気と生き様を、本当の優しさを、絶えさせてはならない。


言葉では伝わらないことも、行動でなら、伝えることができる。


もし、褒められるようなことがあったら、

それは、自分が尊敬する人たちから教わったことなんです、と、

胸を張って言えるような男になりたい。



日本人の、ひとりの男として、この映画を劇場で見ることをおすすめします。








【作品データ】


監督:チェリン・グラック 脚本:鎌田哲郎 松尾治道

撮影:ゲイリー・ウォーラー 音楽:佐藤直紀

出演:唐沢寿明 小雪 ボリス・シッツ アグニュシュカ・グロホフスカ

   ミハウ・ジュラフスキ ツェザリ・ウカシュヴィチ アンナ・グリチェヴィチ

   塚本高史 濱田岳 小日向文世 石橋稜 板尾創路 二階堂智 滝藤賢一


 (2015年東宝 上映時間:139分)










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2015-12-27

映画 「海難1890」

テーマ:邦画
そろそろ、日本が素晴らしい国だということを、堂々と発言してもいいんじゃないかな。



日本・トルコ友好125周年記念作品。

この映画が製作されたことを、日本人として喜ばしく思います。


あまりにもストレート過ぎる映画なので、

単に、面白さから言えば、中途半端な出来と言われても、しょうがないでしょう。


だけど俺は、この映画の奥底から湧き上がってくる、心意気に反応しました。




樺太の女性電話交換士たちが壮絶だった「氷雪の門」

北朝鮮に残された日本人妻の実情を描いた「鳥よ翼をかして」

インドネシア独立のために戦った日本兵の「ムルデカ」


史実に忠実にしようとすればするほど、娯楽性とのバランスが難しいんですよね。

それは、仕方のないことなんです。



面白さを追求すれば、脚色がわざとらしなっちゃうし、

観客動員数を確保しようと思えば、演技力よりも有名人を起用するもんだし、

それもまた、映画というものがビジネスだから、しょうがないんです。


だからこそ、プロの観客は、そこを見極めて欲しい。



目にするものを、そのまんま受け取るのは、子供の視点です。

俺は、ひとりの大人として、真摯にこの映画を堪能しました。



いい話です~




内容は、色んなところで嫌になるほど紹介されているので、

俺のブログでは省こうかと思ったんですが、

いやいや、やはりちゃんと、説明しておかねば。



1890年、和歌山県樫野崎(現・串本町)の海岸で、エルトゥールル号が遭難。

600名以上の乗組員が海に投げ出されてしまいました。

彼らは、オスマン帝国(トルコ共和国)の、親善訪日使節団を乗せた軍艦の乗組員。


地元住民たちは、荒れ狂う荒波に身を投じ、懸命に救助活動を行いました。


(詳しくは、ウィキペディアで検索すればわかります)




見ず知らずの外国人を命懸けで助けた彼らの行動は、

トルコ国民に感銘を与え、トルコの教科書にも記載され、後世に語り継がれています。


そして、1985年の、あの事件が起こりました…


(映画は、2部構成になっています)





企画・監督は、田中光敏。「利休にたずねよ」の彼ですね。

串本町長の田嶋さんという人が、ある記録を発見し、

同窓生である田中監督に話して、映画化の企画が始まったらしい。

それが、2005年のこと。



田中監督は、10年間にトルコを10往復して、努力を積み重ねたそうです。


「目の前に困っている人がいれば、助ける」という素直な気持ちを伝えたい。



彼らの思いは、ついに実現しました。



2013年。

安倍総理とエルドアン大統領が、合作について協議。

日本外務省とトルコ文化観光省が、製作を全面的にバックアップ。

2015年11月。

トルコのユルドゥズ宮殿で、本作の特別上映が行われ、

安倍・エルドアン両者が、揃って観賞されたそうです。


映画のタイトルは、当初「エルトゥールル」だったそうなので、

トルコを主役にしようとしてくれた心遣いを感じますね。



主演は、内野聖陽。

以前は「まさあき」でしたが、今は「せいよう」と読むんだそうです。

初めて彼を見たのは、役所広司主演の2時間ドラマだったかな…

知的で固いイメージでしたが、「仁」の坂本龍馬役が豪快でガラッと。

「臨場」では、人の死に向き合う、深い演技力を発揮しました。

本作の彼は、村のお医者さん。



共演は、忽那汐里。「つやのよる」の演技がよかった女優さんですね。

彼女はオーストラリア出身ということもあって、英語が堪能。

2役で、前半は寡黙な訳ありの女、後半は教師を演じるので、どうかお楽しみに。



俺的には、エルトゥールル号に搭乗していた海軍大尉を演じたケナン・エジェが主役。

残念ながら存在感が上の2人に負けているので、何だか申し訳ない気分になります。

彼もまた、前半と後半で、2役を演じているので、ご注目下さい。



鎖国をしていた頃の日本は、海に囲まれている島国というだけで、

世界一安全な国だったんだと思います。

黒船が大砲を積んでやって来るようになって、一番危険な国になってしまいました。


外国船打ち払い令が出たのにも、理由があったんです。

それまでは、遭難した外国人を助けることは、よくあったらしい。

ただ、中にはひどい奴らがいたんですね…

井沢氏の歴史の本を読んでから、俺は、歴史観が大きく変わりました。

だから、この映画の中での出来事が、ごく自然に感じられるのです。


基本、知らない人と初対面で打ち解けるのには、ちょっとした勇気が必要。

しかし、相手が困っていたら、何とか助けてあげたいと思うのが人情でしょう。





困っている時は、お互いさま。

情けは、人のためならず。


日本人が本来持っているはずの「美徳」が、この映画で語られます。

わざとらしいかもしれない。

いかにも過ぎて、苦笑するかもしれない。


だけど、一度でも、体を張って、信念を貫いた経験のある人ならば、

必ずどこかで、感銘を受けるはずです。



誰かに、褒められたいからとか、

誰かに、認められたいからとかじゃない。


自分の心の中にある「何者か」が、そっと教えてくれるような、何か。



はっきりした理由を、言葉で明確に述べられるほど、単純じゃないんですね。


ただ、そうした方が、いいと思ったから。

ただ、そうした方が、すっきりするから。

ただ、そうした方が、気持ちがいいから。



貧しさで困窮していても、助けた彼らの心には、失ってはいけないものがあった。

遠い異国の人に助けられた彼らの心にも、かけがえのないものがあった。



人を助けるのに、理由なんかいらないですよね。

ただ、苦しんでいるのを、黙って見ていられなかったんだと思います。



俺も、築き上げてきたものを一瞬で失った経験があるから、

何だか、すごくこの映画が、ありがたく感じました。




トルコでは、日本の協力で橋を作ったり、

1999年のトルコ北西部地震が発生した時は、

日本から緊急救助隊が派遣されたりしました。

2011年の東日本大震災の時は、

トルコ救助隊は、3週間の長期に渡って活動してくれたそうです。

同年、トルコ東部で大地震が発生して、日本は援助物資など、緊急無償協力を行いました。



東の果ての国と、西の果ての国の友情の物語は、現在進行形です。


国同士の付き合いは、人同士の付き合いとおんなじだと思うんです。


利害で付き合うのか。

心が通じ合えるからなのか。


それは、人が人として生きるための、永遠のテーマです。


本作が、映画としてどんな評価を受けるのか、俺はどうでもいい。

この映画が誕生したことに、意義があるのです。


田中監督、いい仕事をしましたね。

あなたは、日本人の誇りです。


そして、125年経ってから史実を知った多くの人がいたことを聞いたら、

串本町のご先祖の御霊は、びっくりなさるでしょうね(笑)



『…いえいえ、私どもは、そんな大それたことは致しておりません。

 ただ、人として、当たり前のことをしただけでございます。』


そんな優しい言葉が、聞こえてくるようですね。


余裕がある時なら、容易に助けられるかもしれない。

いっぱいいっぱいの時だと、勇気が必要ですよね。


だけど、余裕があろうがなかろうが、人を助けることは尊い行為なのです。

それって、言葉ではなく、大人が子供に「行動」で教えるべきなんですよね。


こういう大人になりたいな。

こういう大人にはなりたくないな。

そう思った経験が、必ずあるでしょう。


それには、理由がちゃんとあるんですね。



田嶋町長と田中監督に、心から御礼を申し上げます。





正しいかとか、間違っているとか、損得がどうのこうのとか、

そんなことを考えているヒマがあったら、さっさと行動しちゃいましょう。


どこかで悔いを残したら、その方が一生つらい。

今できることを精一杯やることが、後で生きてくる。



助けられたことに感謝する心が、他の誰かを助ける力になるのだから。




…俺、やっぱり、日本人に生まれてよかったと思います。








【作品データ】

企画・監督:田中光敏 脚本:小松江里子

撮影:永田鉄男 音楽:大島ミチル

出演:内野聖陽 ケナン・エジェ 忽那汐里 アリジャン・ユジェソイ

   夏川結衣 永島敏行 小澤征悦 徳井優 蛍雪次朗 竹中直人

   笹野高史 かたせ梨乃


 (2015年日本・トルコ合作 上映時間:132分)




☆日本とトルコは、第一次大戦においても、第二次大戦においても、

 直接戦火を交えることはなかったそうです。

 この意味を、深く考えてみたいですね。









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2015-12-27

U-NOTE Ⅱ 「今年最後の出荷、終了。」

テーマ:ケガ・病気
実は、今日も仕事してました。

朝7時から、今年最後の出荷があったからです。


今朝の気温は、1度。

雪がちらつく中での、力ずくの難行苦行でした(汗)


寒いと、豚が動かない~


1頭ずつ、相撲を取るような感じです。

65頭の豚をトラックに積み込むのに、1時間以上かかってしまいました。


ああ、腰にくる…



家族に申し訳ないので、朝はひとりで起きて、すき家で朝食を摂りました。

たまごかけごはん&豚汁セットで、330円。

豚汁パワーで、何とか乗り切りました。


すっげえ、息切れしちゃったけど…



先週の日曜日は、精神的にボロボロになって、

月曜火曜と、仕事を休んで大穴を開けてしまって…


でも、3日目に何とか復帰して、5日間連続勤務。


これって、うつ持ちにとっては、すごいことなんですよ。




今までずっと、ひとりで悩んで、ひとりで乗り越えてきた。

だけど、許容量をオーバーして、病気になって倒れてしまい、

多くのものを一気に失ってしまった。



今回は、支えてくれた人たちのおかげで、早く立ち直ることができたんだと思います。


カフェの店長さんと、常連さんのうつ仲間との語らい。

眼鏡屋のおじさんからかけてもらった、あの言葉。

会社の皆さんからの、あたたかい励まし。

ブログにコメント下さった方々。

メッセージを下さった初めての方々。

メールをたくさん送って下さった、優しい方々…


家族のありがたさ。

友達のありがたさ。



色んなことを、深く、とても深く、学んだ一週間でした。





実は、今日の夕方気づいたんですが、

今日は一日、薬を飲むのをすっかり忘れていました。


無我夢中で動いているうちに、今日まで来ちゃったんですね。



何とか桑畑は、また立ち上がれるような気がしています。

くれぐれも、油断しないように、注意します。




やっと、映画の記事が再開できそうです。


明日は、ゆっくり休んで、

もし可能なら、今年最後の映画を見て来ようかと企んでおります。



飲みに行くのは、もう少し元気になってから。

映画に酔いしれてこその、俺ですから(笑)




すでに、3本の映画記事が、待機中です。

そして明日には、さらにもう1本見る予定。



今年はまだ、終わっていない。



映画熱、もうすぐ復活します☆



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2015-12-25

U-NOTE Ⅱ 「優しさは、宝物」

テーマ:ケガ・病気
こんばんは。桑畑はおかげさまで今日も生き抜いております。


昨夜はイブなのに、愚痴みたいな記事になってしまいまして…

今夜は家族でクリスマスパーティーをしたので、

残り少ないタリスカーをチビチビ飲みながら、ちょっと優しい記事を書きます。



「優しい」を広辞苑で引くと、うわ~ いっぱい訳がある~

全部で8通りくらいあったんですが、俺なりにセレクトしてみると、

「周囲や相手に気をつかって控え目である」

「情深い。情がこまやかである」

まあ、この2つかな。


「優しい」という字は、優秀の「優」であり、「人が憂う」と書きます。

「思いやり」の心を持った人が、気持ちよく相手に伝える行為…でどうでしょう?



優しくできるのは、能力です。

気分のいい時に優しくするのは、誰でもできる。

困難な状況でも、

自分が貧しい時でも、

自然に、ためらいなくそれができる。


それこそが、本物の優しさだと俺は思うんですね。


いちいち計算していたら、人を愛することなんて一生できないし、

計算しているうちに、一生が終わってしまう。


優しい人が、優しい行為をされると、

相手が、いっぱいいっぱいでそうしているかどうかを、すぐに見抜きます。

「ありがとう」の言い方で、わかるんですよね。


俺の場合、自分が大変な状況でありながら、精一杯の優しさを受けると、

とても大切なものを受け取った感じがして、ジーンとくるんです。

だから、その気持ちに、ちゃんとお礼を言うんです。

相手の方が、泣き出しちゃったりすることもありますが(笑)


みんな、自分のことで、いっぱいいっぱいなんです。

人の話を聞くとか、人の気持ちになって考えるとか、無理な時だってあるんです。


大人のくせに、とか、

男のくせに、とか、

先輩のくせに、とか、

いい年して、とか、

言われるでしょう?

俺も、しょっちゅう言われていますから。




いいんです。

それでも、いいんです。


見ている人は見ているし、

わかる人には、ちゃんとわかるんです。



俺は、弱い者いじめが大嫌いなので、

つい、止めに入ってしまう。

それで、たくさんのものを失いましたが、

大切なものは、失いませんでした。



「優しさ」って、何でしょうね。

自己満足でしょうか。

ひとりよがりの、自己顕示欲の塊でしょうか。


俺は、違うと思います。



「優しい」行為は、その人の心の表れ方であり、

無意識の、勇気ある行動なんです。



優しい気分の時に、自然にできる行為と、

苦しい時でも、そうせずにはいられない行為とでは、重みが違うのです。



俺は、色んな人を見てきたから、それがわかります。

わかりたくなくても、わかっちゃうんだから、どうしようもない。



問題は、気づいたとしても、知らないふりをした方がいいかどうかの判断。

そこが、大人としての技量でもあるんですね。


その場で褒めた方がいい場合もあるし、

時間が経ってから、こっそり褒めた方がいい場合もあるんです。



だって、そのくらい、「優しさ」って、素敵なことなんだから。




アメリカでは、クリスマスに恩赦とか、素晴らしい習慣がありますよね。

日本でも、天皇誕生日とかに、そんなことがあったかな。



クリスマスって、不思議なイベントですよね。

これほど、世界中に浸透している祝い事もないんじゃないかな。


キリスト教信者じゃなくていい。

お祭りが好きなだけの人でもいい。



いつもよりも、

ほんの少しでいい。

いつもより、ちょっとだけ優しくなれる日。



それが、クリスマス。


何とも、素敵な神様じゃないですか。


優しさは、神様がくれた宝物。」



今宵は、あなたにしかない、優しさを発揮して下さい。




人の心は、簡単には開かない。

無理矢理、こじ開けるものじゃない。

開きたくなるような言葉や、問いかけがあってこそ。


扉を開ける勇気があり、扉を開けてもらってから入る謙虚さがある。

決して土足で踏み込まず、靴を脱いで、揃えてから静かに入っていく心遣い。



優しさは、気持ちがいいもの。

人の心を、愛撫するテクニック。



子供の優しさは、かわいい世界。

大人の優しさは、甘美な世界。



今宵、あなたの一番大切な人を思い出して、

あなたが一番優しかった時を思い出して、

一緒に、いい夢を見ましょう。



桑畑は、今年も、いい時間を過ごすことができました。

皆様のおかげです。




ありがとう。




メリー・クリスマス。

いい夜を。

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2015-12-24

U-NOTE Ⅱ 「浮き沈みする心」

テーマ:ケガ・病気
世の中はクリスマス・イブで盛り上がっていることと思いますが、

我が家は諸事情によって、明日やることにしました。


クリスマスっぽい記事は、明日の夜にでも書きますので、

今夜は、今の精神状態をもう少し吐き出しておこうと思います。




昨夜、前向きな記事を書いて、自分を奮い立たせようとしたものの、

時間が経てば、またすぐに気持ちがしぼんでしまう…

いくじなしで情けないんですが、こんなものなんですよね。



目覚めは、あまりよくありません。

ただ、体が勝手に起き上がって、支度を始めます。

気がつくと、ちゃんと朝ごはんを食べて、出勤している自分がいます。


豚たちを見ると、ほっとしますが、同時に、色んな感覚がオンになって、

慌しい一日が始まります。



朝飲んだ安定剤が効いてくるまで、しばらく落ち着かない時間が続き、

効いたら効いたで、今度は動きがスローモーに感じます。


傍目には、ちゃんと仕事しているように見えるみたいだし、

会話もしっかりしているらしい。


でも、内心はドキドキなんですよ~



何と言いますか、動いていないと、落ち着かない感じなんです。

じっとして黙っていると、色んな悪い想像で、心が押し潰されてしまう。

こうなったらどうしよう、ああなったら最悪の状況になる…

そういう妄想が次々と浮かんで、何もかもダメになり、破滅するような気がする。




こういう時は、無心になって体を動かしているのが、いいみたいなんです。

あるいは、誰かと話をしていると、元気が出てくる。


動き過ぎると疲れてしまうし、話がうまくいかないとストレスになっちゃうので、

どちらも「適度に行う」ことが大事なんですね。




考えると、キリがないことはわかっている。

だけど、考えずにいられない。

常に最悪の状況を想定して行動するのは、ある意味プロの思考ですが、

ずっと神経を緊張させたままでは、ヘトヘトになってしまいますよね。

その調整が効かないのが、うつ病の特徴だと思うんです。

24時間、オンの状態…

これでは、病気になってしまうのも無理はないでしょう。



だから、いつも疲れている。

何もしないうちから、ヘトヘトになってしまっている。

ひどくなると、行動不能になって、起き上がれなくなる。

起き上がれないから、横になる。

その姿を、「怠けている」と誤解される…


だから、必死にがんばっちゃう。

役に立てるように、無理をしてしまう。

大丈夫かと聞かれれば、大丈夫と答えてしまう。

「がんばれ」という言葉は、脳内で増幅変換され、

「お前はがんばりが足りないから、もっとがんばれ」と言われていると感じる。


がんばれないのに、がんばる。

がんばってがんばって、がんばり続ける。

がんばってもがんばっても、がんばった実感がわかない。

「がんばるな」と言われると、がんばらないようにがんばってしまう。

「休め」と言われると、がんばって休まなきゃ、と思ってしまう。

「ちゃんと寝なきゃ」と思うから、悩みもストレスもエンドレスに増えていく…



悪循環ですよね。


俺は、発病前の自分がどんな風だったか、よく覚えています。

基本的に、同じ失敗を繰り返すのが嫌な性格なので、

倒れる度に、学習しているんです。



今回は、注意していた期間が過ぎて、「油断」があったんだと思うんです。

「油断」という言葉は、お寺でろうそくの炎を絶やさないための油を、

きちんと管理する大切さからきていると記憶しています。

いい状態を保つのも、なかなか大変なんですよね。



大きなショックを受けて、深いダメージを受けましたが、

対処と応急処置が迅速であれば、速やかに回復モードにもっていけるのです。

なかなか、うまく説明できないことなんですが…



俺自身が心掛けていることが、プラスに作用したこともあったし、

家族がちゃんと適切に対応してくれたことも、幸運でした。

行きつけのカフェの店長さん、眼鏡屋のおじさんの言葉にも、救われました。

自分がもし、ひとりぼっちの男だったら、こんな風にはいかなかったでしょう。



人はやっぱり、ひとりでは生きていけないんだと思います。

うつを経験すると、よくわかるんです。


心も、体も、大事。

どっちも、大事。

どちらかを置き去りにしたら、人は幸せにはなれません。



倒れたからこそ、見える景色がある。

立ち止まったからこそ、見える情景がある。

見捨てられたからこそ、理解できる感覚が深まる。



うつで悩んでいる人たちは、年末は修羅場だと思います。


俺も、静かに、戦っています。


嫌な奴に、負けないように。

自分の持っている「本来のいいところ」を見失わないために。




読者の皆様、メリークリスマス。

今夜は、愚痴になっちゃってゴメン。



明日の夜は、優しい記事を書こうと思います☆




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2015-12-23

U-NOTE Ⅱ 「朝焼け」

テーマ:ケガ・病気
結論からご報告します。

今日、ちゃんと仕事に行けました。

心配して下さった皆様に感謝します。



今朝は、7時から出荷だったので、6時半には家を出ないといけません。

5時50分に起きると、まだ空は真っ暗。

朝食はしっかり摂って、薄明るくなった頃に、車を走らせます。


農場が近づくと、東の空が、次第に輝いて行くのが見えて来ました。


…朝焼け。




明け方まで飲んで帰った時くらいしか、見たことがなかった景色。

ああ、早く帰って寝なきゃ、なんていう気持ちを思い出す情景。

たまに、金星も見えたりして、思い出がたくさんあるんですよね。



でも、これから仕事をするというタイミングで、

こんなにきれいな朝焼けを見たのは、きっと初めてだと思います。




俺の年代だと、カシオペアの「アサヤケ」という音楽が、脳内再生されます(笑)




今日は、たまたま、早朝から出荷だった。

今日は、たまたま、天気がよかった。(気温はマイナス1℃でしたが)

今日は、たまたま、俺の病み上がり出勤だった。


色んな偶然が重なったことで、俺は、こんなに美しい景色を見ることができました。





日曜日に、ショックに耐え切れずに自殺していたら、見ることがなかった景色…


命があって、視力があってこそ、見えた景色でもあります。


眼鏡屋のおじさんの言葉が、心地よく響きます。



俺はまだ、この世に存在していても許される男なのかもしれない。

荘厳な輝きが、静かに語りかけてくれたように感じました。




何とか無事に、75頭の豚を出荷することができました。

作業も、それなりにこなすことができました。

皆さんに心配してもらって、あたたかい言葉をかけてもらって、涙が出ました…




豚の声を聞き、寄って来る鼻を撫でて、俺は、日常に戻ることができました。





まだ、やれるかもしれない。

まだ、生きられるかもしれない。



今宵は、黄桜が、心にしみますね。





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2015-12-22

U-NOTE Ⅱ 「急降下」

テーマ:ケガ・病気
不本意ですが、昨日と今日、仕事を休んでしまいました。


原因は、1本の電話です。



長い記事になりそうなので、時間のない方は、読むのをご遠慮下さい。

週の後半には、映画記事が書けると思いますので…









日曜日の午後、カフェでコーヒーを飲んでいる時に、携帯がブルッと鳴りました。

出てみると、この世で一番聞きたくない、あの嫌な声…


親父です。

俺の携帯にかけてくるなんて、初めてのこと。

すぐに切りたいと思いましたが、何かあったのではと思い、話を聞いてみると…


何と、金の無心でした。

2~3日以内に、8万円ほど都合しろと。



普通の父親なら、

ずっと顔見ていないけど、体の方はどうだ、ちゃんとやってるか。

この間は、お前の家族に協力してもらって助かった。

病気の方はどうだ、あれから苦しい思いはしていないか。


そのくらいの言葉が、先に出てもいいはず。


会話の冒頭から、

おい、悪いけど、金がなくて大変だから、8万ばかり都合してくれ。



まるで、俺はお財布か、打出の小槌のようです。

親父には過去に、80万円ほど騙し取られた経験があります。

その金は、貸したはずなのに、いまだに返ってきません。

俺が療養中の時にも、交通事故を起こしたから事故処理の金が要ると言って、

20万円ほど要求され、娘の学資保険に積み立てている分から借り入れして、

何とか都合した経緯があります。(それは何とか返してもらえました)



今の俺は、療養中にできた借金を返すために、奮闘中です。

娘の学費を稼ぐために、がんばって働かなきゃいかんのです。



何に使う金なのかを聞いてきると、兄が交通事故を起こして、

保険を使ったから、任意保険料が上がって…ということらしい。

返せるあてはあるのかと聞いたら。年金が入ったら返す、とのこと。


??? 何だか怪しい…



さすがの俺も、すんなり応じる気にはなりませんでした。




悪いけど、うちにそんな余裕はない。

娘の学資保険から借りた分を早く返したいから、これ以上借り入れできない。

ボーナスだってもらってないし、今の時点で、8千円だって用意できない。


そう言ったら、


なんだ、ダメだっていうのか!

お前はアテにならねえなあ!


俺が死ねば、金が入るよ。そうしようか?

俺に早く死んで欲しいって思ってるんだろ?


珍しく俺は、言い返しました。


親父が言うには、自分が死んだ時に喪主になってもらうから、

俺に生きててもらわないと困るんだそうです。

当の本人は、10年以上前から遺言状を毎年更新していて、

兄はバカだから何も任せられないから、俺を当てにしているだけなんです。


3人家族の中で一番元気な男が。

75歳にもなって、小学生以下の発想しかできない独裁者が。



親父よりも、俺の方が早く死ぬよ、たぶん。

親父が誰よりも一番長生きするよ、きっと。

何ならすぐに死んでやろうか?

その方が、スッキリするんじゃねえのか?



もういいや、このバカヤロウ!


そう言って、向こうから電話を切りました。



「バカヤロウ」は、親父の口癖です。

この、バカヤロウ!バカヤロウ!バカヤロウ!バカヤロウ!バカヤロウ!

バカヤロウ!バカヤロウ!バカヤロウ!バカヤロウ!バカヤロウ!バカヤロウ!


言い始めると、止まりません。


それでいて、自分をもっと尊敬しろだの、もっと立てろと要求します。

気に入らないことがあると、全てを人のせいにするから、友達もいないし、

親戚とも一切付き合いがありません。(長男なのに…)


自分にとって利益のある人としか付き合わないから、

すぐに酒の席で癇癪を起こし、関係が破綻してしまいます。

そのストレスを、家族にぶつけるんですね…


お袋は何度も入院して、体中、手術の跡だらけ。

脳梗塞で2回入院してからは、思考能力がかなり低下しました。

兄は、言葉の暴力を53年も受け続け、おどおどして廃人のようになっています。




俺は、12歳の頃から、うつが始まっていたんだと思います。

(当時はまだ、この病気は一般化していなかった)

こんな家にいたら、気が狂ってしまうと思い、

高校を卒業後、東京の企業に就職して、家を出たんです。


東京にいた頃の俺は、初めて得た自由に、酔いしれました。

しかし、夢破れて帰郷し、実家に戻ると、また、うつが始まりました。

(夢を目指した話は、また今度)



何を言っても、聞き入れてくれない親。

人の話を、ちゃんと聞く能力がない親。

自分の話や事情が優先で、他者の事情を無視する親。

俺は、幼い頃は、兄にひどくいじめられていました。

子分というより、奴隷扱いです。

祖父と祖母も、仲が悪いし、両親も、いい争いが絶えません。

「離婚」というキーワードを、しょっちゅう聞いていたものです。



俺は、こんな地獄から、早く抜け出したかった。

何とかしようにも、家族の中で一番立場の弱い俺には、どうすることもできない。

俺が意見を言おうものなら、

お前に言われるようじゃおしまいだな、と鼻で笑われる始末。



…ここは、人間の住むところじゃない!



もう、逃げるしかない。

男らしく戦うことができればよかったんですが、

呼吸困難や眩暈といった症状が日常的になると、これ以上は、命にかかわる。



何度、家族を皆殺しにしてやろうかと思ったかしれません。

このままではきっと、血の雨が降ってしまう。



それを恐れた俺は、東京に逃げたんです。




新潟に戻って就職した会社の近くに部屋を借り、俺は実家から逃れました。

ひとりになると、不思議に、心が安らぐのを感じたものです。


言い争う声を聞かなくていい生活は、素晴らしい。

ゆっくり本を読めて、ゆっくり食事もできる。

お金はなかったけど、自由な時間と空間を得たことで、俺は元気になれました。




この部屋で、友達と語らい、恋をして、結婚して、娘が生まれました。

もうすでに、人生の半分を、ここで過ごしたことになります。

この街が、俺の本当のふるさとだと思っています。






話を戻します。


電話をしているうちは、俺は比較的冷静でしたが、

切った直後から、鼓動が早くなり、動悸が激しくなりました。

妻は仕事中だから、電話に出ることはできません。

でも、何度も何度も、かけ続けました。

メールも、10通以上送りました。

緊急事態…



カフェの外に出て話していたので、体はすっかり冷えています。

戻ってきた俺の様子がおかしいのに店主のおねえさんが気づき、

どうかしたんですか、と聞かれたので、また実家の親父がちょっと…と。

ここは、うつに理解のある店で、俺の事情もわかってくれているので、

桑畑さん、落ち着くまで座っていて下さっていいですよ、と言ってくれました。


もう1杯オーダーしようかと思ったけど、胃が逆流しそうで無理…

30~40分ほど、カウンターに座り続け、ひたすら妻にメール…

そんなことくらいしか、できなかった。



その後、友達のいる眼鏡屋に行く予定だったので、慎重に移動。

友達はお客と応対中だったので、店主のおじさんに見てもらいました。

眼鏡のフレームは、曲がっただけで、壊れていませんでした。

すぐに直してもらったので、一安心。

娘が選んでくれたお気に入りのデザインなので、長く大事に使いたいな、と。


去年に眼球を怪我したことを話したら、おじさんびっくり。

桑畑さん、運がよかったねえ~、と言われました。

もう少しずれていたら、確実に失明していたらしい。

言われなきゃわからないくらい、きれいに治っているみたいです。



調べたら、ここで眼鏡を買ったのは、6年前。

かけなくていいレベルだったのに、読書用ということで作ってもらったもの。

今、ようやく老眼が進んで、かけないといけないレベルにさしかかったらしい。


視力は、俺にとって、一番大事な機能。

映画を見るのも、本を読むのも、パソコン画面を見るのも、視力があってこそ。

よく見えないことがストレスにもなり、うつにも影響するので、

迷わず、レンズ交換を依頼しました。

支払いは、給料日の後で。



その金を親父に貸してあげれば、いくらかは助かるのかもしれませんが、

悪いが、あいつのためには絶対使いたくない。

次の給料は、大半を返済に回して、妻と娘に新しい服を買ってあげたいから。



こういう時は、誰かと話をしているだけで、落ち着く。

眼鏡屋にいた1時間ほどの時間が、すごく貴重に感じられた。


用事は、済んだ。

もうすぐ出ようというタイミングで、携帯が鳴った。


妻だった。



もしもし? 無事? 大丈夫? 今どこにいるの?

俺の目から、涙がこぼれた。


これが、家族っていうものなんじゃないのか…

まずは、相手の安否を確認して、電話で話せる状態かどうかを聞く。

普通の携帯同士の会話でも、今電話して大丈夫?って聞くのがマナーだもんね。



仕事が終わって、俺の着信とメールを見つけて、すぐに電話してくれたらしい。

いい妻だ~


ことの次第を話して、今、眼鏡屋にいることを教えて、しばらく話す。


声って、不思議だ。

親父の声は、聞けば聞くほど、吐き気と憎悪が増してくる。

妻と娘の声は、聞けば聞くほど、生命力が湧いてくる。


視覚も大事だけど、聴覚も大事なんですね。




とにかく、このまま、家に帰るのが怖い。

きっと、電話がジャンジャンかかってくるかもしれないし、

直接、押しかけて来るかもしれない。

頓服薬は家に置いてあるので、今度からは持ち歩くことにしよう。



妻に了解を取って、夜になるまで帰らないことにした。

ただし、携帯はマナーモードでオンしておくこと。

電源切る時は、映画館にいる時だけ。


妻と話して、少しだけ、動悸が小さくなったように感じた。




セブンイレブンで休憩して、紙コップのコーヒーをゆっくりゆっくり流し込み、

新しいタバコを開けて、1本だけ吸う。


しばらく、考える。




電話は向こうから一方的にかかってきて、向こうが勝手に切った。

借金には応じていないし、断ってもいない。

8万くらいの金額なら、免許証があれば消費者金融でも借りられる。

利息は高いけど、すぐに返せるなら、問題ないはず。

今のウチの家計を考えたら、楽に用意できる金額じゃない。

どうしても必要ならまたかかってくるだろうし、そう言ってやればいい。



とりあえず、そこまで思考して、タバコを消す。




イオンシネマの近くに、ロッテリアがある。

給料日前なので、財布の中身は乏しい。

でも、2000円くらいはあるみたい。

そして、一番の強みは、イオンシネマのポイントカード。

スタンプがたまっているので、1本無料観賞できるのだ。



イオンの中を徘徊し、本屋で手頃な本を見つけて購入。

本を片手に、ロッテリアに入る。

ここには、しっかりした喫煙ルームがあって、いつも空いているのだ。

食欲が湧かないので、ホットレモンティーを頼む。

ここの椅子は、座り心地がいい。



たまたま買った本だったけど、すごくいい内容だった。

数ページ読んだだけで、また涙が出てきた。

どうも最近、涙もろくなってきているように思う。

(本のタイトルと内容は、日を改めて教えます)



自分と親の関係を考えると、考えれば考えるほど、羨ましい…

でも、忘れかけていたことを、次々と思い出させてくれる、いい本だった。

自分が置かれている残酷な状況を一瞬忘れて、読みふけってしまった。

本を読み終わって気がつくと、もう夜7時。


冷めたティーを飲み干して、映画館に向かう。


本来、この券で見ようと思っていた映画があったんだけど、

今日のコンディションでは、その体力はない…

なので、軽い気分で見られる、あの映画にしちゃった。



ユルユルの展開なので、嫌なことを忘れる効果はあまりなかったけど、

お金がない時に、時間稼ぎするのには、ちょうどいい。


映画が終わって、家に帰らなきゃ、と思うと、また動悸が激しくなってくる。


レンタルDVDを返却して、店内をうろつくと、眩暈がしてくる。

食事もろくに摂っていないから、寒気もする。


賑やかな音楽が流れている中、映画のタイトルが並んでいるのを見るのは、

とても楽しい時間だったのに、何故か、苦痛になってくる。

歩くどころか、立っているのがつらくなってくる…


しゃがみ込んで、タイトルを見ている格好をして、しばらく深呼吸をする。

…ああ、気持ち悪い。




家に帰ったら、修羅場が待っているかもしれない。

親父が怒鳴り込んで来て、警察を呼ぶ事態になるかもしれない。

これから起きるかもしれない状況を、あれこれ想像すると、また吐き気が…



家の近くまで行って、しばらくグルグルと回る。

ローソンに寄って、ホットの午後の紅茶レモンティーを買い、また一服。

車の中で、佐藤しのぶが歌う「カッチーニのアヴェマリア」を流す。


覚悟を決めて、家に帰る…





玄関を開けて、中に入る。

「ただいま」と言おうとしたが、声がうまく出なかった。

「おかえり」という、妻と娘の声が、俺の心を着地させてくれる。



家に帰るだけで、精一杯だった。



飲みかけのレモンティーで薬を飲んで、布団に入る。



バカヤロウ!

バカヤロウ!

バカヤロウ!

バカヤロウ!

この、バカヤロウ!



48年間聞き続けた、この世で一番嫌な言葉と声が、一晩中、心で鳴り響く…













月曜日の朝、目覚まし時計のアラームで、ゆっくりと、上半身を起こしました。

布団から出ようとして、立ち上がろうとすると、グラグラッときて、ドスン。


ああ、いけない。また始まってしまった…

何とか、仕事の支度をしようとするけど、歩く度にフラフラ。


今日は、子豚の移動をしなければならないのに…

そのために、先週がんばって豚舎の消毒を終わらせたのに。


妻に説得され、出勤は断念しました。

とにかく始業前に上司に電話して、体調が悪いので出勤が困難であることを伝え、

原因は、実家との揉め事であることを伝え、午後から出社して、事情を話すことに。


そこまで話して、息絶え絶えで、横になりました。


11月に実家でトラブルがあった時に、一応は説明しておいたのが幸いしました。




ちょうど、月曜日は、妻がお休みの日なんです。


娘が学校に行ってから、軽いお茶漬けを出してもらって、薬を飲む。


朝8時半頃から、3時間くらいの間、妻とずっと話していました。

俺の病気は、言いたいことが言えないストレスが、核になっています。

だから、話を聞いてもらえればもらえるほど、楽になっていくんです。




とにかく、大事なことから。


金の貸し借りの話は、成立していない。

家の電話には、留守電はおろか、着信すら来ていなかった。

つまり、妻には知られたくないから、俺の携帯にダイレクトにかかってきた。

妻から実家に電話してもらうことも考えたんですが、

そうすれば、たぶん、そんな電話はしていない、というかもしれない。

だったら、放っておけばいい。

本当に行き詰まっているなら、また向こうからかけてくるはず。

かかってきたらきたで、きっぱり言えばいい。

クレジットカードでも消費者金融でも、簡単に借りられるからどうぞ、と。


金額をつり上げてきたら、自分の孫の学費を使うことになるから、

進学も夢も諦めさせなきゃならないことになるよ、と。

電話1本で「都合しろ」ではなく、

ちゃんと自分から出向いて、妻と娘の前で頭を下げて頼め、と。



俺は、俺個人をバカにされるのは、いくらでも耐えることができます。

だけど、家族や友達や仕事、大切にしているものを侮辱されるのは、耐えられません。

それが原因で逆上して、失った人間関係もたくさんいます。

でもそれは、結局、その程度の関係だったのだから、と思えばよろしい。




妻は、普段はぼへーっとしていますが、いざとなると、頼りになる女です。

俺の長所も短所も、知り尽くしているんだと思います。


色んな話をしました。

忘れかけていたことも、思い出しました。

俺、ダメな人間なんかじゃない、と。


娘がお腹にいる時に行った新婚旅行の温泉旅館で見た、あの夕日。

雲っていたからよく見えなかったけど、ほんのり光っていた、あの美しい輝き。


あの日、俺は、生まれて初めて、誰かとゆっくり、いい食事ができたと感じました。


これが、家族の団欒なのかもしれない…と。




俺は、苦しい時に、この日のゆったりした時間を、思い出します。

俺の人生の中で、一番安らいだひとときだったように思うんです。



実家の家族のことを思うと、早く死んでしまってこの世から消えたくなりますが、

それを抑止してくれるのが、妻と娘という存在なのです。


…この者たちを、悲しませてはいけない。

…この者たちを、絶望させたくない。



俺が行き抜くことによって、何かを伝えることができるなら。

俺が耐え忍ぶことによって、何かを残すことができるなら。


まだ、死ぬには早いんじゃないか…



そこまで思えれば、上等。



お昼になると、自然とお腹が空いてきた。

妻が、塩味の軽いチャーハンを作ってくれた。


うまい。

体と心に、優しいエネルギーが入っていくのを感じる。







午後から出社して、上司のAさんと、Bさん、Cさんに、話を聞いてもらいました。

みんな、同意見でした。

絶対、貸さない方がいい!(笑)


ウチの従業員は、みんなそれぞれ、事情を抱えていますし、心の闇がある。

うつの家族を持った人もいるし、不登校になった子供がいる人もいる。

だから、みんな、俺の話をちゃんと聞いてくれるんです。

生き物を育てる人は、人の心もちゃんと見てくれる人なんです。


俺は、泣きながら、みんなに、本当のことを話しました。


正直に何もかも話すのは、とても、勇気のいること。




ずっと、半年以上、無遅刻無欠勤だった俺ですが、

ここに来て、ついに仕事を休んでしまいました。


上司は、理解してくれました。

幸い、次の出荷は水曜日なので、

月火と、2日間のお休みをもらうことができました。





家に帰って、妻に話して、よかったね、と言われて、

しばらく横になって休んで、夕方に一緒にスーパーに買い物に行きました。


夜になると、娘が元気に帰って来ます。



上司から言われたこと。

娘さんが、毎日ちゃんと学校に行って、無事に帰って来る。

これって、すごくありがたいことなんですよ。

だから、桑畑さんも、ちゃんと無事に家に帰って、ゆっくり休んで下さい。




娘の声が聞こえて、妻が料理している音を聞くと、何だかほっとします。




月曜の夜は、よく眠れました。

今日は、朝食を一緒に摂ってから、薬を飲んで昼過ぎまで寝ていました。

電話は、鳴りません。




バカヤロウ という言葉が聞こえてはいますが、音量が下がりました。

賑やかな家族の楽しそうに笑う声の方が、大きいからです。


バカヤロウ という声の代わりに、違う声が聞こえてくるのを感じます。


桑畑さん、あんた、運がよかったねえ~


眼鏡屋のおじさんの言葉です。




急所を外れたおかげで、視力を失わずに済んだ。

同時に、保護眼鏡の大切さを学んだ。

転職を繰り返したおかげで、妻に出会えた。

デキ婚(授かり婚)をしたおかげで、家族ができた。

倒産やリストラを経験したおかげで、たくさんのことを学んだ。

電柱にぶつかったおかげで、眼鏡屋に行くことができて、

おじさんから、この言葉を聞くことができた。


うつになって療養したから、出会えた人も多い。

リハビリでウォーキングしていたら、近所にカフェを見つけた。

ダイエットでジムに通い始めたら、娘も入会して、運動音痴を克服した。

もう俺はやめたけど、娘は部活と両立させて、まだがんばって通っています、


自分がうつであると公表しているので、理解してくれる人たちが現れます。

うつになったおかげで、より深く、人間同士の会話を楽しめるようになった。




世の中、悪い事ばかりじゃない。



今回、こうなったからこそ、いい本に出合えた。

見る予定じゃなかった映画も、見ることになった。



幸運か、不運か。

幸福か、不幸か。


決めるのは、自分の心である。





危ない期間をうまく通過したと思って、油断していたようです。


急降下。


急上昇しようとしてがんばると、一気にエネルギーを使い果たして、

墜落してしまうリスクが高まる。



こういう時は、経験上、まず、落ちるスピードを調節することから始めます。

落ちていくのは、しょうがない。

スピードを緩められることさえできれば、やんわりと着地できるから。




昨日までの俺は、底にうずくまっていました。

今は、少しだけ、体を浮かせるように、噴射のテストをしています。



こうして、心の中を文章にしていくことによって、整理されていくのです。

読む側の人は、すごく疲れるでしょうが、ここは、そういうブログ。

でも、ちゃんと読んでくれる人が思ったよりたくさんいることがわかったので、

話を聞いてくれる相手がいるつもりで、こんな風に書けるんですね。





日曜の昼までは、あんなに元気だった男が、

数時間後には、地獄に突き落とされてしまう。


うつは、恐ろしい病気です。

だけど、きっときっと、いい面もある。


俺は、生きることで、それを証明してみたいのです。






明日から、仕事に復帰する予定です。

朝7時から、出荷が始まります。




バカヤロウ という声。

運がよかったね という声。

家族の笑い声。



そして、豚たちの元気な声が、聞こえてきます。



















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