FUJITA'S BAR
2010-10-17

十三人の刺客

テーマ:邦画

サムライは、時代を超えて剣を抜く。 …斬って、斬って、キレまくれ!


久々の執筆であります。もう桑畑は死んだんじゃないかって思われるのもつまんないので、そろそろ再開したいなあと思います。ちゃんと生きていますので、どうかご安心を。


“刺客”とは、広辞苑によると、“暗殺を行う人”という意味。集められた13人の男たちには、殺しのライセンスが与えられた…ってその“資格”じゃねーよ。彼らは、予想もしない空間からの攻撃を受けて…ってそれは“死角”ですね。実は、このサムライオーディションには、26人の応募があり、合格者は13人。中途半端な残りの連中は落とされるのであった…おお、これぞ“13人の失格”!…そんな話じゃないって。



1963年に公開された時代劇映画の傑作が、装いも新たに復活リメイク。監督は、三池崇史。脚本は、天願大介。撮影は、北信康。音楽は、遠藤浩二。


出演は、役所広司、市村正親、平幹二朗、田孝之、伊勢谷友介、松方弘樹、伊原剛志、松本幸四郎、岸部一徳、沢村一樹、古田新太、波岡一喜、光石研、内野聖陽、吹石一恵、谷村美月、高岡蒼甫、六角精児、近藤公園、石垣佑磨、窪田正孝、斉藤工、阿部進之介。


さて、映画ですが、イライラストレスを吹き飛ばすような快作に仕上がりました。三池監督独特のエログロ要素もあるので、そこは好みの分かれるところですが、面白いものを作ろうという感覚はビシビシ伝わってきます。窮屈な時代だからこそ、こういう映画が必要なんじゃないでしょうか。昔も今も、男の本質はそんなに変わらない。日本の疲れたサムライたちよ、スクリーンの向こうに一太刀入れようぜ!



江戸時代の末期、明石藩主のお殿様がご乱心。これは手に負えんから暗殺してしまおうということになった。集められた13人の男たちがチームを組んで、300人を超えるサムライ集団と壮絶なバトルを繰り広げるのであった…。




主演は、役所広司。役柄は、暗殺隊のボス、島田新左衛門。物静かな雰囲気を持ちながら、心の中に熱いものを感じさせる男。NHKドラマ「宮本武蔵」や、「どら平太」のようなギラギラした感じではなく、どちらかというと、「突入せよ!あさま山荘事件」の時の佐々のおっちゃんの雰囲気に近いかと。


オリジナルでは、終盤まで斬り合いに出ませんでしたが、本作での彼は、先頭を切って戦闘に参加します。みんなと同じ汗を流す親分ってのは、現場主義でよろしい。戦略家でもあり、人間としても興味深い男。彼がどんな風にみんなを率いていくのか、お手並み拝見といきましょう。



明石藩御用人(お殿様のボディガード)を演じるのは、市村正規。このオヤジ、メチャクチャカッコいいッス。「ベロニカは死ぬことにした」の精神科医役でも、ただならぬ雰囲気を感じたものですが、本作の役柄は超魅力的。若い観客にはウケないかもしれないけど、俺的にシビレました。彼の熱演のおかげで、映画が盛り上がったと思う。


筋を通すということ、自分の役割をキッチリ果たそうとするその情熱に心を打たれました。このおっさん2人が放つ、火花のような視線が熱い。男の意地にかけて、誇りとプライドをかけて、ぶつかり合う美しさ…ああ、男ってスバラシイ!泣けるで!



侍たちの中で注目したいのは、伊原剛志。彼は、「硫黄島からの手紙」や「築地魚河岸三代目」でも、寡黙な男を好演していましたが、本作もなかなかいい感じです。口数は少なく、行動で見せる男って、何だか憧れちゃいますね。長身から繰り出される刀さばきの豪快さは、「必死剣鳥刺し」の吉川晃司と互角かも。彼は、男を感じさせるいい役者だと思います。時代劇、どんどん出て下さい。



参謀役を演じるのは、大御所松方弘樹。役柄としては、「七人の侍」の加東大介的な面と、新左衛門よりも年上であるという面を合わせて、おやっさん的な存在。腰の据わった構えは絶品でした。弓矢の腕も実際スゴいらしいのでお見逃しなく。松本幸四郎も、出番は少ないですが、堂々とした風格の演技でした。



山田孝之、高岡蒼甫、波岡一喜の3人は、「クローズ」組ですな。学生服と拳が、そのまんま着物と刀になった感じが笑えます。ケンカじゃなくて、殺し合いバトルだから、顔つきも一味違うぜ。真剣に真剣を振り回せ!


沢村一樹、古田新太、六角精児の3人は中堅層。親分がここをうまく使いこなすことができれば、チームの力は数倍に跳ね上がる。13人全員のキャラを細かく描写するのは尺度的に難しいので、見えないところは想像して膨らませましょう。彼らの表情や行動を見れば、血の通った組織であるかどうかはちゃんとわかるものだから。



市村正規をうまく引き立てるのが、ベテラン光石研。彼は、何やってもうまいですねえ。彼のヘタレぶりが、慌てふためくうろたえぶりが爆笑でした。これって、「古畑任三郎」に出ていた西村雅彦とおんなじキャラかも。ある意味素晴らしいコンビネーション。


女性陣は、ほぼ全員が道具扱いって感じ。谷村美月も、吹石一恵も、あんまりきれいじゃなかった。こんなんでいいの?って思ったほどのヒドさですが、外国人にはこの方がウケるのかなあ?そういえば、「スキヤキウエスタン・ジャンゴ」の木村佳乃もケバかったっけなあ。これって、三池監督のセンス?



変わり種は、伊勢谷友介。役柄は、サムライではなく野人。この兄ちゃんが、なかなか映画を盛り上げてくれます。本作の彼のポジションは、「七人の侍」でいうところの菊千代様でしょうか。俺的には、「アルマゲドン」に出てくる謎のロシア人のような存在にも思えます。十二人の侍と、一匹の野人。武器は、刀ではなく、石つぶてとか、そこら辺で拾った木。あ、ある意味刀も持っているか。ある意味“隠し剣”と呼ぶにふさわしいアレです。



かわいそうだったのは、三州屋徳兵衛を演じた、岸部一徳のおっちゃんでした。伊勢谷野人のおかげで、大変な目に…。ううむ、これって「必死剣鳥刺し」とある意味おんなじか?こんな映画をヴェネチア国際映画祭に出品してしまう三池監督の度胸ってスゴい。



で、一番イカンのが、お殿様を演じた稲垣吾郎でした。 あっはっは、これはどうにもならんですなあ、笑うしかない。世間知らずのお坊ちゃんという雰囲気は出ているんですが、毒々しさが見事なまでにウソっぽいです。無理に悪ぶっているところが、かえって痛々しい。


パッと見、頭が良さそうに見えるから、少なくとも馬鹿キャラではない。自分なりに何かを考えている男だろうと、後半はちょっぴり期待したんですが…これはアカン。本人としては迫真の演技なんだろうけど、何だか見ていて気の毒になりました。大変だったねえ、ゴロちゃん。


まあ、これもきっと、三池監督の計算なんでしょう。オバチャンたちを劇場に呼ぶための奇策かもしれないし。ゴロちゃん出てるから行こうかしら。…あらっ、何よ、この変てこな役柄!彼はきっと、誰かに騙されているんだわ! ふっふっふ、劇場に入ってしまったらもう遅い。かかったな、飛んで火に入る夏の虫とはこのことだ。ものども、かかれい!誰も生きて帰すでないぞ!


そんなわけで(どんなわけだよ)、本作を侮るなかれ。期待はことごとく裏切られ、命は無残に散っていく。果たして、ゴロちゃんの運命は?中途半端に憎々しい演技の代償は?気になる人は、劇場へ行こう!




オリジナル版「十三人の刺客」は、「七人の侍」から9年後の1963年に公開。それまでの時代劇スタイルを塗り替えるような、斬新な演出が話題になりました。工藤栄一監督は、同時期に東映ヤクザ映画もたくさん撮っていたので、イキのいい男たちの群像劇が得意なのではないかと。(レンタル屋に行って探したみたら、DVDは見当たらなくて、VHSでようやく見つけました)


時代劇というジャンルは、奥が深い。日本人のいい部分、美しい部分を表現するのに、これほど適した教材はないと言っても過言ではないでしょう。そして、時代劇の世界は懐が広い。だから、どんなスタイルでもOKなのだ。時代劇には、ロマンが宿っているのだから。だから、本作のような作品は、ドンドン新しい冒険をしてもらいたい。



日本人は、基本的に真面目である。真面目だからこそ、苦悩する。自分の生き方にこだわる。自分自身に悩む。人に対して悩む。目上にも、目下にも悩む。異性にも悩む。自分の力ではどうにもならないことにも悩む。がんばらなくていいことまでがんばってしまう。それはなぜだろう?


きっと、そうせずにはいられない民族なんですね。人の気持ちに共感するからこそ、協調性がうまれる。困っている人を見ると、助けたくなる。人からしてもらったことを、違う誰かにしてあげたくなる。そういう優しさを、誰もがみんな持っている。それが、日本人の美しい心。



日本人の男には、日本人の男にしかないよさがある。それだからこそ、男であれば誰にでもサムライの魂は宿っている。男にも色んなタイプがいるように、サムライにも色んなタイプがいていいのだ。自分にふさわしい剣を持ち、自分らしい戦い方ができればいい。みんなと同じである必要はないのだ。


だから、カッコよさの本質は、その人らしさがにある。人の真似や借り物だけで満足できるほど、自分という器は小さくないのだ。自分のやりたい事、やるべき事が一致した時にこそ、男は本気になれる。


“同志”とは、志を同じくする者。進むべき方向が同じである者は、すぐに仲間になれる。仲間が増えれば、役割も決まっていく。それは、命令されるというよりも、自然にそういうポジションになっていくもの。そこが面白い。

俺が時代劇に感じる魅力の1つに、『…おぬし、できるな。』 という世界があります。言葉でクドクド説明するよりも、一瞬で見抜いてしまうような感覚って、日常生活でもありますよね。子供心にも、男の世界ってカッコいいと思ったものです。ヤクザ映画でも、西部劇でも、戦争映画でも、言葉や思考を超えて、感覚で理解してしまう。男が男に惚れるって、いいもんです。


直観力というのは、なかなかあなどれないもの。出会った時にビビビッと、なんて言葉も一時期流行りましたが、あながちあり得ないことじゃないんです。あの人は、何か普通と違うな、何か人にないものを持ってるな、と直感で思うことがあったら、その感覚を大切にしましょう。その理由がちゃんとわかる時が来るから。




本作の最大の見せ場は、後半のアクションシーン。とにかく長い。長い。長い。オリジナルより敵の人数が増えた分だけ長い。やたらに長い。必要以上に長い。長いから観客も疲れる。役者たちも、斬られて死んでんだか、疲れて倒れてんだかよくわからん(笑)。とにかく、見終わった後はヘトヘトになります。これはある意味、部活のキゴキに耐えたような、変な爽快感があるかも。(ないって)


戦うというのは、しんどいもんなんですね。それを学ぶために見たような気がします。ヴェネチア映画祭でのスタンディングオーベーションも、やっと終わった安堵感からだったりして。イタリアの観客の皆様、大変お疲れ様でした。日本って、色んな意味でスゴい国なんですよ。ちゃんと覚えておいて下さいね。




あえて言いましょう。男は、誰でもサムライである。その人にしかない、強い部分は必ずある。その方向に剣を抜けば、最強の戦士になれる。だから、自分の個性をしっかりと見つめよ。長所か短所かなんて、他人が勝手に決めること。


自分と向き合い、自分に嘘をつかない生き方をしていれば、必ず輝く瞬間がある。人から何と思われようと、抜かねばならない剣がある。最大の武器は、己の心の中にあり。封印が解かれるその時まで、しっかりと磨いておくべし。



抜くも地獄、抜かぬも地獄。一度抜いたら、ためらうな。男一匹、怒涛の反撃。ジャパニーズ・ソードがうなりを上げて、堪忍袋の緒をカット。解き放たれた鋼の獣が、縦横無尽に斬りかかる!


眠れる獅子たちよ、埋もれた才能たちよ、男の戦いに参加せよ。多勢に無勢は死語の世界。溜め込んだ怒りを刃に染み込ませ、しがらみを断ち切り、運命を切り開くのだ。 …血しぶきあげて、致死武器振り回せ!






【鑑賞メモ】

鑑賞日:9月27日(月) 劇場:ワーナーマイカル県央 21:10の回 観客:約13人


【上映時間とワンポイント】

2時間21分。13という数字を赤色でプリントしたセンスはダサいと思う。これだと「オーシャンズ13」のパクリ映画みたいですね。13を堂々と世界に発信できるのは、「ゴルゴ13」「13階段」「銀河漂流バイファム」くらいかな。


【オススメ類似作品】


「十三人の刺客」 (1963年東映)

監督:工藤栄一、出演:片岡千恵蔵。本作のオリジナル映画。本作では13人対300人ですが、もともとは13人対53人。三味線の場面がとても印象的でした。本作には出なかった名シーンなので、未見の人は要チェックです。工藤監督は、翌年の1964年には「大殺陣」を、1967年には「十一人の侍」を世に送り出して、シリーズ化にも成功。(そっちの2本は、俺は未見ですが)


「七人の侍」 (1954年東宝)

監督・脚本:黒澤明、出演:三船敏郎。あらゆる意味で、やっぱりこれが原点かと思います。貧しい村人たちが、野武士を倒すために侍を雇う物語。そんな、侍なんか雇う金は村にはねえだ。 …なあに、腹減った侍を探しゃあええだよ!ちなみにこちらは、7人プラス村人連合軍対野武士40人。最後の一騎打ちは、野武士が13人でした。宮口精二はカッコいいし、千秋実はユーモラス。“○○○○○○△た”の旗は面白かった。拙者、文章の腕は中の下、薪割り流を少々。


「将軍家光の乱心 激突」 (1989年東映)

監督:降旗康男、原作・脚本:中島貞夫・松田寛夫、出演:緒形拳。やっぱりこの映画、好きなんですねえ。俺の記憶だと公開当時の宣伝では、7人対幕府軍2000人。忍者がいたりカンフー使いがいたり、爆薬とか火だるまアタックとか、ムチャクチャな展開が魅力。本作の役所・市村対決は、この映画の緒形・千葉対決を思い出しますなあ。ご乱心のお殿様を演じるのは、京本政樹。おお、ゴロちゃんより100倍悪そうだ!ちなみにこの映画は、ベルリン映画祭の招待作品。後に椿三十郎を演じることになる、織田裕二も出ています。


「ベロニカは死ぬことにした」 (2005年角川)

監督:堀江慶、原作:パウロ・コエーリョ、出演:真木よう子。市村正規が個性的な精神役で出演しているので、ついでにご紹介。この映画の真木よう子は、とってもセクシーでした。姉さん、いい表情しますなあ。堀江監督は、ガオレンジャーのガオイエローだった兄ちゃん。「渋谷怪談」で堀北真希を有名にした実績も忘れ難い。




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