FUJITA'S BAR
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2008-10-31

10月を終えて

テーマ:エッセイ

【今月行かなかった映画とその理由】


「P.S.アイラブユー」

追伸・愛してるよ、何て言われてもなあ。死んだ後に手紙が続々届くのも、現実に考えると何だか恐ろしい感じがする。さんざん言っておいてから 『…俺を忘れて新しい恋を探せ。』 っていうオチはヒドいんじゃないかと。予告編でキモチ悪くなって吐きそうになりました。どちらかといえば、ホラー向きかも。ジム・キャリー主演で。


「フレフレ少女」

何だかアタマ悪そうなタイトルだなあ。ガッキーさんはちょっと興味が湧かないのでパスします。


「ホームレス中学生」

小池君だったら、ホームレスしなくても食っていけそうですね。リアリティに欠けるのでパス。


「私がクマにキレた理由」

どうでもいいようなタイトルなので、ホントにどうでもいい。


「宿命」

韓国映画、と聞いただけで萎えそうな今日この頃、豪華共演というだけじゃ触手は動きません。




今月見に行った劇場映画は、全部で13本。今年の通算は101本になりました。


緒形拳が亡くなったというニュースには驚きました。「長い散歩」 での渾身の演技が今でも忘れられません。今思うと、これが最後といわんばかりの熱演だったような気がします。最後の映画出演がぬらりひょんだったのもご愛嬌ということで。


今月も、仕事面で苦悩が多かった。部下の失敗が度重なって、尻拭い残業もしばしば。だけど、自分の中の問題が、下の者に出るんだと思うので、自分の問題としてとらえることにしています。上の者が何倍もがんばらなくちゃ、若いもんはついてこないしね。


今日付けで辞めた若者もいた。連絡先を渡して、今度飲もうよといっておいたけど、たぶん連絡してこないだろうな。ま、それもいいか。俺も20代の頃にいっぱい転職したから。若いうちは、何でもやってみるといい。行き詰まったら、俺がちゃんと話を聞いてやるからな。


オヤジになると、体力の回復が遅くなる。やりたいことはあっても、体が悲鳴をあげて動けないこともしばしば。いろんな記事を書きかけて、完成できずに消去してしまうこともしばしば。劇場記事を書くので精一杯なのが現状です。もともと筆が遅いこともあって、何とも情けないやら、さみしいやら。


まあ、もうしばらくしたら元気も出ると思うので、そうしたらまたアホな記事を連発していこうと思います。今年中に言いたいことは全部言ってしまいたい。疲れて無気力になっていくのは絶対イヤだから。


好きなことを続けていくのも、体力と気力が必要。迷っているヒマはない。ただ、前進あるのみ。緒形拳主演の 「激突」 の最後のセリフを励みに、来月もがんばろうと思います。



   『…走れ!だた真っ直ぐに、走れ!』   …合掌。






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2008-10-28

ICHI

テーマ:邦画

ナニ斬るかわかんない女と、ヌケない男。 ボロは着ててもしっかりメイク。 …こいつ、ただもんじゃねえ!


“ICHI” とは、主人公の名前、市のこと。いわゆる、座頭市の女版です。初代が勝新太郎、2代目がビートたけしとすれば、今回は3代目といったところか。 気になったので、初日に押っ取り刀で駆けつけました。


監督は、曽利文彦。脚本は、浅野妙子。出演は、綾瀬はるか、大沢たかお、中村獅童、窪塚洋介、柄本明、竹内力、利重剛、佐田真由美、島綾佑、杉本哲太、横山めぐみ、渡辺えり。


さて、映画ですが、ビジュアル的に見どころ満載の1本です。よく考えるとおかしいんだけど、面白いからいいじゃありませんか。これはぜひ、シリーズ化してもらいたいところです。


主人公の市は、“瞽女(ごぜ)” と呼ばれる、三味線を弾く盲目の女旅芸人。実は彼女は、仕込み杖を武器とした剣の使い手でもあった。わけあって人探しをしながら旅を続けているうちに、ある宿場町で、一人の頼りない侍に出会う。そこは、血の匂いが漂う物騒な雰囲気に満ちていた…。


主演は、サイボーグ女優・綾瀬はるか。キレイなお肌とクールな無表情で観客を魅了した彼女が、今回演じるのは、何と座頭市。どんな役柄にも挑戦するのはいいことです。演技はともかく、剣の振り方と足さばきがなかなか美しく、ちょっと見とれてしまいました。…いいじゃん、これ。


「あずみ」 でもそうでしたが、剣は力よりも速さ。俺も刃物を使う仕事をしているので、刃先が切れていれば力はさほどいらないということは実感としてわかります。だから刀の切れがよければ、女の力でも充分戦える。ただ、男と女では体重が違うので、まともにぶつかれば吹っ飛ばされてしまうでしょう。そこで大事なのが、紙一重で交わす技術。仕込み杖ということもあって、刀の握り方は逆手になるから、ふところに飛び込んでサクッっと斬る感じ。盲目だからこそ、接近戦で仕留める。相手は、交わす暇もない。…やっぱりカッコいいよなあ。


殺陣を担当したのは、久世浩。勝新太郎の 「座頭市」 でも殺陣を担当したベテラン。彼の話によると、綾瀬はるかがバスケットボールを経験していたことに注目し、敵をドリブルで交わす要領で指導したとか。なるほど、足さばきの秘密はそれか。そして、剣を振る姿が美しい。何と言うか、型がさまになっている感じ。スローモーションで血しぶきを浴びながら斬りまくる姿は絶品でした。


絹のような美しい肌を持ちながら、現場ではスタントマンを使わずに全て自分で演じたそうです。擦り傷だらけになり、手から流血しても、足の爪が剥がれても、歯を食いしばってがんばりました。その気合いが画面から伝わってくると思うので、しっかり見てあげましょう。もちろん、彼女の美しい横顔のアップも2~3度出てきますのでお見逃しなく。


演技面で言うなら、押し黙った彼女の視線は、とても集中力がある感じがする。役にかける情熱と、何でもやってみるチャレンジ精神は充分に持っているみたい。だから、お肌と同様に演技力も磨いていって欲しいと思います。ガンバレ、ビューティ・サイボーグ・女サムライ!


大沢たかおが演じるのは、過去のトラウマから刀を抜くことができなくなった侍。それでいておせっかいなので、こちらもなかなか危なっかしい。刀を抜こうとしても抜けないという状況が、何だかコントみたいで笑えました。だったら他に方法を考えろよと言いたくなるけど、彼のマヌケぶりが主役を引き立てるので、それもいいのかと。そういう役柄をちゃんと演じた彼もまた、立派な役者だと思います。だから、「ミッドナイト・イーグル」 のことは忘れてあげましょう。


悪役の万鬼を演じた中村獅童は、とても楽しそうでした。アイパッチで、剣をいつも片手で振り回す姿は、まさに丹下左膳。子供の頃に、萬屋錦之助のチャンバラ時代劇に魅了されて育った俺にとっては、彼の剣さばきは感慨深いものがある。 『…人間はなあ、一度落ちたらもう元には戻れねえんだ!』 という彼のセリフが爆笑でした。なるほど、飲酒運転でつかまって浮気がバレて、竹内結子という “スリバチヤマ” を奪還し損ねた彼にはもう、失うものが何もない。…こりゃあ、最強の悪役だ!


窪塚洋介が演じたのは、白河組の2代目。今回は控えめな役柄ですが、抑えた演技がかえって際立っていました。少ないけど、見せ場もあります。捨て身の反撃もカッコよかった。彼もまた、飛び込み事件以降、失うものがなくなって身軽になった役者だと思うので、思いっきりがんばって欲しいと思います。


竹内力は、存在自体のオーラがすごい。今回は、中村親分の手下役。こんなすげえ部下がいたら、悪役もハクがつくってもんですね。北野監督版 「座頭市」 で悪役を演じた柄本明が出ているのもうれしい。女中役の渡辺えりはコワかった。そして、杉本哲太の妙演にもご注目。


そして特筆すべきは、やっぱり綾瀬はるかのチラリズムでしょう。「あずみ」 の上戸彩はフトモモが魅力でしたが、本作の綾瀬は、全身をキッチリ隠しています。露出度は皆無で、ボロボロのボヘミアン風。だけどそこから時折見える肌の一部が、妙になまめかしい。刀傷を受けて着物が裂けると、ここから白い肌と切り傷が…。ううむ、ある意味これは上級者向けの映像美かも。


ボロは着てても何とやら。やたらに出しゃあいいってもんじゃない。隠すからこそ際立つボディラインというものもある。どんな服装でも、着こなしによって最高のファッションになるのだ。


盲目なのに、メイクがバッチリなのも笑えます。お肌の手入れもかなり行き届いています。これは事務所の都合なのかもしれないけど、旅芸人としての修行で身に付けた技術と思うことにしましょう。生きていくためには、何でもやらなきゃならない。彼女の汚れのない美しさは、己の剣で守り抜いてきた賜物なのだ。


いつか自分を受け入れてくれる誰かのために、あたしはキレイでいたいのよ!寄るなケダモノ、それ以上近づくと、ナニ斬るかわかんないよ、見えないんだから!テメエのイチモツをちょん切るぞ!チン切りコレクター・イチをナメんなよ、まとめて干物にして酒のつまみにしたろか!(註・本編と全く関係ない妄想なので聞き流して下さい)


彼女の美しい肢体から繰り出される剣の動きが、飛び交う血しぶきが、妖艶なオーラが、悲しみと怒りの涙が、芳しい香りに包まれて映画館を漂う。…斬って斬って、斬りまくれ!己の呪われた運命を断ち斬れ!


次回はぜひ、もっとセクシーな衣装でいきましょう! …うふふ、何着るかわかんないよ、見えないんだから。





【鑑賞メモ】

鑑賞日:10月24日 劇場:ワーナーマイカル県央 18:20の回 観客:約15人

会社のM先輩と行きました。その後はファミレスでハンバーグを食いました。何か無性に切りたくなったもんで。


【上映時間とワンポイント】

2時間。PG12なので、小学生は保護者の同伴が必要。綾瀬はるかっていうセクシー女優が出てるんだよって、パパにおねだりしよう!


【オススメ類似作品】


「僕の彼女はサイボーグ」 (2008年5月公開)

監督・脚本:クァク・ジェヨン、出演:綾瀬はるか、小出恵介。彼女の無表情な顔がとってもセクシーでした。演技力のなさが効果的に作用した、珍しいパターンだと思います。かなりムチャクチャな映画ですが、魅力的な彼女です。…俺も1体欲しい!


「ピンポン」 (2002年アスミックエース)

監督:曽利文彦、原作:松本大洋、出演:窪塚洋介、中村獅童。曽利監督のデビュー作。本作にも出演している2人の戦いぶりがとても魅力的な1本。個人的には大倉孝二と彼女のバカップルぶりが笑えました。


「暗いところで待ち合わせ」 (2006年ジェネオン)

監督:天願大介、原作:乙一、出演:田中麗奈。盲目の演技といえば、最近ではこれがダントツによかった。本作がシリーズ化されたら、田中麗奈の出演も検討してはいかがでしょう?


「ナイト・オン・ザ・プラネット」 (1991年アメリカ)

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ、出演:ウィノナ・ライダー。5人のタクシードライバーにまつわるオムニバス映画。3つ目のエピソードに登場するパリの盲目女性客にご注目。演じるのは、フランス映画の怪女優・ベアトリス・ダル。彼女の白目をむいた演技は迫力があった。黒人のイヤミな運転手と堂々と口ゲンカする姿はなかなかクールでした。このくらいの強さがなくちゃ、今の世の中生きていけないですね。


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2008-10-24

イキガミ (祝・100本達成!)

テーマ:邦画

この映画のイキゴミを買いたい。 “24時間しかない” と思うか、“24時間もある” と思うか。


“イキガミ” とは、政府から発行される死亡通告証のこと。これを受け取った者は、24時間後に必ず死亡するらしい。通称 “逝紙”。どうやら “生き神” ではないようです。


原作は、間瀬元朗の同名マンガ。監督は、瀧本智行。出演は、松田翔太、劇団ひとり、笹野高史、柄本明、金井勇太、塚本高史、りりィ、北見敏之、風吹ジュン、塩見三省、佐野和真、成海璃子、山田孝之、井川遥。


さて、映画ですが、ストーリーがトンデモなだけに、深い作品に仕上がりました。「バトルロワイアル」 「リアル鬼ごっこ」 では、理不尽な暴力にさらされる側の視点でしたが、本作は執行する側の視点で描いたドラマです。常識のかたまりのような人が見るとかなりムカツクかもしれないので、誰かと一緒に行く人は慎重に人選を。


「国家繁栄維持法」 なるものが施行され、1000人に1人の割合で国民が合法的に殺されていくことになった。死ぬ24時間前にイキガミが発行され、対象者は最後の一日を過ごすことになる…。


主人公のイキガミ配達人を演じるのは、松田翔太。国家公務員のエリート役ですが、庶民的な目線で物事を考える人。仕事には、機械的に淡々とこなすというプロの側面と、誰かの役に立つという理念の側面がある。彼の苦悩は、誰もが共通に感じていることなのかもしれない。翔太君のナイーブな演技に注目して下さい。


映画は、三部構成になっています。ミュージシャン編、選挙編、手術編といったところ。それぞれのパートで、イキガミをもらった人たちの苦悩が渦巻いていく。


主人公の上司を演じるのは、ベテラン役者・笹野高史。最近はいい人の役が多かったので、今回はシブいところを見せてくれます。フラフラしている松田君をビシッとたしなめるプロフェッショナルぶりがいい。職務をちゃんと全うする男がいてこそ、世の中は機能する。彼の素晴らしい演技を、姿勢を正してご覧下さい。


とにかくこの映画、脇役陣が豪華です。柄本明は 「リアル鬼ごっこ」 同様、理不尽ドラマで映える男。りりィは 「パーク・アンド・ラブホテル」 で不思議な魅力を発揮した女。井川遥と山田孝之は、しっかりと自分のポジションを獲得している。成海璃子は今ひとつだったけど、作品のバランス的には問題なし。


特筆すべきは、風吹ジュンでしょう。彼女は、こういう役をやるととても際立つ。真面目な暴走ぶりが、映画の中盤を盛り上げます。「無能の人」 「降霊」 で見せたあの路線の演技を覚えている人には必見です。



人間は、誰でもいつかは死にます。でも、明日死ぬと突然言われたらどうするか。ほとんどの人は、慌てふためいているうちにリミットが来てしまうんじゃないかって思う。俺はどうしよう?せっかくだから 「24」 でも見るか。あ、第1シーズンで終わっちゃうじゃん!やっぱりここは、普段できないことをやんなきゃ。そうだ、「三国志」 を読破するか…って間に合わねえって!


イキガミをもらった人には、飲食店無料、交通機関無料といった “特典” があるそうです。うまいもんを食うにしたってたかがしれているし、移動する時間だってもったいない。俺はとりあえず、公開中の最新作を2本くらい劇場で見て、家族でゆっくり思い出話をして食事をして、娘と風呂に入って、夜は最後のブログを書く…って感じでしょうか。そんなことくらいしかできないでしょう。ひっそりと生涯を終えることになるだろうから、できれば見苦しくない最期でありたい。


人間、生まれてくることと死ぬことは自分で決められない。寿命にも個人差があるので、誰もが平等じゃない。だけど、その限られた時間をどう使うか、物事をどうとらえるかは自由でありたい。自由には責任がともなうし、自分の力でやるからこそ価値がある。たとえ一瞬でも “生きている実感” を感じられた人は、幸せな人生であったと俺は思いたい。人がどうのこうの言ったって、自分の人生は自分のもの。自分に恥じない生き方を貫きたい。


本作はトンデモ映画ですが、世の中の枠から飛び出して、初めて見えてくるものがあるという点で非常に興味深い。色んな視点を持つことは、生きる上での武器になる。何を信じればいいかわからない世の中において、まず自分がどういうポジションに立っているのかを見極めることが大切。そしてそれは決して不動ではなく、刻一刻と変化していくものでもあるのだ。


主人公は、悩みながらも、職務を遂行していくしかない。その向こうにあるもの、自分にしか見えないものをしっかりと見据えて、懸命に生きていこうとする心を、観客も共有しましょう。誰しも、若い頃にそういう経験がたくさんあったはずだから。青くさいって、カッコいいことだから。


生きていると、自分一人の力ではどうにもならないことがある。だけど、自分に何かできることがある。余計なことかもしれないけれど、自分の魂がそれをやりたがっている。その心に素直に反応できるのが若者の特権だ。失敗して初めてわかること。そして小さな喜びと達成感。若いうちに色んな苦汁をなめた人の方が、最終的には面白いオヤジになれると思う。


この映画を見て、色んなことを考えました。今年通算100本目の作品にふさわしい秀作。俺は、命ある限り映画を見たい。書ける限りブログも書きたい。そしてやがて力尽き、自分が培った大切なもの、目に見えないかたちを、次の若者たちに残してオヤジは去っていく。 …そう、俺にとって映画は “イキガイ” なんです。




【鑑賞メモ】

鑑賞日:10月20日 劇場:ワーナーマイカル県央 20:40の回 観客:3人

俺と、カップルが1組だけ。静かに、しみじみと見ることができました。


【上映時間とワンポイント】

2時間13分。少々長いけど、内容が充実しているのであっという間です。人生もそうかな。


【オススメ類似作品】


「樹の海」 (2004年樹の海製作委員会)

監督・脚本:瀧本智行、出演:萩原聖人。瀧本監督のデビュー作。富士山麓青木ヶ原樹海を舞台に、生死の間でさまよう人たちの物語が展開。ダークな作品になるかと思いきや、ユーモラスであたたかい印象だったのをよく覚えています。俺はこの映画で、井川遥の演技が初めてすごいと思いました。


「降霊」 (1999年関西テレビ)

監督・脚本:黒沢清、出演;役所広司。風吹ジュンといえば、やっぱりコレでしょう。世話の焼ける霊能者ぶりは、「4人の食卓」 のチョン・ジヒョンと同様に笑えます。真面目な主婦が暴走していくさまは、本作にも通じています。追いつめられたら、ウソだってなんだって言うのが人間。悲しくもユーモラスな、何ともいえない作品。


「ワルボロ」 (2007年)

監督:隅田靖、原作:ゲッツ板谷、出演:松田翔太。本作で気分が沈んでしまった人は、この映画でリフレッシュしましょう。翔太君がツッパリ中学生を生き生きと演じています。ちなみに山田孝之ファンの人は、「クローズZERO」 がよろしいかと。



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2008-10-19

イーグル・アイ

テーマ:洋画

観客も、イーグル・アイでしかと見よ。 …この映画、ホントに大丈夫か?


“eagle eye” とは、“観察力の鋭い目” あるいは “監視の目” を意味します。(アドバンストフェイバリット英和辞典より) ちなみにイーグルは鷲(わし)。ゴルフのイーグルとおんなじですね。


製作総指揮は、スティーヴン・スピルバーグ。監督は、D・J・カルーソ。原案・脚本は、ダン・マクダーモット。


出演は、シャイア・ラブーフ、ミシェル・モナハン、ロザリオ・ドーソン、マイケル・チクリス、アンソニー・マッキー、ビリー・ボブ・ソーントン。


さて、映画ですが、はっきり言ってヒドい。これはもう、笑うしかないでしょう。ここにきて、またしても強烈なワースト映画候補が出現しました。 …はたして、この映画はヒットするのか?何だか違った意味でドキドキ。


残高ゼロだった男に、大金が突然振り込まれる。続いて大量の武器が届く。よくわからんままにテロリスト扱いされ、追われる身になってしまう。電話でやたらと指示を出す女は、一体何者なのか。一方、幼い息子を人質にとられた女が、同様の手口で合流。誰が、何の目的でこんなことを…?


主演のシャイア・ラブーフは、最近やたらと出まくりの俳優。「トランスフォーマー」 の主役、映画コラムでもお話した 「ディスタービア」 の覗き男、「インディ・ジョーンズ」 の息子を経て、今回またまた主役でございます。よっぽどスピルバーグ監督に気に入られたんですなあ。演技力は全然ないと思うけど。ちなみに監督は 「ディスタービア」 と同じ人。ますます萎えるなあ。


彼は、ヘタレ俳優としての才能は一応あると思う。ポカンと口を開けた顔は、確かにバカっぽい。使い道のある俳優ではあると思います。だけど、カッコいい役はイカんでしょう。あまりものを考えない顔をしてるから、何をしても不器用に見える。実際、演技の訓練をちゃんとしているのか疑問です。役者というよりは、ただのタレントじゃないかと思いますが。この辺は、好みによって意見の分かれるところ。今どきの若者は、彼のような男に共感するんだろうか。


演技力だったら、「ウォンテッド」 のジェームズ・マカヴォイの方がずっといい。シャイア君は、どうも演技というものをナメているように感じる。ショーウェストアワード新人賞をもらったからといっても、そんなのカンケーねえ。あくまでも、人の心を動かすのが演技力じゃねえのか。観客のイーグル・アイはもっと厳しいぞ。人気があるうちに、もっと地道なトレーニングをした方がいいと思います。


ヒロインを演じたミシェル・モナハンは、お世辞にも美人とは言えない。顔はマイケル・ジャクソンそっくり。演技力もボロボロで、終始見苦しかった。シングルマザーの役なんだけど、子供が誘拐された母親の顔になっていない。これでは、元カレが人質で、仕方なく行動しているようなレベル。悪いけど、俺は個人的に、この2人を応援する気になれませんでした。どうぞ勝手にくたばって下さい。


脇役の方は、横並びで個性はゼロ。唯一、FBI捜査官を演じたビリー・ボブ・ソーントンががんばっていましたが、役柄が中途半端なので、力を出し切れずに終了。 …ああ、いい俳優なのにもったいないこと。


というわけで観客側は、ずっとこのバカップルに振り回されることになります。ストーリー展開も貧弱で、ちっとも盛り上がらない。カーチェイスやアクションは、映画の内容に沿った組み合わせにしなきゃあ、ただのショータイムになってしまう。相当お金をかけて作っているのに、こんなに安っぽくていいんでしょうか。まあ、いいんでしょう。それで商売が成り立つなら、それもアリか。



映画館に貼ってあるポスターをよくご覧下さい。ヘタレシャイア君のアホ面がドアップになっています。『…何だよ、これは!』 って顔してるでしょ。観客だってこんなもの見せられたら、こういう顔になるって!この顔は、今後の彼の人生を暗示しているような気がしてならない。今からでも遅くないぞ、ちゃんと演技の勉強しろ。


個人的にはこの主人公は、宝クジに当たったと思って、ガンガン暴走しちゃった方が絶対面白い映画になると思う。もうイヤだと言いながらも、律儀に電話を取ってしまう素直さが悲しい。反撃する方法はいくらでもありそうだし、チャンスもいっぱいあったのに…と言いたいけど、ネタバレを避けるために言わないでおきます。


最初から最後までおんなじヘタレキャラを貫いたところで、のび太くんより魅力ないよ、あんたら。中途半端にハードな設定をしておいて、細かいところはスカスカボロボロの、スカボローフェア。怒りのツッコミを何回入れたくなったことか。いっそのこと、この主役たち、途中で交代して欲しかった。


本作は、面白い映画になる要素がいっぱいあった。スピルバーグ監督の当初の構想では “映画館を出た後で、携帯電話のスイッチを入れるのが恐くなってしまう映画” だったそうですが、どうしてこんなことに?脚本を書いたダン・マクダーモットって、もしかして相当頭悪いんじゃないでしょうか。どう考えてもおかしい場面がたくさんあったような…。


まあ、所詮はオヤジの愚痴なので、心ある人はうまく聞き流して下さい。彼はきっと、今どきの若者を代表するイメージなのかもしれない。大作の主人公って、最大公約数的なキャラになるもんだから。なるほど、シャイア君みたいな男がカッコいい男子なんですね。


というわけで本作はあまりオススメできませんので、行くなら覚悟して見て下さい。あなたのイーグル・アイで、心眼で見極めて下さい。これははたして本当に傑作なんだろうか。俺は金払って劇場で見たから、堂々と意見を言います。この映画の犯人の魅力はゼロ。主役もストーリーも最低。「ワン・ミス・コール」 よりさらにヒドいシロモノと言えます。


さあ、言いたいこと言ったぞ。 …文句がある奴はかかってこい!




【鑑賞メモ】

鑑賞日:10月18日 劇場:ワーナーマイカル県央 21:00の回 観客:約80人

みなさん、シーンとしたまま出て行かれました。あのう、面白かったですか?途中でケータイを開いたバカが約2人。スピルバーグのおっちゃん、全然恐がってませんよう!


【上映時間とワンポイント】

1時間57分。この映画、「ゲット・スマート」 とクライマックスがおんなじ。どうせ見るなら、あっちを勧めたいところ。


【オススメ類似作品】


「エネミー・オブ・アメリカ」 (1998年アメリカ)

監督:トニー・スコット、出演:ウィル・スミス。テクノロジー・コメディとして面白い映画。ウィルが弁護士という設定がまず笑える。ガンダムの紙袋を持って逃げるのも笑える。エレベーターでパンツ一丁になるのは爆笑。ウィルは、スバラシイ俳優だと思います。どうせなら、彼のような人間を応援したい。


「ガタカ」 (1997年アメリカ)

監督・脚本:アンドリュー・ニコル、出演:イーサン・ホーク。管理社会の徹底したリアリズムが面白い、近未来SF。サスペンスの原点はやっぱり緊迫感。題材は全く違うけど、テイストはこっちの方が秀逸だと思います。



※他にもいくつか候補作がありましたが、ネタバレのヒントになるのを避けるためにあえて割愛しました。




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2008-10-19

ゲット・スマート

テーマ:洋画

ビミョーな笑いが、次々と襲い掛かる! …これはある意味、手ごわいかも?


1965年に放映された、アメリカの人気TVシリーズ 「それ行けスマート」 の映画化。スパイ映画ファンには外せない1本、ということなのかな。何だか見たくなったので、「イキガミ」 を後回しにして見に行きました。


製作総指揮・監督は、ピーター・シーガル。出演は、スティーブ・カレル、アン・ハサウェイ、ドウェイン・ジョンソン、アラン・アーキン、“ヤッターマン” マシ・オカ。そして、テレンス・スタンプとジェームズ・カーンも登場!うっほー、こりゃあ、見なきゃ。


さて、映画ですが、見れば見るほど体の力が抜けていく、脱力感タップリの作品に仕上がりました。それなのに、微妙に面白かったりする。こりゃあ、変てこな映画だわ。軽いタッチなので、彼女といちゃつきながら見ても大丈夫です。ストーリーはいたって単純ですから。


アメリカの諜報機関 “コントロール” に所属している分析官が主人公。彼は、夢がかなってスパイに昇進。その名も “エージェント86”。ダイエットに成功した中年男と、若返り整形に成功した年増女のコンビが、世界征服を企む悪の組織に立ち向かう!


主役のスマートを演じるのは、スティーブ・カレル。ハリウッドのコメディ俳優として人気がある男だそうです。なるほど、品性があって真面目なイメージ。華はないけど、しっかりした実力がありそう。彼の演技を見たのはこれが初めてなので、今後に注目することにします。


ヒロインの整形女を演じるのは、アン・ハサウェイ。彼女、面白いですねえ。顔が派手なので地味な主役がかすんでしまいそうですが、そのアンバランスさがかえっていいのかも。彼女のグラマラスボディ(死語)は絶品。…フトモモ星人は見逃すな!


“やったー!” で有名なマシ・オカは、発明品オタクとして登場。彼が作ったメカが、主人公のピンチを救う…はずなんですが、ちゃんと使えるかどうか不安。詳しくは劇場でご確認を。


残念だったのは、悪役のテレンス・スタンプ。せっかく彼を起用したわりには、扱いがショボかった。「ウォンテッド」 といい、使い方間違ってるように思えて仕方がない。彼はもっとグレードの高い演技ができるのにねえ。ジェームズ・カーンは何と大統領役。でもちょっとなあ。もっと血の気が多い演技ができるのにねえ。


でも、それもいいのかもしれない。あんまり目立つと、主役がもっとかすんでしまう可能性もあるしね。やっぱり彼を中心として、バランスのいい配置なんでしょう。だから、みんな憎めない人ばかり。コメディというジャンルは、こういうスタイルでうまくいくのかも。「ジャージの二人」 を見た後だけに、何だか許せるっていうのかなあ。…もしかして俺、心が広くなった?


考えてみれば、「オースティン・パワーズ」 のマイク・マイヤーズはお下劣だったし、「裸の銃を持つ男」 のレスリー・ニールセンはジジイくさかった。やっぱり、スパイは品性があって紳士的が基本。「007」 シリーズで育った俺としては、妙に納得できる。


この映画は、真面目に仕事をする人たちへの応援歌であり、ドジな男たちへの鎮魂歌である。どんな巨大な力にも振り回されず、自分の信念を貫く男ってカッコいいじゃないですか。笑われたっていい。バカにされたっていい。自分が信じる道を行け。 …そういう男が、世の中を楽しくするのだ!




【鑑賞メモ】

鑑賞日:10月18日 劇場:ワーナーマイカル県央 18:25の回 観客:2人

俺と、おっさんが1人だけでした。ああ、初日なのに。


【上映時間とワンポイント】

1時間50分。思わず吹き出してしまうギャグもありますので、ポップコーンを食うタイミングにご注意。ちなみに俺、1回むせました。


【オススメ類似作品】


「オースティン・パワーズ・デラックス」 (1999年アメリカ)

監督:ジェイ・ローチ、脚本・主演:マイク・マイヤーズ。シリーズ2作目。チンコ型ロケットなど、下ネタ満載の激バカ映画。影絵のコントでは笑い過ぎて呼吸困難になりました。あんまりオススメできるシロモノではありませんが、本作を見た後でこの映画がもう一度見たくなりました。


「スパイ・ハード」 (1995年アメリカ)

監督・脚本:リック・フリードバーグ、出演:レスリー・ニールセン。彼の映画は何を見てもほぼおんなじですが、この映画は一応、スパイ映画のパロディとしてオススメできる…かも。音楽は、あのビル・コンティ。レイ・チャールズなんかも出ていたりして、豪華絢爛なバカ映画です。




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2008-10-19

ジャージの二人

テーマ:邦画

黙って着れば、何かが変わる。 …わけないか。


話題の映画が、ようやく新潟でも公開。2週間限定公開みたいなので、大作を後回しにして見て参りました。


“jarsey” とは、広辞苑によれば、“軽くて伸縮性のある厚地のメリヤス生地” とあります。いわゆる運動着というやつですな。本作に登場するのは、学校で使用しているタイプのもの。


監督・脚本は、中村義洋。原作は、長嶋有の同名小説。出演は、堺雅人、鮎川誠、水野美紀、田中あさみ、ダンカン、大楠道代。それから、ジャージとわんこ。


さて、映画ですが、ひんやりした中にぬくもりを感じるような作品に仕上がりました。スタイルで言うと、途中から始まって、途中で終わるような映画。真夏の暑さに疲れ切った状態で見ると、ちょっとだけ気分転換になると思います。


父親と息子の二人が、避暑地の別荘で数日間を過ごす。しかし、お互いにそれぞれ問題を抱えているので、楽しい雰囲気ではない。ぎこちない会話をしながらも、時間は過ぎていくのであった…。


主演の息子を演じるのは、堺雅人。彼の演技の面白さについては何回も触れましたが、今回はてっきり、「やさぐれぱんだ」 のキャラかと思ったんですが、どちらかというと 「ハチミツとクローバー」 の方に近いかも。誠実でナイーブな表情をご堪能下さい。


父親を演じるのは、鮎川誠。シーナ&ロケッツのギタリスト。…おお、あの 「レモンティ」 のバンドですね。今年で結成30年だそうで、もう還暦だそうな。カッコいいじいさんじゃないですか。こういう風に老けたいなあ。演技うんぬんよりも、存在自体が笑えました。声がシブいので、深いものを感じさせてくれます。


水野美紀は、堺君の奥さん役で登場。彼女のドライぶりと、妹役の田中あさみのウェットぶりが対照的で、これまた面白い。近所のオバチャンを演じた大楠道代の演技も絶品でした。


しかし、この映画の本当の主役は、ズバリ、ジャージでしょう。色鮮やかなジャージを着る度にいちいちスローモーションになって、ババババーンって音楽が流れるのが爆笑でした。そうか、ジャージってカッコいいんだ!


ここに来て初めて、中村監督の作風が理解できたような気がします。誰もが感じているわだかまりや葛藤を、心の時間軸に乗せて演出していく手法なのかも。何にも起きなくても、時間は流れていく。混乱している時ほど、静かな場所で呼吸を整える方がいい。


スタイルは、いたってシンプル。余計なものを極力削ると、かえって際立ってくるものがある。口数の少ない人が言う一言二言って、とても貴重な言葉に思えるという感じ。回りくどく言わなくても、伝わる時はちゃんと伝わるもんです。もっとも、この映画にメッセージが込められているのかどうかわかりませんが。


彼らの生活の中にお邪魔して、心に浮かんでくるものは、見る人によって違うと思う。確かなことは、映画館を出た時に、何だか肩の力が抜けて心地よかったということ。楽しい映画を見た後に現実に戻される焦燥感は微塵もなく、ただ、ありのままの自分を肯定してもらった感じでした。


イチロー選手は、“苦しい時ほど、力を抜く” そうです。ジャージこそは、リラックスできる服であり、戦闘服でもある。 …さあ、今日からキミもジャージを着よう!あのカッコいい音楽をBGMに、装着変身だ!




【鑑賞メモ】

鑑賞日:10月15日 劇場:ユナイテッドシネマ新潟 19:15の回 観客:約20人

あれっ、ジャージ着てきたの俺だけ?おおい、ジャージ着て見ようよ、みんな!


【上映時間とワンポイント】

1時間33分。外に出て携帯電話のスイッチを入れたら、何だか笑えました。映画を見た人はわかる。


【オススメ類似作品】


「死亡遊戯」 (1979年アメリカ)

監督:ロバート・クローズ、出演:ブルース・リー。ジャージ映画といえば、やっぱりコレでしょう。黄色いトラックスーツは、格闘技を愛する人なら1度は着てみたいコスチューム。この姿でヌンチャクを振り回して頭をぶつけた少年たちは、今もきっと戦い続けていることでしょう。…ホワチャーッ!


「彼氏彼女の事情」 (1998年TV東京系アニメ)

監督:庵野秀明、原作:津田雅美、声の出演:榎本温子。学校ではお嬢様アイドルである女子高生が、家に変えるとジャージ姿でダラダラ過ごすという落差が笑えます。彼女の悩み方が面白くて、頭のいい人は大変だなあって思ったものです。


「ストレンジャー・ザン・パラダイス」 (1984年西ドイツ)

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ、出演:ジョン・ルーリー。何も起こらない映画といえば、やっぱりコレでしょう。しかもこの映画、モノクロです。しかも、監督はまだ新人だった。だけど、映画としてちゃんと成立している。何とも、不思議な魅力にあふれた作品です。




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2008-10-16

映画コラム その20 「パクリと盗作とマガイモノ」

テーマ:映画コラム

「容疑者Xの献身」 のエンディングテーマを聞いていて、おやっと思いました。柴崎コウが歌う 「最愛」 のサビの部分がどうも聞いたことがあるメロディ。これは、TUBEの前田亘輝がソロで歌った 「CHRISTMAS FOR YOU」 ですね。ほんの一部ではあるけれど、サビの頭だからどうも気になってしまう。知っている人ならすぐに気付くと思います。俺のカラオケレパートリーでもあるから。


作ったのはたぶん福山雅治だと思うけど、たまたま同じようなメロディになったのかな。以前にヒットした 「スコール」 という曲も、「晩秋」のテーマ曲にとても似ていたことがあったから、それとおんなじかなあって個人的には思います。 …まあ、それはとりあえず置いといて、本題に入りましょう。


今回は、作品が似てしまう現象について、少し考えたいと思います。人が何かを創作して生み出す時には、本人も気付かないうちに、他の人が作ったものに似かよってしまうことがある。著作権とか、特許とか、発明といったものにはそういう問題がつきまとうものらしいですが。


最近、「ディスタービア」 という映画が 「裏窓」 の盗作だと訴えられたらしい。俺が見る限りでは全く違うシロモノだと思うけど、こんなマガイモノで怒るなんてねえ…。


ちょっと前では、松本零士センセイが槇原敬之を盗作だと訴えた。これも、そんなに目くじら立てなくてもなあ、という印象。創作活動をする上で、同じ心情になったらそういう言葉が出てきました、ってことでいいじゃん。同じ志を持った者同士で、お互いコラボした方が双方にプラスだった気がしますけど…。


有名な話では、黒澤明監督の 「用心棒」 をイタリアがパクッたことで大モメになったことがありました。この時は、タイトルを 「荒野の用心棒」 とすることで折り合いをつけた。この結果、お互いにプラスの結果をもたらすことになりました。作り手というのは、こういうしなやかさがあった方がいいと思う。キアヌ・リーブス出世作 「スピード」 だって、日本の 「新幹線大爆破」 のパクリだってことは明白なんですが、面白かったので許されている感じがする…っていうか、誰も関心ないか。


よくある “オマージュを捧げる” なんていうのは、パクリであることを白状しておいて、悪気はないよ、リスペクトしてるんだよって言い訳も同時にしている便利な言葉だと思います。同じ作品でも、オリジナルだと言えば “似ているから盗作だ” って怒られるし、リメイクだって言えば “全然違う” って怒られる。何だか面倒くさいもんですなあ。


NHK大河ドラマで 「武蔵」 の第1話が 「七人の侍」 の盗作だって騒いだ時もあったけど、あれはどう見てもパクリでしょう。最初っからこの調子では、“ストーリー全く考えてません” って言っているようなもんでしょ。原作と全く違うことやるなら、完全オリジナルで勝負して欲しかった。どうせパクるなら、中盤くらいであの話をやって、クレジットに “設定協力 黒澤プロダクション” って入れた方がハクがついたかもしれなかったね。当然、使用料は払う。それがイヤならちゃんとオリジナルストーリーを考えるべきだと思う。


で、福山君の話に戻りますが、彼の歌は盗作ではないと思います。ラブソングというのは、人に愛を伝えるためのアイテム。創作の段階で、同じ気持ちになったら、同じメロディが浮かんだりすることってあるんじゃないかって俺は思うんです。ポピュラーソングなんて、そういった類いのもんじゃないでしょうか。どこかで聞いたことがあるメロディっていうのは、耳に心地よいフィーリングだということ。


俺が思うのは、盗んだ歌を歌ったところで果たして気持ちいいのか、ということ。それは、その人の人柄というか、資質の問題でしょう。福山君がどういうタイプの人間かを考えれば、わかるんじゃないかな。


正真正銘自分が作った歌が、たまたま人のものと似てしまったら、それは事故みたいなもの。見方を変えれば、才能の共通する部分があったということ。これは、ある意味喜ぶべきことかも。だから、堂々と自分の歌として歌ったらいい。うしろめたくなんかない。ラブソングは、人に伝える愛のメッセージ。故意ではなく、恋。


俺の書く文章だって、自分の言葉だと思っていても、もうすでに誰かとかぶっているかもしれない。その辺、人の記事をあまり見に行かないのでわかりませんが、そんなことは気にしてたら書けませんって。はっきりした引用や、聞いた話の場合は 『…だそうな。』 とか 『…らしい。』 という表記をしています。


自分だけの言葉、自分だけのメロディというのは、もしかしたら厳密にはないのかもしれない。今こうして語る言葉も、いつかどこかで誰かが語っていた言葉なのかもしれない。その霊魂たちが、俺を通してメッセージを発信しているのかもしれない。そう思うと、何だかロマンチックですねえ。…大いに語れ、さまよえるゴースト・アーティストたちよ。


俺はB型の人間だから、人と違うことをしたがる傾向があります。だけど、自分の感性にしたがって文章を書いています。人の真似が人一倍キライな性格なので、長く読んでくれている読者のみなさんはきっとわかってくれるはず。自分の文章に、うしろめたい気持ちは一切ありません。一応、自称サムライですから。


そんなわけで、言葉を操る人間の端くれとして、クリエイターのみなさんにがんばっていただきたいと思うんです。作られた作品にものを言うのは誰にでもできる。だけど、それを生み出す側にいる人の方がはるかに偉いんだし、価値が高い。そういう意味では、俺なんていなくても誰も困らない。作り手こそが重要なんです。


料理のレシピ、ダンスのステップ、一発ギャグ、格闘技の必殺技、ためになる話、政治や社会問題のコメントなど、この世にはパクリや定番といったものがやたらと多い。マネをするだけじゃなく、実感のこもった世界を大切にしたいもの。言葉が一人歩きして、心がついていかなくなるのが一番恐い。


言葉は生き物です。メロディだって生き物。言葉に操られるんじゃなくて、言葉を操れるようにしたいもの。同じ言葉であるなら、自分の気持ちをこめて発信したい。そうでなくては、受け手に対して失礼というもの。


だから、福山君は堂々と歌うべし。柴崎コウは、できればもっとちゃんと歌を練習して下さい。曲がりなりにもお金もらっているんだから。観客に恥じないクリエイターとしてがんばって下さい。マガイモノ代表として応援します。





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2008-10-13

最近読んだ本

テーマ:

秋は読書の季節。色んなジャンルに挑戦して、精神世界を冒険しましょう。とりあえず、3冊の強書を紹介します。ちいっと手強いですよ。



「スカイクロラ」 (森博嗣著・中央公論新社)


映画の主人公よりも、原作の主人公の方が数段カッコよかった。終始一人称で表現するスタイルといい、物語の合間の引用といい、作者はサリンジャーがお好きなんですね。とてもハードボイルドな感じがして一気に引き込まれました。映画で榊原さんが演じた整備士が、原作では男だったのも驚きました。そういう点では、映画の方が華があるように思えるかと。


パイロットである主人公は、空を飛んでいる時だけが生きていることを実感できると言う。それは、充実した時間が持てる幸福を意味する反面、居心地がいい場所がそこしかないということでもある。飛んでいる時以外は死んでいるのと同じ。そのくらい、飛んでいる時がメチャクチャ楽しいということ。それが仕事とくれば、仕事が楽しくてしょうがないはず。だけどこの主人公は、人生を楽しんでいるようには見えない。


キルドレだから、という単純な結論では到底終われない。普通の人間の思考の範囲では描ききれない領域を、あえて彼らの頭脳を用いて表現する作者の意図は何か。それは、彼らが人間の一部であることがキーワードとなると思う。ここから読者は、深い思考の海へ船を出すことになる。


人はなぜ生まれてきたのか。どこから来て、どこへ行くのか。誰も明確に答えられないからって、考えずにはいられない。それは、自分の魂と格闘しながら答えを出していくもんじゃないかって思う。俺が映画を通して色々考えるのも、究極にはそういう目的のためなんだと思うんです。


心の居場所って、その時によって変わるから、いつもそこに行けば元気になれるほど人間は単純じゃない。俺みたいに、特筆すべき才能がない人間にとっては、居場所をあちこちに作らないと身が持たない。自分の家はもちろん、職場、映画館、レンタルビデオ、行きつけのスナックが2つ、車で走りながら聞く音楽、読書、そしてこのブログもそうです。自分が自分でいられる場所って大事なんです。その時の精神状態によって、居心地のいい場所は変わる。そしてこれからもそれは増えていくと思うし、変わっていくと思う。


映画に行けなくなっても、DVDが見れなくなっても、本が読めなくなっても、お酒が飲めなくなっても、何かしらやることは見つかる。俺の魂が生きたいと思い続ければ、どうにかなるもんだと思う。


この小説の主人公は、幸せだと思う。はたからどう見えるかは関係ない。本人がどう思っているかが大事だから。だから、堂々と飛べ。堂々と敵を撃ち落とせ!


この小説は深い。行間を味わってじっくり読むことをオススメします。映画と小説では、情報量がまるで違うけど、物語の核は同じ部分にある。俺は幸運にも両方の視点を得たので、これから生きていく上でずっと考えていきたいと思います。若い頃にいくら考えてもわからなかったことを。答えが見つかるかなんてわからない。だけど、考え続けることに価値があると思いたいから。




「凡人として生きるということ」 (押井守著・幻冬社新書)


「スカイクロラ」 を監督した直後に執筆された本。普段、あまり多くのことを語らない人だと思っていたので、本屋でこの本を見つけた時に飛びつきました。しかも、原作本を読んだ後であるだけに、まことにタイミングがよろしい。


なるほど、押井節炸裂、といった感じですね。この本を読むと、彼がいかに物を深く考える人であるかがわかります。彼のファンにとっては、必読書と言えるでしょう。とても勉強になる本と言えます。


ただし、そうとうクセのある文章なので、極論もしばしば。考え抜いた人の言葉って、説得力があるから、いちいち突き刺さってしまう。単純に反論しにくいだけの迫力がある。彼のグレードの高い文章に対抗できる人は、そういないでしょう。やっぱりプロってすごいなあ。作家としてもプロ。オヤジとしてもプロの男だと思います。


内容としては “オヤジ論” が面白かった。若さに価値なんてない、なんてなかなか言えないもんですよ。オヤジって、やっぱりカッコいい存在であるべきだ。俺もオヤジの端くれとして、正々堂々と生きたい。


押井監督の作品は好きだけど、本人の思考の世界は別モノ。ああ、オヤジがボヤいているなあ、っていうとらえ方で充分だと思います。オヤジの話なんて、聞き流してくれた方が本人も助かる部分が多いんだから。鵜呑みにされるよりも、多く語った中で、1つ2つ役に立つことを覚えていればよろしい。オヤジ連中とうまく付き合うには、そういう姿勢が大切だと思うんです。


押井オヤジは、面白い存在である。彼は、映画監督という最高の居場所を勝ち得た。その覚悟の心を、俺はこの本で確認しました。いいじゃん、カッコいいぜオヤジ。俺も、名も無い駆け出しのオヤジとして、あんたを応援しています。次回作も、面白いもん作って下さい。




「偽善エコロジー」 (武田邦彦著・幻冬社新書)


これははっきり言って、恐ろしい本です。何が恐ろしいかというと、世の中の常識をほぼ180度くつがえす内容に満ちているからです。個人的には面白くてゲラゲラ笑いましたが、読んだ後に不安になりました。これを真に受け過ぎてもパニックになってしまうし、頭ごなしに否定もできない。それだけ筆者の覚悟が込められている “警告の書” と言えます。…かなりヤバい情報がぎっしり。


“エコなんとか” という言葉は流行語となり、世の中にすっかり溶け込んでいます。今となっては常識になっているはずのことが、この本ではことごとく粉砕されていきます。中には、環境のためと思ってやっていることが、かえって環境を破壊することもあるらしい。俺個人も、「不都合な真実」 を見て嫌悪感を感じた側ですが、この作者は徹底しています。気持ちがいいくらい、ぶっ飛ばしています。いやはや痛快。


ペットボトル、レジ袋、割り箸、地球温暖化、リサイクル…こういうキーワードで誰かと話せば、ほとんどの人が同じような会話をするでしょう。しかし、この本を読むと、違った見方で考えざるを得なくなります。


俺が一番恐ろしいと考えるのは、みんながいいと言うから正しい、TVで言ってるから正しいと盲目的に信じている人たちのことです。そういう人がこの本を読むと、たぶん大変なことになるかもしれない。そのくらい、この本には “地雷” がたくさん詰まっているんです。ダイエットバナナを買いあさっているような人には、この本を読ませない方がいいかも。


世の中には、知らない方が幸せなことがある。ウソだったとしても、それで世の中がうまくいくなら、それもアリ。あまのじゃくで嫌われ者の俺でも、そのくらいの道理はわかります。だから、俺はこの本を人に勧めるのが正直恐い。だけど、読んでしまったのは事実だから、自分のルールに従ってブログにもちゃんと書く。そういうわけで、この本を読む人は覚悟して読んで下さいね。


「ガリレオ 劇場版」 のように、物事というのは、角度や視点を変えると全く違ったものに見えてくる。このおっさんの言うことは正しいのかもしれないけれど、別の側面でアプローチしたら、別の結論が出ると思う。そういった意味で、専門家の間で大いに議論していただきたい内容です。


人は、今までやってきたことが無意味だなどと言われると、不機嫌になるものです。エコロジーだって、もともとは環境を守りたいという純粋な動機から出発したのだから、その気持ちを大切にしながら、少しずつ方向転換する方がいいと思うんです。人は、感情で動く生き物だから。


この本は、確かに勉強になる。目からウロコのような情報もいっぱい詰まっている。だからこそ、しっかりと考える必要がある。鵜呑みにせずに、よく噛み砕いてみることが大切。 …さあ、勇気ある人は手に取ってみてはいかが?





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2008-10-13

しあわせのかおり

テーマ:邦画

幸せそうにほおばる表情がたまらん。 よく噛み締めて、味わってご覧下さい。


これは、見ていてお腹がすく映画です。空腹時に見ると地獄を味わうことになるので、軽く食べてから見て、映画館から中華料理店にダッシュするのがよろしいかと。


監督・脚本は、三原光尋。料理指導は、茂手木章。主題歌を歌うのは、JUJU。 出演は、中谷美紀、藤竜也、田中圭、八千草薫、甲本雅裕、平泉成、松浦愛弓。


さて、映画ですが、タイトルの通り、画面から香りが漂ってくるような、おいしそうな作品に仕上がりました。料理のことはわからなくても、うまそうだということはわかる。食いしん坊カップルは、これでデートしちゃいましょう。


主人公は、デパートの営業を担当するシングルマザー。出店を依頼するために “小上海飯店” を訪れたところ、あっけなく断られてしまう。しかし、確かにここの料理はうまい。なぜこんなにうまいんだろう?仕事そっちのけで店に通い続ける主人公。…そんな時、店主の王さんの身に大変なことが起きてしまう。


主演は、中谷美紀。「嫌われ松子の一生」 で生涯最高の演技を披露してからもう2年。それからしばらく、ちょっと肩に力が入っていたかなあという印象でしたが、本作はほどよく力がぬけて、しなやかな演技に戻っているように感じました。…いよっ、美紀姉ェお帰り。


王さんを演じるのは、藤竜也。日本人俳優で一番ヒゲが似合うおっちゃんです。俺が彼を初めて見たのは、TVドラマ 「プロハンター」 だったろうか。がっしりした肉体とヒゲがカッコよかったことをよく覚えています。ギラギラしたイメージだった彼は、年を重ねてグッとシブいオヤジになりました。最近では 「ミッドナイト・イーグル」 で総理大臣をしてたっけなあ。本作では、プロの役者魂をビンビンと感じる演技を披露しています。やっぱりこのオヤジはカッコいいッス。


田中圭は、「包帯クラブ」 での演技が印象的なソフトキャラ。厨房の2人を影で支える好青年をさわやかに演じています。存在感のなさそうなところが、かえって存在感をアピールすることになるような、不思議な俳優。演技力はまだ未知数ですが、今後に注目してみたい。


王さんを影で支える女社長を演じるのは、大御所・八千草薫。貫禄と品格タップリの演技でした。藤ヒゲのおっちゃんは、高校生の頃、彼女の大ファンだったそうで、そのあこがれと照れくさい感じが、演技にモロ出ていたような気がします。幸せなことですなあ、おっちゃん。


本作では、約50種類の料理が登場します。料理指導を担当したのは、キャリア45年の中国料理シェフ、茂手木章。日本の中華点心界の第一人者だそうで、彼の料理をアツアツの状態で食べられた出演者は幸せ者と言えるでしょう。中谷美紀は、『…おいしいという演技をする必要が全くありませんでした。本当においしかったので、リアルな感情のままいただきました。食事がおいしいと、人間は機嫌がよくなるなったりするものですよね。』 とコメントしています。…なるほど、彼女の表情を見れば一目瞭然。


主演の2人はもともと料理が好きだったそうですが、今回さらに訓練を重ねて、本物の立ち振る舞いを身に付けました。美紀姉ェは2キロの中華鍋を片手で振れるようになり、藤ヒゲのおっちゃんは、中国語をマスターして撮影に臨みました。中国語も、北京語と紹興語の両方。そしてさらに、“カタコトの日本語” も披露。すげえ、完全になりきっています。


中谷美紀に1つだけ苦言を言うとすれば、生活に困っている感がちょっと弱いかな、という点。彼女の品のよさがマイナスに作用することもある。「自虐の詩」 に違和感を感じたのはその辺が原因かも。もうちょっと年を重ねたら、きっとそういう領域も開拓できるでしょう。


ただし、彼女の泣き顔は絶品です。先日見た 「最後の初恋」 のダイアン・レインに負けないものが、彼女にはある。それだけは太鼓判を押したい。女の最大の武器を得意技として、これからも演技力を磨いていって欲しいです。


本作は、ストーリーはシンプルですが、その分、役者の細かい演技をよく観察する時間があります。料理と同じように、こちらもじっくりと味わってご鑑賞下さい。…いい味出してますよ。



俺は、料理ができません。1人暮らしを8年もやっていたのに料理しないっていうのは不思議だと思われるかもしれませんが、ホントです。そりゃあ、ご飯くらいは自分で炊けますが、惣菜はスーパーで売ってるし、他は缶詰とか、インスタント食品ばっかり食ってました。まあ、料理に費やす時間を他に使いたかったというのが本音ですが。


だから、恋人が通い妻になり、居座り妻になり、本妻になったというわけです。だから、そんな俺から見れば、料理ができる人って尊敬しちゃうんですよ。まるで魔法使いみたいに見えるんですね。考えてみれば、今まで俺が付き合った女性は、みんな料理ができる人だった。料理をしてもらえるだけで、俺は満足なんです。これほどありがたいことはない。まして、心のこもった料理ならなおさらのこと。


料理って、他の動物から見れば、不思議な行為なんでしょう。だけど考えてみれば、人間の五感の全てを注ぎ込んで作るものって、料理の世界だけじゃないかな。それを味わう行為もまた、五感をフルに活用するわけで、人間にとって最高のコミュニケーションの1つなんでしょう、きっと。


おふくろの味、というものがある。本作の根底にも流れるテーマですが、最高のシェフというのは、相手の精神状態や体調を考えて、微妙に味付けをコントロールするものなのかもしれない。レシピの向こうにある、無形の何かが存在するような気がしてならないんです。だから、料理の上手い人は感性も優れている、なんて俺は思うんです。


映画の2人は、擬似親子の関係。だけど、もっと深いところで結ばれている絆がある。詳しくは映画でご覧いただくとして、運命的な出会いってロマンがあっていいじゃないですか。現実になかったら、無理矢理ロマンにしてしまえばいい。そう考えた方が、人生そのものに味が出る。お互いがそう思えば、それが現実になる。だから、誰が見ても親子に見える。それでいいじゃん。幸せの実感って、そういうところにあるものでしょう。


厨房というところは、とても暑い場所だと聞きます。その厨房での2人の熱演を、熱い火花を、しっかりと見据えて下さい。その温度が、画面を熱くする。熱い心がこもった、アツアツの映画です。…冷めないうちに、召し上がれ。



【鑑賞メモ】

鑑賞日:10月11日 劇場:T-JOY新潟 18:00 観客:約20人

年配の人が多かったように思います。みなさんマナーがよくて、いい状態で見ることができました。


【上映時間とワンポイント】

約2時間10分。(パンフに記述なし) やっぱり空腹で行かない方がいい。お腹鳴っちゃいますよ。


【オススメ類似作品】


「タンポポ」 (1985年伊丹プロダクション)

監督・脚本:伊丹十三、出演:山崎努、宮本信子。映画熱では何度も紹介している映画ですが、俺的には、料理映画といえばやっぱりコレなんです。高校生の時に試写会に当たって空腹で見たトラウマが、今でも忘れられない。これは、拷問映画だ!この映画での宮本信子の泣き顔も、何だかかわいらしかった。タンポポオムライスは、今でも大好物です。


「しゃべれどもしゃべれども」 (2007年アスミックエース)

監督:平山秀幸、原作:佐藤多佳子、出演:国分太一。さえない落語家が、“話し方教室” なるものを開き、うまく話せない生徒を教育していく物語。八千草薫が、若者たちを見守る役を演じています。




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2008-10-12

宮廷画家ゴヤは見た

テーマ:洋画

人間というものは、卑怯で残酷で、優しくて美しい。 …まさに、ゴヤの絵画そのもののような映画。


フランシスコ・デ・ゴヤは、18世紀にスペインで生まれた偉大な画家。カルロス4世に任命されて宮廷画家となる。王と王妃の肖像画や、「カルロス4世の家族」 「裸のマハ」 などを制作する一方、戦争の惨禍や苦しむ人々の現実を正面から捉えた作品を多く残したことでも有名。彼の創作活動が映画になると聞いて、さっそく見に行きました。


彼の絵は独特のタッチなので、興味のある人は “ゴヤ入門” としてこの映画をオススメします。しかし、オシャレな映画ではないので、覚悟してご覧下さい。絵画ファンは必見だと思います。


しかしこのタイトル、どうにかならんか。原題は、「GOYA’S GHOST」 なんだから、“ゴヤの幽霊” でいいじゃん。何でまた土曜ワイド劇場みたいにせにゃならんのか?言うまでもありませんが、市原悦子は出てきませんのでお間違えなく。そんな軽い作品ではないので、オバチャンはカン違いしちゃいけませんよ。


監督・脚本は、巨匠・ミロス・フォアマン。映画好きなら知っている名前ですが、一応説明させていただくと 「カッコーの巣の上で」 と 「アマデウス」 でオスカーを2回受賞しているすごいジイさんです。本作のアイディアを思いついたのは、50年以上前だそうな。なるほど、あたため過ぎて熟成した感じがします。


出演は、ハビエル・バルデム、ステラン・スカルスガルド、ナタリー・ポートマン、ランディ・クエイド、ホセ・ルイス・ゴメス、ミシェル・ロンズデール、マベル・リベラ。


さて、映画ですが、すごい作品に仕上がりました。強烈な映像にただひたすら圧倒されっぱなしで、お腹いっぱいになりました。巨匠の妥協なき映像の美学を、すみずみまでご堪能下さい。マニアックな芸術映画だと思います。これぞ “アート映画” と言えるのかもしれない。


ゴヤを演じるのは、ステラン・スカルスガルド。「奇跡の海」 で事故に遭った不幸な夫を演じたおっちゃんですな。どちらかというと繊細なイメージで登場した彼が意外でしたが、物語が進むにつれ、表情が険しくなっていくところがいい。後半は、いかにもゴヤっていう感じの顔になっていたような気がしますが、専門の人が見るとまた違うでしょう。気になる人は、他の人の記事を探してみて下さい。


ゴヤの人生に大きな影響を与える人物として登場するのが、ロレンソ神父。演じるのは、ハビエル・バルデム。「ノーカントリー」でガスボンベを操る殺人鬼を演じたコワいおっちゃんです。聖職者の格好をした彼も一段と恐い。どうしてこんなに恐いんでしょう。顔の部品が全部恐い。こんな悪人顔の神父がいたら、子供が泣き出してしまいそう。その彼が、囁くように話すんですよ。…マジで恐いス。


“受難の女” を演じたのは、ナタリー・ポートマン。イスラエル出身の彼女は、ユダヤ系の役がよく似合う。マグダラのマリアのようなイメージすらある彼女の熱演は、多くの人の心を打つと思います。これでもかこれでもかと、散々な目に遭う彼女の心を支えるのは、一体何か。顔を背けずによく見ておいて下さい。


ポートマンは、素晴らしい女優だと俺は確信しました。後半は、彼女の魂を抱きしめて一緒に泣きたい衝動にかられる場面も。それくらい、渾身の演技でした。生涯の記憶に残る、忘れられない役柄となるでしょう。


とにかく、この映画はすごい。ゴヤの作品が生まれた背景って、やっぱりこういう世界なんじゃないかって思えるくらい、圧倒的な説得力でせまる画面の連続。いつ死ぬかわからない過酷な状況において、生きていることを実感できることは、絵を描き続けることだけだったんだと思います。ある意味、神が描かせたとも言えるかも。


例えば、ルノワールの絵に登場する人物って、みんな優しそうに見える。俺が思うに、ルノワールという男は、人を喜ばせることが好きだったんじゃないかって思うんです。ホントは性格の悪い女でも、ルノワールに描いてもらうと、かわいい女に変身できる。その絵を見た本人が、それにふさわしい自分になろうと努力するようになる。だからルノワールは、こうありたいという女の願望を見抜いて表現したのだと。


ところが、ゴヤの描く絵の登場する人物は、どうもモヤモヤしているように見える。これは、ゴヤ自身が感じた世界をそのまま描いた結果なんじゃないかって思う。性格の悪さは顔つきに出る。ストレート過ぎて人を怒らせることもあったかもしれない。映画でも、そういう場面が出てくるのでお見逃しなく。俺が思うに、ゴヤはそれが美しいと感じていたんじゃないかな、ってこと。画家にもきっと、いろんなタイプがいるんでしょう。



昨年の年末に、新潟でゴヤの版画展があったんですが、仕事が片付いて見に行った時は、すでに閉館期間になっていて、見ることができませんでした。あの時見ることができたら、本作を見た時の臨場感が違ったろうなあって、残念に思います。でも、いずれ見る機会があるでしょう。その時を楽しみにしておきます。


絵画と映画って、違うようで共通した部分があると思うんです。30代を過ぎた頃から、絵画を見る時の感覚が変わってきたような気もする。数年前に、長岡の美術館で 「シャガール展」 が開催された時に、絵を見た瞬間に何か波動のようなものを受けて、後ろに倒れそうになったことがありました。絵画には音や動きがないのに、まるで生きているような躍動感がある。それをまともに食らった貴重な経験でした。


本作を見て感じた波動も、これに似たものがあったかもしれない。魂のこもった作品が人を動かすというのは、理屈じゃなくて感覚でわかる。絵画ってすごいんです。20代の頃に画廊で少し働いた期間があったこともあって、絵を見るのはわりと好きなんです。自分は絵は描けないし、知識もほとんどないけど、精神的に力がわいてくる世界だと思います。


絵画の心は、映画の心に通じる。それは間違いない。秋は芸術の季節です。普段は経験しない、精神の冒険を楽しみましょう。新しい領域を開拓できるかも。


絵を描ける人って、何だか尊敬しちゃいます。人間は、自分に合った表現方法があるんだと思う。俺は絵は描けないけど、文章で自分の心を記録していきたいと思っています。 …インチキ映画ブロガー桑畑は見た! さてこのシリーズ、いつまで続くのやら。




【鑑賞メモ】

鑑賞日:10月11日 劇場:T-JOY新潟 14:20の回 観客:約10人

途中でケータイを鳴らしたオバチャンが1人。 …観客桑畑は見た!



【上映時間とワンポイント】

1時間54分。徳島県の大塚美術館で、原寸大の陶板で再現されているゴヤの作品25点が見られるそうです。(パンフの情報より)


【オススメ類似作品】


「モディリアーニ 真実の愛」 (2004年フランス・イギリス・イタリア合作)

監督・脚本:ミック・デイヴィス、出演:アンディ・ガルシア。ピカソと張り合う、クセのある画家を、ガルシアが生き生きと演じています。俺が思うに、彼は酔っ払いのプロだと思う。ドランク・アーティスト・モディリアーニの屈折した人生をとくと見よ。絵を描く時に流れる美しいメロディが魅力的だったので、サントラも買っちゃいました。


「真珠の首飾りの少女」 (2003年イギリス)

監督:ピーター・ウェーバー、原作:トレイシー・シュバリエ、出演:スカーレット・ヨハンソン。タイトルからわかるように、フェルメールの映画です。口をポカンと開けたスカーレットが、何だかエロくて魅力的でした。青い絵の具って、高価だったんですね。


「アマデウス」 (1984年アメリカ)

監督:ミロス・フォアマン、原作:ピーター・シェーアー、出演:F・マーリー・エイブラハム。せっかくだから、コレも紹介しちゃいましょう。サリエリとモーツァルトの関係って、本作のゴヤとロレンソの関係に似ているかも。真面目にがんばっている方は報われず、ハチャメチャな男の方が成功してしまうのって、よくある話なのかも。だけど俺は、地道にがんばる人の方が好きです。才能って何だろうって、考えさせられる映画。




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