“本が出たら光の速さで読みます!”と、著者である奥田さんにFacebookでお約束しました。なので、クロネコヤマトが届けてくれてから1時間で読み終えて、すぐにこの感想を書いていますが、書き上げるのはとっても時間かかりました。
いろいろな側面からの感想があったのですが、ブログにするための切り口はどこがいいだろうか?と悩んでおりました。


ワクワクすることだけ、やればいい!

奥田 浩美 PHP研究所 2015-03-18
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まず、奥田さんをご存知ない方のために説明しますと。
JavaOneなどの、日本で海外と同じようなIT系のカンファレンスが開催されるようになったのは奥田さんがこれらを事務局として招致する仕事をされていたからで、今でも数多くのイベントを手がけている株式会社ウィズグループの代表をされています。
(ホント、このホームページカッコいいですよね!)


今まで奥田サロンや他のトークイベント、また写真教室の合宿先でお聞きしていた奥田さんの経験から繰り出される“刺さる言葉”の背景が丁寧に書かれている本でした。


エピソードひとつひとつは、お話の中で断片的にお聞きしていましたが、本により丁寧に書かれた奥田さんの歴史は、IT業界の女帝という異名を持つまでにどれだけ多くの障害や壁や、絶望するような出来事を越えてきたのかということを教えてくれるものでした。
言葉と一緒にその情熱が伝わるような人には、燃料となる数多くの経験があってこそなんだということがよくわかりました。


例えば、インドのムンバイに留学されたエピソードは、奥田さんが初めて親の意向に背いて自分の選択を通そうとしたこと。それはお聞きしていましたが、それまでの奥田さんの育ってきた環境がどれぐらいご両親の影響下にあったか、そしてそれを乗り越える助けとなった叔母さまへの感謝の気持ち。


輝いている人には、それまでの自分を研磨するような経験が背景にある。こんな人生は自分には歩めないと思うかもしれません。わたしも奥田さんと全く同じ経験をしたとしたら、乗り越えて成長するなんてまず無理でしょう。だから、奥田さんの人生と自分を比較することはないと思います。


人にはいつかやってくる“役割”を果たすための試練が与えられるのだと思います。今の自分にもそう思える体験はいくつもあって、あれは自分の成長に必要だったと確信しています。それがあったからこそ、助けてくれる仲間に頼りながら起業により自分の“役割”を担うことができたのだと思います。


前職の上司に「キャリアとはアップしたりチェンジしたりするものじゃない。振り返るとそこに形成された自分の人生の轍だよ。」と言われたことがあります。積み重ねたキャリアとは即ち、どれだけの試練を越えてきたかということなんじゃないでしょうか。そして、その試練を越えたときに成長できるならば、試練とはチャンスそのものであると考えています。


この本のプロローグは「今日もチャンスが雨のように降っていますね」という一節から始まります。奥田さんがこの一節に込めた想いは、わたしの考えるチャンスの雨とは違うかもしれません。奥田さんはチャンスというものを試練などからは切り離して、見るからにチャンスであると認識できるまでになっているんじゃないかと思います。
でもわたしにはまだ「試練のフィルター越し」にチャンスが見えています。これでも成長したんです!以前は試練は試練でしかありませんでしたから。


自分とは異なる人生を歩んできた奥田さんのストーリーを介して、自分にとっての試練は何だっただろう?ということを回顧し、いつかフィルターなしにチャンスを見つけられる自分になりたいと思わせてくれて、試練に向かって行くことへのためらいを取り除いてくれる本でした。


奥田さん、ありがとうございました。また背中飛び蹴りされました。
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もうね、今更で大変申し訳なく思う次第なんですが、ようやく読みました。

人生は見切り発車でうまくいく/奥田 浩美

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何度かこのブログでもご紹介した、奥田サロンを主催されている奥田浩美さんの著書です。

この本、読み始めて1時間で読了できたのですが、それはこの本が普段奥田さんが話していらっしゃる言葉がほとんどそのままの文体で書かれているからだと思います。サロンで熱く語る「チャンスのつかみ方」や「うまくいかないときの自分取り扱い方法」がそのまま奥田さんの言葉で書かれているので、文字を追うよりもサロンの映像が脳内再生されるような感じで読み進みました。
(つまり、奥田サロンに参加されたことない方は、ゆっくり読めばよいと思います。)

自分のキャリアや成長、新しいことへチャレンジするに際し、どうもあと一歩が踏み出せないという方にはお勧めの一冊です。


そして、この本を読んでわたしが感じたことを。
もう、奥田さんがこの本で語りたかったことについては、サロンでお聞きしてることと全く変わらないですし、以前からその点については共感しますし、これまでのご経験については、リスペクトの何者でもなく、女性起業家の大先輩として、いつも背中を追いかけさせていただきたいと思っています。

この本を読了したことで新たに明言するのは
奥田さんとわたしは、自分の力を注ぐことにより変えたい未来は同じだけど、アプローチは真逆にいて、それが自分にとって最高の場所である。です。

長くなりましたが、説明しますね。

奥田さんはご自身の事業や経験を語ることを通し、時代の最先端を作り上げられる女性起業家の育成に力を注いでいらっしゃいます。大変僭越ではありますが、わたしもその中の端っこに座らさせていただいていると思ってます。奥田さんが支えている女性たちは、本当にタフで自律していて、また自分から未来を切り開くことに使命と喜びを感じている方ばかりです。まだまだ男性中心社会と言われる中に切り込んでいける女性たちです。

わたしも「男性中心社会」という現状は打破したい。でも、そこへのアプローチは、奥田さんとは正反対というか、違う立場の女性を支えられる会社を作り上げたいと考えています。

わたしの会社ジェントルワークスが現在メインに据えている事業は「子育て世代のママさんに在宅ワークをお願いし、ベンチャーなどの小規模起業のお手伝いをする」ことです。正社員という立場でなくても、在宅で1日数時間でも、仕事を介して社会の一員として寄与してもらえる人材を集め、「新しい働き方」の場を作って、女性が自分らしさを失うことなく働ける社会を作りたいと考えています。

現代の社会へ果敢に挑んでいく女性たち。自分の生活エリアを守りつつ、社会への寄与を続ける女性たち。社会との関わり方は対局かもしれませんが、それぞれあっていいと思っています。以前テレビでマツコ・デラックスさんが話していたことが話題になりました。

マツコ、「男女平等」について盲点を語る「男の世界に合わせられる女の人じゃないと平等にはならない」


全くその通りだと思います。女性らしさ、というよりも、自分の思うように社会に関わり生きていけることが、これからの社会で必要とされる考え方なんじゃないかと思います。

だから、奥田さんとわたしで力を注ぐ部分が違うということは、イメージとして小麦粉を捏ね上げた生地を、左右から均等に引っ張り合うから、より大きくより早く、生地はその幅を広げていけるんじゃないかと思ったのです。

奥田さん、この本を書かれていた時、本当に忙しく(今でも変わりませんが…)倒れそうになるまで思いを伝えようとがんばっていらっしゃった姿、今でも忘れません。これからも尊敬する大先輩というか、心の師匠として後を着いていかせてください。でも、真似はしません。わたしなりにがんばります。

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すいません。随分前に発行されてた同人誌「Ultimate Agile Story Itaration2」に寄稿してました。

「ふりかえり」について短文を書きました。ふりかえりのファシリテータを務めた2件のコミュニティでの事例を紹介しています。

その他、Itaration1と同様に、手作り感たっぷりの、本当に「同人誌」です。
利益は全額、東日本大震災の被災地支援に寄付されます。

前記事でのイベントでも頒布予定です。ぜひご購入を!
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仕事でJenkinsを導入することになり、事前学習としてこの本を読みました。

Jenkins実践入門 ~ビルド・テスト・デプロイを自動化する技術 (WEB+DB PRESS.../佐藤 聖規

¥2,919
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Jenkinsに関する本のおすすめを友人に尋ねたところ、この本を紹介されました。

インストールや設定、運用の手順などについて、わかりやくす解説されている本です。当然とは思いますが、著者の方たちがJenkinsを使い込んでいることがよくわかります。

ただし、継続的インテグレーション(CI)などについても深く知りたい場合は、別の書籍も合わせて読むことをおすすめします。この本はJenkinsを導入するにあたり、一度読んで全体像を把握して、その後にもリファレンスとして使うのがよいのではないでしょうか。
章立ても「やりたいこと」で選べるように並んでいます。

そして、この本を読んで一番感心したのが、著者の方たちがNTTデータの社員であること。

少し前、NTTデータでは若手に向けてアジャイル開発(という表現が既にちょっと違うが)の習得研修を実施するというニュースが、ソフトウェア開発業界でちょっとした話題になりました。
前々からアジャイルに関わってきた人たちからすれば、超大手SIerというのはアジャイルを否定するような組織文化を持った「敵」とも言っていい存在でした。そこが数千人という単位の社員にアジャイルを「教育」する、と言うのですから、かなりの衝撃でした。

JenkinsにはCIのマインドを介して、アジャイルの遺伝子が入っています。そのJenkinsを使いこなして開発を進めて行こうとして、本を出版できるまでにした社員がいるNTTデータという会社なのだから、きっと「魂の入ったアジャイル」は実践できるんじゃないかと、勝手に解釈しました。
このような努力をしている人たちが、きっともっと多大な努力を重ねて、いろいろと手を尽くして会社にアジャイルの導入を決めさせるように、働きかけた結果だったんじゃないかと。

あくまでも想像ですがね。

ほんの憶測に過ぎませんが、Jenkins実践入門という本を介して、そう感じました。
これからの日本のアジャイルが、もっと楽しみになってきました。
成功することを決めた―商社マンがスープで広げた共感ビジネス (新潮文庫)/遠山 正道

¥460
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この本との出会いから紹介したいと思います。

最近、どうも思考がネガティブになりがちだったので、移動時間などを何かに集中させておくため、常に本を読むようにしています。欲しい本があり、文庫の平積みを探していたのですが、一向に見つかりませんでした。

そこになぜか、わたしが探していたミステリー本の表紙とは、おおよそかけ離れたデザインの文庫が、それも逆さまで斜めに置いてありました。
これも平積みなのかと思って手に取ったら、たった一冊、この本だけが置いてありました。

まるで、誰かが「読んでおけ」と言っているように感じました。わたしは迷わずこの本を買って帰りました。

著者、遠山正道さんが、三菱商事の商社マンとして社内ベンチャーで「Soup Stock Tokyo」を興し、成長させる道のりを書いていらっしゃいます。

わたしもSoup Stock Tokyoのスープとお店は大好きです。本の中に書かれているペルソナは、まさにわたしそのものでした。
実に綿密に「ストーリー」を描き、それに向かって「成功するんだ」と決めることで実現してきた様々なものを、とても好感がもてる丁寧な読みやすい文章で、まるで目の前で語ってくれているかのように書かれています。

この本に対する感想は、3点あります。

<まるで本当に起こったことのような、物語のプレゼンテーション>
第一章の最後に、遠山さんがスープをメインにしたビジネスの開始を、会社の役員向けにプレゼンテーションするための資料が掲載されています。これは当時作成したそのものとほとんど変わらないそうです。

商社のプレゼン資料といえば、図やキャッチーなフレーズを駆使して、まるで広告を見ているようなものを想像しますが、この資料は全く違います。
実際のものにはあるのかもしれませんが、掲載されているものに、図は一切入っていません。ただ1つだけ、表紙に男の子が美味しそうにカップのスープを飲んでいる写真があるだけ。

資料の中身は、簡単に言えば「ペルソナ」です。しかし、わたしがこれまで見てきたどのペルソナよりもそこにはストーリーがありました。「スープのある一日」と題して、想定した人物がどのように生活の場面でスープと関わっているのか、ということを綿密に想定して、その人の一日を綴っています。

ただ物語が続くのではなく、その中にきちんとビジネスのコンセプトや施策が書かれています。顧客の顔が見える文章と、それを作り出す仕組み仕掛けのバランスが、素晴らしい文章となっています。

資料の最後には、既にベンチャーは進められていて、このように成功“した”という想定ではありますが、まるで報告書のようにそこまでの成功を“振り返って”います。
これを役員に提示する遠山さんという方は、なんとユニークな人なんだろうと、会ってもいない人がよくわかる気がする内容です。

この資料の部分を読むだけでも、とても価値のある本だとすぐに思いました。
そしてこの資料は、今でもスマイルズの人たちがバイブルとして持ち歩いているそうです。

<簡単に独立しないしたたかさ>
遠山さんは、社内ベンチャーで起業し、すぐに独立することは考えていなかったそうです。むしろ、独立することは当初まったく考えていなかったのではないでしょうか。

三菱商事という会社のキャパシティを十分利用して、ある意味自由に挑戦できるメリットをよく知っていたのだと思います。わたしも中堅ソフトウェアハウスから、全社員が10名前後の会社に移ってから、キャパシティというものの強さを思い知りました。

やりたいことがあるにしても、そこには様々なリソースが必要となります。小さな会社は意思決定は早いです。自分から「やりたい!」と手を上げれば、自分自身も追いつけないぐらいのスピードで物事が進むこともあります。しかし、たとえどんな企業であっても、ビジネスを始めるためには「背景」が必要です。

「どう成功させるのか」「そのためにどんな戦略を持っているのか」

これらを準備するのに、キャパシティは大きな効力を発揮します。

何百人、何千人と社員のいる会社なら、どんなに新しいことであっても、それに関するスキルや経験を持った人がいる「可能性」が高くなります。もしくは、ビジネスに関する強い「思い」を持った人と内部で出会えることもあると思います。人員的なリソースを、大きな会社は既に抱えている可能性があります。

また資金の問題もキャパシティが解決できるケースもあります。

堅実に利益を上げている会社は、その利益を更なる成長のために使います。より成功の可能性が高い、新たなビジネスに投資することも視野にあるわけですから、そこに適う提案をすれば、自分で資金を調達しなくてもビジネスを始められることもあります。

このような大企業のメリットについて、同じことを言っていた人がいました。SonicGardenのCEO 倉貫さん(@kuranuki)です。
倉貫さんも某大手SIerで社内ベンチャーとして起業し、最近そこから独立しています。

彼のキャリア戦略やビジネスに関する考え方は、とても頷けるものなので、ぜひ読んでみてください。


ビジネスにはある程度「賭け」は必要なのかもしれませんが、それはビジネスの目的ではありません。逆に「どうすれば確実に成功できるか」を考え続け、行動することがビジネスですから、リスクを少なくする手段があるなら、それは大いに利用すればいい。ただし、一人勝ちでは理解されないので、投資する企業の側にもメリットがあるように考える。本当に独立が必要なのかどうか、考える時期は絶対に来るものだなと、この本にも、倉貫さんの言葉にも感じ取ることができました。

起業 = 独立

この構図が全てではない時代なのだと感じました。

<“顔”のあるビジネス>
特に「顔」という言葉を出して、説明されている文章はありません。「顔」という言葉を連想したのはわたしの感想です。

スープに対するこだわり、店舗に対するこだわり。遠山さんが思い描くビジネスのそこここに、こだわりという言葉が多く使われています。それは顧客にお店を愛してもらえるように、愛情を注ぐことだと感じました。だから、このビジネスには、人のような表情があって、お客様という人を愛する有機体なんじゃないかと思わされました。

その顔とは、スマイルズの社員であったり、店舗のパートナーであったり、遠山さんそのものであったりするのかもしれません。その、ひとりひとりがこのビジネスの顔となって、Soup Stock Tokyoという有機体を構成している。それを強く感じます。

全てが成功事例ではありません。辛く厳しい時期もあり、それをどう乗り越えたかということも書かれています。

それですら、人が働くことに対して何を悦びに感じるか、顧客は何に惹き付けられるのか、ということがよくわかって、そして青春映画を見るような、ちょっとセンチメンタルで心があたたまる物語でもあります。

仕事に疲れてしまったとき、ちょっと背中を押してもらえる本だと思います。
遅くなりましたが、先日PMIの月例セミナーでこの本の著者である岸良裕司さんのお話を聞いてきました。
内容はこの本の中に書いてあることと、ほぼ同様です。

過剰管理の処方箋 自然にみんながやる気!になる/金井 壽宏
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なかなかよいタイトルだと思います。内容とタイトルに込めた「思い」がマッチしています。

この中でCCPMがプロジェクトを成功させる1つの手法であると説明されています。それはプロジェクト内で各自に割り当てられた個々のタスクに余裕としてのバッファを与えるのではなく、それぞれのタスクは「できるか、できないか」半々ぐらいの見積で計画し、プロジェクト全体にバッファを持たせるという方法です。

弊社でもCCPMの考え方は取り入れたタスク見積をしています。よく「実践は難しそうだ」という声を聞きますが、岸良さんのセミナーを聞くと、単純に「バッファ」というものを捉えれば、自ずとこういう考え方になるんじゃないか、と思わされます。

また、人のやる気を“適度に”引き出す方法としてのODSCも、役に立つ方法だと思います。
関係者全員でプロジェクトの目標を「すり合わせる」ために、簡単に文書化して共有するという方法ですが、ここのポイントは「簡単に」なのだと思います。あまり詳細な内容だと、本当に目指すべきものが文章に埋もれてしまいます。それこそ、このODSCはA4用紙1枚程度で書ける内容です。
書くことそのものはあまり難しくありませんが、「ODSCを誰に書かせるか」とか「どうやって見せるか」という“運用”の側面には工夫がいろいろと盛り込まれています。
これらのことも、岸良さんのセミナーでお話を聞くと、とても納得感のあるものでした。

この本もオススメですし、一度岸良さんのセミナーを聴講されるのもオススメです。
大学の恩師の著書を紹介します。

ダイアローグ 対話する組織/中原 淳
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東大の中原先生と、恩師である産能大の長岡先生が書かれました。
企業において対話型コミュニケーションがどのような役割を持っていて、大人の学びに対してどのような影響を与えるものかということが、アカデミックなアプローチと、フィールドワークによる企業研究をおりまぜて説明されています。
企業で社員の教育に関して悩みを持っている方には、対話を通して学ぶという場がないことに気づかされるのではないでしょうか。

書かれている内容は、社会人としてある程度の年数を経て、技術や知識の問題とはいまひとつ違うことを乗り越えてきた人には、必ず思い当たる節のあることばかりです。しかし、それらを「人生経験」のような言葉でラップしてしまい、自分の「腹に落ちる」知識として形づくれていないことも多いはず。そのような方には、アカデミックな理論によりコミュニケーションの場面で見られる問題点を解説してもらえることで「そうか、自分のあの経験はこういう意味を持っていたのか」という感覚を得ることができると思います。

わたしがこの本を読み始めて、「なるほど!」と思ったのは「緊密なコミュニケーション=よい職場、という幻想」です。社会人でなくとも、誰もが一度は感じたことがあるのではないでしょうか。日常的にとても親しい友人と、仕事上の意見の違いを率直に言えないケースなど。仕事に対する価値よりも、人間関係に比重を置いてしまうのは、感情で動く動物であるから仕方のないことではあるのですが。

教育学と社会行動学のアカデミアの先生が、企業での学びを語ることに抵抗を感じる方もいると思います。しかし、この第三者的な観点からの意見や知識というのは、ときに実践者たちの鏡となって、自分たちの姿を映し出して気づかせてくれることも多いはずです。

文章は決して難しいものではありません。読んで損はない一冊です。
プロセス改善の効果として、わたしは「人の成長」が最大なのではないかと思っています。
日常の現場改善で積んだ多くの経験を、アセスメントの場で再確認し形式知化する、というプロセスを構築する仕組みとしてのプロセス改善に価値を感じるので。

そのような考え方から、人材教育の様々な知識はプロセス改善の推進に役立つと思います。そこでこの本をご紹介します。

人材開発マネジメントブック―学習が企業を強くする/福澤 英弘
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企業で人材教育を主たる業務にしている方向けに書かれている本ですが、部下の能力開発に問題意識を持つマネージャー層にもお勧めだと思います。
人材開発をひとつの「プロジェクト」として捕らえ、目標設定や計画作成の重要性を解説し、また具体的にどのようなプラクティスが必要か、などの実践的な記述も多い内容です。この通りに実践するれば必ず人が育つ、というものではありませんが、単なる知識ベースの教育必要論から一歩踏み込んで書かれています。

前半は企業の人材教育実践のプロセスを解説していて、後半はそのプラクティスを掘り下げて解説している内容です。例えば、集合研修においてどうやって上司の理解を獲得するか、計画に際しどのような項目があるか、外部委託企業や講師の選定はどうするか、など。

講師の4タイプについての解説は、特に勉強になりました。研修講師は「先生」「研究者」「ファシリテーター」「コーチ」の4種類に分類され、研修の目的によって講師のタイプを変える必要がある。プロセス改善におけるアセッサーの役割や、改善推進担当者の役割などに置き換えると、とても参考になるのではないでしょうか。
技術KI計画 という考え方をご存知でしょうか?
http://www.jmac.co.jp/service/consulting/detail.php?dt=147&n=9&b=18

上記リンクによれば

技術KI計画は、頭脳集団である技術者、研究者、あるいは設計者の知的生産性の向上を実現するプログラムです。また、技術KI計画活動の過程で、チーム化とリーダーの成長により職場力が向上し、組織風土の活性化をも実現できます。
<日本能率協会ホームページより引用>

ということで、様々な現場活性化のプラクティスを通して、現場が“悪魔のサイクル”と称される現場のすさんだ現場の状況を“天使のサイクル”に変えていこう、という考え方なのだそうです。

この技術KI計画を、事例を交えて説明しているのがこの本です。
技術者・エンジニアの知的生産性向上/日本能率協会コンサルティング
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まえがきに書かれていますが、この技術KI計画とは、1980年ごろに産学協同でホワイトカラーの生産性研究を始めたのが起こりで、1993年に「技術者の知的生産性向上」という本が前身なのだそうです。当時の「現場」としての対象は機械や電気のエンジニアでした。ここに、現在爆発的に増えたソフトウェアやシステムの開発をするエンジニアにも適用できる考え方に改善したものが「新・技術KI計画」としてまとめられ、この書籍になったとのことです。
もう15年以上も前から、このような現場活性化の考え方とプラクティスは考え出されていたのですね。

プロジェクトファシリテーション (PF)をご存知の方には、この技術KI計画もよく理解できる内容だと思います。紹介されているプラクティスは違いますが、そこから得られる効果は同じものであるし、各プラクティスが踏まえるべき原則も同じものだと、すぐに気づくことと思います。プラクティスの中には、少々やり方や名前の付け方を変えただけに見えるものもあります。

また、最近では「モチベーション」というキーワードで現場活性化の必要性が語られる機会は多く、それらを読んでいる方にはわざわざそこを説明する必要はないでしょう。(もし、まだ読んでいないようでしたら、ぜひこの本を。)
なので、今回はそこの必要性を理解しているということを前提にして、この本のお勧めポイントを書きたいと思います。

<年長者にも理解しやすい言葉づかい>
前述のとおり、この考え方は1980年ごろから始まっています。そのせいかどうかはわかりませんが、あまり目新しい言葉が出てきません。特にカタカナ語は少なく感じます。あったとしても「マネジメント」など、既に古くから馴染んでいる言葉が多いです。
例えば、現場が自由に意見を出し合えるミーティングの場に「ワイガヤミーティング」という名前をつけています。この「ワイガヤ」とは「ワイワイ、ガヤガヤ」を略した言葉ですし、年長者でも知っている言葉です。そしてその言葉がすぐに「自由な雰囲気」を感じ取れるものでもあります。
また、ふりかえりの場面で使う見える化のツールとして「YWT」というものを紹介しています。これはアジャイルやPFを実践している方にはお馴染みな「KPT」と同じような使い方をするものです。
Y…やったこと W…わかったこと T…次にやること
ふりかえりのときにこの3つを挙げる、という方法です。これらが日本語の頭文字であることで、これを説明するだけで何を出せばいいか、すぐにわかります。

年長者にも理解できる言葉を使うことのメリットは、「上司が新しい取り組みに理解を示してくれない」という問題に対して、ひとつの解決方法になると思います。新しい言葉が羅列されると、どうもやることも斬新で、現在を否定されるばかりのものなのではないか、と感じることもあると思います。上司も人間ですから、そのような感覚で取り組みを評価してしまうこともあるでしょう。そこを、言葉の使い方ひとつで何とかなるんじゃないだろうか?わたしはそんなふうに思いました。

<マネジメントと一体化した考え方>
技術KI計画の基本は「見える計画」です。ここでは「かんばん」を用いてプロジェクトの計画が見えるようになっています。(この書籍では「かんばん」=「見える計画」という名前付けになっているようです。)

この「見える計画」の原則は
・一元管理
・物理的にチームメンバーに見えるようにする工夫
・随時かつ定期的に更新していく
・適度な細かさ
つまり、チームの状況が一箇所で感覚的に誰にでも理解できる、ということでしょうか。
特に最初の「一元管理」については、このチームの状況だけでなく、マネージャーが管理している計画や顧客/他部署へ提出している計画なども含めて全部見せているところです。

PFでは「PMとPF」という言葉で、そこには差があることを様々な場面で考えます。しかし、いつもたどり着くのは「どちらも大切」という価値観です。だったらいっそ、一緒にしてもいいかもと思わされました。また、チームの活動にマネージャーを巻き込む方法として、一元管理を利用するのもアリだと思います。マネージャーだって、チームから遠いところに置かれたら寂しくなるものです。

<取り組みのプロセスが説明されている>
第8章「技術者が生き生きとする運営の仕掛け」というところで、技術KI計画を適用するためのステップが説明されています。おそらくこれも「一例」なのだと思いますが、このままでも取り組めそうなレベルになっています。これに囚われてしまっては、最終的に自律した活動にならないと思いますが「今、自分たちは何をどうすればいいのかわからない」という切実な悩みを抱えている現場には、これだけ詳しく説明された手法のほうが、「まず、始めてみよう」という気持ちになれると思います。

<全体として上司が受け入れやすい内容>
ここまでで紹介したお勧めポイントの総括になりますが、言い方が悪いですが「ちょっと古臭い形式」の説明が多いと思います。出所が古いということは否めませんが、それがかえって「誰にでも受け入れやすい」内容を作っているように思います。問題を抱えているチームがあったとき、それを何とか解消したいと思っているのは、チームの当事者だけでなく、周りのステークホルダーと言われる人たちも同様です。少しでも多くの関係する人たちが理解してくれる取り組みのほうが、理解者が少ないよりも成功する可能性は高くなると思います。そのためにも「受け入れやすさ」というのは大切なことではないでしょうか。

<今まで知らなかったPFのプラクティス例として>
最初に書きましたが、考え方の基本はPFと変わらないとわたしは思っています。なので、ここで紹介されているプラクティスをPFの取り組みとして含めることは、まったく遜色ないかと。また、少々面倒かもしれませんが、マネージャー層も巻き込む「見える計画」などを理解し、試してみることで、PFとは違うものの見方を感じることもできるのではないでしょうか。

上記が、わたしの考えた本書のお勧めポイントです。

まあ、ちょっと日能さんのまわしもの的に濃く説明してみましたが、内容はそんなに固いものではありません。かつて日本の現場を明るいものにした「QC活動」の匂いも、どことなく残っているかもしれません。そういうものからこそ、学ぶべきものがあったりする、かも。