今日はダイヤモンド社主催のセミナーに行ってきました。
このセミナーは「WPL」という「現場の学び診断ツール」の発売記念ということです。
WPLというツールは、東大の中原先生と、神戸大学の松尾先生が共同研究を基に現場における人材の成長を「見える化」するものだそうです。興味のある方はこちらをどうぞ。
現場の学び(ワークプレイス・ラーニング)診断システム 「WPL」の商品コンセプト
松尾先生のお話は、この前「ダイアローグ@代官山」でうかがったものに近い内容でした。経験から成長する個人とはどういうタイプなのか、どのような経験が人を成長させるのか、等々。
中原先生のお話は、松尾先生の「個人」に対し、その個人が過ごす「職場」の話です。どのような職場が人の成長を促進するのかということ。
<成長する人材 成長できない人材>:松尾先生
ここでのテーマは以下のようなものでした。
1.人はいかに成長するのか(理論)
2.どのようなときに人は成長していると感じるのか(成長経験)
3.どのような人が成長できるのか(経験から学ぶ力)
<成長をうながす職場、そうでない職場>:中原先生
「職場の育成風土」
・PDCA
PDCAをまわして仕事をする雰囲気が全員に共有されているかどうか
・オープンコミュニケーション
言いたいことをきちんと言い合う雰囲気があるかどうか
・上司力
上司が、構成に、助言・指導を行いつつ、権限委譲を行ったり、自らの経験を語ったりしているか
・人とのつながり
職場に助け合う雰囲気(互酬性)・信頼感があるかどうか 経験の共有がなされているかどうか
コンテンツはこんな感じでした。
セミナーの内容を説明すると長くなるので割愛。よくいろんなところで講演されているので、興味のある方はぜひ一度聴講されることをオススメします。
以下に、気に留めたキーワードをいくつか紹介したいと思います。
よく考えられた練習
松尾先生の講演では「ストレッチ&フィードバック」という言葉が出てきます。これが「よく考えられた練習」の概要です。適度に難しく、明確な課題を提供して、その結果が必ずフィードバックされる。そしてそこでみつけた誤りが修正できる機会が与えられる。このような「練習」を積むことで、人は成長できるというものです。
この考え方はプロセス改善でも同じように考えるとよいと思いました。改善の計画には目的・目標が掲げられますが、そこを「適度に難しい」内容にすること。それに取り組むことにより、改善に参加する個人がストレッチ経験を得られて成長し、チームも成長する。
プロセス改善とはその名のとおり「プロセスを改善する」ことなのですが、その活動を通して人が成長し、プロセスをまわす力を身につけることも重要です。人が成長することそのものはプロセス改善の目的ではありませんが、それを得られないプロセス改善は、どこか片手落ちのような気がします。
外化
これは中原先生の講演の中で紹介された、 Piagetの学習理論であるConstructionism理論「創りつつ考える」ということを表現した言葉です。
Constructivism(learning theory)
先生が提示された「職場の育成風土」ということは、すべて「成長する個人とその周辺との知識共有」になっています。そのような関係性の中で具体的にどのような手法で人は知識を身につけていくのか。その方法として「外化」が紹介されました。
ここでは簡単なワークをしました。レゴブロックを使って「あなたの職場をレゴで表現し、それを隣の人に説明してください」というものです。この外化の意味は「手を使って何かを作ることは、心で知識を作ること」と説明されました。つまり、自分の中にある知識の種を、何かを使って外側に出すことで、本当の知識とする。
わたしはこれまで知識とは外部から得るものであると思っていましたが、そうではなく、内側から生み出すということもしていたのですね。
経験学習とは、外側からもたらされた経験が知識を与えてくれるだけでなく、経験を通して自分の内側にあるものを目覚めさせるという効果があるから、経験することが大切なのですね。
座学のように、外側からの知識を習得するだけの学習では、人の成長が見込めないのは、内側にあるものが引き出されることが少ないからではないかと思います。もちろん座学で何かに触発されることはあると思いますが、圧倒的に少ないのでしょう。
職場と現場
この言葉は特に先生から解説があったものではありません。聴講中にふと自分で疑問に思ったことです。
セミナーに参加されている方は、企業の教育担当の方ばかりなのですが、その職種は様々です。わたしはたまたまお隣が同業者でしたが、反対側の方は新聞社の方でした。
最近はこのような業種が違う方と同席することが多くなったのですが、違う職種ではプロジェクト制で仕事をすることが少ないのですね。わたしはIT業界で仕事をしている間、ずっとプロジェクト制のもとで仕事をしていたので、仕事の完了とか、目的とか、仕事の全容を意識したり、成果がはっきり見える環境にいました。しかしプロジェクトで仕事をしない場合は、これらのことが掴みづらく、特に達成感を得られる機会が少ないようです。
そのような実態を知るにつけ、プロジェクト制とは人の成長を促しやすい仕組みだなと思いました。特にプロジェクト計画の中に教育機会を盛り込んで仕事を進められるので「よく考えられた練習」など、意図的に埋め込むことが可能なのだと思いました。
そう、わたしたちは「人が育つ」という側面では、実に恵まれた環境にあるのかもしれません。
このように、プロジェクト制で働くわたしたちは、そのプロジェクトの結束を強くする場面は多々あります。それなのに、よく耳にする言葉は「総務はわかっていない」とか「経理はいつも面倒なことを言う」など、プロジェクト外の人々に対する冷たい言葉。
実を申さば、わたしも現役のプログラマだったころは、スタッフ部門を「うるさい」と思っていたこともありました。自分たちプログラマが稼いでいるから、スタッフ部門は給料を貰えているのだ、という感じで。
しかし、自分が改善推進担当というスタッフ部門に移って、スタッフという人たちの意義を痛感しました。
わたしの当時の解釈では「現場」とはプログラムをする部門で、プロジェクトとして仕事をしている人のいる場です。しかし、この現場とは、会社という組織の中にいれば、現場以外との係わり合いがいろいろとあるはずです。例えば、自分たちが働いて得られる給料は、給料計算をしてくれる人がいるから、必ず決まった日に銀行に振り込まれているのです。常にエアコンの効いた快適な環境で仕事ができるのは、総務の人たちがいつもコンディションを気にしていてくれるからです。
このような人たちと関わっている場所が「職場」なのではないでしょうか。
企業の生業に対して、直接・間接は関係なく、様々な人との関係性が「職場」として認識できているか。そういうことが総じて「働くことの楽しさ」に繋がるんじゃないかと思ったりしております。
今は、会社全部がわたしにとっての「現場」です。