2009-03-28 01:29:17

能率学と上野陽一先生

テーマ:今日の出来事
前の記事でご紹介した書籍「ソフトウェア職人気質」では、古典的なソフトウェア工学がビジネスアプリケーション構築のプロジェクトに用いられることの不適切さを「科学的管理法」を引用して説明されています。この説明は実にしっくりきますが、わたしはきっと、この本を読んだことのある友人たちよりも、もっと深く「科学的管理法」との対比に思い入れというか、感慨を持っていることを自負しています。

わたしの母校である「産能大学」の創立者である上野陽一先生は、「能率」という言葉を作った方であり、日本で最初のマネジメント・コンサルタントとして活躍された方です。「科学的管理法」はF.W.テーラーにより考案されたものですが、これを翻訳し日本に紹介したのが上野陽一先生なのです。
上野陽一先生はテーラーの研究者としては日本の第一人者であり、この科学的管理法からインスパイアされるように「能率」という言葉を生み出したとも言えます。

「ソフトウェア職人気質」を読了した段階で、わたしは個人的な造詣からも再度「科学的管理法」を調べようと思い、行き着いたところが結局母校のホームページでした。
http://www.sanno.ac.jp/founder/index.html

その中で、在学中にも知ることのなかった「能率5道」と「能率10訓」というものを、はじめて目にしました。
「能率5道」  http://www.sanno.ac.jp/founder/5dou.html
「能率10訓」  http://www.sanno.ac.jp/founder/10kun.html

これまで、能率という言葉は誤解されていることが多かったのではないかと感じます。それは「能率的」であるということは、属人性を廃してシステマティックに全てが動くことで、合理性を追求するという考え方に思われているのではないかという懸念です。
しかし、「能率10訓」の中の9番目には、能率が「幸せ」を追求する行動である、というふうに上野先生は述べています。また、1番目には「目的、目標を明確にすることで、人は励みを得る」つまりモチベーションを高くできる、というふうにもおっしゃっています。

過大解釈かもしれませんが、上野先生の言葉には「人を大切に考えるからムダ・ムリ・ムラを排除しなければならない」という教えが込められているように思いました。
能率とは、決して合理性の追求なのではなく、人が各自の能力の中で「適度な立ち位置を見つける」ということなのではないかと思います。過度なムダとりは「ムリ」なのです。ここをはじめから言及していた上野先生の先見性に、あらためてリスペクトしました。

そして「能率」の考え方のプラクティスは「カイゼン」の始祖だと思います。その典型として、上野先生が考案された「能率机」 があります。
http://www.sanno.ac.jp/founder/bunko.html

「この机の特徴は、人と向かい合って、読み、書き、話し等ができることで、2人で打ち合わせながら、書類の処理や整理をする時に便利です。」
まさにペアプロ!!驚きです。2人で作業を進め、その場で成果物を作ってしまうことの効率性と品質の高さを、上野先生は既に実践されていたのです。

このような先生が作られた学校で、合計6年間も学んだわたしが、プロセス改善とカイゼンに出会ったことは、運命や宿命でもなく、必然だったように思う、今日の出来事でした。
2009-03-27 12:57:39

ソフトウェア職人気質

テーマ:本の紹介
必要に迫られて読んだ本なのですが、今のわたしには非常に読みやすく、納得感の多い本でした。

ソフトウェア職人気質―人を育て、システム開発を成功へと導くための重要キーワード (Professional Computing Series)/ピート マクブリーン
¥2,415
Amazon.co.jp

このタイトルといい表紙といい、何となく和テイストを感じますね。

2002年に発売された本ですが、当時からこれだけ「ソフトウェア開発には人間の要素が重要だ」と訴えられているのに、今でもソフトウェア工学至上主義の人が多いのは、ちょっと不思議なことですね。

今、わたしが抱えている問題は「アジャイルの開発手法しか知らないエンジニアの“当たり前”教育」です。

アジャイル開発では、どんな開発手法でも必要な要求の定義や見積、計画などを行ってはいますが、特にウォーターフォール型に見られる「何でもかんでもドキュメントにする」ということはしません。ドキュメント化しないと内容が共有できないような、大きなスコープをいつも抱えていないからです。

だから、ドキュメント化していないだけで、きちんとやっていることが多いアジャイル開発では、この「見えていない知識・技術」を伝えていなかったことがとても多いと感じています。
では、この「見えてない知識・技術」をどうやって若い人に学んでもらえばいいのだろうか?それが目下の悩みというわけです。

この本を手にしたのは、別の理由からだったのですが、「優れたエンジニアに弟子をつける」という方法を通して、ソフトウェア開発を実践する中で「伝えていく」ということの筋道を獲た気がします。
特に本の後半では、「ソフトウェア職人にはどうやってなっていくのか」ということを「アプレンティス」「ジャーニーマン」という段階を経て、自らの力で職人になる過程を説明しています。そのまま、というわけにはいかないと思いますが、この考え方は日本が古くから続けている「徒弟制度」的なOJTにとても近く、実践しやすい考え方だと感じました。

この本を読んで、ソフトウェア開発をする上で必要な「チーム」というものの像を改めて考えさせられるきっかけになりました。エンジニアとしての「リスペクト」により繋がっているチームは、きっと本当に強いチームなのだと。
2009-03-16 11:18:39

プロセス改善ナビゲーションガイド 虎の巻編-改善のゴールに一歩近づくために

テーマ:本の紹介
ここに書くのをすっかり忘れていました。

プロセス改善ナビゲーションガイド 虎の巻編―改善のゴールに一歩近づくために (SEC BOOKS)
¥1,500
Amazon.co.jp

わたしも執筆者として参加させていただいた、初めてのSEC BOOKです。当初予定よりもずいぶんと発刊が遅れましたが、ようやく出ました。
プロセス改善を効果的に進めるために、改善そのもののプロセスや問題点の考え方、そして勘所をわかりやすく紹介している本です。

「おわりに」というあとがきはわたしが書いたものです。
そこにも書いたとおり「本のとおり真似ても改善は成功しない」というのが、本書の重要なメッセージです。ちょっと矛盾してるように聞こえますが、本はあくまで「ガイド」であって、自分たちの組織・チームがどう変わりたいか、ということが踏まえられていない改善は、どんなすばらしい書籍を参考にしても、成功するはずはありません。まあ、成功が定義されていないということなのですから、当たり前ですね。

しかしながら、自分たちのゴールをきちんと見据えて、改善を進めていこうと考えている方にこの本は多くのヒントを与えてくれると思います。ぜひご一読ください。

明日はこの本を解説するセミナーが開催されます。わたしが講師を務めることになっていますが、さてうまくできますやら。

Amebaおすすめキーワード

    アメーバに会員登録して、ブログをつくろう! powered by Ameba (アメーバ)|ブログを中心とした登録無料サイト