原稿紛失

ブログネタ:知らないことを、素直に「知らない」って言える? 参加中

今話題のネタなんで一応触れておきますね。
匿名なんでなんでも言えちゃうのもありますけど。

基本的に原稿は返却されますが、誰も行方を「知らない」原稿というのはたまに発生します。
特にカラー原稿は校了が違うので普通の原稿と別管理になり、誌面のデザイン事務所などにまわって紛失が起きやすいという事実は結構常識です。
ただそれは、直ちに紛失したということではなく、だいたいが見つけ次第送っておきますくらいで済んでしまう出来事であり、それがそのまま人事異動などでうやむやになるというのも、残念ながら日常茶飯事です。

私が仕事をしていたのもかなり大手の出版社ですが、それでもそんなものなのです。
それ自体は悪しき慣習であり、正されるものなら正されるべきだと思います。
特に私のような実績の無い作家が声を上げても効果が無いので、会社に影響力のある作家さんがやってくれることには正直ありがたい面もあります。

野球選手などでも、選手会として声を上げられるのはチームに欠かせない主力選手だからこそで、レギュラーギリギリの選手が待遇や不満を持ち出しても試合に出られなくなったりチームにいられなくなるだけですからね。

ですが私は今回の件について、全面的にこの作家さんを支持する気持ちにはなれないんです。
私が支持しようがしまいがどうでもいい話なんですが、少なくともまわりの同業仲間でも同意見が多いです。

実際問題として、編集者として不適格な人間が現場に一人もいない、とは言い切れません。そのような人と仕事をすることになるのは不幸だと言えます。それはおそらく漫画業界に限ったことではないでしょう。
ですが、あくまで個人の主観であり相性もあります。ほかの作家さんとはいい仕事をしているかもしれません。それをただ自分が気に入らなかったということで公の場で実名で罵る行為を応援する気にはなれないんです。言った言わないの水掛け論は坊主憎けりゃ袈裟までということもあります。

今回の文章から私はすべてを事実だと推測することはできませんでした。
私自身の経験と照らし合わせて、有り得ることもいくつかありました。それでも、です。
一部被害妄想の可能性さえ浮かびました。言い換えれば、そういう作家さんも少なくないということです。
自身が直接関わった件ではない噂や確証の無い伝聞からの批難も目立ちます。

そして、会社や編集部というものを、そういった個人に対する悪感情で全面的に批難すべきだとは思えません。実際あやしい会社やワンマンな編集部自体は存在しないとは言いません、が、そこでも全てがそういう悪意のもとに運営されてる例はそれほど多くは無いと思います。運悪く、あるいはタイミングが悪くそういう事態に居合わせてしまうことは、ほかの業界でもあるんじゃないでしょうか。

漫画は一人では作り上げることはできません。編集者との衝突や言い争いさえも、結果的に作品がいい方向に向かう糧になればOKなこともあります。それが毎回うまくいくとも限らず、悪い方向に転がることもあるでしょう。それはやはりやってみないと分からないことなんです。それを失敗した方向だけを相手の責任にし、成功したものだけを自分の功績にしてしまうやり方は、外から見てても事実がどうだったのか疑ってしまいます。

伝統ある雑誌というのは、過去のさまざまな作家さんや作品、そして表に出ない編集者の努力、それに作品を愛し支えてきた読者さんたちが歴史をかけて作り上げられたものです。それをここまで中傷していくことで、どれだけの人を傷つけたのかと思うと、他人事ながら非常に残念に思います。


ここまで言っておいてなんですが、私としては、作家の扱いがあまりよくないことや原稿紛失に関しては実体験もあるので、改善される方向に動けばとても助かります。だからこそ、こういう形で事の次第が動いてしまったことが本当に残念なんです。

一般的に知られてないだけで、出版社の作家の地位向上に働いた作家さんの話は業界内で会社を超えてはわりと広く知られています。それは読者を巻き込む形ではなく、当事者同士が行ってきたことです。そういうところで戦ってくれた作家さんたちに感謝の気持ちもあるからこそ、そんな作家さんたちも望まなかったであろうことが現実に起きてることに不安を感じます。

あと今さらですがネットで出回る匿名の書き込む噂話は嘘が多いです。(私も匿名ですけどね)
ですがその嘘を事実として捕らえて話を広げていく人の多さも目の当たりにして、怖いなと思いました。
知らないことを知ってるように言う人間が結構いるということです。
私は知らないまま描くとあとで大変なことになるんでちゃんと知らないって言いますけどね。

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