変態紳士の「奇妙に黒鮪一本釣り」

変態紳士の「奇妙に黒鮪一本釣り」

どうも、自由気ままに変態紳士、黒鮪です。

どうも、黒鮪です。
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追川一真(おいかわ かずま)♂
大学生。小学生の頃から夢に出てくる女性、通称「夢子さん」に恋をしている。
夢子さんこそが自分にとっての運命の人だと信じて疑わず、他の女性に惚れた事は無い。
 
島咲成美(しまさき なるみ)♀
追川一真の幼馴染で、追川一真に惚れている。
追川一真が信じて疑わない「夢子さん」を一緒に探すことになる。
 
瀬川純也(せがわ じゅんや)♂
追川一真の大学で出来た友人。
「夢子さん」の事を語る追川一真の事を子バカにしつつも
なんやかんやで応援している。
 
有田恵美(ありた めぐみ)♀
詳しくは読んでからのお楽しみ。
 
医者(いしゃ)♂or♀
旅の途中で出会うお医者さん。
 
~配役表(♂2♀2不問1)~
追川♂:
島咲♀:
瀬川♂:
有田♀:
医者♂or♀:
 
 
追川M:僕はよく夢を見る。ピアノを弾く夢だ。
夢の中で僕は、見覚えが無い部屋に佇んでいる。
その部屋には2台のピアノが並んでいて、
1人の女性が片方のピアノを弾いている。
僕は女性が演奏している姿を見ている内に
なんとなく?無意識と言うべきか。
おもむろにその女性が使っていない方の
ピアノの前に座って、見よう見まねで弾いてみる。
その人はすごくピアノが上手だけど、
僕は下手くそで当時小学1年生だった僕は泣いてしまったりもした。
でもその人は泣いている僕をなぐさめてくれて、
一緒にゆっくりとピアノを弾いてくれるのだ。
夢から覚めてもその事は鮮明に覚えていて、
少しでもその人の演奏技術に追いつきたかった僕は
両親に頼み込んでピアノを習い始めた。
それからはその夢を見る度にその人と一緒にピアノを弾いた。
ピアノが上達した僕の姿を見ると、その人はとても喜んでくれた。
その喜ぶ姿を見る度に、徐々に僕はその人に惹かれていった。
夢の中で出会うその女性に、僕は恋をしていたのだ。
でも…
 
追川:んん…はぁ、やっぱり見られなくなってる。
なんでなんだろう…夢子さん…
追川M:夢子さんというのは、夢の中に出てくる女性の事だ。
あの人は名前を教えてはくれなかったので勝手に呼ぶようになった。
 
追川:はぁーあ…ん?今何時だぁ?…げっ!もうこんな時間!?
ヤバイ!講義に遅れる!!
 
(場面変更)
 
瀬川:おっ、来たなカズマ。今日は愛しの夢子さんの夢は見られたのか?
 
追川:(息切れ)…ま、間に合った…
今日も見られなかったよ…くそっ、バカにしやがって…
 
追川M:こいつは、瀬川純也。
大学で幼馴染に夢子さんの話をしていた時、
どこからともなく現れて
話に食いついてきた変な奴である。
悪い奴ではないのだが、
自他共に認めるお調子者だ。
 
瀬川:そりゃさぁ、小学生の頃に夢の中で出会った女性に恋をして、
それ以来現実の女性に見向きもしない男友達なんてバカにしたくもなるだろ?
 
追川:小学生の頃だけじゃない!!つい最近まで見られてたんだよ…
急にパタッと見られなくなっちゃったんだ…
それに、好きな女性を想い続けるのがそんなに悪い事なのか?
 
瀬川:そりゃ想いが重いってもんよ…
仮にそれが実在する女性だとしても、片想い歴十数年はやべぇよ…
 
追川:んぐっ…そりゃあ…そうかもしれないけど…だけど…!
 
瀬川:やれやれ、お前の一途は筋金どころか鉄骨入りだな。
あんな世話焼きで可愛い幼馴染がいるんだから、
ちょっとぐらいブレたらどうなんだ?
…っと、噂をすればなんとやらだな。
 
島咲:あーっ!カズ、やっと来たぁ!
あれだけインターホン鳴らしたのに全然起きないんだもーん!
 
追川:なんだ、ナルか。
朝からうるさいなぁ…ちゃんと間に合ったんだからいいだろ?
 
追川M:朝からやかましいこの女は
僕の幼馴染の島咲成美。
家が近所で大学に入った今でも
毎朝インターホンを鳴らして起こしに来る。
ありがたい話ではあると思っているが、
それと同時に面倒見が良すぎるにも
程があるとも思う。
 
島咲:間に合ったらいいとかじゃないでしょー?
あーあー寝ぐせもつけっぱなしだし…
どうせ朝ごはんも食べてないんでしょ?
はい、コンビニのだけどサンドウィッチあるから、
さっさと食べちゃって!
 
瀬川:オカンかな?
 
島咲:違うよー!
 
瀬川:じゃあ奥さんだ。
 
島咲:お、奥さん!?違うよ!絶対にない!
 
追川:そんなに否定しなくてもよくない…?
まぁいいけどさ。僕は夢子さん以外に興味ないし。
 
島咲:また夢子さん~?
カズってば、小学生の頃からず~っとそれだよねぇ…
小学生の頃に隣のクラスのあーちゃんが
「カズくんの事が好きです!」って告白したのに
「いや僕、夢子さんが好きだから…」って断ってさー。
「夢子さん」なんて名前の人、学校のどこにもいないから
ちょっとした騒ぎになったんだよ?
 
瀬川:そりゃあ周りからしたら随分と素っ頓狂な発言だな。
 
追川:いいだろ別に。嘘は言ってないんだから。
…はぁーあ、どうしちゃったんだろう夢子さん…
 
島咲:夢子さんがどうかしたの?
 
追川:今年の4月ぐらいからかな…
夢に出てこなくなっちゃったんだよ…
今まではこんな事なかったのに…
 
島咲:そうなんだ…それはちょっと心配だね…
自分の意志じゃ会えない分、なおさら不安だよね…
 
追川:そうなんだよ…ん?いや、待てよ?
自分の意志で…そうか、決めた!
この夏休みは夢子さんを探しに行く!!
 
島咲:えぇっ、探しに行く!?
いったいどうやって…それに手がかりだって無いんでしょ!?
 
追川:手がかりならあるよ!夢子さんがいつも弾いているあの曲!
あの曲を色んな所で演奏してまた別の手がかりを探すんだ!
 
島咲:そんな無茶な…移動手段だって考えなきゃいけないのに…
 
追川:無茶なもんか!
移動手段なんて青春18きっぷでもなんでも使えばいいんだよ!
 
瀬川:ふーん、なかなか楽しそうじゃない!
俺もついていこうかな~♪
 
島咲:瀬川くんまで…むむむ…もう!私もついていく!
カズが心配だもん!
 
追川:えっ、別にお前らは来なくても…
 
島咲:いーくーのー!!
 
追川:ええ…まぁ、いいや。
よし!そうと決まれば夏休みまで資金調達のバイトだ!!
やるぞ~~~!!
 
島咲:もう…こうなったら全然言う事きかないんだから…
 
瀬川:やれやれ、成美ちゃんもまた随分と重い想いをお持ちで…
 
島咲:ん?何の話?
 
瀬川:や、別に?ほら、講義始まるよ。
 
追川M:その次の日から僕はバイトを始めた。
新聞配達や引っ越しの日雇いバイトなど
とにかくすぐにそれなりの量のお金が
手に入る物ばかりを選んでいたので、
夏休みまでにはそれなりの金額を集めることが出来た。
ジュンヤとナルは元々バイトをしていた事もあって
金銭的にそこまで困らなかったらしい。
そして迎えた出発前夜。
 
追川:よし、着替えにキーボードに…持ち物は揃ったな。
あとは明日を迎えるだけだ。
よ~し!待っていてください、夢子さん!!
 
追川M:その夜、僕は夢を見た。
それは夢子さんがいつも現れる、
ピアノが2台並んでいる部屋の夢だった。
僕が周囲を見渡すと、ピアノの向こう側に
夢子さんがこちらに背を向けて立っていた。
僕が夢子さんに声をかけようと近付いていくと
夢子さんは黙って首を左右に振った。
僕はそこで歩みを止め、呆然と立ち尽くしていた。
何故夢子さんは首を左右に振ったのだろうか。
何故夢子さんはこちらを見てくれなかったのだろうか。
そう考えている内に目が覚めた。
 
追川:うーん…一体何だったんだろう、あの夢は…
いや、考えていても仕方ない!
今は前進あるのみ!!よしっ!!
 
追川M:出発前の支度を終えた頃、
自宅のインターホンが鳴った。ナルだ。
 
島咲:おはよ~。
今日はちゃんと起きたんだ!珍しいね~♪
 
追川:ばーか、こんな大事な日に寝坊するわけがないだろ。
ほら、さっさと行くぞ!
 
島咲:あ、ちょっと待ってよカズ~!
朝ごはんは食べたの~?
 
追川:ん?食ってないけど。
別にお腹もすいてないし。
 
島咲:だ~め!朝ごはんは1日のエネルギーになるんだから
しっかり食べないといけないの!!
ほら、集合時間まではまだ余裕あるし
途中でコンビニに寄って朝ごはん食べて行こう?
 
追川:ええ…いいよそんなの…
 
島咲:そんなこと言って、もし夢子さんに会えた時に
お腹が鳴っても知らないよ~?
 
追川:うっ…分かったよ。しょうがないなぁ…
 
島咲:ふっふっふ~♪それでよし!
 
追川M:そして、途中でコンビニに寄って
しっかりと朝ごはんを食べてから、
僕らは旅の始まりとなる駅に到着した。
 
(場面転換)
 
瀬川:おはようお二人さん。
一緒に登場とは、今日も仲がよろしいねぇ。
 
追川:へーへー、おはようさん。
 
島咲:瀬川君おはよ~。
念のために起こしに行ったんだけど、
ちゃんと起きてたんだ~。
 
瀬川:おっ、そうなのかカズマ。
お前がこんなに早く起きられるだなんて、
今日は雨が降るかな…
 
追川:おいおい、そんな幸先の悪い事言うなよ…
雨なんて降ったら移動が大変じゃないか。
 
島咲:大丈夫だよ!私がカズの分の折り畳み傘も
レインコートも持って来てるから!
 
追川:えっ、マジかよ…
 
島咲:うん!他にも酔い止めでしょ~?
ケガした時に使う救急箱にー、
こっちはお腹が痛くなった時に飲む薬でー…
 
追川:道理で荷物が多いわけだ…
そんな大荷物持ってたら歩き回れないじゃないか。
 
島咲:あっ
 
瀬川:やれやれ、仕方がないね。
少しずつ俺とカズマのバッグに入れれば
ちょっとは楽になるでしょ。
 
追川:まったく…心配性にもほどがあるぞ?
ナルは昔からそれだからなぁ。
公園に遊びに行くだけなのに
ポケットいっぱいに絆創膏持って来たりしてさ…
 
島咲:いや、それはカズが…
 
追川:僕が?
 
島咲:あっ、違う違う!そうじゃなくて!
えっと…えへへ、ごめんね?
 
追川:ほら、こっちにも荷物よこせ。
もう少しだけならこっちにも詰められるから。
 
島咲:うん…よろしく!
 
瀬川:よし…こんなもんでいいかな?
 
島咲:おおー!だいぶ軽くなったよ~!
ありがと、二人とも!
 
追川:よし、それじゃあ行くか!!出発だ!!
 
追川M:こうして、僕らの旅は始まった。
行く先は決めていなかったけれど、
とりあえず出来るだけ遠くに行って
そこから徐々に帰ってくるという道順で行動した。
各地で開催されているイベントやライブなどに
無茶を承知の上でとにかく頭を下げて頼み込み、
参加させてもらっていた。
僕は、通っていたピアノ教室のレッスンの一環として
何度か人前で演奏はしていたのだが
そこで演奏していたのは
教科書に載るような有名な楽曲だ。
今回の旅の中で演奏する曲は
夢子さんがいつも弾いていたあの曲だけ。
人前で披露するのなんて初めてだし、
とても緊張して最初は何度もミスをした。
自分では分からなかったが、
ジュンヤとナルから言わせると
始めの頃はそれはまぁ酷い出来だったらしい。
それでも、回数を重ねて行く内に
人前で演奏する事にも慣れてきて
徐々にお客さんの反応を見る余裕も出て来た。
その頃に気が付いたのだが、
聴いてくれているお客さんは皆
揃って穏やかな表情をしている。
 
追川:なぁナル。
この曲って、聴くと落ち着くのか?
 
島咲:え?うーん、落ち着くねぇ。
なんていうのかなぁ…なんだか、
穏やかな気分になるって感じ。
疲れてへとへとになっていても、
曲がふんわりと包み込んでくれる気がするの。
 
追川:ふーん…
 
瀬川:俺は…なんだろうな。
小さい頃の事を思い出しちゃうよ。
何故だかわからないけれど、
小学生の頃とかの事を
ぼんやりと思い出しちゃうんだよなぁ。
 
島咲:あ、それちょっと分かるかも!
私もカズと幼稚園で遊んでた時の事を
思い出しちゃってたもん。
 
追川:小さい頃の事を…かぁ…
 
瀬川:おっと、そういえば明日の予定は
どうするんだったかな?
遠距離ならさっさと移動しないと。
 
追川:あ、ああ。明日なんだが、
さっきの演奏をたまたま聴いていてくれてた人から
「ぜひウチで演奏してほしい!」
って依頼があったからそこに行くよ。
 
島咲:さっき声かけられてた人だよね~!
で、どこに行くの?
 
追川:住所だけ教えてもらっているけど
どんな所かは分からないよ。
行ってみてのお楽しみ。
 
島咲:ふ~ん、そっか!
 
瀬川:じゃ、移動しますか。
 
追川:おう!
 
追川M:次の日、僕らが到着したのは
なんと病院だった。それも、結構大きい。
 
瀬川:お、おい…
本当にここで合ってるんだろうな…
 
島咲:何かの間違いじゃないかな…?
 
追川:いや、確かに住所はここで合っているはず…あっ
 
追川M:病院の前で立ち往生していると、
昨日声をかけてくれた男性が病院から出て来た。
どうやらここで本当に間違いないらしい。
 
医者:やぁ、昨日ぶりだね!
よく来てくれたよ!ささ、こちらにどうぞ!
 
追川:あの…ここは病院ですよね…
失礼ですが、あなたは何者なんですか?
 
医者:ん、私?私はここで医者をやっている者だよ。
 
瀬川:お医者さん!?
 
島咲:へ~!すごいじゃんカズ!
 
追川:は、はぁ…でもどうして
お医者さんのあなたがわざわざ僕なんかに演奏の依頼を…
 
医者:それなんだが、
実はある人に君の演奏を聴かせてあげて欲しいんだ。
 
追川:僕の演奏を…?
 
医者:うん。その人は今、この病院で入院していて
寝たきりの状態なんだ。意識もはっきりしていない。
 
島咲:え…それって大変な状態なんじゃないですか!?
 
医者:うん、その通りだよ。
 
瀬川:それなら何故、そんな状態の方に
カズマの、いや、コイツの演奏を?
 
医者:その人はね、この病院の一室にある
ピアノを毎日のように弾いていたんだ。
まだ意識がはっきりとしている頃にね。
 
追川:ピアノを…
 
医者:本来は、たまにピアニストの方をお招きして
入院している患者さんに音楽療法を施したり、
指を手術した患者さんが
リハビリにピアノを使う為の施設なんだ。
そこで演奏していた曲が、何の奇跡か偶然か、
昨日キミが演奏していた曲だったんだよ。
最初は耳を疑ったよ…私は比較的
色々な演奏家の曲を聴く方だが、
この曲を弾いているのは、
私の知る限りではその患者さんとキミだけだ。
 
瀬川:そ、それって!
 
島咲:すごい!すごいよカズ!!
 
追川:あの…質問してもいいですか?
 
医者:うん、どうかしたかい?
 
追川:その患者さん…寝たきりになっている患者さんが
ピアノを弾けなくなったのはいつ頃からですか?
 
医者:えーっと…確か、
今年の4月頃からだったかな。
 
追川:今年の…4月…やっぱり…
 
医者:まぁ、そんなわけでキミに演奏を依頼したってわけさ。
この患者さんに、キミの演奏を聴かせて
どんな効果があるのかは全く分からない。
でも、何もしないよりかはマシだと思ってね。
 
追川:そうでしたか…
 
医者:改めてこの依頼、受けてくれるかい?
 
島咲:カズ…!
 
瀬川:カズマ…!
 
追川:はい!ぜひ、やらせてください!!
 
医者:そうか、それは良かった…
この扉の向こう側に患者さんがいる。
親族の方々に了承を得ようとしたら、
ぜひ同伴させてほしいと言われたから
親族の方々も一緒になるが、構わないかい?
 
追川:はい、問題ありません。
 
医者:では、いこうか。(ノック音)
失礼します、こんにちは。
演奏者の方を連れてきましたよ。
 
追川M:その部屋には、
患者さんの親族と思われる方々と、
1つの大きなベッドと、
そのベッドで瞳を閉じている女性の姿があった。
 
追川:あ…あ…
 
追川M:その女性は…夢子さんだった。
歳は40代か50代ぐらいだろうか。
顔はずいぶんと変わっていたが間違いない。
僕が幼い頃から何度も何度も夢の中で出会ったあの人。
一緒にピアノを弾いたあの人。僕の憧れの人。
僕の…僕の、大好きな人。
 
医者:はい、そういう事ですので。
今から演奏を始めますね…カズマくん?
 
追川:え…あ…
 
島咲:カズ…泣いてるよ?
 
追川:あれ…おかしいな…
なんでこんなに涙が出るのかな…
ホコリでも入っちゃったかな?あはは!
 
追川M:親族の方々もいるのだ。
冷静に取り繕わないと、ただの怪しい人だと思われてしまう。
そんな事は分かっている。
それでも、僕の中の感情が溢れ出して、止まらないのだ。
 
瀬川:おいおいカズマ、なに泣いてんだよ。
 
島咲:ちょっと、瀬川君…
 
瀬川:お前の事だからどうせ、
親族の方々に迷惑をかけるからとか
怪しまれちゃうからとか
色々考えた上で誤魔化しているんだろうけどよ、
もうそんなもん手遅れだよ!!
そんなにボロボロ泣いちまったら
とっくに怪しまれてるっつーの!
 
追川:ジュンヤ…
 
瀬川:追川一真って男が今までどんな夢を見て、
どんな気持ちでこの旅を決意して、
大勢の人たちにその曲を
何を想って聴かせて来たのか、
俺はずっと近くで見て来た!
並大抵の覚悟じゃないんだって
めちゃくちゃ感じた!!
お前の旅の目的はここなんだろ!?
しゃんとしろ!!
大好きな人の前で情けねぇ顔してんじゃねぇよ!!
 
島咲:ん~~あぁもう!
そんなに言っちゃったら我慢してる私が
バカみたいじゃない!!
カズ!あんたねぇ、私なんて
瀬川君なんかよりもっともっとも~~っと
ちっちゃい頃から延々と
カズの夢の話聞かされてんのよ!!
人の気持ちも知らないで…
って、そうじゃなくて!!
その夢の話、まるごとまとめて
気持ちと一緒にぶつけなさい!!
 
追川:ああ、そうだな…ありがとう。
すみません先生!お待たせしました!
いつでもいけます!!
 
医者:あ、あぁ。それじゃ、よろしく頼むよ。
 
追川M:演奏を始める瞬間、
僕は夢子さんの方を見た。
夢子さんは瞳を閉じている。
何かの夢を見ているのだろうか。
もし夢を見ているのなら、
何の夢を見ているのだろうか。
そんな事を考えながら演奏を始めた。
頭の中で、今まで見てきた夢子さんとの夢を
一つ一つ、噛みしめる様に思い出しながら、
僕は鍵盤を叩く。
夢子さんに自分の気持ちが伝わる様に、
ゆっくりと、確実に。
そして、演奏は終わった。
演奏している内にいつしか
涙は出なくなっていた。
 
医者:(拍手)ありがとう、カズマくん。
 
追川:いえ…そんな。
お礼を言いたいのはむしろこっちの方で…
 
追川M:と、その時だった。
 
島咲:せ、先生!!患者さんが!!
 
有田:ん…はぁ…はぁ…
 
医者:意識が…戻った!?
 
有田:はぁ…はぁ…ふふ、
下手っぴな演奏が聴こえて来て、
ふと目が覚めちゃったわ…
今の演奏をしたのはだぁれ?
 
追川M:胸が、高鳴る。
 
島咲:カズ…!
 
瀬川:カズマ、ほら…
 
追川M:二人に背中を押され、
僕は夢子さんと目を合わせる。
 
追川:ぼ、僕です…
今のピアノを弾いたのは…
 
有田:やっぱり…あなただったのね…
もう、休ませてくれたっていいじゃないの…
今まで散々レッスンしてあげたでしょ…
 
追川:…っ!!
 
有田:随分と大きくなったのね…
夢の中で見るよりもずっと大きいわ…
 
追川:あの…覚えて…?
 
有田:バカねぇ…あんなに毎晩のように
夢の中で出会ってれば、嫌でも覚えちゃうわよ…
 
追川:あの…あの…!僕は…!!
僕は、あなたにあこがれて…
今日、ここまで!!
 
有田:来ちゃダメじゃない…
 
追川:なっ…
 
有田:私はね…もう長くないの…
もうじきどっかに行っちゃう人と
知り合ったって、いい事なんて
何もありゃしないわ…
 
追川:そんな…
 
有田:でも…あなたの演奏を聴いて
気が変わったの…
この演奏をしている人の顔を見るまでは
絶対に逝けないって…
 
追川:夢子さん…
 
有田:ふふっ…まだその名前で呼ぶのね…
いい?私の名前は、有田恵美…
 
追川:有田…恵美さん…
 
有田:あなたの名前を教えて…?
 
追川:追川…一真です…
 
有田:追川…一真くんね…
 
追川:はい、僕は…僕は、
あなたに逢う為に、あなたに気持ちを伝える為に
今日ここまでやってきました。
 
有田:そう…ありがとう…大変だったでしょう?
 
追川:はい…それで、その…
僕の気持ちは伝わったでしょうか…?
 
有田:ええ、伝わったわ…
沢山ありすぎて、
自分の中に収まりきらないほどにね…
 
追川:はぁ…よかった…
 
有田:気持ちは嬉しいけれど
私、自分の教え子には興味ないの…ごめんなさいね…
 
追川:えっ…
 
瀬川:うわーお…まさかの失恋…
 
有田:あなた、ちょっと一途すぎるわね…
もっと、周りを見渡してご覧なさい?
あなたの事を大切に想ってくれている人は
大勢いるはずよ…
 
追川:は、はい…
 
有田:私の事を好きと言ってくれるのは
素直に嬉しいわ…でもね、
その「好き」という気持ちを、
ほんの少しでも周りの女の子に向けてみなさい…
自分の事を、ずっと見守ってくれている女の子にね…
 
追川:ずっと、見守って…
 
有田:さて…ちょっとおしゃべりが過ぎちゃったわね…
そろそろ…時間ね…ゲホッゲホッ!!
 
追川:夢子さ…恵美さん!!
 
医者:マズイ!容体が急変した!!
すぐに応急処置の用意を!!
 
追川:恵美さん!!恵美さん!!
 
有田:ふふっ…そんな顔しないの…
あなた、男の子でしょ…
 
追川:でも…でも!!
 
有田:もし…あっちに逝っちゃっても
夢が…見られるのなら…
その時には…また…会いましょ…?
 
追川:恵美さん…!!
…はい、その時には、今よりももっと、
ずっと、上手いピアノを聴かせてみせます!!
 
有田:ふふ…そうこなくちゃ…ゲホッゲホッ
 
医者:早く!!こっちだ!!
 
(間)
 
追川M:それからは、
先生が必死に応急処置に取り組んだが
夢子さん、いや、恵美さんが息を吹き返す事は無かった。
僕らはその場で散々涙を流し、それぞれの家へと戻った。
後日、恵美さんの親族の方から連絡があり
実際に会って恵美さんの話を聞かせてもらった。
恵美さんが、元々はプロのピアニストを目指していた事。
スランプになって伸び悩んでいた事。
その頃から夢の中で一人の男の子に会うようになり
夢の中でピアノを教える様になった事。
その男の子の成長が嬉しくて、楽しくて、
自分の周りの人に自慢げに話していた事。
そしていつしか、プロのピアニストではなく
ピアノ教室を開いて小さい子供に
ピアノを教えることが自分の夢になっていた事。
それらの話を聞いて、僕はまた涙を流した。
今は亡き、大好きだったあの人の事を想って。
そして今、僕は…
 
島咲:ちょっとー!カズー!
いつまで支度してんのー!
早くしないと講義始まっちゃうよー!
 
追川:はいはい…分かってるよ…
 
島咲:もう、ほんとにカズは
私がいないとダメなんだから…
 
追川:そう…かもな…
 
島咲:えっ?
 
追川:いや、なんでもないよ。
いつもありがとな、ナル。
 
島咲:…何よ、変なの。
 
追川M:結局、あれ以来
夢の中に恵美さんは現れなくなった。
やっぱり寂しいけれど、もう大丈夫。
会えなくたって、
いつでも見守ってくれているはずだから。
それに、今までずっと見守ってくれていた奴に
沢山恩返しをしなければいけないから。
 
追川:さ、今日も頑張るぞー!
 
-End-

相原 光一(アイハラ コウイチ)
17歳。どこにでもいる男子高校生。
ルックス、運動能力、学力、オール中の下。アニヲタ。よくしゃべる。
「最近他のキャラの個性が立ちすぎて

よくしゃべるっていう設定が息をしていません。」

内藤 創也(ナイトウ ソウヤ) 
17歳。相原の友人。ルックスは学内トップクラスで知能指数は未知数。
いつも授業に出ずに物理準備室にこもっている。
アニヲタでロリコン。

「やっぱり小学生は最高だぜ!」
 
白咲 瑞樹(シラサキ ミズキ)
17歳。夏休み明けに相原と内藤のクラスに転校してきた女子生徒。
徐々にアニヲタに染まりつつある。

詳細は同シリーズの「トキカケ」を参照。

「私はまだ腐っていません。」

 

安 瑛理(ヤス エイリ)

12歳。宇宙人。アホの子。ロリ。

なんやかんやあって地球を侵略しに来た。

詳細は同シリーズの「未確認との遭遇」を参照。

「『宇宙人プリキュア!』ってありそうじゃないですか!?」

 

作者(サクシャ)

本人曰く、この世界の創設者。

ひょっとするとラスボスかもしれない。

「今回はナレーションも頑張ります!ぶいっ!」

 

槌矢 拳士郎(ツチヤ ケンシロウ)

新キャラ。輝日南高校に緊急赴任した新しい校長先生。

2mを超える身長、筋骨隆々な肉体に加え、

創也にも劣らない頭脳を持つ事から様々な異名を持つ。

かなりの変わり者だが、器量の大きさから

周りからの信頼は厚い。

いわゆる「ぱーふぇくとひゅーまん」である。

 

 

~配役~

相原(♂):

内藤(♂):

白咲(♀):

安(♀):

槌矢(♂):

作者(♂):

 

※セリフの言い回しは皆さんの言いやすいように

微調整してもらっても大丈夫です。

 

※演じた後の感想を

コメント欄に書いていただけると、

作者が狂喜乱舞します。

 

※この台本は「後編」です。

意味が分からない方は配役が全く一緒な

「前編」を先に読んであげてください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

相原:で、どうするんだ創也。

 

内藤:瑛理ちゃんに乗っかったから

僕はてっきり白咲さんが

何か案があるのかと。

 

白咲:わ、私は別にそんな…

 

安:面白い事…

何が始まるんでしょうねぇ~!!

わくわく!!

 

作者:沈黙する安瑛理以外の3人。

 

相原:ど、どうするんだ…

なんかあの校長やたら張り切ってたし、

すごく期待されてたっぽいぞ俺達…

 

白咲:あの校長を楽しませる物…

一体何をすればいいんでしょうか…

 

内藤:ん~、そうだなぁ…

無難だけど、VRでも作るか~

 

安:ぶい、あーる?

 

白咲:違うよ瑛理ちゃん。VR。

バーチャルリアリティのことだよ。

 

相原:ゴーグルみたいな物を装着して、

そのゴーグルに映像を投射することで

まるで自分がその映像の世界に入ったような

感覚を味わうことが出来る…だったっけ?

 

内藤:まー、そんなとこだ。

あれを使えば、投射する映像次第で

あの校長を楽しませる事も

出来るんじゃないかな。

 

安:さんせー!さんせー!!

なんだかよく分かりませんが、

たのしそーです!

 

白咲:じゃあ…それで決定ですね。

 

内藤:VR本体とかシステムは

全部僕が作っちゃうから、

みんなはアイデアとか出してくれないかな。

 

相原:お前…サラッと言うけど

やっぱすごいやつだな…

よし!いいだろう!!

ミッションスタートだ!!

 

作者:こうして、4人による

VR作成が始まった。

個性の塊の様な4人は当然の如く、

あれをやりたいこれをやりたいと

意見が食い違い…まぁなんやかんやあって

4人のオリジナルVRは完成したのだった!

 

内藤:ここを…こうして…よし!

これでとりあえず完成だな!

 

相原:とうとう…

 

白咲:出来たんですね…

 

安:いぇー!かんせーかんせー!!

 

作者:月日は流れ、12月。

街ではイルミネーションが灯り、

聖夜を迎える準備で騒がしくなっていた。

 

相原:あとは創設祭当日を迎えるだけだな!

 

白咲:これで校長先生は

満足してくれるでしょうか…

 

安:だーいじょうぶですよぉ!

めちゃくちゃおもしろいんですからぁ!

 

内藤:もう完成してしまったんだから

あとは神のみぞ…いや、

校長のみぞ知るってところだな。

よーし、今日は帰るぞー。

 

相原:なんか腹減ったなー。

コンビニでも寄ってなんか買い食いするかー。

 

白咲:相原さん!買い食いは校則違反ですよ!

 

安:まぁたまたぁ~…白咲さん、

おなかがぐぅ~って鳴ってますよぉ~…!!

 

白咲:なっ…!!鳴ってません!!

 

相原:ふっふっふっ…

白咲さん、体は正直だね…

よーし!コンビニに向けて出発!!

 

安:おー!!

 

内藤:今日は何食うかなぁー。

最近寒くなってきたし、

やはり…まんま肉まん!!

 

相原:だよな!

こんな寒い日にはまんま肉まんに限る!!

 

安:まんまにくまん!まんまにくまん!

 

白咲:まったく…仕方がないですね…

 

作者:こうして、コンビニへ向かう4人。

果たして、槌矢拳士郎は満足するのか…!?

そしてさらに時は流れ、迎えた創設祭当日。

輝日南高校では槌矢拳士郎の思惑通り

生徒達それぞれが

好きなものを好きなように創り、

みんなが自由に、そして大いに賑わっていた。

校内スピーカーからは様々な明るい曲が流れ、

学生たちの賑わいを助長させていた。

そんな中、物理室で開催されている

内藤創也、相原光一、白咲瑞樹、安瑛理の

4人によるVR体験会は

大勢の生徒と一般客で溢れかえっていた。

 

相原:こ、これは…想像以上の盛況ぶりだな…

 

白咲:さすが、最新鋭機器ですね…

 

安:うぉー!人がゴミのようですね!!

 

相原:おい、よさないか。

この前ラピュタ見たからって

使いたい気持ちは分からんでもないけど。

 

安:ばるす!!

 

相原:よしなさい!!

 

内藤:きっとソフトがいいんだよ。

僕たち4人が各自別々のソフトを考えて、

それぞれのソフトのダメ出しを

みんなでやったから、

結果的に「女子高校生」「男子高校生」

「アニヲタ」「ロリコン」「アホの子」

「幼女」「真面目」の

ステータスを持つ様々な

層の人達から支持を得られたんじゃないかな?

 

相原:あとはあの校長だけだな…

あの校長がロリコンだったら

どれだけ楽だったか…

 

白咲:あの校長の好きな物さえ分かれば

話は早いんですけどね…

 

相原:好きな物…ざっくりと言うなら

「面白い物」だよな…うーん…

 

作者:相原光一が頭を抱えていると、

今までポップな雰囲気だった

校内BGMが突然ベートーヴェンの

交響曲第5 ハ短調 作品67

通称「運命」に変わった、と同時に

内藤創也の表情が変わる。

 

相原:ん?創也、どうかしたのか?

 

内藤:あぁ、いや、別に…

多分僕の気のせいだよ…

 

作者:その時、槌矢拳士郎が

物理室へと入ってきた。

 

槌矢:内藤創也!相原光一!白咲瑞樹!安瑛理!

私が来たぞ!!何を見せてくれるのだ!?

ガッハッハッハッハッハッハッ!!!!!

 

相原:き、来たッ!!

 

内藤:校長先生…

 

槌矢:んん?どうかしたのか、内藤創也!!

そんな神妙な顔をしていては、

人を楽しませる物は創れやしないぞ!!

 

内藤:大丈夫なんですか?

 

槌矢:む…?

 

相原:どうしたんだよ創也。何の話だ?

 

槌矢:ふぅ…

やはりお前さんには気付かれてしまったか…

今後は絶対に生徒には気付かれない様に

しなければならないな…

 

相原:どういうことだ?

全く、訳が分からんぞ!

 

安:おぉ!校長先生ではないですか!

 

白咲:どうかしたんですか?

 

槌矢:ここでは…人が多すぎるな。

場所を移そう。

 

内藤:物理準備室が空いています。

あそこなら人も入って来ません。

 

槌矢:そうだな。

4人とも、ついてきなさい。

 

作者:5人は物理室を抜け出し、

物理準備室へ向かう。

中に入ると、槌矢拳士郎を囲むようにして

4人が並んだ。

 

槌矢:さて、単刀直入に説明しよう。

校内に不審者が侵入した。

 

内藤:不審者ですか…怖いですね…

 

相原:え?

お前も知り合った時は不審者だったじゃん。

 

内藤:えーっと…不審者にも色々ありますよね…

 

白咲:最近は不審者と言っても

色んなのがいますからね…

 

相原:あー…そうね…

大丈夫ですか?その不審者、

「この世界の創設者だ!!」とか

ぬかしてませんか?

 

安:つーほーですか!?つーほー!?

 

槌矢:こらこら、まぁ落ち着きなさい…

実はだな、刃物を持っている様なのだ。

 

内藤:刃物…

 

安:は、刃物!?痛いのは嫌ですよ!!

 

相原:おいおい、穏やかじゃねぇな…

 

白咲:その場で取り押さえることは出来なかったんですか?

 

内藤:ただでさえ創設祭の影響で

外部の人間が大勢出入りしている上に、

コスプレしている人もいるんだ。

その場ですぐ判断して取り押さえる事は

難しいだろうね。

 

槌矢:うむ…

こちらにもすぐ情報が回ってきた。

それで、校内にいる教師にだけでも

知らせておこうと思い、

緊急時の対応を取ったというわけだ。

 

相原:緊急時の対応?

 

内藤:さっき、物理室で話している途中に

校内放送のBGMが変わっただろ?

 

白咲:ベートーヴェンの「運命」ですね。

 

内藤:そう。僕自身、

企業の不審者対策として

そういった方法があるというのを

聞いたことがあるってだけだから

半信半疑ではあったんだけどね。

あのBGMの変わり方は

少々不自然が過ぎると思いますよ、

校長先生?

 

槌矢:むぅ…返す言葉もない。

今後、最善の改良をしよう。

 

相原:それで、不審者は今どこに?

 

槌矢:それを今探している最中だったのだ。

元々私はすべての出し物を

見て回るつもりだったから、

校内を探し回っても不自然では無いと思ってな…

君たち、怪しい人は見ていないか?

 

相原:俺たちは別に…

 

白咲:あの人数では紛れ込んでも

なかなか気付けませんよね…

 

安:みかけてませんねぇ…

 

内藤:見かけ次第、すぐに連絡します。

 

槌矢:よし、分かった。

不審者を見かけたとしても、

絶対に手は出さないように。いいね?

あと、このことは騒動になる事を防ぐ為に、

くれぐれも内密に頼むよ。

 

作者:無言でうなずく4人。

 

槌矢:不審者を捕まえ次第、改めて

君たちの創ったものを見せてもらおう。

では、物理室に戻ろうか。

 

作者:5人が物理準備室を後にして、

物理室へ向かうと、物理室内が

何やら妙に騒がしくなっていた

 

相原:んん?なんだ?

 

内藤:機械の故障かな…

すみません、通してください。

 

作者:内藤創也が人混みを抜けると、

そこには中年男性がナイフを

体の正面に構えて立っていた。

 

内藤:ん…?

 

作者:中年男性は、内藤創也の顔を見た瞬間、

絶叫しながらナイフを振りかざして

狂乱状態で内藤創也に向かって走ってきた。

血走った眼には涙が浮かび、口の両端からは

泡のようなものが溢れ出ていた。

 

内藤:これは…やばいっ!!

 

相原:あっ!創也!!

 

作者:内藤創也に続いて

人混みを抜け出した相原光一が

それに気が付き、

内藤創也の名前を叫ぶ。

が、時既に遅し。

中年男性が持ったナイフは

内藤創也の胸元に突き刺さる…

 

槌矢:とでも思ったのか?

…本気で人を殺したいのなら、

もっと真剣に凶器の扱い方を学ぶんだな。

ナイフを振りかざすという事は、

胴体部分がガラ空きになる、という事だ。

ガラ空きになった胴体部分など、

ただのサンドバッグも同然だ。

 

作者:なっ!!チッ…余計なことを…

えーっと…

走り出した中年男性と内藤創也の間に

疾風の如く槌矢拳士郎が滑り込んできた。

と、同時に槌矢拳士郎の体が捻じれ、回転し、

丸太のような足が中年男性の腹部にめり込んだ。

中年男性はその勢いで

物理室の壁に叩きつけられ、気を失った。

 

内藤:…ッ!!…え??

 

相原:創也!!無事か!?

 

白咲:内藤くん!!

 

内藤:あ、あぁ...何ともないよ…

 

安:すげー!いまのはなんなんですか!

ぶぁっ!と校長せんせーが現れたと思ったら

どかーん!ってなりましたよ!!

 

槌矢:やれやれ…危ないところだったな…

さて、この不審者は警察に突き出して…む?

 

相原:ん?校長先生?

どうかしたんですか…ってあっ!!

 

作者:相原光一が叫ぶ瞬間に

槌矢拳士郎が相原光一の口を手で覆った。

 

槌矢:しーっ…!

 

作者:無言でうなずく相原光一。

気付けば物理室にいた人たちの

ざわつきはさらに大きくなり、

人の数も増えていた。

 

内藤:マズイな…さすがにみんな

騒ぎに気付き始めてる…

 

白咲:ど、どうしましょう…

 

相原:さすがに誤魔化すのは…

無理だよなぁ…

 

槌矢:君たち、先に謝っておく。

申し訳ない!

 

作者:槌矢拳士郎が

小声で4人にそう伝えると、

大声で声を張り上げた。

 

槌矢:ここにいる4人!!

相原光一、内藤創也、白咲瑞樹、安瑛理による

リアリティのある演劇!!実に見事であった!!

私もつい体が動いてしまったよ!!

ガッハッハッハッハッハッハッ!!!!!

 

作者:槌矢拳士郎がそう言うと、

周りの人たちも「なんだ、演技か」

「びっくりした~」などと言いながら

徐々に落ち着きを取り戻した。

 

槌矢:ふぅ…なんとかなったな…

 

作者:その後、創設祭の閉幕式が行われ、

相原光一、内藤創也、白咲瑞樹、安瑛理の

4人組による出し物が最優秀賞となった。

その結果に異議を申し立てる者も現れず、

輝日南高校の創設祭は大団円となった。

その後、校長室に4人は呼び出された。

 

槌矢:今回の一件によって君たちには

迷惑をかけっぱなしの創設祭となってしまった。

本当に、心からお詫びを申し上げる。

すまなかった。

 

内藤:いえいえ!僕はむしろ

命を救っていただいたわけですし…

 

白咲:はい、校長先生が謝ることは

無いと思います…

 

安:それに、すごいのもみれましたしね!

 

槌矢:そうか…ありがとう…

君たちは優しいのだな…

 

作者:と、ここで相原光一が口を開く。

 

相原:校長先生…あの不審者は…

あの不審者は、俺の記憶に間違いがなければ…

 

槌矢:あぁ…その事についても話しておこう。

相原光一くん、君の予想している通り、

あの不審者…彼は、この学校の元校長だよ。

 

内藤:えっ!?

 

白咲:元…校長先生…!?

 

相原:やっぱり…そうだったんですね…

顔が痩せこけて最初は気付かなかったけど

あの顔、どこかで見覚えがあるなと思ったんです。

 

槌矢:警察によると、彼は

違法薬物に手を染めていたらしい…

状態が落ち着き次第、事情徴収を行うそうだ。

失踪していたと聞いたが、

それも何か関係があるのだろう。

 

相原:薬物で…

 

白咲:ひどいですね…

 

内藤:…そうですか。

 

槌矢:何か…心当たりが

ありそうな表情だな、内藤創也。

 

内藤:心当たり…

というほどの事ではありませんが。

実は以前、ネットにとある論文を

投稿した事があったんです。

内容は…まぁさておき、

評判が良かったんですよね。

世界中の学者さん達が賛辞のコメントを

送ってくれました。

でも、同じような研究をしていた

一部の学者さんからは…

その人たちからは理不尽な暴言を

コメントでいただきましたね。

理論も何も無い、真っ向からの否定でした。

 

槌矢:優秀な者に対しての劣等感…か…

 

内藤:今回の件は、なんだかそれに

よく似ていました。

何というか、そのコメントに込められた

殺意というか、憎悪というか、

そういった物が、前校長に襲われかけた時に

感じられましたね。

 

槌矢:ふむ…内藤創也、君が今回の一件を

どう受け止めるつもりなのかは分からないが

決して自分のせいだと

自分を追い詰めるんじゃないぞ。

君は今まで通り、そのままで良いのだ。

 

内藤:はい…ありがとうございます。

 

槌矢:おぉっと、遅くなってしまったな。

そろそろ帰りなさい。

ご両親も心配するだろうしな。

 

相原:はい!

 

内藤:校長先生、

今日は本当にありがとうございました。

 

白咲:校長先生、さようなら。

 

安:ばいばーい!!

 

作者:こうして、4人は学校を後にした。

校長室には槌矢拳士郎が1人取り残された。

 

槌矢:いや、厳密にいえば2人であろう…

 

作者:ふぅ…何か御用でしょうか?

 

槌矢:貴様、あの時…内藤創也を

本気で殺そうとしたな…?

 

作者:何故、そう思いますか?

 

槌矢:あの元校長の表情は、

完全に人殺しのそれだった…

私には分かるよ。

 

作者:ふむ…そうですか…

こう言っても信用してもらえるかどうか

わかりませんが、私は内藤創也を

殺そうだなんてしていません。

ていうか、あの程度で死ぬ様な

弱いキャラクターではありませんよ、

あの「内藤創也」という人物は。

むしろ、あれぐらいの窮地でこそ

キャラクターとしての輝きを放つのです。

天才「内藤創也」はね。

 

槌矢:貴様がどういう考えなのかは

知ったことではない。

それに、知りたくもないな。

ただ、これだけは言っておく。

我が教え子に、この学校の生徒に

手を出すようなことがあれば、

この槌矢拳士郎、容赦はせんぞ…

 

作者:おぉっ、怖い怖い!

…まぁ、面白い話を創る為ならば

私としても手段は択ばず、

容赦もしませんよ…フフッ。

…さて!それでは、

そろそろお話を締めますよ!

長々とお付き合いいただき、

ありがとうございました!

演者の皆様、またどこかで

お会いしましょう!それでは!

 

相原 光一(アイハラ コウイチ)
17歳。どこにでもいる男子高校生。
ルックス、運動能力、学力、オール中の下。アニヲタ。よくしゃべる。
「最近他のキャラの個性が立ちすぎて

よくしゃべるっていう設定が息をしていません。」

内藤 創也(ナイトウ ソウヤ) 
17歳。相原の友人。ルックスは学内トップクラスで知能指数は未知数。
いつも授業に出ずに物理準備室にこもっている。
アニヲタでロリコン。

「やっぱり小学生は最高だぜ!」
 
白咲 瑞樹(シラサキ ミズキ)
17歳。夏休み明けに相原と内藤のクラスに転校してきた女子生徒。
徐々にアニヲタに染まりつつある。

詳細は同シリーズの「トキカケ」を参照。

「私はまだ腐っていません。」

 

安 瑛理(ヤス エイリ)

12歳。宇宙人。アホの子。ロリ。

なんやかんやあって地球を侵略しに来た。

詳細は同シリーズの「未確認との遭遇」を参照。

「『宇宙人プリキュア!』ってありそうじゃないですか!?」

 

作者(サクシャ)

本人曰く、この世界の創設者。

ひょっとするとラスボスかもしれない。

「今回はナレーションも頑張ります!ぶいっ!」

 

槌矢 拳士郎(ツチヤ ケンシロウ)

新キャラ。輝日南高校に緊急赴任した新しい校長先生。

2mを超える身長、筋骨隆々な肉体に加え、

創也にも劣らない頭脳を持つ事から様々な異名を持つ。

かなりの変わり者だが、器量の大きさから

周りからの信頼は厚い。

いわゆる「ぱーふぇくとひゅーまん」である。

 

 

~配役~

相原(♂):

内藤(♂):

白咲(♀):

安(♀):

槌矢(♂):

作者(♂):

 

※セリフの言い回しは皆さんの言いやすいように

微調整してもらっても大丈夫です。

 

※演じた後の感想を

コメント欄に書いていただけると、

作者が狂喜乱舞します。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

作者:ある日の放課後、物理準備室。

二人の男子生徒が話をしている。

 

相原:創也ぁ―。

 

内藤:どうした光一。

 

相原:今日ってさー、何月何日何曜日?

 

内藤:地球が何回回ったかどうかもか?

 

相原:待て、そこまでは聴いていない。

 

内藤:そうか…今日はー、えーっと…んん?

 

相原:分からないだろ?

 

内藤:おかしいな…なんでだろう…

そうだ、カレンダーカレンダー。

 

相原:そっか、カレンダー見ればいいんだよな。

ん?カレンダー?カレンダー…?

 

内藤:なんだ…この違和感は…

カレンダー?かれんだー…

「カレンダー」ってなんだ…?

 

相原:あれ?分からない…

カレンダーってなんだったっけ…

 

内藤:この感覚は…そう、

ゲシュタルト崩壊とも言えるのか…

 

作者:お気付きになりましたか。

 

相原:あぁっ!不審者だ!!

 

作者:お!?また通報か!?お!?

 

内藤:この現象は…

あなたが何か仕組んでいるんですか?

 

作者:くっくっくっ…あっはっはっはっはっはっはっはっ!!

…察しの良いガキは嫌いだよ。

 

相原:なん…だと…?

 

内藤:今回みたいに訳の分からない現象は、

大体この人が絡んでいると考えた方が良いだろうな。

 

作者:その通り…でも、俺だって悪いとは思ってるんだよ。

それに、意図的にやってるわけでもないんだ。

 

相原:どういうことだってばよ…

 

内藤:この前言っていた、「キャラクターの暴走」みたいな事と

何か関係があるんですか?

 

作者:いいや、それは関係無いよ。

この現象の理由、それはだね…

 

相原:そっ…

 

内藤:それは…

 

作者:この物語に季節とかの背景を考えずに

書いていたからです!てへぺろ☆

 

相原:…は?

 

内藤:簡単に言うと、時代背景とかの

詳細設定をサボったんですか?

 

作者:そんな感じだな…スマン…

季節の詳細を記載しないせいで、

「今が何年何月何日何曜日なのか」という疑問、

そして「時期」という概念自体が消失してしまい、

それを確認する為の「カレンダー」という存在も

消えかけていた…ってわけさ。

 

相原:この人、本当にやべぇな…

 

作者:あと、ついでに面白い事を教えてやろう。

 

相原:面白い…事…?

 

作者:相原光一、この前俺が現れた時から

今日に至るまでの思い出、何かあるか?

 

相原:え…そりゃあそれぐらい

あるに決まって…あれ…

 

作者:昨日の晩御飯は?

 

相原:ん…?何食ったっけな…

 

内藤:光一、もうボケが始まってるんじゃないのか?

 

相原:そんなわけねぇだろ!!

んー…あれぇ?おかしいな…

 

作者:ふっふっふっ…じゃあ内藤創也に質問だ…

先週のプリキュアの放送内容、覚えているか?

 

内藤:実に容易い質問ですね、

そんなこと、幼女のスカートを

めくるよりも簡単…ん?

あれ…おかしいな…

 

作者:とまぁ、そんな具合だ。

実はこの私、作者が書いていない時間は

「あった」けど「なかった」事になるんだ。

極論を言えば、作者が意図しなければ

キャラクターは歳を取らない…

いわゆる「サザエさん時空」というやつだな。

 

相原:ほ、本当におっかねぇな作者ァ!!

 

内藤:作者さん、質問があります。

 

作者:ん?なんだ、言ってみろ。内藤創也。

 

相原:おぉ…創也がいつになくシリアス顔に…

 

内藤:さっき俺達が今、何月何日なのか分からない原因が

「この物語に季節とかの背景を考えずに書いていたから」

だと言っていましたが…例えば、今ここで

今日の季節を決定すればその季節になるんですか?

 

作者:あぁ、なるよ。

 

相原:なるの!?

 

作者:俺が書いた物語の中で季節が唯一登場したのは

お前達がタイムリープをした時だな。

あれは夏休み明けの話で、そこからなんやかんやありーの

今に至るわけだから…もう冬ぐらいかな!

11月ぐらい!今回は学校の創設祭の

話にしようと思ってるんだ。

まぁ、学園祭みたいなもんだ。

12月24日、クリスマスイブの日に創設祭を

設定するとして…今は11月末ってとこだな!

 

相原:創設祭!?

 

作者:おう、あく創設祭の準備しろや。

 

内藤:まさしく「神」という感じだな…

 

作者:そういう事だから!

俺はそろそろナレーションのお仕事に戻るわ!

それじゃ!創設祭頑張れよ!

 

相原:頑張れって…何が起こるんだ!?

 

内藤:なんだか慌てていますね…どうかしたんですか?

 

作者:ん?いや、別に?

ただ、もうすぐ俺でも扱うのが

面倒なキャラクターが来るからさ…

 

内藤:扱うのが面倒なキャラクターって…

 

相原:おい、それ考えたの誰だよ。

 

作者:俺やで☆それじゃ!!

 

内藤:き、消えた…

 

相原:一体、どんな奴が出てくるんだ…

 

作者:廊下から足音が響いてくる。

 

内藤:この足音は…

 

相原:来るのか…!!

 

作者:勢いよく、物理準備室の扉が開かれる。

 

安:こーんにっちは~!!!

いやぁ~、きょーもひえひえですねぇ~、

瑞樹ちゃん!!

 

白咲:ふふっ、そうだね。

相原さん、内藤さん、こんにちは。

 

作者:拍子抜け、といった感じで安堵の溜息をつく

二人の男子。キョトン、としている二人の女子。

相原が事情を説明する。

 

白咲:また来たんですかあの人…

 

相原:まぁ…ね…

 

安:つーほーしましたか!!?つーほー!!

 

内藤:してないよ。

 

安:なーんだ、つまらないですねぇ…

 

白咲:それで、

その「扱うのが面倒なキャラクター」というのは

どんな人なんですか?

 

相原:それが分からないんだよね…

何も説明がなかったからね…仕方ないね…

 

作者:と、その時。

物理準備室の扉が再度勢いよく開かれる。

入ってきたのは、スーツを身にまとった

身長が2mを超えているであろう、

筋骨隆々の大男だった。

 

相原:な、なんなんだ…あんた一体何者だ!?

つか、足音も何も聞こえなかったぞ!!

 

安:うぉおおおお!!大きいですねぇ!!

 

白咲:私も見覚えがありません…

まさか、本当に不審者!?

 

作者:白咲が通報しようと

すぐに携帯電話を手に取ると

その大男がこちらをギラッと睨み、口を開いた。

 

槌矢:待ちたまえ!私は不審者ではない!!

 

作者:その大声は空気を震わせ、

その場にいた相原光一、内藤創也、

白咲瑞樹、安瑛理、全員の体を硬直させた。

 

安:うぉー!なんですか今のは!!

体がビリビリッてなりましたよー!!

 

相原:あ、あぶねー…ちょっと漏らすところだった…

 

白咲:えっ…漏らしたんですか…

 

相原:まだ漏らしてないよ!

限りなくアウトに近いセーフだよ!

 

内藤:あ、あの人は…

 

相原:なんだ!?知っているのか創也!!

 

槌矢:いやぁ、驚かせてしまってすまない。

とっさに声を張ったものだから

つい音量を間違えてしまった…

 

内藤:あぁ…知っているよ…

僕も会ったのは初めてだけどね…彼の名前は、

 

槌矢:おぉっと、内藤創也。

自己紹介ぐらいは自分でさせてはくれないか?

私の名前は槌矢(ツチヤ)拳士郎(ケンシロウ)。

訳あって、この学校の校長に任命された者だ。

今はちょうど創設祭の準備で生徒達が

放課後に作業をしていると聞いてな、

あいさつ回りがてら、みんなが作業を行う姿を

見て回っているというわけだ。

 

白咲:新しい校長先生…?

今までいた校長先生はどうなったんですか?

 

槌矢:ふむ…実は私もよくわかっていないのだが、

何の前触れもなく姿を消してしまったらしい。

その後、警察によって捜索が行われたが

発見される事はなく、見つかったのは

元校長の筆跡で「校長の後任は槌矢拳士郎」

とだけ書かれた書き置きのみだった…という事だ。

 

相原:失踪…したんですか?

 

槌矢:まぁ、簡単に言うとそんな所だ。

そんなわけだ!これからよろしく頼むぞ!

相原光一、内藤創也、白咲瑞樹、安瑛理!!

 

白咲:事情は分かりました…

突然とはいえ、失礼なことをしてしまいました。

すみません、校長先生。

 

槌矢:なぁに、気にするな!!

ガァッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!

 

安:ガァッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!

 

相原:なぁ、創也。この、なんだか不自然な感じ、

もしかしてあの作者が一枚かんでるんじゃ…

 

内藤:作者なんだから、ストーリーに

一枚でも二枚でも三枚でも

噛んでるに決まってるだろ。

 

相原:あ、それもそうか…

 

内藤:そんな事よりも、驚くべき事がある…

この槌矢拳士郎という男が

平々凡々な公立高校の校長だって…?

 

相原:そういえば、さっきお前

何か知ってるような口ぶりだったな。

この人、一体何者なんだ?

 

内藤:「生ける伝説」「ライオンを視線で殺す」

「『この男がもう一人いれば第二次世界大戦で

アメリカは日本に負けていた』と言われた男の血筋」

「現世に生きる世紀末覇者」など

その戦闘力を比喩した

異名の数は数え切れず、

世界中のありとあらゆる専門分野の

エキスパート達が認める

世界トップクラスの頭脳を持つ男…

と言ったら信じるか?

 

相原:ははっ、それ笑うわ…マジ?

 

槌矢:ガッハッハッ!!

やめてくれないか、内藤創也。

そういう風に呼ばれるのは、

あまり…好きではないのだ。

 

白咲:どうしてですか?

 

槌矢:他人に褒められるというのは

確かに素晴らしい事であるし、

嬉しい事でもあるのだがな…

 

白咲:はい

 

槌矢:他人から褒められた時、

人間は意図せずして心に余裕が産まれ、

その余裕は「慢心」へと繋がる。

「慢心」は人を退化させてしまうからな。

 

白咲:はぁ…なるほど…

 

内藤:この人の恐ろしい点は、

ここまでの化け物であるにも関わらず

未だに成長し続けているという事だね…

 

相原:今時、ジャンプでもラノベでも見かけないぞ

こんなハイスペック人間…

あっ!まさか、作者が言っていた

「扱うのが面倒なキャラクター」って…

 

内藤:そういう事だったのか…

 

白咲:扱いにくい…のでしょうか?

 

安:んん?何の話ですか??

 

作者:安瑛理以外は気付いた様なので

タネを明かしましょうか。

いかにも!扱いにくいキャラクターとは

まさしくこのパーフェクトヒューマン

「槌矢拳士郎」である!

詳しい説明はネタバレになってしまうので割愛!!

 

槌矢:ふふふ…何やら色々と言われておる様だな…

この世界の創設者だかなんだか知らんが、

私をこの学校の校長に仕立て上げた事までは

お見事、と言っておこう!!

だがな、私という人間は

これ以上誰にも曲げさせはしないよ!

聴こえているのだろう!!のう!!作者とやら!!

ガッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!

 

作者:うるせぇ!!声がデカい!!!!

…とまぁ、もうお気付きの方も多いとは思うが、

この「槌矢拳士郎」という男は

「第四の壁を破壊」することが出来る、

あのデッド・プールと同じ能力を持っているのだ。

能力を簡単に説明すると、物語の中の世界から

現実世界に干渉することが出来る。

ちなみに私が物語の中に入ることが出来るのも

私もまた、その「第四の壁を破壊」することが

出来るからなのだ。

 

相原:あの…えっと…校長先生?

何に話しかけているんですか…?

 

槌矢:うん?この作品の作者とやらだが?

 

相原:は、はい…そうですか…

(小声)なぁ創也!この人本当に大丈夫なのか!?

 

内藤:大丈夫…というと?

 

相原:素性だよ、素性!

お前は知っていたのかもしれんが、

俺はこの人、槌矢拳士郎とは初対面なんだ!!

本当にそんなすげー人なのか?

今も、何も無い虚空に向かって叫んでいたが…

 

内藤:うーん…僕としても

こればっかりは説明のしようが無いからな…

 

安:うーん、やっぱりおっきいですねぇ…!!

身長何せんちめーとるぐらいありますかぁ?

 

槌矢:身長か?身長は2mを超えてから

測っておらんのだ!!ガッハッハッハッ!!!!

 

安:そうですか!!

とにかくおっきいんですねぇ!!!!

ガッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!

 

槌矢:ガッハッハッハッハッ…ところで

安瑛理、君は地球外生命体だな?

 

白咲:えっ!

 

内藤:何っ!?

 

相原:はっ!?

 

安:えっ…どうしてわかったんですか…?

 

作者:沈黙する5名

 

槌矢:えー…ゴホン。

私は鎌をかけたつもりだったんだがな。

人ではないとは薄々気付いていたが

まさか、本当に地球外生命体だったとは…

 

相原:ど、どこで人間じゃないって

気が付いたんでしょうか…

 

槌矢:うーん…私の嗅覚、視覚、聴覚、

そして何より第六感(シックスセンス)が

そう告げた…という風にしか説明出来ないな。

ガッハッハッハッハッ!!!!

 

相原:こ、こりゃあ本物だ…

とんでもない人が校長になっちまったな…

 

安:あわわわわ…どこでバレたんでしょうか…

白咲さん、私のどこが宇宙人っぽいですか…?

 

白咲:ええ…どこからどう見ても小学せ…

いや、人間だけど…

 

安:がーん!!

今、小学生って言いましたよね!?

 

相原:つーか…校長に宇宙人だってバレたら

さすがにマズイんじゃ…

 

安:どどどどどどっ、どうなるんですか!?

 

相原:最悪の場合…

 

安:ごくり…

 

内藤:解剖…

 

安:か…かいぼう…

かいぼうって…なんですか??

 

内藤:お腹をね…開かれるんだよ…

刃物でスパッ!!…とね。

 

安:ええっ!痛いじゃないですかぁ!!

 

相原:そうだぞ…お腹だけじゃなくて

体の色んな所を切られて調べるんだ…

 

安:あわわわわ…全身を刃物で…

いやですー!!私は痛いの嫌いですからー!!

そんなの無理です!!無理いいいいいい!!!

 

白咲:ちょっと二人とも!

瑛理ちゃん怖がってるじゃないですか!

 

安:あああああああああああっ!!!

白咲さん!助けてください!!

 

相原:いやぁ…つい出来心で冗談を…

申し訳ない…

 

白咲:もう…ほら、瑛理ちゃん。

そんな事にはならないから。

落ち着いて?

 

安:ぐすっ…本当ですか…?

 

内藤:僕は結構あり得る話だと思ったけどね。

 

相原:あっ

 

安:や…やっぱり…

かいぼうされるじゃないですかー!!

わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 

槌矢:えー…ごほん。

話の腰を折る様ですまない。

私はその様なつもりは一切無いのだが…

 

相原:え?

 

内藤:え?

 

白咲:え?

 

安:え?

 

槌矢:本物の宇宙人と出会い、会話が出来る。

これほど貴重な体験を産まれてから

死ぬまでに味わうことが出来たのだ…

宇宙人が一般の学生と共に暮らす学校?

実に面白いではないか!!

それに私は、その学校の校長だ!!

これほどまでに気持ちが昂る(たかぶる)事など

そうそうあるものではない!!

安瑛理、君の事は私が学校側に上手く説明しておこう。

今後も変わらず、生活したまえ!

 

作者:槌矢拳士郎はそう言って、

安瑛理にウィンクをした。

 

相原:やだ…かっこいい…

 

内藤:これが…「漢気(おとこぎ)」…

 

白咲:良かったね、瑛理ちゃん。

 

安:はい!なんだかよく分かりませんが

痛いのは無いんですね!わーい!!

 

作者:4人が安堵の溜息をつくと、

再び槌矢拳士郎が口を開いた。

 

槌矢:さて、宇宙人を抱えた4人組、

全員揃って只者ではないと見た!!!!

では本題に戻るとしよう…君たち4人は、

創設祭で一体何を見せてくれるのかな?

 

相原:4人…?創設祭の出し物って

クラスごとに考えるんじゃないんですか?

 

槌矢:何…?そうなのか。

 

白咲:はい…確かそのはずですが…

 

槌矢:ふむ…それは良くないな…

そのような常識に囚われていては

真に面白い物は創れなどしない!!!!!

この学校の最高責任者である私が

今ここで決定した!!!!

この素晴らしき学校が創られた

記念すべき日!!

その日に開催される創設祭は

好きな物を、

好きなメンバーと、

好きなように創るがいい!!!!

この校長を最も楽しませる物を

創った生徒達を優勝とし、

それに見合った名誉と栄光を

与える!!!!!

聴いておるか、

学校内に居る全ての者達よ!!!!!

異議があれば私に申し立てよ!!!!

異議がなければ雄叫びをあげるのだ!!!!

 

作者:槌矢拳士郎が学校中に響き渡る

咆哮にも似た声を張り上げると、

それに反響するかのように学校中から

生徒、教師、男女入り乱れた雄叫びが上がった。

 

槌矢:ふむ…どうやら、

異議の申し立ては無さそうだな…

君たちはどうかね?

 

作者:槌矢拳士郎に見つめられる4名。

真っ先に口を開いたのは安瑛理だった。

 

安:うおおおおおおおおおおおお!!!!!

 

白咲:え、瑛理ちゃん!?

 

安:え?だって、面白い事が始まるんですよね?

面白い事の方が、楽しいですよ!きっと!

うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!

 

白咲:瑛理ちゃん…

う、うおおおおおおおおおおおお…!!!

 

相原:白咲さん!?じゃ、じゃあ俺も…

うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!

 

内藤:これも作者の思うツボな気が

しなくもないけど…まぁいいや。

うおおおおおおおおおおおおお!!!!

 

槌矢:ガッハッハッハッハッハッ!!!

満場一致というわけだな!!!

では、私はそろそろ失礼するよ!!!

励めよ、若者たちよ!!!!

ガッハッハッハッハッハッ!!!!!

 

作者:高らかに笑い声を上げながら

槌矢拳士郎は立ち去って行った。

そして、物理準備室に残された4人の

作戦会議と、創設祭へのカウントダウンが

始まるのだった。


~後編へ続く~