卒業・中編

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前編

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

さすが芸能クラスもある高校である。校門前で、キョーコが出てくるのを待とうと思っていたのが、そこは取材陣でごった返していたので、宝田の誘導に従って少し離れた所でキョーコが出てくるのを待っていた。

校内のあちらこちらでは保護者や友人たちと一緒にカメラに収まっている生徒の姿が見える。

そう言えば、キョーコから逃げるあまりキョーコと一緒に写真を撮った事など一度もないことに、今更ながらに気付いた。

今日ぐらい、勇気を振り絞ってキョーコを誘ってみようか?

そんな事をつらつらと考えていると、キョーコの明るい声が聞こえて来た。

 

「お母さん、来てくれたの?」

 

そんな簡単な問いにも素直に返せない自分が歯がゆい。

けれど、そキョーコの方が自分より余ほど大人なのだろう。同返事をしていいのか戸惑っている自分全く気にしていないようで、キョーコは嬉しそうに笑っている。

 

「おお。最上君。卒業おめでとう。答辞よかったぞ。」

 

「ありがとうございます、社長。」

 

宝田の誉め言葉を切っ掛けに、キョーコの下宿先のご夫婦も片桐と藤道も次々とお祝いの言葉と、賛辞を送っている。

何事か言われる度に、テレテレと笑っているキョーコは、親の欲目を差し引いても可愛いと思う。

自分も何か言わねば、と思うが、意識すればするほど何を言えばいいのか分からなくなって来る。

クライアントの前だとスラスラと言葉が出てくるというのに、自分には何か悪い魔法でもかかっているのだろうか。

いや、違う。これまで娘にまともに向き合ってこなかった結果がこれなのだ。

 

こっそり隣に立つ藤道が、「最上も何か祝いの言葉ぐらい言ってやれ。母親だろう。」と催促してくるが、焦れば焦るほど言葉が出てこない。

ああ、なぜ、自分はこうさらっと自分の娘を褒められないものか。

 

何か言葉をかけたい、けれど言葉が思いつかない。そんなジレンマに陥ってるうちに、自分でも思いもよらない行動に出ていたようだ。

 

「お母さん?」

 

戸惑ったようなキョーコの言葉が聞こえて来たけれど、それを無視してそれを続けた。

 

「以前、約束した事の前倒しです。高校の編入試験に受かることだけでも大変なことなのに、あなたは、芸能活動と学生としての領分を立派にやり遂げました。

それだけでも称賛に価すると、私は思います。」

 

キョーコはキョトンとして自分の言葉を聞いている。なぜ、自分はこうも堅苦しい言葉でしか話せないのか。

もっと柔らかい表現で褒めてやりたいのに・・・・・・

 

「だから、私は・・・・今まであなたに言ってこなかった言葉をあなたに贈ります。

よく頑張ったわね、キョーコ。あなたは私の誇りです。」

 

「おか・・・・・あさん・・・・」

 

涙で顔をぐじゃぐじゃにしているキョーコの事などお構いなしに、ひたすら頭を撫で続けた。

それしか自分にはキョーコを祝う言葉も行動も思いつかなかったから。

 

「あなたが将来、日本を代表する女優になった暁には、今度はあなたを抱きしめさせて。」

 

「よし。あそこで、記念撮影と行こうか。」

 

私たち母娘の涙が収まるころを見計らって、宝田社長が提案しガボゼの前で何枚も写真を撮った。

 

 

《つづく》

 

|д・)チラッ

嘘つきくりくりです。はい。最初、この話し二話で終わるつもりだったのが、終わりませんでした。←毎度のこと。

なので、あと一編お付き合いくださいませ。

後編は、完全に蛇足的なお話となります。

 

あと、写真は神戸の布引ハーブ園の頂上にあるものです。

 

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