バレエと剣道

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昨日、バレエを観に行って来た。

Magnificient History of Ballet というタイトルで、踊るのはロシアに所縁ある9人のバレエダンサーたち。

Young Russian ballet

 

クラシックあり、モダンあり。劇場はストックホルム市内の割と小さなところで、私たちは最前列真ん中!に座ることができ、ダンサーの息遣いまで聞こえた。

 

観客もロシア人が多かった。休憩時間のホールでは、スウェーデン語よりロシア語の方が多く聞かれたぐらいl。

 

ダンスの見せ場(ダンサーが何回転もするような)では、観客は手拍子に足拍子で大騒ぎ。こんなの普通オペラ座ではしないよ。ロシアの人たちって、こんな風にバレエを劇場に観に行くことが生活に溶け込んでいるのだろうなと思った。

 

ヨーロッパのたいていの大都市には、バレエ団を持つオペラ座がある。それでもオペラやバレエを観に行くことは、一般の人にはそれほど普通のことではない。それが日本なら尚更。それなのに、バレエというのは日本人によく知られている。実際に舞台を観に行ったことがある人はとても少ないはずなのに。

 

なぜ日本人がそんなにバレエを知っているかというと、やっぱり子供の頃読んだ少女漫画のせいだね。

 

 

そうだ、60−70年代の少女漫画で、バレエ物は大きな人気を博していた。もちろん私も、田舎の田んぼを眺めながら、そんな漫画を読んでバレエに憧れた小学生の一人。

 

 

でも私が育った村では、珠算教室やピアノ教室はあっても、バレエ教室などどこにもなかった。今もそうかは知らないが、その地方一帯は書道と剣道が盛んなことで知られていた。当時習っていた書道や珠算はそれなりに楽しかったし、後々の人生に役立ったのでよいとしよう。多少なりとも字が上手になったし、簡単な暗算ができるようになったし(これができないんだ! スウェーデンの人は)

 

しかし剣道は ・・・ あれは小学校六年生になったばかりの頃だ。近所の派出所(田舎の交番みたいなところ)に、剣道命!のお巡りさんが派遣されて来た。彼は近所の主婦らを集めて酒宴を開き(田舎の派出所のお巡りさんは、村人と仲良くすることが一番大事な仕事だから!)自分が村の公民館で開いた剣道教室へ熱心に勧誘を始めた。このお巡りさんがカッコよかったのかどうか、私には全く記憶がないが、私の母を含む田舎の主婦たちは熱狂し、自分の子供たちに次々と剣道を習わせることに決めた。もちろん私と私の弟も例外ではなかった。「剣道をすると、姿勢がよく美しくなる!」との言葉を信じて(いや、それは嘘ではないけれども)、子供だけではなく、主婦自身まで習っていた人もいるぐらいだった。

 

でも、私は全然剣道に興味が湧かなかった。下校後、おやつを食べながら漫画を読む至福の時間を奪われ、母親に無理やり公民館に追いやられていたとき、これがバレエだったらどんなに楽しかっただろうかと涙した。上記の本によると、バレエを習いたかったのに獅子舞を習わされた、という話もあるそうだが、ほんと、ほんと、なんで親というのは子供の希望を全く無視したお稽古事をさせるんだろう。

 

なので、中学校に進学するのを機会に剣道を辞めることができたときはほっとした。

一方、私の弟はそれから大学を卒業するまでずっと剣道を続けた。弟だけではなく、叔父も従兄弟も仲がよかった女子も好きだった男子も皆んな剣道をしていたし、息子まで日本に留学していたとき剣道部に入った。そう、私は剣道の良さ、楽しさを否定する気は毛頭ない。

 

ただ私が剣道と聞いて思い出すのは、口に手を当てて体をくねくねさせながらキャッキャッと笑っていたあの時の村の主婦たちの奇妙な盛り上がりと、そんな周囲に煽られてステージママならぬ公民館ママとなり、私と弟の尻を叩いて剣道をさせていた鬼母の姿なのだ。

 

それから数年して剣道お巡りさんは転勤となり、村の熱狂は去った。母は今、「おまえはあの時、自発的に剣道を習いたいといったのだ」と主張する。それは絶対にありえない。あの重くて臭い防具をつけて、体当たりされたり竹刀で叩かれたりなんて誰がしたいものか。日本の伝統が懐かしい今ならちょっとやってもいいかな、と思えるけれど、バレエ漫画の世界に浸っていた当時の私には苦行以外の何物でもなかった。とはいえ当時、周囲の山を見渡せどバレエ教室などどこにもなく・・・。

 

そんなことを考えながら、ロシアのエリートダンサーの華麗な舞を間近に見られる今の幸せに感謝したのであった。バレエ

 

ちなみに、口に手を当てて体をくねくねさせながらキャッキャッと笑う田舎のおばはんは今でも大嫌いである。

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