15話 朱の輝き 其の四
奈良での朱墨の生産 明治05年 木下 新六 奈良で初めて生産
明治10年 清水
明治17年 島田 常次郎
明治24年 中 啓造
明治27年 落合 省吾 大阪にて明治元年より生産
昭和13年現在 木下、中、落合の三軒になった。
戦前に 木下、落合の二社に減じた。
朱墨の製造工程固形朱墨は数種類の膠を混ぜ合わせて展色剤とし、
これに着色剤の朱顔料を分散させ、
香料その他の伍剤を加えて造る。
その工程や用具は黒墨とほぼ同様で、
朱顔料と膠を練り合わせ、木型で形を整え、乾燥させる。
ただし膠は数種混ぜ合わせるため、
そのうち高分子の膠は前もって冷水に漬け置き、
分子間に水分を充分に抱かせる。
日を置いて低分子量の膠と混ぜ合わせ、
二重釜による湯煎を行い、
長時間かけて溶解させる。
製造期間は膠の変質を避けて寒い冬のうちに限られ、
黒墨と違って本朱に油気が無く、
淡白で膠の含みが悪く、比重が重く(本朱で11~12)て、
型くずれしやすいので、
膠のゼリー強度の最も強い極寒にしか造れない。
この期間は「膠が良く締まる」と私たちは言う。
製造適期は黒い墨より余程短く、
1月中旬から3月上旬に、手の温もりで
膠と本朱をなじませるよう丹念に造り上げる。
朱墨を型出しした時から乾燥が始まるため、
型入れには細心の注意が払われねばならない。
その際、大きな変形を伴う経時変化は24時間以内に起こるので、
この間は目視によって見届けながら、
並べて置く向きを変えるなど、
手作業で初期乾燥を行う。
あと軽く重石をかけて2ヶ月ほど乾燥の日にちをおき、
桐箱に納めて2年以上熟成させる。
仕上げに彩色や金箔巻きを行って、朱墨は完成する。
本朱墨はズッシリ重く、どことなく金属的な輝きを見せて
渋く深い朱色を呈し、添削や篆刻に妖艶さえ感じさせる。
これは本朱以外の代用朱では得られない神秘的な表情である。

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◎参考資料
・奈良製墨文化史 他