東京都健康長寿医療センターは、2月7日、東京都内で第126回老年学公開講座「あなたに合った人生のしめくくりを」を開催した。

講座は三部からなり、冒頭、司会者より今回の講座の企画趣旨として、「胃ろうの是非が問われるようになるなど、医師だけが終末期医療を考えるのではなく、患者さんや家族と一緒に考える時代になっている」との言葉があり、今年、東京都健康長寿医療センターに緩和ケア病棟が開設することも紹介された。

会場は多くの人で埋まり、同じ会場で行なわれた老年学公開講座の中でも突出した聴衆の多さで、このテーマへの関心の高さが伝わってきた。

第一部は、東京ほくと医療生活協同組合王子生協病院医師の平山陽子氏による講演「かかりつけ医と考える人生のしめくくり~事前指示書のすすめ」。

内科医、家庭医として地域医療の最前線で働き、数多くの患者の看取りに携わってきた平山氏。王子生協病院では、自分が意思を表明できなくなった場合に備え、選択する医療などを記しておく「事前指示書」の普及活動を行っており、その豊富な経験を元に終末期医療について説明がなされた。

平山氏によると、終末期医療について考える際に重要なのは「いつ、誰と、何を」の3つで、それぞれのポイントについて次のように説明した。

1)いつ考えるか
大きな病気にかかるなど差し迫った時に考える人が多いが、その前に考えておくのが望ましい。体調に変化が起きた時や、還暦や古希など節目となる年に考えるのもいい。

2)誰と考えるか
家族と相談するほか、わからないことは医師や看護師、ケアマネジャーなど専門家に相談する。また、終末期医療においてかかりつけ医を持つことは大切で、「事前指示書を作成してかかりつけ医にコピーを渡せば、入院の際の紹介書に事前指示書についても書いてもらえ、一貫した医療を受けることができます」。

3)何について考えるか
「人生において何に価値を置いているか」「もうすぐ死ぬとしたら何がいちばん心残りか」など自分の価値観を見つめ直し、終末期に医師が薦める次の医療行為を希望するかどうかを考える。
・心肺停止になった時の心配蘇生を行うかどうか。
・人工呼吸器を使用するかどうか。
・胃ろうなど人工栄養にするかどうか。

「価値観は人によって異なり、それによって医療の選択も変わってくるものです」と平山氏。また、最近は胃ろうはよくないという論調になっているが、「私の患者さんには胃ろうをつくり、何年も自宅で元気に暮らしている人もいます」。

これらのことを理解し、「終末期医療について自分の意思を事前指示書に残すことが大切です。自分が意思決定できなくなった時、決定する代理人も決めておきましょう」。また、事前指示書を使うのは死が差し迫っている時で、本人が自分の意思を表明できる場合や、助かる見込みがある時は治療を優先するという説明があった。

■「食べられない」=終末期ではない
第二部は、東京都健康長寿医療センター研究所の島田千穂・福祉と生活ケア研究チーム研究員による「最期まで自分らしく生きるために~老人ホームでの生活から~」。
高齢期の生活について研究する島田氏の講演では、終末期の概念や終末期治療の考え方について本質的な知識を得ることができた。

終末期については、「高齢者の場合、どこからが終末期と線引きするのはむずかしく、そのため、終末期ケアがどこから始まるかもひとことで説明することはできないものです」と島田氏。
ひとつの手がかりとして紹介されたのが、特別養護老人ホームで実施したアンケート。亡くなった人について、「どこからが終末期ケアと認識したか」と質問したところ、43の事例のうち7割で「食べられなくなった時、または飲み込めなくなった時」との回答が得られたという。

食事をとれなくなった時に、すすめられるのが胃ろう。延命治療としての是非が問われる胃ろうだが、島田氏は、胃ろうにすることでその人の生活がどう変化するかこそを考えるべき、と述べ、「ですから、胃ろうにするかどうかを医師に聞かれたら、『胃ろうにするとどういう生活になるのか』と質問し直してください」。

終末期医療において、本人の意思を確認できない場合については、次のようにアドバイスした。
「家族とその人に関わる医療者や介護スタッフで話し合い、本人の性格や生き方を照らし合わせてどうするのがいいかを考えていくことが大事です。また、決定したことは絶対ではなく、変更してもいいということを知ってほしい」。決断後に、「本当にこれでよかったのか?」と後悔することがあっても、「みんなで『これにしましょう』とりあえず納得したことは間違いとは言えない、というのが一般的な考え方です」。

また、本人が意思を伝えられる場合は、家族と一緒にこれからどのような生活をしたいのかを話し合うことが大事で、治療の選択では、「どの程度機能が回復するか、生活はどうなるかを医師や看護師に聞いて判断することが大切です。どの方法が自分や家族にいい選択なのか考えてほしい」と語った。

◎東京都健康長寿医療センター
http://www.tmghig.jp/
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業種別・職種別等の賃金の状況を示した「賃金構造基本統計調査」の平成24年版が公表されました。職種別の一覧に示されているケアマネの賃金状況を見ると、10人以上の企業規模において、所定内平均給与額(※)が25万2,600円となっています。ただし、10人未満の小規模事業所が多い職種であるため、この平均賃金がどれだけ現場の実感に沿ったものなのかは、やや疑問の余地もあります。

そこで、現場実態には程遠いかも知れませんが、一つの傾向をつかむという意味で、10~99人という統計上で最も小規模に位置づけられるカテゴリーをチェックしてみます。

【関連ニュース】
2013/02/22 [政府・行政の動き] ケアマネの平均賃金、H24年は1ヵ月当たり25万2,600円(平均年齢46.1歳、平均勤続年数7.0年) 厚労省

このカテゴリーでは、所定内平均給与は25万7,200円と、全事業所規模の平均と大差はありません。ただし、年間賞与その他特別給与枠は、全体平均よりも2万円以上低くなっています。さらに、100~999人という規模の大きい事業所と比べると、所定内給与額は5,000円ほど上回っていますが、年間賞与その他特別給与枠は5万円近く下回っています(1,000人以上という極めて規模の大きい事業所は、統計上の対象者数が317人とわずかなため、比較上は除外しています)。

仮説ではありますが、大規模事業所の場合、スケールメリットに加え、グループ内で多様な事業を展開しているケースも多いため、不安定ながらも賞与等の一時金の上積みがしやすい環境にあるのかも知れません。また、ケアマネジメント上の負担が大きい困難ケースなどが来た場合、規模の大きい事業所であれば、限られたベテランのケアマネが専ら困難ケースを担当するなどして、他の多くのケアマネが「担当ケースを減らしつつ困難ケースに対応する」必要が少ないといえます。

これに対し、やや規模が小さくなってくると、ベテランケアマネがエリア管理などを担いつつ現場のケースを担当するパターンも増えてきます。その人に困難ケースの負担を集中させることは難しいわけで、事業所内のケアマネが平均的に困難ケースを担当する傾向が高まることも考えられます。となれば、担当ケース数の平均は頭打ちになりがちで、新規の利用者が増えやすいタイミング(状態変化が起こりやすい時期など)でも、なかなかケース数を底上げできないわけです。

さて、それ以上に注意したいのは、同じ医療・福祉業界における他職種との比較です。例えば看護師の場合、10~99人の規模では、所定内平均給与がケアマネよりも3万5,000円ほど高く、年間賞与等は約10万円もの開きが生じています。PT・OTでは、年間賞与等はケアマネより低いのですが、所定内平均給与はやはり3万円ほど高くなっています。

いずれにしても、看護師やPT・OTは、ケアマネに比べると安定的に高い給与を手にしているわけで、長い目で見て自分のキャリア向上を図りやすい環境にあるといえます。

現在、ケアマネのあり方検討会では、資質向上を図るための研修体系の見直しにもメスが入ろうとしています。しかし、それを現場に浸透させていくためには、自らの将来設計がしやすい給与体系が求められるでしょう。

では、その転換をどこに求めていくのか。カギはやはり介護報酬のアップということになるでしょうが、それを財源の負担者である国民に納得してもらううえで、「ケアマネが重要なセーフティネットを担っている」という実感を広めていくことが必要なのかも知れません。国家資格化などは、社会的認知を向上させるうえで分かりやすいポイントと言えますが、それ以前に「これまでの実績」を業界としてアピールする手段を考えたいものです。

※所定内給与…労働契約等であらかじめ定められている支給条件によって支払われる給与のうち、時間外勤務手当や休日出勤手当等の超過労働給与を差し引いたもの。

(福祉ジャーナリスト 田中 元)
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2月6日、一般社団法人シルバーサービス振興会の第248回月例研究会が、全国町村会館で行われた。今回のテーマは『地域包括ケアについて』。講師は、厚生労働省保健局振興課長の朝川知昭氏。

団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送ることができるよう、国は、医療、介護、介護予防、住まい、生活支援サービスが、日常生活の場で切れめなく提供できる地域包括ケアシステムづくりを進めているが、現状及び今後の見込みや方向性、課題などについて講演が行われた。

まず朝川氏は、介護保険をとりまく状況として、75歳以上の高齢者の割合は、2025年には全人口の18.1%、2055年には26.1%に増える見込みであると述べた。65歳以上の認知症高齢者(日常生活自立度II以上)と夫婦のみ世帯・単独世帯が急増し、特に高齢化が進むのは埼玉県、千葉県、神奈川県の3県であるとの見込み。こうした急速な高齢化に伴い、社会保険各制度の保険料も大幅に増額。例えば、介護保険料は第一号被保険者の場合、現在全国平均月額5,000円だが、2025年には8,200円程度になる見通しである。

こうした背景を踏まえ、社会保障・税一体改革大綱(平成24年2月17日閣議決定)(抄)の中で、国は、介護分野において地域包括ケアシステムの構築を最も重要な課題であると位置付けている。朝川氏は、地域包括ケアシステムの構築は国民の要望でもあると述べ、自分が介護が必要となった場合、「家族に依存せずに生活できるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けたい」が最も多く46%、両親が介護が必要になった場合、「自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けさせたい」が最も多く49%というデータを示した。

今後のサービス提供の方向性としては、(1)在宅サービス・居住系サービスの強化、(2)介護予防・重度化予防、(3)医療と介護の連携の強化、(4)認知症対応の推進、以上4点である。在宅介護の充実を図るにはマンパワーの増強が課題であり、2025年に向けて介護従事者を100万人増やさないと高齢者を支えきれない、処遇改善が必要との見解を示した。

改革の方向性は、医療・介護サービス保障の強化である。高度急性期への医療資源集中投入などの入院医療強化、在宅医療の充実、地域包括ケアシステムの構築に取り組むことにより、『どこに住んでもいても、その人にとって適切に医療・介護サービスが受けられる社会』の実現をめざす。医療から介護への円滑な移行促進、相談業務やサービスのコーディネートなど包括的マネジメントを担うのは、在宅医療連携拠点、地域包括支援センター、ケアマネジャーである。切れめのない医療・介護サービスを2025年までに構築しなければならないと語った。

――セミナールポ(2)に続く

◎シルバーサービス振興会
http://www.espa.or.jp/
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