こんにちは。熊野です。

今日も来てくれてありがとうございます。


今日はちょっとお知らせです。


熊野が、展開していた「 発明博士のお話 」シリーズを覚えていますか?

昨年暮れにひとまず終結させ、今年1月に1度だけ番外編的に書いたあの奇想天外博士のお話です。


産みの親はすっかり博士から離れてしまっていますが、博士の発明品( にょろにょろセンサ )からお話を発展させて、現在シリーズ展開して下さっている方がいます。


人が空を飛ぶはなし 」のあらそうさんです。

いまや、国民的人気キャラクタと言っても過言ではない、あの一家をモチーフにしている、なんとも贅沢なコラボレーション。


詳細は、Nyoroシリーズのもくじ をご覧くださいね。

こうして私が書いたお話が、新しい世界に広がったなんて、とても幸せだなぁと思うクマでした。



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もう学校を辞めたい。でも、働きたくもない。もう動くことすらいやだ。ただゴロゴロしたまま、ボタンひとつでなんでも出来たらいいのに。

この僕の呟きがすべての始まりだった。

じゃあ、作ってみたら、そういう機械?と母は言った。皮肉や嫌味のこもった言い方ではなく、水で溶くジュースの素を手にこれ飲みたいと言う子供に、じゃあ、作ったら?と言うような自然な流れだ。
今で言うところのニートになろうとしてた息子を頭ごなしに叱ったりせず、穏やかに淡々と話をした。それは説教じみているわけでもなく、でもそれでいて逆らえない何かがあった。

そのうちに僕は、本当に学校に行くのをやめて、家で機械をいじったり、計算したり、実験したりする生活をはじめた。そんな機械は、未来のネコ型ロボットのおなかのポケットからしか出てこないと冷静に思っていたが、元からこういうことは嫌いではないから、すぐに夢中になった。
学校を休む僕に、母は何も言わなかった。ただ、実験や研究に行き詰まると、母なりの、こういう本を読んでみたら?とか、教育テレビでそういう教養講座があるような?とか、そういうことは誰々先生が詳しいかも?とか、近からず遠からずなコメントを寄せてきた。

僕は独学での研究を楽しんだけれど、やはり限界があった。
何をするにもベーシックなところを解っていないと、追々つまづく。そのことは、高度なプラモデルにいきなり挑戦した幼き日にすでに学んでいる。
学校の先生に教えを請う必要性と重要性に直面した僕は、学校を辞めなかったばかりか、再びきちんと通うようになった。有名な数学の先生がいたし、物理や化学の先生は、世界的な発見をした研究室出身だったので、僕は様々な知識を得ることが出来た。

僕はいやいや学校に行っているときより、みるみると成績が上がった。今後の研究課題も見つけて、それにあわせた進学も希望通りにできた。

結局、いや、やはり、最初に開発製作しようとしていたなまけもののマシンは完成しなかったが(作らなかったと言ってもいいが)、僕は発明家になった。
構想段階で、そんな馬鹿なと言われるような奇想天外なものも、しっかり身に着けた基本知識を応用して研究を重ねることで形になる。

そして、僕を開眼させた母は、高齢になった今も、

 

「どうだい?まだ途中なんだけど」
僕はこの書きかけの草稿を近所の大学生に読んでもらった。某文化雑誌からの寄稿依頼を断りきれずに受け、なんとか試行錯誤したがすっかり行き詰まってしまったからだ。
彼は、大学で文学を学んでおり、自分でも作品を書き文芸雑誌に投稿しては時々掲載されている。時々僕の研究所に来ては、作品を書くに当たって必要なのだろう、科学や物理の質問をしたり、実験などを体験していく。
「ねぇ、どう?…変かな?」
うーん、と唸りながら読み返している彼を見て、今日は僕が生徒になる番だなと姿勢を正した。

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こんにちは!熊野マキです。

博士シリーズをしつこく書き続けておりますが、読みに来てくれて嬉しいです。
ありがとうございます。

気づけば、「発明博士のお話」は6月に始まって、全33話にもなりました。
とはいっても、この中にはこのようなお知らせ文やコラボ作品の紹介記事も含まれるので、純粋にお話だけだと、21話です。

コラボ作品もたくさん生まれました。とても嬉しくて楽しいことです。
ブログを閉じてしまった方もいらして、全部は読めませんが、ブログテーマ「発明博士のお話 」から振り返ってみてくださいね。

さて、そんな「発明博士のお話」、昨日で、ひと段落しました。
中途半端かもしれませんが、熊野の中では、ひと段落。

家出中だった博士を帰宅させられて良かった。
奥さんも悪い印象から、よい方向に持っていけたかなと自負しています。
これで、安心して年を越せます(笑)

実は、これでもう終結にしようかな、と思っています。

でも、きっとまたぼんやりのんびりと、博士たちのことを妄想することでしょう。
面白いことが思いついたら、また登場するかもしれません。そのときは、博士と奥さんと2匹の犬の新しい生活が、落ち着いたあたりからになるかしら。
ジャックとさゆりが仲良く庭を駆け回り、奥さんは庭木の手入れをし、博士は近くに造った新しい立派な研究所にご通勤。
あらら、すでに想像をめぐらしてますよ(笑)

楽しんでもらえるようなお話を書けるよう、頑張ります。
皆さまからの感想、叱咤激励をお待ちしています。 大変励みになります。
これからも、よろしくお願いします。

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「あら、たくちゃん、いらっしゃい。今日はママと来たのね」
奥さんは、笑顔で庭に招き入れてくれた。ジャックはドッグヤードを囲う柵を超えんばかりの勢いでジャンプしている。
息子はそんなジャックを見るにつけ、走り寄った。犬を見ると私の後ろに隠れていた子が、今ではこんなに犬好きになった。ジャックはそのくらい愛嬌のある可愛い犬だ。

いつものようにジャックに会いに行くという息子に、今日は私もついて行くことにした。昨日、息子が奥さんから聞いてきた話が気になっていたからだ。
遠くに住んでいるおばちゃんちのハカセが、さゆりという名前の犬をつれて帰ってくるそうである。
近所の方の噂話で、奥さんのご主人が出て行ったことや、発明とか機械いじりが好きなご主人たったと聞いたが、奥さんからは聞けずにいた。

奥さんは私たちを庭に招き入れたけれど、出かけようとしていた様子だった。お出かけのところお邪魔したことを詫びると、奥さんは笑顔で言った。
「いいんですよ。ちょっとホームセンターに行こうと思ってただけだから」

「お花の苗を買いに?」
以前、一緒にホームセンターに行って、お花の苗の選び方や、育て方を教えてもらったことがあったのだ。
「いいえ、今日は犬用品を買いに。新しい犬小屋も買わなくちゃ」
いい話の流れだ。私は思い切って聞いてみた。

「昨日、息子が言ってましたが、新しいワンちゃんを飼われるとか?博士が帰ってくるって、ご主人のことですか?」
奥さんは恥らうような控えめな笑みをみせた。
「博士って、主人は自分のことを言ってました。発明博士とか言っては、おかしなものを作ってたんですよ。プレハブ小屋を研究所なんて言ったりして」
文句を言うような口調だけれど、笑顔だった。

近所の人が言っていた、ジャックの遊び場のできる前にあったという庭のプレハブのことだろうか。
「今、研究所は?あ、そうか、別な研究所で研究中なのですね?」
奥さんを困らせてしまったようだ。奥さんは少しうつむいて言いにくそうだった。
「え、いえ、出て行ってしまったんですのよ。ちょっと悪戯が過ぎましたわ」

私は初めて聞くかも知れない奥さん自身のお話にじっと聞き入った。
「研究だとか、発明だとか言って、役に立つんだかも判らないことをしているあの人にうんざりしていたのよ。でもね、いなくなって最近やっと判ったのよ。」
時々、じゃれあうジャックと息子の方を見て微笑みながら、奥さんは話を続けた。

ご主人が出て行ってからも、もいろんな人が発明の依頼に来たり、お礼の電話や追加発注があったりもしたそうだ。
家を出た後も、数々の発明品が成功を収めているそうだ。庭の小さな研究所はなくなってしまったけれど、今までより大きな新しい研究所を近くに建られる程になったのを機に帰宅を決意したようだ。
「プレハブ、いえ、研究所の中のものも捨てずに取っておいて良かったわね。捨ててしまおうかと思ったんですけどね、一応、取っておいたんですよ。そのおかげで家が狭くなってしまったけれど」

「実はすごい発明家だったのですね」
奥さんは小さく何度か頷いた。
「もしかして、犬をしゃべらせたりできるのかしら?」
そう言った私に、奥さんはびっくりした様子で私を見た。

「あの、実は、嘘みたいな話ですが、公園で人の言葉を話せる犬に会ったんです。そのワンちゃんが、博士の発明品でしゃべれるとかって言ってたんですよ」
奥さんが笑った。
「それはきっと主人のことね。もしかして、その犬、さゆりって言うんじゃない?」
今度は私がびっくりする番だった。

「さゆりちゃん、素敵なワンちゃんですよ。繊細な優しいお嬢さん」
それは楽しみね、と奥さんが言って、私たちは一緒に笑った。
仲良く笑い合う2人の大人に、息子とジャックが不思議そうに見ていた。




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昨日のお話、【たくちゃんとママ】 の翌日のお話です。
「ママ、ジャックのおうちに新しいワンコが来るんだって!」

近所の犬のところに遊びに行っていた息子が、息を切らして帰ってきた。
私は夕食の下ごしらえの手を休め、走り出してきた息子を両手で受け止めた。また新しいお友達ができるね、と言って息子に微笑みかけると、息子は満面の笑みで大きく頷いた。

近所に奥さんがひとりでお住まいの、茶色い中型犬を飼っているお宅がある。
とても人懐こい愛嬌のある犬で、あまり犬が得意でなかった息子をすっかり犬好きにしてしまった。それがジャック。

私も時々、奥さんのところにお邪魔する。素敵なお庭のテーブルでお茶をいただきながら、おしゃべりするのが楽しい。
お庭は、花木が植えられたこじんまりとはしているけれどきれいにまとめられた庭園と、それとは別に牧場のように柵で囲われたドッグヤードがあり、ジャックが走り回れるようになっている。

この地域に引っ越してきた当初、私は知り合いもおらず、孤独とストレスに打ちのめされそうになっていた。息子を連れて、公園に行ってもなかなかほかの奥さんたちの輪に入れなかった。
でも、息子のために公園に行ったり、近所を散歩したりしていた。そのときにジャックと奥さんに出会った。
散歩の時間が一緒で毎日のように道ですれ違っているうちに、少しずつ挨拶を交わすようになって、息子も犬に慣れていった。

奥さんは私の話をいろいろ聞いてくれて、相談に乗ってくれたりした。でもあまり奥さんのお話は聞いたことがない。
どうしてご主人がいないのかとか気になるけれど、こういった立ち入ったことを聞くのは勇気がいる。
近所の人の話によると、私たち一家が引っ越してくる数ヶ月前にご主人が出て行ったそうだ。発明好きなご主人だったそうで、庭にはご主人が研究所と呼ぶプレハブがあったらしい。今のようなジャックのお庭になったのは、ご主人が出て行ってからだという。

「さゆりちゃんって言うんだって、新しいワンコ。ハカセが連れてくるって」
さゆり?博士?息子の口から出た2つの言葉に、キャベツのせん切りをする手が止まった。
「たくちゃん、博士って?」

「うん、おばちゃんちのハカセが、遠くにいるんだけど、帰ってくるって、おばちゃんが言ってた」
奥さんの博士?帰ってくる博士が犬を連れてくる?犬の名前はさゆり?
半月前に公園で会った犬のさゆりちゃんと、さゆりちゃんから聞いた博士のお話を思い出さずにいられなかった。

まさか、そんな偶然はないわよね。私はそんなひとりごとを言って、またキャベツのせん切りを再開した。
息子は、ジャックにサンタさんのお話をしてあげたんだよ、と嬉しそうに話を始めた。





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昨日のお話【ジャックのおはなし】 とセットです。
そして、【朝焼けの公園で】 からも続いています。