Chance of trap 6

 





「……も、ヤ……」

「責任はちゃんと取るって。心配すんな」

「…っ、何の、責任なんですかぁっ」

「そりゃお前、手ぇ出した以上は結婚してやるよ」


 殴ろう。
 そう乱菊は決意した。
 痴話喧嘩になってしまって、攻撃的な彼氏彼女も世の中には居るだろうけれど。
 乱菊には、もう任務でも仕事でも関係ない。

 あっさり軽く言って良いわけもない言葉を。
 さらりと、それもかなり上から目線で言ってしまう冬獅郎が、我慢ならない。


「責任取るつってんのに怒るなよ。囮になって正解だったな…俺以外がこんな事、お前に仕出かすのが我慢ならん。虚より先に消して
るぞ、絶対」

「何言って……ん?」


 それはどう言う?
 そう乱菊が聞き掛けた時。
 盛大な舌打ちが。
 至近距離で聞こえた。

 冬獅郎が発したものに、間違いないのは解っても。
 タイミング的に、乱菊には理解が出来ない音だった。


「たいちょ?」

「空気読めっっ」


 ガバリと乱菊の上から起き上がった冬獅郎は早かった。
 ポンと義魂丸を口に含むと、すぐに義骸を脱ぎ捨て。
 氷輪丸さえ抜刀せずに、二本の指先で鬼道を放つ。

 それは本当に一瞬の出来事で。

 乱菊が瞬きをする間もなく、突然姿を現した虚は。
 それこそ一瞬で固まって、次に激しく燃えた。
 冬獅郎が立て続けに放った鬼道の威力で。


「くそ…っ、ホントに居やがったっ」


 疑っていたのかと、乱菊には不思議で。
 気配があるとまで言っていたのに。
 出現に悪態を吐いている。


「良いタイミングで出やがるよな……」


 次の悪態は、突然地底から現れた門に向けてだった。


「あの、隊長……?」

「任務完了だ、松本。帰るぞ」


 呆然としている間に。
 いつも見るだけで不快感を感じる門に。
 不快感を感じる余裕もなく。

 虚は燃え続けたまま、門から伸びた無数の黒い手に引っ張られ。
 ポッカリと開いた闇の中へと引き込まれて飲み込まれ。
 門はまた静かに閉じて、姿を消した。


「おい、そんまま帰る気か?」


 呆然としたままで居た乱菊に、冬獅郎はそう呟く。
 そのまま?と首を傾げたが、自らの姿に我に返る。
 気付けば胸元が大きく開き。
 身に着けていた現世の服は、乱れきっていた。


「あ……ちょっ、後ろ向いてて下さいっ」

「何を今更。それ、俺がやったんだぞ」

「任務だから仕方ないですけどねっ!だからって恥ずかしんですよっ、あっち向いててっ」

「別に任務だからじゃねーけどな……席官達も見てんだろうな……」


 冬獅郎はそうは言うけれど。
 控えているはずの席官達は、誰一人反応がない。
 無線での連絡も一切。

 虚は消滅したのだから。
 任務も完了したのだから、出て来てもおかしくはないのに。


「あの子達…何してんでしょ……」

「さーなぁ…感謝の祈りでも捧げてんじゃねーの?」

「はい?任務中ですよ?てか誰に?」

「知らね。任務どころじゃねんだろ。予想の範疇だ。霊圧大解放で滾らなかっただけ、褒めてやりてーよ」


 乱菊には全く意味が解らない。
 真面目で堅物揃いの部下達。

 仕事中に、仕事を放棄して祈りを捧げるなど有り得ない。
 しかも全員が死神。
 祈る神など、自らの上司以外に居ない。


「あの、意味が解らない事だらけなんですけど……」

「後で説明してやる。知らない方が良い気もすっけどな」

「はぁ…」

「それより、早く服を直せ。こんままここで続きされてーのか」

「なっ、もう任務は終了したんですから、囮行為は必要ないでしょっっ、隊長のバカっ」

「……?」


 ピクリと冬獅郎の肩が揺れ、急に振り返る。
 その行動に今度は乱菊の肩が揺れた。


「あ……えっと、ごめんなさい、怒っちゃいました……?」

「………」


 ジッと冬獅郎は、乱菊を見てるのに。
 無言のまま。
 その視線は真っ直ぐに乱菊を見ていて。
 怒らせたのだと、そうとしか乱菊には思えなかった。


「あ、の…たいちょ?あの……ごめんなさい……」


 上司に向かって言うべき言葉ではない事を知っている。
 今までも、つい先ほども何度も言ったけれど。
 面と向かって言う言葉としては不適切で。
 そんな事で怒る人だと思ってはいなかったのが本音でも。
 目の前には今、口も聞いてくれなくなった冬獅郎が居る。
 なので、乱菊は素直に謝った。

 二度目の謝罪の言葉に、冬獅郎はやっと音を出す。
 乱菊には予想外の音を。


「あん?何を急に謝ってんだ?つーかいつまでそんままだ。そんまま帰るのか?」

「へ?」

「何モタモタしてんだ、帰るぞ」

「……や、だって、隊長いま、怒ってたんじゃ……」

「何で怒るんだよ?」

「それはあたしが聞きたいですよ…急に黙り込んで睨んでたの隊長じゃないですかっ」


 訳が解らないと反論すれば。
 もっと訳が解らないとばかりに冬獅郎は肩を竦める。


「何で逆切れみてーになってんだ。取り合えず服を着ろよ」

「隊長が脱がしたんでしょーが」

「中途半端にな」

「どこを力説してんですか、エロ隊長っ」

「新鮮な言葉だな。聞いた事ねーぞ、俺に向かってそんな言葉」


 バカと言ったら怒ったと思ったのにと乱菊は首を傾げる。
 さらに酷い名称で呼んでも、怒るどころか笑って返された。

 そもそも、乱菊の上司はいつもそんな感じだった。
 ムキになって反論してくる事はあっても。
 怒ったりはしない。
 身長の事は別扱いとして。

 ならば、さっきのあの一瞬の態度は何だろうと。
 考えたところで、乱菊は答えを持っていない。

 今日は冬獅郎の態度、言葉の全てが意味不明で。
 それでも乱れた服のままで居るわけにもいかず。
 もそもそと乱菊はいつのまにか外されていた服のボタンを留め。
 スカートの裾の乱れも正した。

 その様子を冬獅郎は黙って見ていたが。
 乱菊ももう何も言わなかった。
 見られている恥ずかしさで、それどころではなかったから。
 急いで服を正す事だけに集中した。


「よし、帰るぞ。……お前、今度こそちゃんと覚悟してろよ」

「……囮…は、もう必要ないですよね?」

「囮はな。責任取るんだ、こんままで終わらせる気ねーし」

「隊長、意味が解んない」

「後で解る。取り合えず帰るぞ」

「や、帰るって、あの子達は……?」


 冬獅郎の言う通りに、謎の祈りを捧げているとしても。
 放って帰るわけにはいかないと。
 言った乱菊の言葉はあっさりと否定された。


「ああなったら、正気に戻すのは俺でも無理だ。任務完了の報告も俺がする羽目になんだろうな……」

「いやいやいや、置いて帰れないでしょ」

「正気に戻れば自力で戻るだろ。その点は優秀揃いだ、心配ない」


 優秀だからこそ、正気を失っているのは異常事態。
 なのに隊首は、想定内だと慌ててもいない。
 乱菊には不思議な事だらけで。
 理解不能の事態だった。


「あいつらの事は鷹宮が……や、恐らくもう連絡が行ってんだろうな。鷹宮も今頃天を仰いでるこったろうよ」

「はぁ…」


 意味が解らないと上司に聞けば。
 更に意味不明な言葉ばかりが帰って来る。

 けれど、上司の言葉は乱菊にも絶対で。
 戻ると言う以上は従う。
 席官達の事は気掛かりでしかなくても。
 隊首が大丈夫と言うのであれば、妄信的に信用は出来た。


「じゃあ…帰ります」

「そだな」


 戻ると決めたら、冬獅郎はスタスタと歩き出し素早い。
 姿を未だに見せない、控えているはずの席官達が居るだろう場所を何度も振り返りながらも。
 乱菊も冬獅郎に従った。









 続
 ■□■□■
 GWが終わって、こんなに残念な思いをしたのはしばらく振りじゃなかろうかと思います。
 揺れにビクビクしながらも、すんげーダラダラして過ごしました。笑
 何故なら体調を心配して、上司が出張を全部外してくれたからです。いつでも辞めれるな、もう…。ししし。

 休みに突入してすぐにどでかい人間をダメにするビーズクッションなるものを買ったですよ。勢いで。
 旦那と久々に買い物に出掛けたら、お母さん用の介護ベッドを見に行ったのに、その隣に置いてあったクッションにもう一目ぼれ。見た目じゃなくて機能に。待て、クッションにこの値段を出すのか?と再三言われましたけど無視。
 そしたら、元々ダメだったのがもっとダメ人間になりました。←おい。
 あー、もう手離せない。絶対。笑
 あ、ベッドも無事に(?)目をつけてきました。まだ退院しないので買うのはもちょっと先。
 今のベッドでは高さが足りないので、どちらにしても買わなくては。
 
 で、このお話。結構後半まで書き置いてるんですけど、まだ最後まで行ってなくて。
 ちょいちょい書き足してたら、まぁいつもの事ですけど、全部似た話になってくるなー…と茫然としています。どこを書き直したら良いのか見失っています…。(/ω\)

 

















 

Chance of trap 5

 




「ん……」


 一転した甘やかな吐息に。
 また乱菊が戸惑ってしまうほど、冬獅郎の口づけは激しさを増した。
 
 
「ん、ん、た、いちょ……んっ」

「はっ……理性飛ぶぞ、何だよ、その声……」

「こんな声、あたしだって出るなんて知りませんでしたよ…隊長のせいでしょ……責任だけは覚悟しといて下さいよ……」

「お前、責任って俺に何させる気だ……」

「そんなの決まってるじゃないですか、帰ったら雛森に全部バラしてやりますからね」


 ピタリと、激しかった冬獅郎の唇が止まり。
 呆気に取られたように、乱菊を翡翠が見詰めていた。
 手は胸を揉んだまま。


「あ、ん…た、いちょ?」

「……それの何処が責任取らされた事になんだよ……」

「困るでしょ、っ、隊長。あたしの気が晴れる方法取っちゃいますからね」

「や、だから何でンな事でお前の気が晴れる?」

「やんっ、直に触っちゃ……ダメ、隊長…」


 もにょもにょと、潜めた声で話しながらも。
 冬獅郎の手は、襟元から乱菊の服の中にスルリと潜り込み。
 柔肌に直接触れ始めてる。

 どこまでなのと、乱菊が混乱しても。
 同じように冬獅郎も混乱しているようだった。
 それでも、口づけも辛うじて再会を始める。


「何でンな声……タチ悪ぃなお前は……つーか、欠片も責任果たしてねーぞ、それだと」

「声、声って、何言って…ふっ、ダメですって、直接は、あっ、んっ」

「脳が麻痺するってんだ……そん前に言え、何で雛森だ」

「んんっ、隊長があたしにエッチな事したって雛森にバラしたら、隊長慌てるでしょ」

「慌てるわけねーだろ、幾らでも好きなだけ言触らせ」

「は?」


 今度はピタリと乱菊が固まった。
 傍目にはきっと、ぎこちないながらもイチャついているようには見えるはずで。
 互いが交わしている会話までは、誰にも届いていない。
 なのに虚のその後の動きについては。
 控えている席官の誰からも報告が来ない。

 まさか逃げられたのではと、考える思考が。
 今の乱菊にはなかった。


「……言っても雛森が信じないって自信満々なわけですか?」

「お前はバカなのか?」


 任務中である事は、辛うじて乱菊とて自覚している。
 していなければ、今頃。
 尊敬する上司であろうと、大好きな男性であろうと。
 顎の骨を粉砕する勢いで殴っていた。
 例え、相手には効かなくても。

 なのに当の相手は。
 既に我を忘れたように、乱菊の胸に触れ。
 あまつさえ太股に手を沿え、ゆるりと撫でる。


「やっ、んっ、ダメ…」



 怒りが吹き飛び、驚きよりも戸惑いばかりに支配される。
 任務とは言え、一体どこまで進むのか。
 乱菊には未知の世界過ぎて。
 逃れる事は出来ない、仕事なのだから義骸なのだと言い聞かせ。
 僅かに身を捩じらせる事しか出来なかった。


「責任さえ取れば、お前良いのか?」

「っ、あ…な、何?」

「こんまま、手ぇ出して良いのかって聞いてんだよ」


 それは割に合わないと乱菊は考える。
 雛森にバラしたとしても効果がなければ。
 何の意味もない。

 仕事中、任務中。
 それを差し引いても。
 全てを、例え長年想い続けて来た相手でも。
 任務の一環で手を出されては堪ったものではなかった。


「だ、ダメですよっ、振りだけでしょっ」

「ここまでやっといて?」

「あの子達も見てるのに、何言ってるんですか…ん、もっ、ダメって、たいちょ……」


 手つきは全てが優しい。
 激しい口づけ以外。
 触れる指先は優しく、けれどもこなれているように思えて。
 ますます、ダメだと乱菊は拒絶を示す。


「解った。ちゃんと責任は取るって」


 しかも、軽い。


「何言って……ヤですよぅ、こんな……しかも見られてるとか、冗談じゃありませんし」

「それって、見られてなきゃお前は良いってことだろ」

「んもぅっ、調子に乗り過ぎっ。あっ、や…」


 とうとうベンチに押し倒されて。
 冬獅郎が乱菊に圧し掛かって来る。

 任務中、任務中…そう脳内で言い聞かせて。
 突き飛ばしはしなかったけれど、乱菊は身を捩って。
 抵抗を繰り返すけれど。
 傍目には恥じらいながらも、受け入れる姿にしか映らないとは。
 乱菊も知らない。


「あっ、ダメですって…どこ、触ってっ、やっ…も…虚、何処行ったんですか……」

「気配は近付いて来てるがな……出ては来ねぇーな」

「何、暢気な…ゃっ、やだっ、たいちょっ、そんなとこ、触っちゃ…」


 スカートの中、いつの間にか冬獅郎の手が侵入して来ていて。
 太股を、ゆるり、ゆるりと撫でられている。
 振りだけのはずが、どんどん先へと進んできている気がした。


「幾ら何でもこんなトコでやんねーよ……そんまま、続けてろ」


 まるで、乱菊の言葉は全て。
 雰囲気を出す為に、任務の一環で零している言葉だとでも思っているのか。
 ダメだと伝えても、冬獅郎はどんどん遠慮がなくなって。
 乱菊に触れ続ける。

 本当に任務の一環だろうかと、乱菊が怖くなるほど。


「も…ダメって、言ってるのに……あっ」

「結界、張りてーなぁ…」

「隊長こそ、バカじゃないですか」


 何言ってんの、何言ってのと。
 二回、乱菊は伝えたのに。
 バカと言っても怒りも堪えもせずに。
 冬獅郎の指先は、太股の上へとゆっくり進んで来る。







 続
 ■□■□■
 メロメロなだけのおバカな話ですが、迷って迷って更新する事にしました。
 体調もあって、いつ全く更新出来なくなるか解りませんし。
 こんなお話でも、ちょっとでも楽しんで頂けたらと願って。
 とは言え、さくさく更新とはいかないのも現状なのですが。。。orz

 お言葉やメールをくださいます皆様、本当にありがとうございます。
 なかなかすぐにお返事出来ない状況ですが、しかと拝見させて頂いてます。
 ありがとうございます。
 日記ではたまに現れようと思っていますが、こちらのコメでは応援以外の内容ではあまり地震の事には触れないつもりです。
 単純に日乱に染まって、メロメロを楽しんで頂ける事を願っています。



Chance of trap 4

 




 解らない、近い、と乱菊が戸惑っている間に。
 スッと冬獅郎が、ただでさえ近い距離から唇を寄せて。
 乱菊へと口付ける。

 振りなのだと言った。
 なのに、本当に唇は触れ合っていた。
 思わず、乱菊は目を閉じてしまう。
 反射的だったと言って良かった。

 触れ合うだけだった唇は。
 乱菊が目を閉じた事が合図だったように。
 深くなり、下から迫る冬獅郎の唇に。
 ただ、抵抗だけはせずに、乱菊は従った。

 身体から、どんどん力が抜けて行くのを。
 脳裏でまずいと判断し。
 崩れ落ちないように、冬獅郎の肩に腕を絡める。
 
 
「上手ぇな…雰囲気出て良いんじゃね?……気配、近付いて来たぞ…」


 耳を食む振りをして、否、実際に口に含まれ。
 乱菊の身体が小さく震えたが。
 耳元で囁かれた静かな音にも、身震いをした。


「耳、弱いのか…」

「んもっ…何言って……」


 しかも上手いと呟いた冬獅郎の言葉を。
 混乱している状況の中でも、乱菊は聞き逃さなかった。
 随分な言葉だと、腹立たしさと、切なさが同時に湧き上がる。
 絶対に誤解されてると、確信した。


「……言っときますけど…任務でも何でも、あたしのファーストキス、奪った責任は後でしっかり取って貰いますからね……」

「……は?」


 複雑な感情に、やや自棄気味に。
 乱菊は冬獅郎へと絡めた腕の力を強めて。
 冬獅郎の耳元で、潜めた声で本音を伝えた。
 一瞬で、強張る腕の中の男に。


「おい、マジか…」

「隊長があたしを誤解してらしたって事はよーく解りました。隊長がこゆ事に慣れてらっしゃるってのもよーく解りましたけどね」


 ヒソリと耳元で囁き。
 乱菊からも冬獅郎に口付ける。


「ま、任務ですからね、義骸ですし……続けましょ……今は仕方ありませんから」

「ばっ、お前な……覚悟以前の問題だろが……言えよ、ンな大事な事は……」


 はじめてだったと聞いて、冬獅郎の強引さはあっさりと消えた。
 どちらかと言えば、寄せて触れてくる乱菊の唇から。
 さり気なく逃れようとし始める。


「言うも何も、何を覚悟したら良いかも解らなかったんですもん……まさか、ここまでとは思ってなかったですし…」


 知らなかったから。
 はじめてだったからとしか、乱菊には言えない。


「護廷一の美女と言われてモテまくってるるお前だぞ……幾ら何でも、はじめてだなんて誰が思うんだよ……」

「モテるのは確かでも、誰でも良いってわけじゃないんですよ。あたし以上にモテる隊長なら解るでしょ」

「ありゃ俺の見てくれに寄って来てるだけだ。相手するわけねーだろが」

「あたしだって同じですよ…」


 お互いにしか聞こえない音で、囁き合いながら。
 さり気なく逃れる冬獅郎を、さり気なく乱菊が追いかけて。
 薄い唇に口付ける。


「隊長、任務中ですよ…もう、今更じゃないですか……席官達にもバッチリ見られてますし、この上失敗なんて、あたしはヤですからね」

「しかし…」

「しかしじゃないんですよ、さっきの強引さはどこ行っちゃったんですか……ほら、どうせ義骸ですから、胸も触って良いですよ」

「…お前、何か自棄になってね?」

「なってますね…これでも傷付いてんですよ。しっかり責任は取って貰いますからね……」


 囁かれる潜めた乱菊の声は。
 さしもの冬獅郎でもゾッとする程の冷たさを含んでいて。
 なのに魅惑的な唇は、まるで甘えるように冬獅郎へと擦り寄り。
 そうして、差し出される。

 任務中である事を改めて乱菊から思い出さされ。
 冬獅郎も半ば自棄気味の気持ちで、乱菊の唇を塞いだ。
 手はもう既に乱菊に導かれ。
 弾力のある胸に触れている。


「ん……」


 一転した甘やかな吐息に。
 また乱菊が戸惑ってしまうほど、冬獅郎の口づけは激しさを増した。
 
 
「ん、ん、た、いちょ……んっ」

「はっ……理性飛ぶぞ、何だよ、その声……」

「こんな声、あたしだって出るなんて知りませんでしたよ…隊長のせいでしょ……責任だけは覚悟しといて下さいよ……」

「お前、責任って俺に何させる気だ……」

「そんなの決まってるじゃないですか、帰ったら雛森に全部バラしてやりますからね」


 ピタリと、激しかった冬獅郎の唇が止まり。
 呆気に取られたように、乱菊を翡翠が見詰めていた。
 手は胸を揉んだまま。


「あ、ん…た、いちょ?」

「……それの何処が責任取らされた事になんだよ……」

「困るでしょ、っ、隊長。あたしの気が晴れる方法取っちゃいますからね」

「や、だから何でンな事でお前の気が晴れる?」

「やんっ、直に触っちゃ……ダメ、隊長…」


 もにょもにょと、潜めた声で話しながらも。
 冬獅郎の手は、襟元から乱菊の服の中にスルリと潜り込み。
 柔肌に直接触れ始めていた。








 続
 ■□■□■
 GO!GO!って気持ち。笑

 いや、そうは行きませんけどね。けけけ。

 体調の悪さがどん底で、悪い時はどんだけ無理して病院に行ったって悪いんだって事を痛感しています。
 衝撃的に悪かったんですけど、今の症状が治まらない限り更なる検査は出来ないので、症状が治まるまでは重度が正確に解らないようです。。。ちくしょう、この身体、もう全交換したい…(本音)

 今の症状は入院はしなくても治るようですが、問題は背後にある衝撃的に悪い病の方で、旦那はそんな待ってる間にもっと悪くなったらどうする!!って怒ってますけど、じゃあどうしろっつーだよって私も切れるのがこのごろのみう家。笑
 すぐにどうこうって事はないんですが、体力が落ちてるからぼんやりしてます。あ、いつもか。←おい。

 ザンプで隊長を見るのを楽しみにしてますが、楽しんでるんだけど扱いが小さいことなーい?
 いや、扱いが大きいとまたやらかしそうだから、良いんですけどね。。。剣八さんが大活躍ですが、まぁ、だいたいこんな展開の後は、倒したと思ったけど実は…!ってのが来ると予想中。←てきと。
 それでも隊長出てると嬉しいので、楽しんでいます^^

Chance of trap 3

 




「あの…」

「何だ」

「隊長、腕…辛くないですか?」

「別に」


 夜に現れるとの情報を頼りに。
 囮として、夜の公園のベンチに、二人は座って。
 周囲には席官達がそれぞれ配置され。
 相手が現れる気配を警戒している。

 気配が現れればすぐに連絡、対応が出来るように。
 十二番隊特製のインカムを外からは見えないようにそれぞれが身に付けていた。

 身に着けてさえいれば全ての音を拾える機能ではなく。
 専用の通話ボタンを押さなければ、それぞれの会話は届かない。
 そのお陰で、気兼ねなく乱菊は思ったままに冬獅郎と会話をする事は出来た。

 冬獅郎に肩を抱かれ。
 傍からは寄り添っているように見えるように。
 小さく身体を丸めながら、その腕の中で。

 傍からは寄り添っているように見えるかも知れないが。
 実際は身長差で、冬獅郎は目一杯腕を伸ばさなければ乱菊の肩が抱けない。
 だからこそ、乱菊は可能な限り身体を丸めて。
 冬獅郎の腕の中に納まっている。


「虚、現れますかねぇ…」

「来そうだな。気配は何となく感じる」

「え、本当ですか!?」


 乱菊には何も感じない。
 気配を完全に消している部下達のものも。
 敵の気配も。

 冬獅郎に肩を抱かれているこの現状が。
 乱菊の判断力をも鈍らせているのだとしても。
 やはり、他の者の気配は感じ取れなかった。


「嘘言ってどーすんだ…つーか、お前、もうちょっとくっつけ」

「いっ!?」


 無理無理無理と、頭の中で否定してみても。
 気配を冬獅郎が感じると言うのであれば。
 逆らう事など出来ない。
 出来ないが、肯定して行動に移すのは抵抗があった。


「覚悟しとけつっただろ。いつまでもベンチで、ただ肩抱いてるだけのバカップルが何処に居る?」

「で、ですよねぇ…」


 そのバカップルに成り下がれと?とは思っても。
 逆らえるわけもない。
 もそっと、諦めたように乱菊は動いて。
 より一層、冬獅郎との距離を縮めた。

 ただ。
 寄り添ってるだけのバカップルも居ないのでは…と。
 脳裏に疑問が浮かぶ。

 その疑問が浮かんだ瞬間に。
 ジジッと微かな音を立てて、席官の声が耳に届いた。


『隊長、十二番隊が気配を捉えました。ただ、疑っているのか、警戒しているのか、動く気配がないようです』


 それは五席神楽の声で。
 報告の意味は解る、乱菊にも。
 けれどどうしろと?と思う以外に思考が動かない。


「十二番隊はどうしろって?」

『もっと親密に、濃厚にとの指示が届いております』

「神楽……お前らで今作った指示じゃねーだろな…」

『何故そのような。十二番隊からの報告です!』


 はきはきキッパリと否定の音が二人に届いたが。
 同時に首を傾げていた。
 乱菊は上司の言葉の意味が解らず。
 冬獅郎は部下の言葉を疑って。


「隊長、神楽が嘘を言うわけがありませんけど……?」

「俺とお前の事に関しちゃ別なんだよ、あいつらは。嘘のつもりはないんだろうが、いろいろ日頃から必死だからな」

「必死って何に?」

「知らない方が幸せなんじゃねぇか?」

「はぁ…」


 さらに意味が解らなくなって、乱菊は首を傾げたが。
 その仕種を見止めた冬獅郎が、腕の力を篭めた。


「た、たいちょ…?」

「覚悟、どこまで決めてきた?」

「覚悟って……」

「囮なんだ、それらしく振舞うのは解ってただろ?」

「一応は、その…考えてはみましたけど……何したら良いんでしょ??」

「考えてねーじゃねーかよ」


 だって、と。
 乱菊は反論を口に仕掛けて止めた。
 覚悟、覚悟と言われても。
 今の現状ですら、ともすれば心臓が口から飛び出て行きそうで。
 思考はまともにはずっと働いていない。

 どこまでと言われても、ますます解らない。
 肩を抱いたまま動かないバカップルも。
 寄り添っているだけのバカップルも居そうにはないとは思っても。
 いや、居てもおかしくはないだろうとも思っていても。
 もっとと言う指示が出ているのだから、このままではダメだと解ってはいる。
 だからと言って、何をするのかまでは知らない。

 そもそも、バカップルの定義が乱菊には解らないのだから。


「隊長、バカップルの皆さんって、こんな外で何するんですか?」

「いちゃついてるつったろ。やる奴はンな場所でもやるだろ」


 乱菊の目が見る見る見開かれて行く。
 その言葉の意味にではない。
 涼やかな顔をした上司の口から。
 凡そ想像もしていなかった言葉が軽やかに飛び出て来たからだった。


「た、…や、やるって……」

「いや、アホか。何うろたえてんだよ、振りだけに決まってんだろが」

「振りって…」

「やってるように見せかけるしかねーだろ。いちゃついてるバカが襲われんだから」

「で、でも…」

「だから覚悟してこいっつったんだ。仕事だからな、諦めろ」

「きゃっ」


 強引とも言える力で、さらに引き寄せられて。
 お互いの顔を、とてつもない至近距離まで近付いた。


「た、たいちょっ、近い、近い…」

「近付いてんだ、当り前だろ。濃厚つってたろ」

「な、何が濃厚……っ!?」







 続
 ■□■□■
 ってのが書きたいが為に書いたので、楽しんでいるばっかりです(≧▽≦)
 意味なく長い気もしてますが、サクサク更新出来ずにごめんなさい。
 咳が止まらずに毎日苦しいです。。。きぃちゃー、病院に行く時間が取れてない…orz
 市販の薬が効かないのでもう苦しいったら。
 と言うか、何を飲んだら効くのかがもう解らない。泣

 年度末なので超忙しいのですが、落ち着く間もなく年度初めに突入するわけで・・・
 仲良しの上司が出向元に戻ってしまうので寂しいし、切ないのですが、次の上司とうまくやっていく自信がなくて。笑
 いや、新上司とは多分仲良くやっていけるとは思うんですが、仲の良かった上司がむぎゅっと抑えつけてた厄介ななんの役にも立たないオッサン部長が、次の次長になる人にどうしてか奉られてるので、調子に乗るんだろうなぁ…って考えると先が見えててウンザリします。笑
 まぁ、一番トップの上司が抑えてるからきっと大丈夫。だとしても、私は表面上は普通でもとてつもなく嫌っているのできっと衝突する。。。ま、それも良いか。←呑気。
 
 いろいろ落ち着いたらのんびり病院に行こうと狙いちう。

 
 


Chance of trap 2

 




「あん?何か言ったか?」

「いえ、何も…」

「別に他の女隊士連れてきゃ済む話だからな。つっても危険過ぎるから連れて行きたくはねんだが……あいつらに女装させるわけにも
いかねーしな」

「あいつらって、席官達ですか?」

「他に誰がいんだよ」
 
 
 男女の囮が必要なのだと、冬獅郎の言葉で乱菊は理解した。


 脳裏にそれぞれの席官達の女装した顔が浮かび。
 見てみたいと、不謹慎にも乱菊は思ってしまったが。
 極端に女性隊士の少ない十番隊内では。
 乱菊並に腕の立つ女性隊士が一人も居ない。

 興味心と引き換えに、乱菊にとっても大切な部下である隊士を。
 危険に晒す事は絶対に出来なかった。
 
 
「却下ですね、たいちょ。やっぱりあたしが囮を引き受けますよ」
 
「お前が決めんなよ……ま、隊士危険に晒すよりそん方が正直良いか。お前がやるってんなら、俺も囮をやるだけのことだ」
 
 
 やれやれと、乱菊を止める事など端から諦めていたように。
 冬獅郎は軽い溜息を吐く。
 
 
「隊首が囮とか、有り得ませんって。背後に控えて下さってれば安心ですから。囮は席官の誰かを選んで下さいな」

「内容知らねー内から気楽な事言ってんじゃねーよ。あいつらでも俺はヤなんだよ」
 
「あ、そう言えば、まだ何するのか知りませんでした」


 ホントに暢気だと乱菊は自らを明るく笑う。
 釣られたように、冬獅郎も苦笑した。
 あまりの乱菊らしさに。


「現世の公園でいちゃついてるバカップルどもの前に決まって現れるそうだ。突然現れて、男の方をすぐに殺してしまうって話だった
な」

「……いちゃ……??ってか、殺すって一瞬で!?」

「みてーだぞ?女の方は襲われはしないんだろうが、巻き込まれて数人は大怪我したり、死んでるみてーだ。だから危険なんだ」


 狙われては居ないのに、命を落としている。
 それは敵の攻撃が、広範囲であり、威力のある事を物語っていた。


「隊長の仰る通り、そんな危険な任務にうちの女の子の隊士、尚更出せませんよ、恐ろしい……」

「お前だって女だろうがよ」

「そうですけど、あたしは隊長の副官ですから」

「いや、それは女である事は一ミリも関係ねーぞ」


 女であろうと男であろうと、お前を副官に選んだと。
 何処か偉そうに言う上司の言葉に、乱菊はまた笑う。
 今度は嬉しそうに。


「ありがとうございます。だからこそ、やっぱり囮はあたしじゃなくちゃ!隊長も囮なんて有り得ないって言いましたけど、それだけ
強力な力を持ってるなら、隊長じゃなきゃダメかも知れませんね」

「…あいつらは強いが、今回の相手はちょい荷が重いだろうしな」

「咄嗟の判断や気配の察知にかけては、隊長ほど優れてる方はいませんもの」

「だから俺がやるつってんだよ。お前も油断すんなよ。んで覚悟はしとけ」

「覚悟?」


 危険だと言いたいのだろうか、違うようにも思える。
 そんな戸惑いに、乱菊は首を傾げた。


「俺の話、ちゃんと聞いてたか?いちゃついてるバカップルどもって言ったろ。その囮をすんだよ」

「………聞いてましたけど、それって……あたしと隊長が、現世の公園でイチャつかないといけない…って事です、か?」

「他にどうやって囮になんだよ」

「そうですけど……」


 無理があるのでは…とは乱菊も無駄に命を捨てたくないので言わなかった。
 
 上司が見目のように子供だと思った事は乱菊は一度も無い。
 寧ろ、立派な男性だとは思っている。
 思ってはいても、見た目はまだまだ幼さを残していて。
 背が小さいだけで、色気満載の顔立ちはしていても。
 現世で、死神としての立場も強さも関係ない状況では。
 周囲の人間には子供としか思われない。

 下手したら補導される。
 そんな考えが浮かんだが、口には出さなかった。


「どっちにしたって行くしかねんだ。どうにかするしかねーだろ」

「どうにか…なりますかねぇ……」

「するしかねーって言ってんだろが」


 突然に現れて殺戮を繰り返す敵は。
 虚と言って間違いはないだろうと乱菊は思う。
 既に、人であった頃の判断力などは失われている可能性は高い。
 けれど、稀に。
 知能が高いままの者も居る。

 子供だ…と思ってしまえば、姿を現さないかも知れない。
 子供でも、関係ないかも知れない。
 乱菊には相手がどう思うのかまでは解らなかった。
 それでも、少々無謀には感じる。

 囮としての機能が果たせない可能性があると。
 思ってはいても言えないので。
 取り合えず行くしかないと、乱菊は冬獅郎に頷いて見せた。







 続
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 いちゃつかせたいが為に書きました。笑