2010-06-11 15:28:47

『キッズ・リターン』の新説!

テーマ:北野武
キッズ・リターン [DVD]/金子賢,安藤政信,森本レオ
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完全に見た人向け!

『キッズ・リターン』

説明不要の名作ですね。早稲田松竹で本作と『ソナチネ』の2本立てがやってたので観に行きました(『ソナチネ』についても近日書きます)。


もう何回見たかわかりませんが、このたび劇場で見て新しい発見があったので、それについて書きます。ズバリ! ラストの解釈についてです。


では、元ボクサーのシンジと元ヤクザのマサルの2人のやりとりについて、おさらいします。





シンジ「マーちゃん、俺たちもう終わっちゃったのかな」


マサル「馬鹿野郎、まだ始まっちゃいねーよ」





このセリフについて、江頭2:50が実に優れた解釈をしています。


早大生のポイント映画感想文-江頭
「観ているオレたちは救われているのに、アイツらは決してハッピーじゃない。この引き裂かれるような感覚がオレを切なくさせるんだよね」


ここまで見事にあのセリフの解釈をされたら、他の映画評論家どもは立つ瀬無いでしょう。えがちゃん恐るべし!


つまり、【観客(希望)////シンジとマサル(絶望)】ってことですね。


けど、僭越ながらいちゃもん付けさせていただきます。





(こっから僕の解釈)


マサルは終わったけど、シンジは始まってないよ!


つまり、

【観客(希望)//シンジ(マサルからみたら希望)////マサル(絶望)】ってことです。


では、その理由をみていきましょう。





①2人とも終わってると云えば終わっている


これは確かです。マサルは言わずもがな、2度とヤクザには復帰できません。シンジもボクサーとしてはもう大成しないでしょう。もう一度ボクサーをやっても不良ボクサー・モロ師岡のようになるのは目に見えています。


なので、2人とも元の道をやり直すのであれば、きっと挫折してしまいます。(マサルに至っては、やり直すことすら無理な気がする…)


この意味で2人は、ヤクザとしてボクサーとしては終わっちゃいました。





②2人の人間性


ここでいったん「そもそもマサルとシンジはどういう人間なのか?」を改めて考えてみます。


もともと2人がボクシングを始めたのもマサルの挫折から(カツアゲしたら返り討ちにあう)です。シンジに至っては「マーちゃんが始めたから」という成り行きでボクサーになります。その結果、マサルはさらに挫折し、極道へと転向します。


これはどういうことかというと、

マサル → 挫折から新しいことをはじめるタイプ

シンジ → 成り行きで新しいことをはじめるタイプ


ということです。


さらに言うと、彼らにとって「ボクシングだけが人生のすべて」でも「ヤクザだけが人生のすべて」でもないわけです。挫折した先にボクシングとヤクザがあり、成り行きで生きてたらボクシングがあっただけなんだから。





③これらを踏まえた新しい可能性


物語の最後、2人は今までにあったこともないような挫折を味わいます。


これは、まさしくマサル再チャレンジの契機!


しかし、でっかい彫り物背負ったマサルが何かやり直せるとは到底思えません


二十歳そこそこで、彼は大きな代償を払ってしまいました。元ヤクザ……そしてその冠を一生背負わなければならない。彼もそのことは重々分かっているでしょう。自他共に認める「マサル、TATOOあり!」


高校中退後は職探しをいているマサルですが、少なくとも堅気の仕事をきびしいでしょう。


では、シンジはどうか?


シンジはもともと成り行きで始めて挫折しただけですから、なにか新しいことがまた見つかればそれに挺身していくことだってできます。


彼が背負ったものといえば、中卒くらいです。


だから、彼にはまだ可能性があります。もちろん「マサルよりは」ですけど。


さらに言うと、シンジは振り出しに戻っただけです。


新聞配達で生計を立てている「今」のシンジと、高校時代マサルにコバンザメのように従って小悪なことを繰り返していた昔のシンジ、どちらの方が「終わっちゃってるか?」と云えば、まぁどっこいどっこいでしょう。


まとめると

【ボクサー時代>>>コバンザメ時代=新聞配達している今】ってことです。




④ラストのやりとりの本当の意味


以上から、マサルは終わっちゃってるけど、シンジは終わっちゃってない(≒始まってない)といえるでしょう。


そして、一見して2人は等しく挫折を味わったと思われますが、マサルはシンジとの境遇の違いをひしひしと感じているはずです。毎晩シャワーを浴びるたびに鏡に映るじぶんの刺青…、おまけにシンジは職だって持っていた。


僕なりにこれらを踏まえて最後のセリフに注釈を加えます。





シンジ「マーちゃん、俺たちもう終わっちゃったのかな」


マサル「馬鹿野郎、まだ始まっちゃいねーよ!(お前はな……)







ここで、えがちゃんの解釈をもう一度みてみましょう。


「観ているオレたちは救われているのに、アイツらは決してハッピーじゃない。この引き裂かれるような感覚がオレを切なくさせるんだよね」


半分正解で半分間違っています。


シンジとマサルも引き裂かれています。


つまり、

【観客(希望)//シンジ(マサルからみたら希望)////マサル(絶望)】ってことです。





最後にまとめのまとめ


『キッズ・リターン』はマサルの友情と悲哀の物語です。


「俺たちもう終わっちゃったのかな」なんて馬鹿げたことを言ってるシンジ…。「俺の身になって考えたことあんのか、シンジ!俺に比べればお前なんてまだマシじゃねーかよ!」


こう返してもおかしくないはず。


けど、親友のシンジにはそんな後ろ向きなこと言えない。だからマサルはこう言う。

「馬鹿野郎、まだ始まっちゃいねーよ」

「お前は…」

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コメント

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9 ■無題

訂正ありがとうございます。

ですが、解釈を揺るがすほどの大きな誤解というほどでもない気がしますよ。

新聞配達だろうが宅配員であろうが、シンジが「不安定な職についている」ことに変わりないですからね。

高卒はむしろマサルとの格差という点ではむしろ強力な論拠となりました。ありがとうございます。

8 ■無題

ついでに、シンジが新聞配達している描写はないですよ。
米か何かを配達してるシーンが冒頭にありますが

7 ■無題

こんにちは。なかなかの解説かな~とおもいましたが、大きな誤解がありましたね。
シンジはとりあえずは高卒ですよ。
卒業証書もらってますもん

6 ■おすおーす!

>supicaさん

僕は映画雑誌の類は全く読みません…。なので内容の濃淡についてはよくわかりませんが、新作映画の広告も兼ねている映画雑誌で、歯に衣着せぬ批評は難しいと思います。

映画本で面白かったのは、えがちゃんの『エィガ批評宣言』と町山智浩の『映画の見方がわかる本』はよかったです。

5 ■なるほど…

>くずひろさん

すごく参考になりました (^^)ノ


最近の「スクリーン」とかの映画雑誌は薄っぺらだし、書籍のほうも探してはいるけど ピンと来るものがないですね(T^T)

でも、エガちゃんの本…
くずひろさんが、イチ押しなだけに読み応えありそうだし、どんな作品を鑑賞して来たか?が気になりますね(*^_^*)


今度、是非 読んでみますね(^_-)

4 ■おすおーす。

>supicaさん

えがちゃんは年間200本をコンスタントに見るそうです! 『エィガ超批評宣言』という本を出しているのですが、そんじゃそこらの映画本よりも段違いで面白いので、是非みなさんに騙されたと思って一読してほしいものですー。

3 ■随分、昔に……

鑑賞しましたが、

ビートたけしの監督作品で話題になってはいたけど、

セリフをエガちゃんが改訳してたとは、知らなかったです(゚Д゚)


エガちゃん……

タレントでは、あんまり好きでないけど意外な才能があったとは驚きです Σ( ̄□ ̄)!

2 ■おすおーす。

>mint-carさん

『安城家の舞踏会』は未見です。すいません…。

明日にでもレンタル屋あさってみます。在庫あったら1週間以内には見ますので、見た上で改めて返信させていただきます。

ただ、amazonであらすじを見た感じでは、上流階級のお話みたいなんで、そもそもシンジとマサルとは境遇が全く違うような気がしないでもないです。(いずれにせよ見ぬ内は何とも言えませんが…)

ちなみにたけし監督は、文学の引用もするみたいです。カミュの『異邦人』でムルソーが男を銃殺する時、相手は死んでいるのに何発も弾を撃ち込むところは、『HANA-BI』で引用されています。たけし演じる刑事が犯人(薬師寺保栄)を何発も弾を撃ち込んでますねー。

1 ■このエンディング

「安城家の舞踏会」の最後の台詞に似てますよね。
というかまんまだと思ったんですけど。

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