甘えるのがへたくそでお人よしだったシキブとバンビ。乳児期の虐待による暗さを乗り越え、母になったシキブには、立派な両親を持つバンビが、結婚してから心を病んでいった理由がわからない・・・。
(第一話はこちら から)
バンビの家に電話をかけたのは、娘のクーコの学校が夏休みに入った日のことだった。世間が平日の昼間にかけたにもかかわらず、電話に出たのは働き盛りのキンキン先輩である。家業を継いでいるのだろうか。たぶん勤め人ではないのだろう。
「彼女からあなたのことはよく聞いてますよ」
先輩の声がどんなであったかまったく記憶にはないけれど、意外にも人当たりのよさそうな明るい声が受話器から聞こえてきた。バンビは本当に心を病んでいるのだろうか、と疑いたくなるようなのどかさだ。
バンビは不在だった。娘の夏休みを利用してイギリスへ遊びに行っているのだという。イギリス? 優雅なことだけれど心の病は大丈夫なのかと思いながら、「そうなんですか」と肩を落としたシキブに、キンキン先輩は、突然声のトーンを暗くして、
「親友だったそうなので、ご相談したいことがあるんだけど」
という。
「私に、相談ですか?」
「はい。こちらにくる機会ってありますか? 女房の海外行きの理由に関することなんですけど」
子供をつれて遊びに行ってるのではないのか? 女房の海外行きに、かなり深刻かつ複雑な事情があるかのような口ぶりである。まさかそのまま別れるなんてことはないだろうか? カトリック教徒ではなさそうだし。
シキブは(やはり、奥さまは心の病なんですか?)と尋ね返したいのをのどの奥にこらえて、お盆には家族で実家に行くので、そのときに訪問すると約束した。
よく晴れた夏のその日。
実家の老いた両親は、シキブの旦那であるガチャピン、娘のクーコを車に乗せて、海の見えるホテルまで寿司を食べに行った。その間にシキブはバンビの嫁ぎ先であるキンキン先輩の家を訪ねることになったのである。
ホテルの寿司屋である。回転寿司とはちがうのだ。もとより、シキブが単独行動をしなければならないために、そういう話になったのであって、養母にいたっては、
「お母さんの分が浮くから、クーちゃんたくさん食べてね」
と心のそこからはしゃいでいるのだった。カウンター越しに握ってもらう寿司屋になぞ日ごろ縁のない、育ち盛りのクーコは大喜びである。それにしても露骨に冷たい連中ばかりだ。何事にも期待しないシキブだからこそ、笑ってすませられるのである。
父親が車を使ってしまったので、ぜんぜん方向違いのバンビの家まで、シキブはタクシーを使った。1,000円にも満たない距離であるし、事故歴のある彼女は結婚を機に免許証を破棄していて、これからは公共機関やプロに長距離移動を託そうと決めていたので、どうということはなかったけれど。
目指す家は鬱蒼とした造園業者の広い敷地と境界を接する、大きな古い瓦屋根の平屋建て、入り口はいかめしい門構えという、やたらに立派なお屋敷である。入り口は二つあって、最初にのぞいたところはどうやら農機具が出入りする門らしく、耕運機や軽トラックがトタン作りの小屋に収められているのが見えた。
(つづく)
ビジュアル的にも地味なきのうの夕食
ご飯
さばのおろし酢
ジャガイモの煮物
具だくさんの味噌汁
昆布の佃煮
ほうじ茶

2011.12月 セルバ出版より
レク担本舗の







)は反論する。
キャベツ
から、
に、
、







)



(←誰?)




