国の特別天然記念物トキが、テンに襲われて一晩で9羽も死んだ。トキは、なぜむざむざとテンにやられたのか。

新潟県佐渡市の佐渡トキ保護センターで10日明らかになった事故。環境省は足跡からイタチ科のテンが襲ったと断定し、ケージの金網より大きなすき間265カ所を確認した。ケージは広さ約4000平方メートル、高さ約15メートル。ここを訪れたことがある山階鳥類研究所の尾崎清明・保全研究室長は、トキが入り口に近い隅にまとまって倒れていた点と夜間狙われたことに着目し、こう推測する。

夜、ケージ内の木の上で群れになって休んでいたトキは、近くのテンに驚き、慌てて飛んで逃げようとした。習性として入り口付近の比較的明るい場所に向かったが、金網にぶつかり壁沿いに地面へ落下。息を切らしたところ、逃げ切れずに短時間に襲われた--。「昼間なら金網に気付けたはず」と尾崎室長。

トキの天敵はテンなのか。トキの成鳥は上空でタカやワシなどの猛きん類に、ヒナや卵はテンやイタチなどに狙われやすいという。

一方、テンはハンティング能力が高く、一つの動物を食べ尽くすというより致命傷を負わせ、近くで動くものがあれば次々にとどめを刺す傾向がある。

環境省によると、死んだ9羽の解剖による推定死因は「頸部(けいぶ)損傷」。すべてにかまれた跡があり、のど骨が砕けていた。頭部が切断された死骸(しがい)も複数あった。

佐渡には59年にノウサギの駆除を目的に、ホンドテンが持ち込まれた。動物園で初めてホンドテンの繁殖に成功した秋田市の大森山動物園の飼育展示担当、千葉克己さんは「外敵を防ぐはずの金網が逃げ場を奪う要因となり、テンにとっては食べ物を与えられたようなもの」と話す。

テンは体長60~80センチ、体重約1~2キロ。鳥やリスなどの小型哺乳(ほにゅう)類、昆虫などを食べるが、「甘党」でもあり、果物や木の実も好物。昼間は木の中におり、特に山里では夜に行動する傾向がある。

3回目の放鳥の今回、なぜ襲われたのか。千葉さんは繁殖期を迎え、行動半径が広がった可能性を指摘する。「頭骨の直径約5センチほどの穴があれば肩から胴体まで十分すり抜けられる。丈夫な金網はテンにとってはしごがかかっているようなもの、金網もすき間さえあれば何の障害にもならない」と話している。【宮田哲、鈴木梢】

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