一供述調書1について
1 本件供述調書は甲の自白を内容とするものである。そこで,証拠能力の有無は「任意にされたものでない疑いのある」ものであるかによる(319条1項,322条1項但書,自白法則)。
 そこで,「任意にされたものでない疑いのある」とはいかなる意義か。条文上明確でなく問題となる。

2 思うに自白法則は自白の採取の過程において黙秘権(198条2項,憲法38条1項)をはじめとする適正手続(憲法31条)を反映させる趣旨である。そうだとすると,「任意にされたものでない疑いのある」とは自白採取過程に違法があるものと解する。ただ,軽微な違法によりすべて排除することは,真実発見(1条)の要請をあまりに後退させてしまい妥当でない。
 よって,適正手続きの精神を没却するような重大な違法があるものにかぎると解する。

3 上記により,本件調書を検討する。まず,黙秘権が告知されおらず198条2項に反するが,不作為に過ぎず,黙秘権の行使を積極的に妨害しているとまではいえず,重大であるとはいえない。つぎに,アリバイを主張する甲に対して,Aが犯行現場の防犯カメラに写っているという,アリバイを完全に否定する旨の虚偽の事実を告げている。これは,黙秘権の不告知と相まって甲に黙秘権を放棄させる契機となるものであり,適正手続きの精神を没却する強い違法があるといえる。

4 以上,本件供述調書に証拠能力はない。

二被害品について
1(1)本件被害品は捜索差押え許可状に基づいて行われて差し押さえがされている。そして,供述調書を疎明資料として捜索差押え許可状が発布されているが,供述調書の証拠能力がないからといって,当然に捜索差押え許可状の効力に影響するとはいえない。
(2)しかし,違法な手段で採取された供述を利用してそれを用いて令状をえることにより強制捜査を行うことを許せば,違法な手段で供述を採取して,それにより証拠を収集することにより捜査目的が達成されることになる。そうすると,違法な手段で供述を採取することが繰り返され,黙秘権の趣旨が無意味になる。そこで,すべての手続きで一貫して違法な手段で採取した供述を利用することは許されないと介すべきである。
(3)本件の供述調書1は前述のように黙秘権の精神を没却する強い違法な手段により採取されたものである。したがって,本件供述調書を疎明資料として使用することは許されない。と,すると本件捜索差押え許可状は無効なものである。よって,本件被害品の差押えは無令状によるものとして違法である。

2(1)ここで,違法な手段により収集された証拠は証拠能力があるかが問題となる。
(2)思うに,違法捜査を防ぐためには違法収集証拠を排除するのが効果的である。また,違法収集証拠を用いることは司法の廉潔性を害し,適正手続きの観点からも認めるべきではない。そして,令状主義の精神を没却する強い違法性があるか,違法捜査抑止の観点から判断すべきである。
(3)本件は無令状による捜索・差押えという令状主義の精神を没却する強い違法性のあるものである。また,このような捜査を許すと繰り返されるおそれもある。したがっって,証拠能力は認められない。

三供述調書2について
 ひとたび虚偽の事実を告げられたことは,黙秘権の告知により消去することは困難である。単に黙秘権の告知がされたのみである本件自白調書についても,自白法則が適用される。したがって,証拠能力は認められない。

                                              以 上
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一設問前段について
1 本件ビデオ撮影は令状なくして行われている。ビデオ撮影が強制処分であれば(197条1項本文)令状主義(憲法33条・35条,法218条1項)が適用される。そこで,本件が強制処分であるかを検討する。
 いかなる処分が強制処分に当たるかが明らかでない。その判断基準が問題となる。
 思うに,現代は科学的捜査が発達しており,「力」を加えることなくとも,人権を侵害するおそれがある。そこで,強制処分は対象者の意思を抑圧し身体財産などの重要な権利に制約を加えることにより捜査目的を達成する手法をいう。
 本件は甲の意思に基づかずになされている。また,ビデオ撮影はプライバシーという人格に関わる権利(憲法13条)に制約を加えている。これは重要な権利に対する制約であるように思える。と,すると強制処分であるように思える。
 確かに,室内を望遠レンズを用いてのぞき見する態様での撮影はプライバシーに対して強度な制約を加えるといえる。が,本件は公道上から,カーテンを開けたときに窓越しに顔を撮影したにとどまる。これは,全く他人にみられることを予定していない場合ではない。また,本件撮影は何ら強制力を用いることなく行われていることを考慮すると,かろうじて強制処分には含まれないと考える。
 したがって,任意捜査(197条2項)である。

2 本件ビデオ撮影が任意捜査だとしても,人権を侵害するおそれがある。そこで,具体的な事案について必要性および社会的相当性を考慮して捜査の適法性を判断すべきである。
 まず,本件は振り込み詐欺という重大な社会問題となっている事案である。これは,弱者をねらい打ちし,また一部は暴力団の資金源となっている犯罪である。また,振り込み詐欺は同一犯が連続かつ継続に犯行を行う性質を有する。よって,早期に事案を解明する必要性もある。さらに,甲は容疑が濃厚であり,防犯カメラの画像と照合する必要性が強い。よって,本件ビデオ撮影を行う必要性は強い。
 手段の相当性について,甲が入り口から出てきたところを撮影する方法も考えられる。が,甲が捜査での撮影がなされていることに気づくと逃亡されるおそれがある。そして,本件撮影は公道上から甲のみを対象としてなされている。よって,社会的相当性が認められる。

3 以上,本件ビデオ撮影は適法である。

二設問後段について
1 本件ビデオ撮影も強制処分に該当するかが問題となる。上記基準により判断する。

2 レストランに入り食事をしているという私生活に関する行動はプライバシーに関わるものである。しかし,レストランは他人の目に触れる場所である。また,前述のように撮影行為は強制力を行使しているわけでない。したがって,強制処分ではなく,任意捜査であるといえる。

3 本件撮影は任意捜査として適法か。
 まず,上記に加え,手のあざは特徴的である。よって,防犯カメラの画像と照合することにより,重要な証拠となる。したがって,撮影の必要性は強い。
 つぎに,本件撮影は小型カメラを鞄に入れて行われた,いわゆる隠し撮りである。
 捜査目的が甲に知られると,逃亡されるおそれがある。また,レストランの店内において,他の客に知られ怪しまれることにより,甲に察知されることを防ぐ必要がある。また,手のあざという比較的小さい対象を撮影するには,被写体である甲になるべく近づく必要がある。したがって,上記手法は社会的に相当な方法であるといえる。

4 以上,本件ビデオ撮影は適法である。
                                               以  上
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小問1について
 裁判所はZの弁論を分離した上自白擬制(159条3項)を適用し,X勝訴の判決をすることができるか。
 同時審判の申し出(41条1項)がなされている場合おいて,被告に争う意思がない場合,審判を分離したうえで,原告勝訴判決をすることができるかが問題となる。
 ここで,同時審判申出の趣旨は原告が両立しない請求を申し立て複数の被告に対し訴えを提起するときに,
 矛盾した判決を受けて,すべてに敗訴する,いわゆる「両負け」を防ぐところにある。
 と,すると原告であるXを勝訴させることは問題ないように思える。
 しかし,判決を受けたZが上訴した場合,上訴審でZが勝訴し,またYも勝訴し,Xが「両負け」となることが起こりうる。
 よって,条文の文言どおり,審判を分離し原告勝訴判決はできないと解する。
 以上,裁判所は弁論を分離した上,X勝訴の判決をすることはできない。

小問2について
 裁判所はXのYに対する請求を認容し,またXのZに対する請求を認容する判決をすべきである。
 まず,Yについて,裁判所はZに代理権があるとの心証があるからである。
 つぎにZについてはZは何ら主張していないので,Zに対してZの代理権が存在するとの認定はできない(弁論主義第一テーゼ)。
 そもそも,同時審判の申し出がなされていたとしても,本件は通常共同訴訟である。と,するとそれぞれの請求は
独立したものである(39条)。したがって,Xは矛盾した主張をすることは何ら問題ないからである。

小問3について
 XのYに対する控訴はZにも及ぶか。
 通常共同訴訟においては,それぞれの訴訟行為は独立している。よって,Zに対してYへの控訴の効果は及ばない。
 41条3項の文言も控訴がそれぞれ独立してなされることを前提としている。
 したがって,控訴裁判所はYとZを共同控訴人として判決することはできない。
                                         以  上
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