陰陽師 -瀧夜叉姫- 4 (リュウコミックス)/徳間書店

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コミックリュウで夢枕獏さん原作・睦月ムンクさん作画の『陰陽師 滝夜叉姫』25話を読みました!

時は平安時代、主人公は陰陽師・安倍晴明ですが、このところ藤原秀郷(俵藤太)と平将門の戦いの描写が続いています。平貞盛の謎の病に関連して、晴明が貞盛とともに将門と戦った藤太の話を聞きにきているのです。

このお話では、将門は興世王の影響を受けて、身の丈も高く、ほとんど化け物じみた、というか化け物そのものとなって藤太たちの前に立ちはだかります。普通の刀では切れず、矢も立たない将門に対し、藤太は僧・浄蔵の法力を伝える矢で将門の頭を射抜きます。

倒れた将門に対し、藤太は涙を流しながら「立つな将門。すでに夢はついえたのじゃ」と言います。藤太は場合よっては将門に与力する気持ちもあった。しかし、化け物になってしまった将門を見て、ともに戦えなくなったのだ、と言います。藤太に出来るのは、将門の側室・桔梗のいうように将門を「人として死なせる」ことだけだ、と藤太は思ったのだと思います。

その桔梗が死にかけている。彼女を切ったのは藤太だ、と将門は考えていて、そうではない、という藤太の言葉に耳を貸しません。将門は立ち上がろうとし、藤太は黄金丸でその腕を切り落とします。そして藤太が将門の首を落とした時、将門の首は高く飛びました。

まさに伝奇的な展開で、やはりこの将門を変えたものは一体なんだったのか、ということが気になります。

私は将門の乱を描いた作品はいくつか読んだことがありますが、神田明神の祭神でもあるこの人物は、人間的な描写ではなく、例えばこのような超人的な変化(へんげ)として描かれるのも、一つの描写方法かなと思います。東国武士団を束ねた将門は、同じく東国武士である藤太や貞盛によって滅ぼされますが、二百数十年後の源頼朝のように、東国勢として自立する可能性もなくはなかっただろうと思います。

そうならなかったのはなぜなのか。それは将門が、何かの魔に取り付かれた化け物と化していたからだ。荒唐無稽ですが、それも一つの伝奇的な落ちの付け方かもしれない、と読みながら思いました。

「陰陽師」と言えば岡野玲子さんの漫画化が有名ですが、岡野さんの陰陽師は原作を離れて独自の世界を構築して行っています。睦月さんの描く晴明や源博雅も魅力的ですし、将門や藤太など武士たちの描写も私はいいなあと思います。

このエピソードはかなり大河的な大きさを持っているなあと思います。原作は読んでないので、展開を楽しみにしています。