神の宿る山として古くから信仰の対象だった鳥取県の名峰・大山。見る角度によってガラリと変わる山容は人々の心を魅了し、地域に恵みをもたらす山として地元では〝大山さん〟と親しみを込めて呼ばれています。
その大山の古称「大神山」の名を持つ神社「大神山神社」は、実は日本一の称号が3つもある見どころ満載なスポットなのです。
同神社の禰宜、相見正邦さんに話を伺いました。
大神山神社には2つの社があり、1つは大山山腹に「奥宮」、もう1つは米子市尾高地区に「本社」が鎮座。奥宮が豪雪地帯で冬季の参拝が困難になるため、冬でも参拝できるようにと下流の地に本社の元となる冬宮(里宮)が置かれ、江戸時代に現在地に移りました。
奥宮は標高約890mの高地にあり、境内には実は3つの〝日本一〟があります。
1つ目は、国指定重要文化財に指定されている、国内最大級の権現造りの社殿。本殿・拝殿・幣殿が一体化し、約50mの長廊がT字型に連結するという非常に珍しい形状。裏山の林道からその独特のフォルムを俯瞰することができます。
権現造りの奥宮。長廊と一体化した社殿の長さは圧巻
2つ目は、金箔に似せて彩られた、国内最大級の壮麗さを誇る「白檀塗り※1」の柱と長押 。天女の壁画や花鳥風月が描かれた234枚の天井絵とともに、絢爛たる装飾に感嘆の声が上がります。
3つ目は、自然石を敷き詰めた石畳の参道。鳥居のある入り口から社殿前まで、国内最長の約700m続き国内最長を誇ります。生い茂る木々の間を縫うように伸びた参道の脇には、小さな灯籠や自然石に刻まれた地蔵などが並び、神秘的な雰囲気に包まれています。
まだまだ見どころはあります。奥宮にある神門、通称〝逆さ門〟。扉が開かないようにするための閂が外側に付いている大変珍しい門です。そして参道近くの河原にある岩壁は通称〝金門〟。巨大岩を切り分けたかのような形をしており、夏至のころはその隙間に夕日が落ちていく絶景が見られることから、撮影スポットとしても人気です。相見さんに「金門はかつての参道だったんですよ」と、意外な豆知識も教えてもらいました。
「神社の造りや狛犬の表情など、2社を見比べるのも面白い。ぜひ両方参拝してみてください。」(相見さん)
特に奥宮周辺は県内屈指の紅葉スポットで、トレッキングコースも充実。冬にはウインタースポーツが楽しめ、四季を通して行楽の尽きない地です。ただいま紅葉シーズン真っ只中。参拝に加え、大自然が描く紅葉絵巻も見られるチャンスです。
紅葉シーズンの参道。石畳が700m続く
注:2020年11月現在、奥宮の遷宮に伴う修復作業が行われており、奥宮の内部鑑賞は不可。社殿屋根や石垣、長廊の解体修復とともに令和7年まで行われる予定。事前に要確認。
※1 蒔絵や箔の上から透明な漆を塗り、模様を浮かび上がらせる特殊な技法。
【大神山神社】
■本社
住所:鳥取県米子市尾高1025
電話:0859‐27‐2345
■奥宮
住所:鳥取県西伯郡大山町大山
電話:0859-52-2507