2011-08-16 19:20:59

『妖談さかさ仏』〈耳袋秘帖4〉(文春文庫版)

テーマ:歴史・時代小説

格別だまし絵をとりあげなくても、さかさにしてみると全く違う印象になってしまうものってわりとあるんじゃなかろうか。
単純な話、子供の頃に股の間から世界を眺めてみた時の事を思い出してみてもいい。
忘れた?
なら、こっそりと今やってみよう。
体が硬くてできない?
よしストレッチだ!

……ちがう(笑)。

まあ、そうだな、漫画本でも手にとって、逆さに見て見たらどうだろうか。
いやいや文庫本の表紙でもOK。
印象がだいぶ違ったりしないか?
もちろん、全てが全てそうなるというのではないけれども、なかには「え?」とびっくりするような結果が出る事もあるかもしれない。

そのためか、「さかさにする」(類似として、裏返しにする)というのは、簡単なおまじないの手法でもあるようなのだが、本巻ではまさしく、そういうことが行われる。
タイトルにもあるとおり、仏像をさかさにしてしまうのだ。

仏像というのは、たいてい、おだやかな微笑を浮かべている事が多いようだ。
アルカイックスマイルという、あれだ。
これがさかさになると、どうだろう?
こういうのは、想像するだけでもちょっと怖い。
もしかすると、かなり、「夏むき」な光景かもしれない。

もちろん、本シリーズは、そういう、「なんか不気味っぽくて怖い」事象がまずあって、そこになんらかの事件をあkぎつけるというスタイルなんだけど。
なうての美術品ドロをからませて、もうちょっと別な仕掛けも出てくる本巻、しかしやっぱり、怖いのは、さかさになった仏像と、それを拝む人々の心理、そしてその光景だろうと思う。


妖談さかさ仏―耳袋秘帖 (文春文庫)/風野 真知雄
2011年1月10日初版>
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2011-08-15 13:16:33

『妖談しにん橋』〈耳袋秘帖3〉(文春文庫版)

テーマ:歴史・時代小説


「この橋を4人で渡るとそのうちのひとりの影がなくなり、その人物は死ぬ」
衣エーエムでもその手のものはなにかしらありそうな、怪しげな噂が今回のテーマだ。
人数縛りの呪いってわりとあるよね。
まあこれあたりも、「4人」と「しにん」がかけてあるのだろうが、さて、本島に死ぬのだろうか?

こういうのって、話を聞いている分にはなんとことないけど、実際に現場に行くのはやっぱり気持ちよくないものだろう。
このシリーズでは、おすいう怪しげな噂の調査にあたる二人組のうち、片方が、実は恐がりであるというところがわりとポイントが高いと思う。
剣術の強い侍だし、もともと定町廻りの同心なのだから、怖がってるところをみせてはいけないのがつらい!
やはり、ホラーは、こわがる人がいないとお話にならないが、ただむやみにこわがってるばかりのキャラは、逆にうっとうしいものだ。

しかし、このシリーズ、怪しげな噂の影には必ずなにかしらある、という仕掛けなので、勿論、この橋の怪談にも、ちゃんと理由がある。
今回はいささかやるせない事情なども含まれていて、人情の機微にさとい人なら、好みの仕掛けかも。


妖談しにん橋―耳袋秘帖 (文春文庫)/風野 真知雄
2010年9月10日初版
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2011-08-14 08:43:39

『妖談 かみそり尼』〈耳袋秘帖2〉(文春文庫版)

テーマ:歴史・時代小説

尼さんというのをあまり見たことがない。
宗教に限定しなければ、東京西郊ではキリスト教の尼さんはそれなりに見かける。
しかし、仏教の尼さんを見ないんだな。
そもそも、普通のお寺に比べて、尼寺というのがとてもレアなのではなかろうか。

しかし、尼さんという存在について、こんなイメージは一般的にあるだろう。
宗教に身を捧げた女性である。
したがって男と関係を持つ事がない、清浄な身の女性。禁欲的。
剃髪または断髪し、頭を覆っている。

まあ、ともかく、一般の女性とはまったくちがう、特別な女性なのだ。

しかもレアである。

男の手の届かないところにいる女性というのは、それだけでいろいろと、想像(というより妄想?)を刺戟するのだけれども、宗教的なところに関係する女性は、プラス、「神秘的」というイメージも重なる。
レアな存在であって、普段見かける事がないと、そういった想像なり妄想なりが、へんな方向へ行くこともあるかもしれない。

かみそり尼。
なんと妖しうぶきみな言葉なのだろうか!

想像してみるといい。
人里はなれたところ。
たぶん薄暗い時間帯。
墨染めの衣をまとった尼さん。
……かみそり。

これは怖いですよ!

本シリーズ、だいわ文庫で展開されていた人気シリーズが文春文庫に移ってきたのだが、タイトルに「妖談」とうくのは文春に移ってからのこと。
キーパーソンが、かの『耳囊』をものした根岸肥前守であり、『耳囊』には相当数、怪しい噂(今でいう都市伝説をかなり含む)も入っているので、こう、妖怪の出てくる話……と連想しやすい。
実際、ここに登場する根岸肥前もそういった怪しい噂が大好き、と描写されているのだが、たんに妖怪が好きなのではなく、怪しい噂を解き明かすのが好きなんだね。
つまり、怪しい噂にはれきとした現実的な理由があり、それが事件につながるという構成になっているのだ。
もちろん、かみそり尼もそういった怪しい噂のひとつであり、そこからとんでもない事件が明るみに出てくる仕掛け。

しかし、イメージはこのシリーズ中ダントツに怖い。
かみそり尼。
ホラーというよりは、もちろん、サスペンス風味、なんだけどね。


妖談かみそり尼―耳袋秘帖 (文春文庫)/風野 真知雄
2010年4月10日初版
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2011-08-13 19:10:20

『旧主再会』〈酔いどれ小籐次留書17〉

テーマ:歴史・時代小説

小籐次のシリーズは、けっして一話完結式ではないが、それでお本巻はかなり独立性の高い話になっている。
それというのも、少年の頃、一緒につるんで「わるさ」をしていた仲間の一人、いまは信州の大名になった旧友からのたっての頼みで、お家騒動をおさめるため、小籐次は信州へと出向く事になるからだ。
小籐次自身とは直接関係のない藩のことであるから、この事件が直接これからついてまわる事はなさそうだけれど、その分、シリーズドラマの「夏のスペシャル」的に、舞台を美しいわさび田のある郷にうつし、藩主のために働く若い世代を周辺に配して、さわやかな、番外編的な話につづってあるのだ。

しかし、同時に、かつての友とあうための仲介として、小籐次の旧主が再登場したり、信州を訪れている間に、思わぬ評判が江戸で立っていたり、小籐次不在の江戸でも伏線めいたものがいろいろと発生している。
そして、今までも幕閣に近い人々と知己を得ていた小籐次ながら、もはや千代田のお城でかくれもない人気者であり、小籐次自身は全く欲のない爺さんなのに、その人脈はますます凄いことになっていきそうだ。

まあ、考えようによっては、小籐次の欲のなさが、そういう運を招いているとも言える。

それにしても、市井ではもはや「お酒の神様」扱いだし、お城ではほとんどアイドル(!)だし、小籐次の外見や藩をはなれるまでの言動とは、あまりにもかけはなれた存在になっているのが面白い。

一方、小籐次の養子である駿太郎は、れきとした武士の子であり、当代の名だたる侍である小籐次の子でもありながら、全く違う将来の展望を口にした。
まだ幼いから、それで先は決まりというものではないかもしれないが、ちょっとばかり興味深い。
駿太郎は今後どのように成長していくのだろうか。


酔いどれ小籐次留書 旧主再会 (幻冬舎時代小説文庫)/佐伯 泰英
2011年8月5日初版
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2011-08-12 09:07:09

『希望』 瀬名秀明第一短篇集

テーマ:日本SF・ファンタジイ

『パラサイト・イヴ』の瀬名秀明というと、もうその先入観からか、科学科学している、という感じがする。
実際、この短篇集も、主人公のほとんどは科学者、それ以外も科学者のごく身近な人という設定になっている。
物語の根幹も、科学科学な感じは免れない。
しかし、ハードSFにありがちな、科学ありきの物語とは全く違うものだ。
瀬名秀明作品にあっては、科学は宇宙を解明するキーではあるが、中心にあるのは、あくまでも人間なのだ。
人間は宇宙の一部であるかもしれない。
しかし、「エレガントな数式」で割り切る事ができないものがたくさんある。
どの短編もそのことをうたっている。
だから、科学科学していつつ、どの物語も、とても優しい。

----------
魔法
静かな恋の物語
ロボ
For a breath I tarry
鶫(つぐみ)と鷚(ひばり)
光の栞
希望
----------

正直にいうと、長編よりもこれらの短編の方が、強いセンス・オブ・ワンダーとともに、私には面白く読めた。
なかでも、「光の栞」(異形コレクション初出)が凄い。
まず、先天的に声を発する事ができない女性という主人公の設定が秀逸だ。
一流の科学者である彼女は、子供の頃から大好きだった絵本があり、息子にもそれを伝えた。
しかし、それだけではなく、本の新しい形を創案し、それによって、声を含む自分の全てを表現しようとする。
アイデアもギミックもユニークだ。
書籍修復の職人であるもう一人の人物と、その店の雰囲気なども、とてもいい。


希望 (ハヤカワ文庫JA)/瀬名 秀明
2011年7月15日初版
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2011-08-08 19:12:34

『テレビの大罪』

テーマ:人文・社会・ノンフィクション

(んほんの)テレビ局ってひどいよね、というのはもうだいぶん前から、特にネットで言われているように思う。
ネットばかりではなく、もう一般的にも、大きな災害や事件があるたび、テレビの報道姿勢が問われるなんて事が発生している。
3月の大震災でも、毎日毎日、津波襲来シーンをリピートしているだけだという非難があったのを思い出す。
私はその時、テレビといえば、一部NHKを見ていたくらいなのだが、それでも、ネットで流れるニュースと、テレビで流されるニュースに情報の差があった事に非常な違和感があった。
たとえば、自衛隊やアメリカの海兵隊が派遣されて現地の人をこんな風に助けてるよ!
……というニュース、海外のニュースなどでは流れているのに、日本のテレビにはほとんど映像がのらなかったようだ。
救援に駆けつけてくれた各国の救助チームの活躍も、テレビにはほとんど映されていなかったらしい。
原発に関しても、テレビでは政府発表をそのまんま受けて、特定少数の解説者をまじえて談話しているだけという感じ。
ともかく、ネットがメインだった私と、テレビがメインだった母とで、把握している情報に大きな違いがあった事に、がくぜんとした。

そんな事もあって、本書を手にとってみたというわけだ。

さて、前置きが長くなったけれど、本書は決して、テレビ局を単純にバッシングするという内容ではない。
まず、導入が面白い。
「テレビに出演している女性タレントのスリーサイズ、あれは大嘘ですよ!」
始まりはここから。
えースリーサイズが嘘というかサバ読んでるのはだいたいわかってるって、と一瞬思うが、医師である著者が、洋服のサイズと、実際の胴回りのサイズの違いを説明し、かつ、自身の家族に言及し、話を進めていくあたりで、「ふむふむ、だから?」と身を乗り出すような感じになる。
そして、著者が導き出す結論に「うぁっ?」と意表を突かれるのだ。
しかも説得力がかなりある。

テレビの罪というと、冒頭で述べたような偏向報道とか、一連の捏造事件などをすぐに思い浮かべてしまうが、全く違うところから読者をアプローチさせるわけだ。

むしろ、その後に論じられる事の方が、「あーそれテレビ悪いよねえっ」と大いに納得できるテーマが並ぶ。
医療事故に関する報道とか。
しかし、あえてそういうものから入らないところで、逆に、読者をうまくつかんでしまうのだ。

つい先月、テレビ放送は津波被災地のうちの3県をのぞき、いっせいに地デジに切り替わったけれど、地デジを放棄した世帯もそれなりに残っているという。
新聞を定期購読する家庭が徐々に減っている今、テレビも、もしかしたら、それに続くかもしれない。
テレビはテレビで、長所がいろいろあると思うが、そこに安住するわけには、今後はいかないのだ。
昔と違っていろいろなメディアがある現代だからこそ、もう一度、「テレビ」というメディアを再検討するのは、悪くないと思う。
そのためにも、本書のような意見に接する事は、大切。
そしてもちろん、本だろうとテレビだろうと、そのまんま鵜呑みにするのは厳禁。


テレビの大罪 (新潮新書)/和田 秀樹
2010年8月10日初版
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2011-08-07 19:55:56

『ヒュペルボレオス極北神怪譚』

テーマ:海外SF・ファンタジイ

クラーク・アシュトン・スミスの選集、2巻目。
タイトルからわかるとおり、今回はヒュペルボレオスもの。
ぞしークモいいが私はこちらの方が好みだったりする。
まあ、それは、多分にヒロイック・ファンタジイ風味が強いからだと思うのだが、そこを含め、やはりC.A.スミス作品の醍醐味は、その「妖美さ」にあると思う。
美しさの中にあるおぞましさ、おぞましさの中にある美しさ、その共存性がなんともいえぬ魅力なのだ。
本巻には、「七つの呪い」など、さまざまなアンソロジーにおさめられている有名な作品も幾つか含まれるが、固有名詞などの表記を見直した新訳なのだそうだ。

----------
「ヒュペルボレオス」
ヒュペルボレオスのムーサ
七つの呪い
アウースル・ウトックアンの不運
アタムマウスの遺書
白蛆(びゃくしゅ)の襲来
土星への扉
皓白(こうはく)の巫女
氷の魔物
サタムプラ・ゼイロスの話
三十九の飾帯盗み
ウッボ=サトゥラ

「アトランティス」
最後の呪文
マリュグリスの死
二重の影
スファノモエーヘへの旅
アトランティスの美酒

「幻夢郷綺譚」
始原の都市
月への供物
地図のない島
歌う炎の都市
マルネアンでの一夜
サダストル
柳のある山水画
----------

C.A.スミスも関わりのあったラヴクラフト・サークルの提唱していたコズミック・ホラーは、人間がたちむかうことなどとうていかなわぬ、宇宙的恐怖が存在することを大前提としていたいわけだが、当時ウィアード・テイルズなどに掲載されはじめていた数々の券と魔法の物語(またはヒロイック・ファンタジイ)もまた、人間があらがうことのできないような、強大な神的敵を相手にする英雄の物語だった。
本巻の「ヒュペルボレオス」や「アトランティス」に属する物語は、まさしく、そのような宇宙的恐怖や、強大な神的敵を相手に人間が孤軍奮闘する物語が多い。
あらがい得ぬものもあれば、皮肉な結末に終わるものもある。
しかし、それは読者に対して威嚇的に語られる事はない。
あくまでも、美しく怖ろしいものとして淡々と描写されるのだ。
また、あらがい得ぬといっても、主人公は最後までたいていはあらがうことになっている。

ところで、面白いことに、一部の異星や(作品が書かれた当時という意味での)現代を舞台としたものを除けば、ここに登場する異世界は、なぜか「熱帯」と「氷河」の両極端に分かれている。
そう、温暖な土地が登場しないのだ。
当時探検家がめざした「秘境」が、極地のような極寒の土地か、あるいはアフリカのような暑いところだったからなのだろうか。
しかし、暑熱の地は異界へ通じる事が多く、氷河や極寒が、魔的な脅威や罠となっている事が多いのも、面白い。


ヒュペルボレオス極北神怪譚 (創元推理文庫)/クラーク・アシュトン・スミス
2011年5月31日初版
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2011-08-04 19:17:05

『遠い椿』〈公事宿事件書留帳17〉

テーマ:歴史・時代小説

だいたい、このシリーズに登場する人物は、一所懸命だ。
但し、主人公をのぞくのだが。
その回限りの登場だからだろうか、事件に関わる人(そして、鯉屋が味方する事になる人)の一所懸命さが際立つように思う。

たとえば、「小さな剣鬼」では、少年が無体な大人に対して見事に侍の意地を貫く。
それも、現代ならば「え、それはちょっと~」と言われてしまうような、しかし、武士道ならばこうもあろうかと思われる、鮮烈な貫き方だ。
ある意味、すがすがしさも感じられる。

しかし……。
一所懸命で、けなげで、意地もはり、そして最後がなんとも切ない「黒猫」。
澤田ふじ子は猫が好きなのだそうで、ここに登場する猫も、なんともいえず、リアルだ。
「かわいいネコちゃん」とは一線も二線もかくする、もうほんとにけなげな猫なのだ。
そういえば、猫の報恩譚というのはいろいろあるが、鍋島の猫騒動などのように、けなげで一途なあまり、魔物のようになるパターンがあって、この話もそういうラインに通じるものがあるかと思う。

もともと、公事宿というものが平民のものである以上、物語もあまり侍が出てくるものはないのだが、それにしても今回は、「はんなり」する話と「せつない」話が半々であるようなのに、圧倒的にせつないイメージが強いのは、この「黒猫」のせいかもしれない。


遠い椿―公事宿事件書留帳〈17〉 (幻冬舎時代小説文庫)/澤田 ふじ子
2011年6月10日初版
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2011-08-03 19:20:27

『アタゴオルは猫の森 (17) 』

テーマ:日本SF・ファンタジイ

アタゴオルが描き始められてから、えらく長い年月がたっているのだが、おおまかにいうと、アタゴオルでの日常のひとこまを描いているものと、○×戦記のように、特定の敵を相手に、アタゴオル以外の土地に遠征したヒデヨシたちが戦う話が交互につづられている。
今回も、前巻で開始された『チョウマ戦記』が、ほぼ全巻にわたって描かれている。

あくまでも好みの問題だが、私はあまりこの○×戦記の部分が好きではない。
いや、確かに、アタゴオルにおける非日常も、楽しい。
今回はイケメンの自由人にして戦士、ギルバルス(ムーミンの世界でならスナフキンに近いか)が活躍するので、これまた楽しくもある。
と、申しますのは。

もともと、ヒデヨシの仲間たちはそれぞれがなにか突出した部分をもってはいる。
たとえば、パンツは学識と知能と推理力にすぐれている。
唐揚げ丸は、ネジがぶっとびやすいが、天才的なヴァイオリン弾き。
こんな風に。
しかし、彼らの突出ぶりはあくまでも、常識の範囲におさまっている。
そのなかで、非常識な突出ぶりを示しているのが、主人公のヒデヨシと、このギルバルスなのだ。

従って、この二人が登場する丸×戦記だと、いわば期間限定の「選ばれたるもの」として、二人とも候補にあがるけれど、だいたいはヒデヨシが選ばれることになる。
ところが、今回は珍しくも、ヒデヨシが全く選択の対象にならず、ギルバルスが選ばれてるんだね。

確かに、王者の風格はあるけれど、それよりなにより、根っからの自由人であるギルバルスが、どのように動くのかというのが、チョウマ戦記の見所だ。

しあkし、それでもなお、巻末の「春の拍子」のような日常の方が好きなのは、とてもスローな世界であるアタゴオルの日常というやつが、ほっとする要素を多々秘めているからだと思う。
まあ、逆に言えば、そういったスローさが読者にとって非日常として感じられる以上、非日常の中野非日常となる戦記ものはいまいちひたれない、という事になるのかも。

うん、面白いんだけれどね(笑)。


アタゴオルは猫の森 17 (MFコミックス)/ますむら・ひろし
2011年6月30日初版
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2011-08-02 18:50:06

『バチカン奇跡調査官 千年王国のしらべ』

テーマ:ミステリ

奇跡、まあ範囲を狭くして、キリスト教における奇跡とひとくちに言っても、内容はさまざまだ。
像が涙や血を流した、マリアや天使が姿を現した、病気などが治った、たぶん、ここらへんが定番ではあるだろう。
しかし、「死から蘇った」というと、ただごとではない。
作中、この奇跡は、イエス・キリストのみのもの、と語られている。
たしかに、聖書によると、新約はもちろん、旧約もふくめ、他人を死からよみがえらせた奇跡も、自らが復活した奇跡も、それはキリストの上だけに起こったものとなっている。
ならば、もしも、キリスト教者が死から蘇り、かつ、病人や不具者を癒し、水の上まで歩きましたと言われたら、どのように受け取ればいいのか?

ゆゆしき問題だ。

そして、ここに登場する問題の人物アントニアス14世は、「復活した」だけでなく、他者、それも主人公のかたわれを死からよみがえらせちゃうのだ。
冒頭、そのシーンから始まるこの物語、かなりスリリングだ。
また、そこへもってきて、悪魔崇拝者の影もちらついていたりするのだが……って、これは本シリーズでは定番だね。
ただ、敵のスタイルも、相手が違えば当然違ってくるので、そのあたりはうまくできている。

毎度の感想だが、これ、ホラー文庫に入ってはいるものの、やはりミステリだと思う。
悪魔崇拝者の正体など、手がかりとなる伏線があちこちに張ってあったりして、手法的には絶対にミステリ。
逆に、その分、ホラー文庫に入っていても、決して、怖くはない。

道具立ても凝っていて、今回の目玉は水圧オルガン(ヒュドラリス)だ。
うわあ凄いもん出した、と、そのセレクトにまず感動した。
なかなか思いつかないでしょう、この水圧オルガンは。
私は音楽史の書籍上でお目にかかった事しかないし、それだって大きく行数を割かれていたわけではない。
ちなみに、さらっと検索してみたところ、さすが。YAMAHAのサイト が一番詳しいようだ。
どんな音がするのか、切に聞いてみたい。
作中、ロベルトが、水圧オルガンの演奏方法がわかった、とうっとりしているシーンはとても共感する。

奇跡の種明かしなどもこのシリーズの醍醐味のひとつだが、正直、2巻~3巻より、本巻の方が仕掛けも面白く、ストーリー展開もわくわくさせられる。
まあ、仇敵となったかの人も、また登場してくるのだろうけど。


バチカン奇跡調査官 千年王国のしらべ (角川ホラー文庫)/藤木 稟
2011年7月25日初版
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